おれは美少女になりたい   作:ふぁっしょん

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わりと即興気味の閑話なので注意。キャラクター解像度のディテールアップのための話。


EP1.5「困る!」

 シャーレオフィスから、自分の部屋に戻って、おれは勢いよく椅子に座り込んだ。

 どかって具合に尻をつくと、椅子の脚がカーペットごしに床とぶつかって音をたてる。

 そしておれは……

 

 自分の部屋だとしても、大声を出すと聞こえちまうからよ……

 なにやってんだおれはよ!

 って口の中で声が跳ね回って飛び出そうとするのを、歯を鉄格子みたいに噛みしめてこらえた。

 

 

 ゴミ箱を蹴飛ばすと壁にぶつかるわゴミが飛び散るわで散々な目に会う。

 机を叩けばうるさくて苦情が来る。

 足をどたどたするのも、叫ぶのも、なんにもできやしねえ、狭苦しい部屋だ。

 かわいい置物とかにあたるなんて持ってのほかだ。

 そんなことはもうとっくの昔に知ってる!

 

 けど、ベッドで跳ね回って悶えたい。

 そんな具合でおれは、苦しんでいた。

 おかげでつい髪をぐしゃぐしゃにかき回しちまうし、つい視線を確認しちまう。

 

「はあ゛……!」

 

 ため息がいやに熱くて、それがいやだ。

 ああ、いやだいやだ、なにもかもいやだ!

 

 

 おれはもう我慢できなくなって、ベッドに頭からつっこんだ。

 体重が軽いおかげで、ぼすっと音がするだけだ。セーフ。

 なんならちょっと、シーツをぱんぱん叩く余裕すらある。

 けどセーブした。こういうのは癖になるからな。

 かしこいぜ、おれ。

 

 

 おれはちと人見知りだったりする。

 さらにいうと、初対面のひとの前だと緊張しがちだ。

 そこらへんはもちろん、自分のことだから知ってる。

 

 けど、それにしたって振り回されすぎだ!

 これが大人、先生のパワーによるものなのか……それともおれの貧弱さによるのか、さっぱりわからねえけど……

 少なくともいま、おれは猛烈に恥ずかしい。

 だって、少なくともクールじゃあない。なんかイケてない気がする。

 

 

 唇をもごもごしながら、おれは顔をシーツにこすりつける。

 どうすりゃよかったんだ?

 わかんねえ……だって、それがわからねえわけだから、今日相談にいったんだぜ?

 わかるわけがない。

 

 

 顔をあげて、スマホのほうをみた。

 机のうえで充電器と合体してるそれは、画面がみえないよう伏せてある。

 部屋に戻ったときにはすでに、先生からモモトーク(流行りのトークアプリ)が来ていた。行動計画はすぐたったらしい。

 ざっとみたかんじ、これが美少女の理解につながるのか、よくわからんが……

 少なくとも間違いなくわかるってことがある。

 それは。あとはおれのGOサインだけってことだ……

 

 

 断る理由はないから、つまりYESと返せばいいってだけの話なんだが。

 けれど、今日の先生とのコミュニケーションは、なんか……

 振り返ってみるといささか恥ずかしすぎる。

 振り回され過ぎだ!

 対策を考えないとだめだ!

 

 

 おれは勢いよく立ち上がり、机に向かった。スマホを横に避けてノートを取り出す。

 ペンを指ですこし弄りながら、書くことの目星を考えた。

 

(先生は、美少女について知るために計画を練ってくれたわけだが……)

 

 ちょっと唇をもにょもにょした後、おれはゆっくりスマホを裏返した。

 真っ暗だった画面に、先生の計画案が現れる。

 

(ぱっとみたかんじ、ちょっと、いまのおれには難易度が高そうなのがあるんだよな)

 

 他校の初対面の生徒と交流……は、ちょっと心配だし……

 だから、とりあえず先生との交流になれるべき、か?

 

 

 ペンを滑らせてメモを連ねていく。

 どうすれば、なんかいいかんじに振舞えるだろう。

 考えながら書いているうちに、ちょっと筆跡が太くなっていることに気が付いた。

 だからちょっとだけ指の力を緩めた。

 そしたら筆圧が少し減って、筆致も滑らかになる、かわいいかんじの丸みを帯びたやつだ。

 これが結構だいじなのだ。

 

 

 しばらく書いて、よし、とうなずいた。

 おれは決めた。

 まずはこの、スイーツをいっしょに食べに行くってやつにしよう!

 決めたには即行動。

 おれは先生へのメッセージを書いて、見返して。「よし」とまた頷いた。

 送信!

 

 

 スマホを裏返して机に置き、吐息がひとつ。

 なんてことはない行為なのに、ちょっと緊張してしまう……

 そんなおれに気づいて、少し気分が暗くなったのを感じた。

 そのとき、ぴろりんと通知音がスマホから飛び出した。

 

 みると、先生だ。

 はやいな……

 

 

 時計をみると、もう短針が真上のほうにだいぶ近づいている。つまりだいぶ時刻は遅い。

 生徒の相談って、シャーレの業務だよな。

 こんな時間に着信を確認してすぐ返信するとは……

 親身なのか、はたまたブラック業務なのか。

 おれはちょっと気になったから、お体に気をつけて云々~とか、そういうことを送った。

 そしたらまた返信が来る。大丈夫だよ、生徒のためを思えば……

 

 おれ、知ってる!やりがいセルフ搾取ってやつだ……

 ちょっと心配に思うと同時に、先生もそういうところがあるんだなって……

 そういうところってなんだ?

 なんだろう……

 

「ふわ……」

 

 あくびが飛び出た。

 結構起きているわけだし、そろそろ寝なければ……

 とりあえずなにか送って、それから寝るか?

 

 メッセージをいくつか組み立てて、そこでふと、思う。

 こういうのって、どこまで突っ込んでいいんだろう……

 先生のスタンスにあれこれいうのはちょっと……

 う~ん、でもなにも送らないでいるのは……

 

 

 おれは悶々と考えているうちに、もうさっぱり頭が回らなくなって、結局送らないまま眠気が限界を飛び越えた。

 ちょっと寝不足になってしまった夜であった。




ちと描写が冗長かもしれないが許してほしい。
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