おれは美少女になりたい   作:ふぁっしょん

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EP2「困っちゃうね」

 洒落たかんじのカフェーっぽいケーキ屋さんにて、おれと先生は、隅の方の席で向かい合って座る。

 シックなデザインの店内は、ちょっと大人っぽい色合いだ……

 

 シンプルなフレーム状に加工された机と椅子。

 そしてそこに座るおれの目の前には、二皿のケーキとカップがある。もちろんおれと先生が注文した品だ。

 おれのほうのカップはカフェラテで、先生のほうはコーヒー。

 おれのほうの皿はショートケーキで、先生のほうはチーズケーキ。

 でもって、その食べ進み具合は、ややおれのほうがはやかった。

 おいしいからつい……

 

 

 それから、おれたちの視線の先には、スイーツを食べながら談笑する美少女たちがある。

 気の知れた仲特有の、ちょっと乱暴な扱いとか、喋りとか、そういうのを交えつつ、なのだが……結構言い方がきつかったりして驚いた。

 なによ!とか……あっそ、とか……

 けれど全体的な雰囲気は、なんだか柔らかい……

 ああいう会話に慣れている、というより、そういう会話でも気にしない仲なんだろうな、と思う。

 

 

 この店に訪れることも、訪れる時間も、先生が決めたわけだし……

「先生は、あの子たちが来ると知ってたんですか?」と、おれは小声で聞いた。

 すると先生は、”新作のスイーツが出るから、もしかしてと思ってただけだよ”と返す。

「でも先生、あの子たちを知ってるっぽい……みたい、ですよね?」

 

 先生はにこりと微笑んで、”まあね”と答えた。

 そしてそれ以上いうことなく、コーヒーを一口飲む。

 

(誤魔化してる……?)

 

 

 さっきからおれには、ずっと気になっていることがあった。それは、先生が若干、いや結構、隠れるようにして気配を隠していることだ。

 声はちょっと小声だし、角度的に見えづらい位置に座ってるし……

 

(でも、直接聞くのもな……)

 

 おれはカフェラテを一口ついばむ。

 ここはいいミルクを使ってるらしい、上品な甘み……香り……

 それを味わってから、改めてあのグループのほうに意識を配る。

 彼女たちはずっと、半ば口論みたいな口調で、多分、じゃれあっていた。

 わりとけなしたり乱暴な口調になってるけど、多分、そうだ。

 

 

「……わたし、お友達とああいうかんじで喋ったこと、ないんです、けど……」

 おれの口からことばが漏れた。

 

 すると、”個人差だと思うよ”と先生はいった。

 ずっときれいな姿勢を保っていた先生だが、少しだけ椅子に身体を傾ける。

 そして、”けれど、ああいう女の子たちも、かわいいと思わない?”といった。

 

「それは……そうですね」

 おれはうなずいて続けた。

「なんだか肩の力が抜けている、というか……」

 

 視線をまた運ぶと、彼女たちは口論して、ちょっと怒った顔になったりするけれど、なんだか……楽しそうだ。

 

 先生はフォークをもって、チーズケーキを切り取った。

 おいしそうに微笑んでから、身を傾ける……

 ん?

 

”……”

 

「先生、もしかしてあの子たちから隠れてません?」

 

 つい言ってしまった!

 だが、おれは興味を抑える気にはなれなかったから、じっと先生をみる。

 先生はすこし、顔の向きを逸らした。

 

”そうかな……どうかな……”

 

「ほら、いまもわざわざ背筋逸らして、顔の位置変えてるじゃないですか」

 

 先生は、”いやあ、はは……”と誤魔化すように笑った。

 おれはショートケーキの甘みを味わいながら、少し考える。

 ふと、思い至った。

 

「もしかして、知り合いの前でどこが美少女っぽいとか語るの……」

 

”……実はそう”

”ばれたくはないよね”

 

 先生は気恥ずかし気にいった。

 おれはなんだか意外な気持ちだったけれど、そりゃ当然か、とも思う。

 なんだか急に親近感がわいてきたような……

 そして、いたずらごころも。

 

「でも、ちゃんといってくれないと、今日の目的は果たせないですよね」

 ちょっとだけ、頬が吊り上がるのを感じた。

「教えてくださいよ、どこがかわいいと思ってるか」

 

”……ええと”

 

 先生が目を泳がせる。

 ちょうど、あの女の子たちは談笑からスイーツに比重が寄っている。

 店内はやや静かといえた。他の席から届く談笑の声はそう大きくない。

 

”そうだね……”

 

 そして先生は、チーズケーキをまた一口食べた。

 そのままコーヒーを一口飲み……

 チーズケーキを一口食べ……

 

「先生?」

 

”……そうだなあ”

”……個人的な見解だけど”

 

 先生は背もたれに預けていた身体を起こして、こちらをまっすぐみる。

 フォークを皿において、コーヒーもまた机に置いた。

 

 

”美少女的、っていうのは、いろんな見方ができるよね”

”でも、おおよそにおいてだけど、それはみていて快いっていう方向性がある”

 

 そこで先生は視線を動かした。

 あの女の子たちは、また談笑を始めたらしい。

 笑い声と笑みがあった。

 

”彼女たちの言った言葉をそのまま抜き出して別のひとにぶつけるってことは、ちょっと乱暴だ”

”あそこにあの子たちでいるからこそ、初めて言った言葉だから”

 

 おれは納得して頷いた。

 

”それを踏まえると……”

”あの子たちが各々もつ個性と、互いに合わさって得る関係性”

”それは間違いなくかわいい、美少女的だと思う”

 

「なるほど……」

 深い頷きを返し、おれは先生の言葉を噛みしめた。

 そして思う。

「玉虫色の答えだ」

 

 先生はその言葉に、けれど笑みを返してきた。

”そうかもしれないけれど、そうじゃないかもしれない”

 そしてコーヒーを口に運んで、怪訝そうにカップをみた。

 どうやらコーヒーが尽きたらしい。

 チーズケーキも、もう一口か二口大だ。

 

 おれはそれをみて、ショートケーキとカフェラテの残りをみた。もうほとんどない。

 席を立つ音とともに、あの女の子たちが去っていく。

「もう少ししたら出ますか?」

 

”まだ名残惜しいかな”

”なにか欲しいケーキはある?”

 

「実をいうと、新作のケーキが気になってたり……」

 

”ちょっと、試してみようか”

 

 先生がまた微笑むのをみて、おれもまたつい、笑った。




主観視点特有の、見え方の誘導を強調してみた。やや冗長だがこれもまたいいと思ったので採用。
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