ポケットモンスター ビヨンド・ダイブ   作:小村・衣須

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Lv.107「神殿合議」

 “神殿合議”。

 それは各地の大神官(ジムリーダー)が一堂に介し、報告や会議を行う場の事だ。

 

 かつては大神殿(リーグ)の音頭の下で、“マハルの地”の中間地点となる西方側面の巨大な湖、“サイノ()”上の孤島に集まっていた。

 しかし、ポケモンの力を借りて現地まで移動しようにも、やはり全員が集まるまでに時間がかかり、それだけ情報や案件のリアルタイム性も落ちる。

 

 そこで近年、大神殿(リーグ)の筆頭幹部──“四天王”の1人が、“星見人”の協力を得て開発したインターネット回線、そしてホロ通信に白羽の矢が立った。

 必要な機材を各神殿(ジム)に設置し、通信網を整備する事で、現在はオンライン上で行われるのが主流となっている。

 

 

 

「皆、ひっさしぶりー☆ こうして“神殿合議”で集まるのは、半年ぶりになるのかな♪」

 

 

 

【プルガーシティ ポケモンジム】

【リーダー シェラ】

 

 

 

 プルガージムの地下に設置された、ホロ通信用の会議室にて。

 この神殿(ジム)の長たるシェラは、目の前に投影されたホロシルエットを、メリハリの効いた横ピースで出迎える。

 

 装いはいつものエプロン風ドレスで、青いボブの上にはトゲキッスのカチューシャ。

 そんな彼女が見据える先に立つ2つのホロは、どちらも男性であり──その胸にはシェラ同様、錨と鎖を組み合わせたデザインの紋章(エンブレム)が装着されていた。

 

 

 

『──む、シェラか。確か此度の合議は、其処許(そこもと)の要請によるものであったな。また、拙僧たちの力を必要としていると聞いた』

 

 

 

【パタラシティ ポケモンジム】

【リーダー ノウジュ】

 

 

 

 1人目は、禿頭(とくとう)にして筋骨隆々の巨漢だった。

 

 錆色の道着をぴしっと着込み、腰に巻かれた“くろおび”に緩みが無い事からも、彼の生真面目さが汲み取れる。

 両手には、よく使い込まれた革紐具(セスタス)を巻き、厳かに合掌をしながらに立つその姿は、或いは僧侶のようにも見えるだろう。

 

 

 

『ヘイヘイヘーーーッイ! そんなカタい顔しないでちょーよっ! まだ会議が始まる前なんだから、しみったれた顔なんかせずに、ワシと楽しくお喋りしちゃわな~い?』

 

 

 

【ジョウハリタウン ポケモンジム】

【リーダー ヤブサキ】

 

 

 

 その隣に立つ2人目は、豊かな顎髭を蓄えた老爺だ。

 

 真っ赤な甚平を着流して、灰色の髪はうなじで小さく結い、目には金の縁のサングラス。

 古びた木の杖を片手に持つ姿は、どこか仙人を思わせるが、そんな印象を一瞬で払拭してしまえるほどに、態度がチャラい事この上無い。

 

 

()()()()、やっほ♪ 門下生たちの稽古で忙しいだろうに、わざわざ呼び出しちゃってごめんね? けど、どうしても皆の知恵を借りたくてさ☆」

『師匠はよせ。拙僧は其処許に、何も教えてなどおらん。其処許がそれほどまでに強くなったのは、其処許自身の才覚と鍛錬が故。無才の我が身が恨めしいものよ』

「まったまたー☆ シェラちゃんのトレーニングメニューやごはんの献立は、ぜーんぶお師匠様に教えてもらったものだよ♪」

『ほーいっ? ちょっとー? ワシの事なんか忘れてなーい? ヘイヘーイ、シェラちゃーん?』

 

 

 和やかに言葉を交わす2人の裏で、ヤブサキが杖を振りつつ己の存在を主張する。

 2m近い巨体を持つノウジュと比べるのは些か無理があるが、それを抜きにしても、彼の身長は、一般的な成人男性よりやや低い。

 

「ごめんごめん☆ ヤブ(じい)を忘れたりなんかしないって♪ 今日はシェラちゃんの呼びかけに集まってくれて、ありがとね☆」

『いやいやなんの! シェラちゃんのお願いなら、なーんでも聞いちゃうんだから! それにしても……ふぅむ』

 

 顎に手を当て、ホロ越しにまじまじとシェラを見つめる。

 彼女の頭の先から足元までを、舐めるように観察し……やがて「うむっ」と頷いた。

 

 

 

■■(ピー)歳にもなって、まーだ胸に肉はついとらんようじゃな。代わりにケツの肉はムッチムチで、実にワシ好み! どうじゃ? この会議が終わったら、ウチの温泉に遊びに来るというのは。お肌すべすべ、今以上のナイスバデーに早変わりじゃよっ☆』

「うーんっ、ごめんねヤブ爺。今シェラちゃんね、どうしたらヤブ爺を事故に見せかけて風車の上から落とせないか、アイデアを練ってるとこだから☆」

 

 

 

 目だけが笑っていなかった。

 やると決めたらマジで()る。そんな昏い殺意が、明るい笑顔の裏に秘められているのを、師匠たるノウジュは感じ取っていた。

 

 

『……シェラもヤブサキ殿も、戯れはほどほどにな。他の大神官(ジムリーダー)たちも、近くこの会議の場に集まられよう。努々(ゆめゆめ)、気を抜かぬように』

「大丈夫大丈夫、シェラちゃんはちゃーんと分かってるよ☆ 今回の会議の発起人として、お行儀の悪い真似はしないからさ♪」

『ほっほー、ワシもちょいとふざけ過ぎたかの。シェラちゃん以外のおにゃのこにセクハラでもしようものなら、今頃もっと酷い目に……』

『誰が酷い目合わすて?』

 

 

 年若い少女の声に、3人の視線がそちらへ向く。

 見れば、今まさにホロが形成され、投影された1人の少女が、こちらへ手を振っているところだった。

 

 

 

『まいど! なんやけったいな事が起きとるみたいやな。ウチの力でよかったら、いくらでも貸したるで!』

 

 

 

【ニライカナシティ ポケモンジム】

【リーダー カデリア】

 

 

 

 腰まで伸びた藍色の髪には、至るところに貝殻の髪飾りが飾られている。

 水玉模様のチューブトップに、ジーンズ生地のホットパンツと、大胆かつ露出の多い格好は、さながら水着姿だ。

 

 ニッカリ歯を剥いて笑う褐色肌の少女は、人を食ったような糸目がよく印象に残った。

 

 

「久しぶり、カデリアちゃん♪ ホロ越しだから正確には分かんないけど、前に会った時より貫禄ついたたんじゃない? なんだか()()()()に似てきたね☆」

『ホンマか!? いやーっ、シェラさんにそう()うてもらえんのは嬉しいわぁ。聞いたで、このマハルを揺るがすくらいの緊急事態なんやろ? ニライカナの大神官(ジムリーダー)の名にかけて、力を貸すしかあらへんな』

「その辺はまだ未確定かな☆ 相手の目的とかはざっくり聞いたけど、まだ確証は得られてないし、次にどこで何をするかも不明だしね。その辺含めて、皆の情報を擦り合わせるのが今回の目的でさ」

『せやけ、博士さんとこも襲われたんやろ? これはウチらへの挑戦に決まっとるやないか! モタモタしとらんでも、ウチの神官連中やったらぎょうさん応援に寄越したるで』

「だからね? まずは、これからどうするべきかの話し合いを今回の会議で──」

 

 

 シェラにしては珍しく、相手への対応に困っているような歯切れの悪さ。

 そんな彼女の帯びる困惑を知ってか知らいでか、糸目の少女はニンマリ笑い、『安心し』と言葉を重ねた。

 

 

 

『この世界にちょっかいかける()うとるボケどもは、ウチが1人残らず“サイノ湖”に沈めたる。シェラさん、そいつら捕まえとんのやろ? ウチの街に連れてきてーな。全員、ギャラドスのエサにしたるさかいな!』

「うんっ、カデリアちゃん1回ちょっと落ち着こっか☆」

 

 

 

 ほのおタイプの専門家(エキスパート)でもないのに気炎を上げる少女に対し、さしものシェラも宥めるのが精一杯。

 そんな2人のやり取りに、ノウジュは首を横に振り、ヤブサキは『相変わらず、おっかないのー』と肩を竦めた。

 

 

『まま、そのくらいにしちゃってよん。会議の前からそんなに張り切ってたら、始まる頃には疲れちゃってるぜーい? ただでさえカデリアちゃんはイライラしやすいんだから、若い頃からそんなに怒ってたら、20年後にはシワだらけ──』

『じーさんなんやて?』

『ハイ、ナンデモゴザイマセン』

『……各々方、落ち着かれよ。“人の大地(ハイランド)”を任ぜし我らがその体たらくでは、彼ら“獣の大地(ローランド)”側の者たちに面目が立たぬぞ。事実──1人、既に来ておられる』

 

 

 ノウジュが、その太い指で示す先。

 彼以外の誰にも気付かれない内に、しれっと新しいホロが投影されていた。

 

 意識の外からいきなり現れたように思えて、まだ経験の浅いカデリアなどは、ついギョッとしてしまう。

 そして、誰も彼もの注目を集めながら──彼は、ゆるりとこちらを見やった。

 

 

 

『ら、ラギリのおっちゃん……いつの間に、そこおったんや?』

『……』

 

 

 

【ミクトシティ ポケモンジム】

【リーダー ラギリ】

 

 

 

 線の細い男だった。

 ノウジュとタメを張れるほどの長身に、レザージャケットの上からでも分かるほどに細い肉体は、萎びた木と相対しているかのよう。

 

 テンガロンハットの下は、くすんだ橙色の髪がこれでもかと伸びていて、目元を完全に隠してしまっている。

 腰から下げられたボールホルダーには、数個のハイパーボールに紛れて、明らかな対人武器──リボルバー銃が2丁も収納されていた。

 

 

「ラギリさん、来てくれたんだ♪ 砂漠の方の監視はだいじょーぶ?」

『……』

『相っ変わらず愛想の無い奴じゃのー。折角の美髪が、砂まみれで汚れちまっとる。たまにはウチの温泉に、湯治のひとつでもしに来ればよかろーに。ついでにカネも落としてけー?』

『……』

『……ホンマ喋らんな、おっちゃん。これから会議やっちゅーのに、挨拶のひとつも……』

 

 

 あまりの寡黙さに、半ば苛立ちを隠せないカデリアが、食ってかかろうとした──その直後。

 

 

 

『……不調か』

 

 

 

 ぼそり、と。

 意識していなければ、思わず聞き逃してしまうほどに小さく掠れた声で、ラギリが呟いた。

 

 

『……なんや? 不調? ウチはこの通り元気やけど』

「うーん……ラギリさんが何を言いたいのかは、いつも通りよく分かんないんだけど──」

『安心めされよ。我が街で預かりし其処許のご令嬢は、変わらず壮健でおられる。毎日、あちこちを歩き回り、擦り傷こそ絶えぬが、病気のひとつもしておられぬよ』

 

 

 淀み無くそう答えたノウジュに、カデリアは信じられないと目を向ける。

 彼の言葉を受けて、ラギリは小さく……それこそ、風で揺れているだけかと見紛うほどに小さく頷いた。

 

 

『不愉快か』

『いや。細やかな不平不満こそ漏らせど、大層闊達(かったつ)でおられる。むしろ、そのお転婆ぶりに、周りの者どもが手を焼いてばかりよ』

『ああ』

『お気持ちは有り難いが、金子(きんす)の類いは不要。聞けば、そちらは何かと騒がしく忙しいご様子。蓄えは己の街が為に使われよ』

『そうか』

『毎度ながら、こ奴らの会話を聞いてると、“ワンダールーム”に顔突っ込んでるみたいな気分になるのー』

「ラギリさんの圧縮言語を正確に解読できるのは、お師匠様以外だと、まだ来てない()()くらいだよね☆」

 

 

 髪で顔が隠れているのもあって、ラギリの感情は態度から一切読み取れない。

 それでよく「和やかに会話できたな」みたいな雰囲気を出せるものだと、シェラは己の師匠(ノウジュ)の凄さを再認識した。

 

 

『しっかし、“獣の大地(ローランド)”組は、初っ端からこれかいな。おっちゃんもおっちゃんで大概やけど、次来そうな奴の事考えたら、今から気が重いわ』

『──ククッ。子ガプリコどもの囁きが聞こえる。我が忌み名を恐れ、その到来に(おの)が末路を憂う、惰弱な迷い子どもの怯える声がな』

 

 

 思わずといった風に、カデリアが『うわでた』と声を上げる。

 心底面倒くさそうに振り向けば、彼女よりも少し年上に見える少年が、この場に投影されつつあった。

 

 

 

風吹く谷(プルガートリオ)の盟主が祈りに応じ、古よりの契約に従い、ここに降臨した。だが、心せよ。我が暗黒たる権能が、汝らの矛となる宿命は、永劫のものではない。我が愛しき半身は、万魔殿の奥深くにて、肉と業火の儀式に奉じている。この運命、決して引き裂けぬと知れ』

『素直に「妹が店番してるんでそう長くは参加できません」って言えへんのか???』

 

 

 

【バルバシティ ポケモンジム】

【リーダー ハナミ】

 

 

 

 奇妙な風体の少年だった。

 

 夜の闇ほどに漆黒のケープマントから垣間見える両腕、そして左目は、痛々しいほどに大量の包帯で覆われている。

 だが、その下に負傷や欠損など、ただのひとつも存在しない事を、この場の誰もが知っている。

 

 飴色の短髪を艷やかに撫でつつ、顔面の左半分を右手で覆う、奇妙なポーズを取る。

 意味ありげに『フッ……』と笑うが、実際のところは何の意味も無かった。

 

 

「ハナミくんも、いつも通り元気みたいでよかった♪ (クーサ)ちゃんの方はどーお?」

『時は不変の(ことわり)ならざれど、我が半身は遍く(ことわり)の外で揺蕩いし、深淵の歌姫也。その祝詞は、呪いを恐れる烏合に朝の訪れを授け、大地より湧き出し命を堕落の雫へ貶めん。我が舌は、死にゆく愚者の絶叫に踊り、愉悦の嘲りを贈るだろう』

「兄妹揃って元気いっぱい、お店も繁盛してて、今日も朝ごはんのシチューが美味しかった──と。うんうん、それは何よりだね☆」

『なんでシェラさんは、こないスラスラと受け答えできるん……?』

『ほっほほ、カデリアちゃんも経験が足りないようじゃの。大神官(ジムリーダー)とは遍く世界と対話する務め。この程度は難なく対応できなければの。ちなみにワシには無理じゃ』

『いや、じーさんにも無理なんかい!』

 

 カデリアのツッコミもどこ吹く風で、ヤブサキは『カッカッカ』と白髭をしごく。

 ……だが、不意にその動きが止まり、サングラスの奥でにわかに目を細めた。

 

 

『……? どしたん、じーさん』

『ヤ~なクソババアの気配がしよる。風呂上がりに“ゆきなだれ”ぶち込まれたみたいな気分じゃ』

『それは、私の事ですか?』

 

 

 露骨な舌打ちに出迎えられて、現出する7人目のホロ。

 少女(ソラ)と同等くらいに身長の低いシェラよりも、更に背の低い……童女同然の体躯が、その場の全員を見上げていた。

 

 

 

『お山の成金大将が、随分なご挨拶ですね? そのままお宅の火口に浸かって、痩せっぽちの薪になってしまえばよろしいのに』

 

 

 

【ニヴルタウン ポケモンジム】

【リーダー バントー】

 

 

 

 その老婆の視線は、恐ろしく冷え切っていて、見る者を震えさせる寒気があった。

 

 顔をすっぽり覆う防寒帽(ウシャンカ)は、自身の背丈と同じくらい高いもので、褪せた紫色の髪が、その隙間から辛うじて見える。

 手足も身長相応に短いものの、ヤブサキのように腰が曲がっている事は無く、ふかふかのコートに身を包んでいた。

 

 

『カーッ! まーだくたばっとらんのかクソババア! 長いこと雪山に住んでると、背筋も凍ってそれ以上伸びんのかのー?』

『無駄に熱いだけの湯に年中浸かって、腰のふやけたジジイに言われたくありませんね。火山の腐った匂いを毎日嗅いでると、必要最低限の品性も養えないほどバカになるんでしょうか?』

「ま、まぁまぁバン(ばあ)。そろそろ会議なんだし、その辺で……ね?」

 

 

 宥めるように声をかけたシェラへと、その冷めた視線が突き刺さる。

 彼女だけではない。ノウジュやカデリアへも、同様の目つきが向けられていた。

 

 

『怪力年増に生臭坊主にイキがり娘と、ジジイのお友達は揃いも揃って軟弱揃い。死の危険もさして無い“人の大地(ハイランド)”の大神官(ジムリーダー)は、やはり甘ったれに育つのでしょうね。その点、我々“獣の大地(ローランド)”の大神官(ジムリーダー)は、厳しい自然の中で磨かれた、確かな知性と実力があります』

『我ら欲望の穴蔵(シバルバー)の民は、群れなる世の律に縛られぬ。老いたる氷の城塞(ニヴルヘイム)の盟主よ、汝が儚き檄文に、我らが真名と命運を委ねる事はあり得ぬと知れ』

『知らん』

『人望無いやんけこの選民ばーさん!』

 

 

 “獣の大地(ローランド)”はヤバい連中揃いだと、若きジムリーダーの少女は改めて戦慄した。

 

 

『あはは……。バントーさんがいつもご迷惑をおかけしてすみません。彼女も、この世界(マハル)で一番過酷な地の神殿(ジム)を、50年以上に渡って守り続けているという自負(プライド)があるんです。これで一応、ご自分にも厳しい方なんですよ』

『ご迷惑とはなんですか、()()()。あなたも“獣の大地(ローランド)”の大神官(ジムリーダー)であり、そして我ら大神官(ジムリーダー)の筆頭なれば、もっと誇りを持った振る舞いを心がけなさい』

『そうやで、カミイせんせ。せんせが(やさ)しゅうてええ人なんは知っとるけど、他人に強く出れへんのはどうかと──……うん?』

 

 

 なんか、いつの間にかおるな。

 そう思って、くるりと後ろを振り向いた──その瞬間。

 

 

 

『そうかなぁ……。これでも教師だから、生徒(こども)たちを叱る事はよくあるんですけどね』

『うぉわっはぁ!?』

 

 

 

【アメンテシティ ポケモンジム】

【リーダー カミイ】

 

 

 

 よく着こなされたスーツはぴしっとしていて、メタリックなネクタイがアクセント。

 緋色の三つ編みを右肩に流す彼の態度は、いたって温和な好青年そのものだ。

 

 ……ただし、その顔面すべてを覆うほどの仮面が無ければ、の話だが。

 本人曰く、オスのカエンジシを模したというその仮面は、顔面どころか首元まで覆うほどにデカく……そして、これでもかと言うほどに恐ろしげなデザインで描かれていた。

 

 

「あ、カミイ先生だ☆ 今日は遅かったね、何かあったの?」

『いやぁ……お恥ずかしながら、野生のポケモンに襲われてしまって。なんとか撃退したんですが……。僕を見るなり、怯えながら襲ってくるなんて……何があったんでしょう?』

『そりゃお前さん、その仮面が怖かった以外にあるもんかいの』

 

 

 ヤブサキの指摘にも『そうかなぁ』と首を傾げる辺り、相当“すじがねいり”だ。

 少なくともカデリアやハナミ、そしてシェラでさえ、彼の素顔を見た事は1度も無いくらいには、あの仮面を四六時中付けているらしい。

 

 

『どうやら、僕で最後のようでしたね。遅れてしまって申し訳ありません』

「いいよいいよ、気にしないで♪ それに、まだ全員は揃ってないからね☆」

大神殿(リーグ)よりの出席者だな。今回は通常通り、窓口役の神官が出ると聞いていたが……』

 

 間もなく、会議が始まる時間となる。

 何かトラブルでもあったのだろうかと、周囲を見回そうとして──

 

 

 

 

 

『あァ~ラぁ、ごめんなさァい♡ ちょーっと時間に遅れちゃったワ♡』

 

 

 

 

 

 ()()()()()()が、その場に響き渡った。

 

 

『なっ、あんさんは……!?』

『……どういう事か。此度の会議、其処許の参加は聞いておらぬが』

『そりゃま、そうでしょう? 本来の担当ちゃんに代わって、()()()がこの会議に出る事は、今さっき決まったもの。モチロン、シェラちゃんも知らないわヨ♡』

 

 

 全員の注目を一身に集めながらに、生成される9人目のホロ。

 そのがっしりとした体格が、シルエットとして明瞭に映し出される。

 

 ……そう、()()()

 その意味を理解した途端、息を呑む声がいくつか漏れた。

 

 

 

『──今回の“神殿合議”、大神殿(リーグ)からはアタシが出るわ。それくらいの案件と思って頂戴?』

 

 

 

 彼は、全裸であった。

 

 ムキムキの肉体を隠しもせず、隠さなきゃいけないところさえモロ出しにして。

 そんな裸体の上から、ネックレスや指輪、ブレスレットなど、色とりどりの宝石を散りばめたアクセサリーを、これでもかと身に纏う美丈夫。

 

 豪奢な椅子に足を組んで座る彼の膝の上では、2匹のポケモンがのんびりと寛いでいる。

 こうらポケモンのカブトに、ようくんポケモンのチゴラス。いずれも、地上では化石ポケモンとして知られている種だ。

 

 そうして誰もの注目を集めた金髪のハンサムは、艶やかなウインクを振り撒いた。

 ルージュの塗られた口元が、ニヤリと弧を描く。

 

 

 

『さ、会議を始めましょ。司会進行はこのアタシ、()()()()()のシダが務めるわネ♡』

 

 

 

【エンピレオシティ ポケモンリーグ】

【四天王 シダ】

 

 

 




マハル図鑑 No.201
【カブト】
ぶんるい:こうらポケモン
 タイプ:いわ・みず
とくせい:すいすい/カブトアーマー(くだけるよろい)
ビヨンド版
 硬い 殻は 3日に 1度 脱皮する。100年 生きた カブトの 殻は 絶対 砕けない。
ダイブ版
 水底に 潜んで 獲物を 待つが 稀に 浅瀬まで 上がってきて 地上の 獲物を 襲うぞ。


マハル図鑑 No.216
【チゴラス】
ぶんるい:ようくんポケモン
 タイプ:いわ・ドラゴン
とくせい:がんじょうあご(がんじょう)
ビヨンド版
 わがままな 性格で すぐに かんしゃくを 起こす。1度 懐いた 相手には 甘えがち。
ダイブ版
 大顎は 頑丈だが 虫歯に なりやすく 親や トレーナーが ケアを する 必要が ある。

《進化》
チゴラス
→ ガチゴラス(朝・昼にLv.39以上で進化)
  → ???(???で進化)



今回の書き溜めは以上。
またある程度のストックが完成したら更新します。
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