ポケットモンスター ビヨンド・ダイブ   作:小村・衣須

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▼ギリギリ!
 月末ギリギリの 投稿が オレたちの 好きな 戦い方!

新年あけましておめでとうございます(4週間遅れ)。
皆様のご愛顧のおかげで15000UAを突破しました。心底有難(マジアザ)ッス。

2026年も、当作「ポケットモンスター ビヨンド・ダイブ」をよろしくお願い致します。


Lv.108「踊る(フラフラ)会議」

『変態や──!!!!』

 

 

 やはりと言うべきか、その()()()()()()()()姿()を認識して最初に声を挙げたのは、大神官(ジムリーダー)の中でも最も若く、未熟なカデリアだった。

 

 うら若い乙女(おとめ)の涙目ながらの、そして口をすぼめての絶叫を一心に浴びてなお、漢女(おとめ)──シダは、堂々とした態度を崩さない。少しは崩せ。

 己の肉体、そして身に纏う宝石たちを見せびらかすような動きで足を組み替え……そしてその拍子に、見えちゃいけない()()が一瞬見えてしまい、やはり少女の鳥肌が立つ。

 

 

『あラぁん? ナニよ、こんなマドンナ捕まえて変態だなんて。失礼しちゃうわネ、もうっ』

「いやぁ……ごめんねシダ(ねえ)、いつもの事だけど、ちょっと擁護はできないかな☆」

『あらヤダ、シェラちゃんまでそんなコト言っちゃうの? ならよーく見なさい、この美しき黄金比を!』

 

 

 ば、と両手を広げ掲げるシダ。

 腕の動きに伴って、()の大胸筋はムチッムチッと異様に伸縮し、肩から腕にかけてを彩るアクセサリーたちが、ジャラジャラと音を鳴らして揺れる。

 

 

『緻密に整えられた筋肉美! 穢れなき肌に艷やかな髪! そしてアタシの肉体を彩りながらも主役を譲らぬ、この宝石(ジュ↑エ↓リィ→)! そのすべてが、我が愛しのポケモンちゃんたちの為に存在するのヨ♡』

『その愛しのポケモンちゃんたち、おぬしの体をよじ登っとらんかの』

『ウフフ、この程度は可愛いスキンシッ──あらヤダ待ってカブトちゃん、“ひっかく”のやめよ? 折角セットした髪がめちゃくちゃに……ってチゴラスちゃんも“かみつく”やめよ? やめよ? ね? アタシの頭は食べても美味しくな痛い痛い痛い痛い痛いって!!

『かぁぶ……』

『ちぃーご!』

 

 

 後頭部にひっついたカブトに髪の毛を荒らされ、チゴラスには頭を齧られ、滲んだ脂汗が顔の化粧を汚す。

 とても四天王とは思えない醜態に、その場の誰もが溜め息をついた。

 

 

『毎度ながら、こんなのが栄えある四天王の、それも筆頭格とは……大神殿(リーグ)の品位をどこまで下げれば気が済むのでしょう。私はあなたの顔を見る度、嘆きと目眩が止まりません』

『果てなる至高天(エンピレオ)に座せし4つの珠玉は、“リュウの神”が福音により務めを授けられし神の戦士。不可視の法衣を纏いし者の愚を証明するもまた神の権能。未だ怒りの雷鳴が降臨せざるは即ち、岩の司教が今なおその恩寵を失わぬ証左と知るだろう。不服ではあるが』

『無駄だ』

『……すみません、シダさん。いい加減目に毒なんで、何か羽織れませんか? ウチの生徒(こども)たちに会う時みたいに、せめても下履きくらいは……』

『その前にこの子たちをなんとかしてほし痛い! 痛いのチゴラスちゃん! ()()噛んじゃダメなとこだから! “きゅうしょ”、アタシの“きゅうしょ”だから! カブトちゃんもお鼻に爪突っ込むのやめてってマジでいってぇなオイ!!

『生憎だが、この場の面々は其処許含めて全員ホロ故、物理的干渉は相互に不可能だ。ご自分でなんとかなされよ』

「うーんっ、カオス☆」

 

 

 

 閑話休題(などとありつつ)

 

 

 

『──さて、ちょっとお見苦しいトコをお見せしちゃったわネ♡』

『ホンマにな』

『では、本題に移りましょ。今回“神殿合議”の呼びかけを行ったのは他でもない、プルガーシティの大神官(ジムリーダー)シェラより、緊急の通達が……』

「あ、シダ姐ごめん。シダ姐がそっちで色々やってる間に、もう全部説明しちゃった☆」

ぬぁ()んですってぇー!?』

『というか元々、シェラさんからは事前に資料を電子メールでもらって目を通してましたし……。今回の会議は、その詳細と各神殿(ジム)の報告がメインですから、前提の確認に時間は使いませんよ』

 

 

 それぞれがホロルームに持ち込んだ椅子に腰掛け(或いは立ったまま)、がっくりと崩れ落ちるシダを淡々と見やる。

 どうにかこうにかチゴラスたちを引き剥がした()の髪の毛はボッサボサで、体に纏っていたジュエリーもところどころズレていた。

 

 凡そ四天王とは思い難い有り様だが、これでも()は“リュウジンさま”直々に任命された、大神殿(リーグ)の最高幹部。

 その手腕や実力を疑う者はこの場に誰もおらず、それ故に誰も、()にこの場から去るように告げる事は無い。

 

 そんな事よりも考えるべき、語るべき事が、彼らの手の内にはあった。

 

 

 

『ヴォイド団、“ヨミの民”……それに、ポケモンを暴走させる麻薬の存在か』

 

 

 

 ノウジュが手に持っているのは、先にシェラから送付された資料を紙媒体に出力したもの。

 彼はその隅々まで目を通し……そして、神妙に眉を歪めていた。

 

 ジムリーダーたちとて、“ヨミの民”の存在は知っている。

 なにせ、自分たちの知る、そして語り継いできた神話の中の存在だからだ。

 

 過去にも、彼ららしき存在が実際に目撃されたという記録もあるにはある。

 しかし、そのほとんどが情報の古さ故に不正確で、信憑性も曖昧なものばかり。

 

 だが、今回は違う。

 彼ら──ヴォイド団は、明確に自分たちを“ヨミの民”と名乗り、町やポケモンに対する攻撃を働いたのだ。

 

 

『“シコメソウ”……随分と懐かしい名前を目にしました。大神殿(リーグ)のサンプル以外で見たのは、60年以上前になりますか。当時は私も、シコメソウの撲滅に参じていましたからね』

大神殿(リーグ)主導の上、ワシら各地の神殿(ジム)も総動員で狩り尽くし、種も燃やし尽くしたというのに、よもやまた現れるとは……。それも資料を見る限り、60年前の麻薬よりも効力は遥かに上のようじゃの』

 

 

 普段はいがみ合っている筈のバントーとヤブサキが、この時ばかりは意見が一致し、忌々しいと言わんばかりに唸る。

 当時を知らない若いジムリーダーたちも、かつてシコメソウを用いた麻薬が蔓延しかかり、多くのポケモンが命を落としたという話は聞き及んでいた。

 

 

『死んだか』

『……ラギリ殿は、麻薬を投与されたポケモンたちの命に別状が無いかと疑問を呈しておられる。確か此度の一件では、相手側に使役されていた相当数のポケモンを保護したのだろう?』

「うん。今回のウツシタウン襲撃の核だったナミノルロスのオヤブン個体を含めて、ヴォイド団から保護したポケモンはほぼすべてが例の麻薬に汚染されてたよ。そのままじゃボールにも入ってくれないから、ポケモンのわざで無理やり眠らせて、それから──」

『そこから先は、アタシが引き継ぐわネ♡』

 

 そこで口を挟んだのは、やっと復活したらしいシダだ。

 彼は、カブトやチゴラスを自分の膝の上に載せ、頭を撫でながらにその動きを抑え込んでいる。

 

 

『シェラちゃんたちが保護したポケモンたちは、ボックスシステムを通してアラビカちゃん──四天王の研究担当の方に送られたワ。解析結果も既に上がってる。結論から言えば、体内から毒素を抜く事は可能だけど、多かれ少なかれリハビリは必要ネ』

『毒の司教が智慧と技術は、この世の一切を凌駕せし未来の才。彼女の託宣に反旗を唱えるは愚の骨頂か。されど岩の司教よ、薬毒を呑み下せしポケモンの救済は、衆愚の手に委ねしほど砕かれた叡智の欠片なりや?』

『そうね……アラビカちゃんほどでなくとも、専門の知識を持った人じゃないと解毒は難しいでしょうね。その辺りは各地の魔女たちにも共有するケド……それに、麻薬を投与されてから時間が立てば立つほど、治療の難易度も後遺症のリスクも上がると思って頂戴』

 

 

 何の異論も無く頷く各々。

 

 この“マハルの地”に数々の発展をもたらした天才の見解。

 それを疑う者もまた、この場には誰もいない。彼女(アラビカ)がそう判断したのであれば、それを元に対策を練るだけの事。

 

 だから、問題は。

 

 

 

『その上で……ナミノルロスのオヤブンが投与されたという、ヴォイド団の幹部が言うところの“きょすうのはね”。それらしき反応は、ナミノルロスの体内からは一切検知されなかったワ。それでいて、体に残る負担やダメージは他のポケモンの比じゃないそうヨ』

 

 

 

 その言葉に、緊張が空気を走る。

 この場の誰もが投影されたホロである筈なのに、その緊張感は目に見えて……そして、肌で感じられるようで。

 

『反応こそ残留はしていないけれど、痕跡は残っていたワ。筋肉の断裂や骨に入ったヒビ……いずれも、本来のスペックを超えて無理に体を動かした証拠。それも、体内から検出された麻薬の質から推測される効力以上の出力、というのがアラビカちゃんの見立てヨ』

『それは……例えば、“ビルドアップ”や“ヨガのポーズ”のような、能力上昇を伴うわざによるものでもない、という事か?』

『そうなるわネ。検出不能、解明不能。しかし、影響だけは体に残されている。まるで、()()みたいだワ……なんて、四天王の立場で言うコトでも無いんだケド』

 

 

──呪い。

 

 

 “マハルの地”は何も、“星見人”の持ち込んだ地上の知識だけで発展した訳ではない。

 この地が生まれてからの3000年は、彼らなりの科学と文明を育てるに至った。“星見人”の知識は、その促進剤(ブースト)を担うに過ぎない。

 

 だがそれは、“非科学的”が駆逐された事を意味する訳でもないのだ。

 

 

『呪い……か。あまり大きい声で言えんのは分かっちょるが、言い得て妙かもしれぬの』

『110年前に“ヒスイの民”を名乗る“星見人”が現れてよりこちら、この世界の多くが解明されてきました。それは10年前の新たな“星見人”の来訪によって加速しましたが……それでも、現行の科学ではまだ説明し切れない事も多いですからね』

『知の光を超克せし魔の秘密は滅びず、今なお世の流れに削られ朽ちる事も無し。それは霊の司教が……そして何よりも、我が愛しき半身の存在こそが(ことわり)の巨木に証明を刻まん。霊なるポケモン、超力なるポケモンの真実に、我らが指を伸ばす事は未だ許されぬ』

『“きょすうのはね”に限らずとも、かつて大神殿(リーグ)が滅ぼした筈のシコメソウを蘇らせ、以前よりも更に強力な麻薬を作るに至った経緯と技術もまた不可解なものだ』

 

 

 現在の──彼ら(マハル)の科学では説明の難しい力。現象。概念。

 それに対する不理解や不可解、そして不安が、この地を束ねるジムリーダーたちの中にさえ燻っていたとして、それを誰が責められるのだろうか。

 

 

『ヴォイド団……神話に語られる一族の名を僭称する者たち。奴ばらは一体何者なのか? その目的は? 何ゆえにこの“マハルの地”を脅かし、人やポケモンの命を奪おうとするのか……そして、奴ばらの技術の根源とは? まだまだ情報が足りぬな……』

 

 

 謎めいた侵略者にして蛮行者、ヴォイド団。

 その、全貌はおろか未だ尻尾すら掴めぬ脅威を総じて、ノウジュは唸るようにそう呟き──

 

 

 

 

 

『いや、なに言うてんねん!? けったいな事しよる連中がぎょうさんおるっちゅう話やろ? せやったらウチらの総力上げて、草の根分けてでも探し出して全員ぶちのめしたらええ話やないか! (やっこ)さんどもが何企んどるなんて、そんなんどうでもええ!!』

 

 

 

 

 

 神妙で重々しい場の雰囲気を、悪い意味で吹き飛ばす叫び。

 甲高い声を上げた少女──カデリアは、この場で最も若く、最も直近に就任し、そして未熟な大神官(ジムリーダー)だった。

 

 

『大事なんは、連中がウチら……マハルの人やポケモンや、ウチらの街にいらん事しようとしとる事だけやろ! そんな連中の事情やら何やらを知ってどないすんねん!? 全員ぶち転がして牢に放り込んだらそれで仕舞いやないか! なんでそうせえへんねん!?』

「えっとね、カデリアちゃん。相手はどれだけいるか分からないんだよ? どこに拠点(アジト)があって、どういう戦力を持ってるかもね。だから、それをこれから皆でどう調べるか、どう対策するかを話し合うのが……」

『んなモン、それこそウチら神殿(ジム)の、大神殿(リーグ)の神官みんなで山狩りでもなんでもするべきやろ!? 事態は一刻を争うかもしれんのや! こういう時の為に鍛えてんのが神官ちゃうんか!? ヴォイド団だかなんだか知らへんけど、大神殿(ウチら)に勝てる訳無いやろ!?』

『ほっほ、カデリアちゃん、少し落ち着きなされ。カデリアちゃんの危惧は正しいよ。その気持ちは、ワシら皆も同じじゃ。じゃけど、話はそう簡単に──』

『ギャアギャアと、まるでズバットの巣の中のようにやかましい事この上無い。やはり“人の大地(ハイランド)”の大神官(ジムリーダー)は、品位の欠片もありませんね。自分の低俗さをひけらかすのは結構ですが、それで私たち“獣の大地(ローランド)”の評判まで下げられては、たまったものじゃありません』

 

 

 宥めるのが遅かった。

 底冷えするような嫌味に言葉を被せられて、思わず舌打ちを誤魔化せないヤブサキ。

 

 彼が()めつける先には、やはりバントーがいて、彼女は蔑みの視線をカデリアへ注いでいた。

 対する少女も、彼女の嘲りにいきり立ち、今にも食ってかかりそうな勢いだ。

 

 

『ひとつの神殿(ジム)を動かすにしても、物資に時間、あらゆるコストがかかります。大神殿(リーグ)の号令があったとしても、総動員なぞそう簡単にできません。シコメソウ根絶作戦の時も、相当の費用と時間を要しましたからね。ああ、小娘ですから当時の事は知りませんか』

「あ、あの、バン婆? いま会議だからさ、煽るような言い方はちょっとやめて……」

『ハッ、歳だけ食った婆さんは余計な事を言わずにいられへんのやろか。当時はどうか知らへんけど、今回は明確に悪意を持った集団がこっちを攻撃してきとんのやで。なんぞ新しい事件でも起きて、街がめちゃくちゃなるんを指咥えてボーっと見とけってか?』

『……カデリア殿も、鎮まれよ。神聖な“神殿合議”の場で、我ら大神官(ジムリーダー)が争っては……』

『それは自分の神殿(ジム)が、他の神殿(ジム)と手を組まねば何もできない無能の集団であるという告白ですか? 大した恥知らずだこと。その点、私どもニヴルジムは、この地最古の神殿としての歴史と実績があります。賊程度、あなた方と手を組まずとも、どうとでもできます』

『バントーさんバントーさん! ちょっと抑えて! そういう喧嘩売るようなのやめましょ? ね?』

『喧嘩などと……事実を言っているだけですよ、カミイ』

 

 

 仮面の青年の制止をも鼻で笑って切り捨て、老婆はこの場を見回す。

 

 両者を宥めようと必死なシェラとカミイ、いざとなれば割って入ろうと構えているノウジュとヤブサキ、静観を決め込んでいるラギリとハナミ。

 そして、豪奢な椅子で足を組み、じっとこちらを見ているシダ。

 

 そのすべてに鼻を鳴らし、再び目の前の若い少女へ目を向けた。

 

 

『我ら“獣の大地(ローランド)”の神殿(ジム)は、その環境の過酷さ故、人々を導く為に作られたのが始まりとされています。厳しい環境の中で鍛えられた私たちがどうして、“人の大地(ハイランド)”の生温い環境で育った、甘ったれの神殿(ジム)と手を組めましょうか。こんな会議に意味はありません』

『……その言葉は少し見逃せないわヨ、バン婆。この会議を取り仕切るアタシの顔に泥を塗る気かしら?』

『及び腰の大神殿(リーグ)が何言うてんねん。誰もどうもせえへんのやったら、ウチらニライカナジムが勝手にどうにかしたる。ただでさえウチの街でも異変が起きてんねん、これ以上ダラダラしとって、手遅れになったらどうしようもあらへん!』

『あなたの街がどうなろうと、私の知った事じゃありません。……ああ、でもそうですね』

 

 

 剣呑な雰囲気をものともせず、矮躯の老婆は目を細める。

 顔を真っ赤にしながら歯ぎしりする少女もまた、その冷ややかな視線に怒りを返した。

 

 

『あなたは確か、死んだ先代に変わってその座を引き継いだのでしたね。自然の調停者たる大神官(ジムリーダー)ともあろう者が、ポケモンに襲われて死ぬなど……』

『──!! よりによって、お父ちゃんを愚弄しよるか手前……! もう許さへんで』

『許さないからどうだと言うのです。親子揃って惰弱な神殿(ジム)であれば、いっそ廃するも一興。──“審議戦”の準備をなさい』

『望むところや……!! どうやらヴォイド団の前に、あんたら老害ジムをどうにかした方がええみたいやな。出るんはあんたか? あんたの手のモンか? どっちでもええ、何人でも返り討ちに──』

 

 

 撃発が、それ以上告げられる事は無かった。

 

 

 

 

 

『慎みなさい、()()()()()()()()。この“神殿合議”は、各神殿(ジム)間の情報共有と連携の為に大神殿(リーグ)が取り仕切る、大事な、そして歴史的な会合よ。それ以上の愚言は、この場を設けたアタシ、ひいては大神殿(リーグ)への侮辱と見做すわ』

 

 

 

 

 

 それまでの、良くも悪くも軽薄な雰囲気はどこへやら。

 据わった目の色は鈍く、されど鋭く。引き締まった口元のルージュは、如何なる抗弁も許さない事を示唆していた。

 

 変わらず全裸であるにも拘らず、その姿を見る者は一切の羞恥を感じない。感じる余裕すら無い。

 或いは、()が身につけている大量のジュエリーの輝きでさえ、こちらを見据える無数の眼差しにすら思えてくるようで。

 

 気付けば、()が侍らせているチゴラスにカブトも、2人をじっと見つめてきていた。

 いずれも進化前の、それも互いに物理的接触の叶わない、ホロ越しの視線なのに……

 

 

 

『……それとも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?』

 

 

 

 どうして、こんなにも恐ろしいのだろう?

 

 

『……いや、ウチが悪かったわ。堪忍な、シダさん』

『……フン。この場は、シダに免じて引き下がるとしましょう』

 

 

 場は、静まり返っていた。

 当事者たる2人以外の面々すら、押し黙っていた。

 

 やがて、居心地悪そうにカデリアが謝罪の言葉を告げ、バントーもまた渋々といった様子で矛を収める。

 そんな2人の態度を、シダはじっと見据え……やがて『そ』とだけ呟き、目を閉じた。

 

 

 

『──ならよかったワ♡ せっかく久々に皆集まったっていうのに、喧嘩して場を台無しにしちゃダメなんだからネッ☆ さっ、会議を続けましょ?』

 

 

 

 次に目を開き、パンと手を叩けば、それまでの剣呑な態度は霧散して。

 最初の時のような、軽薄で……そして、人を食ったような明るい振る舞いへと、一瞬の内に回帰した。

 

 その様子に、シェラたちは安堵の息をつく。

 一時はどうなるかと思ったが、流石は四天王。上手く収めてみせた。

 

 

(うーんっ、相変わらずシダ姐は、締める時はちゃーんと締めるよね☆ アラビカちゃんもそうだけど、やっぱり大神殿(リーグ)の四天王は皆、シェラちゃんたち大神官(ジムリーダー)とは別格の存在みたい)

 

 

 シェラは、内心でそう独りごちる。

 

 四天王。大神殿(リーグ)の最高運営者であり、()()()()()()()()でもある4人のトレーナーたち。

 シダは、その筆頭──つまり、4人いる四天王の長でもある。

 

 人から人へと継承する大神官(ジムリーダー)とは違い、それだけの地位につくには、“リュウジンさま”に認められるだけの相応の理由(例えば、実力など)が前提でなければならない。

 ただ伊達に、チャラチャラとふざけただけの人物ではないのだ。全裸だけど。

 

 だが、だからこそ。

 

 

(当代の大司教さま(チャンピオン)……シェラちゃんたちですら、その顔も名前もまだ教えてもらえていない()のお方は、どこで何してるんだろーね)

『さてっ、今回の襲撃者……ヴォイド団に関する情報は、大体共有されたってコトでいいのよネ? それじゃ、お次は皆が持ち寄った情報の擦り合わせからいきましょうか』

 

 

 ニコニコとルージュを歪め、先ほどまでの雰囲気を吹き飛ばすように笑うシダ。

 今、この“神殿合議”の場のイニシアチブを掌握しているのは、彼以外にあり得ない。

 

 

 

『それぞれの街で、何かおかしなコトが起きていないか。それと──“()()()()()()”の動向についても、ネ♡』

 

 

 

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