ポケットモンスター ビヨンド・ダイブ   作:小村・衣須

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Lv.90「血のように赤い羽根」

 ソラたちの前に現れた、不気味な仮面の男。

 ヴォイド団の幹部──三司祭の1人を名乗る彼は、民家の屋根の上に立ち、ナミノルロスと神官たちの戦いを気怠そうに見物していた。

 

 

「磨り潰されて死ぬ……って、どういう事!? まだ何か、企んでる事があるんですか!?」

「だァから、これから死ぬあなた方には関係無い事だって言ったでしょォ? これから自分がどう死ぬのか、なんて気にしたところで、どうせ“ヨミの神”にその命を捧げられる事には変わりありませんからねェ」

 

 

 耳に指を突っ込んでほじりつつ、如何にも面倒くさそうな態度を崩さない。

 そもそも、最初に名無しの少年と言葉を交わして以降、その視線は戦場にのみ注がれ、眼下の少年少女を一瞥すらしていなかった。

 

 ソラの側からすれば、さながら夏場の陽炎を相手に喋っているような気分だ。

 真っ当な会話をする意志が、相手側には存在していない。

 

 

「なぁ、おい。あいつの名前とか知ってるのか?」

「……おれが名前を知る司祭は1人だけ。奴ではない。だが、奴の事は知っている。非人道的な実験をいくつも行ってきたイカれた人間だ。他の人間やポケモンを実験台にする事に、なんの呵責も無い。それで死んだ命はごまんといる」

「人聞きが悪いですねェ……。皆、ワタシの研究の礎になってくれた、大切な生贄じゃないですかァ。それに実験で死んだ命もまた、“ヨミの神”への捧げ物となるのですから、いい事ずくめでしょォ? ホラ、誰も損してない! Win-Win(ウィンウィン)ってヤツですよォ」

 

 

 ケタケタと嘲笑うその声は、聞く者を不愉快にさせる力に満ちていた。

 思わず、少女が拳を握る。己の情動を制御できず、怒りが口から飛び出した。

 

「なんで、そんな酷い事を言えるんですか……!? 皆の命をなんだと思ってるんですか!?」

「ふゥん……?」

「麻薬をポケモンたちに飲ませて……あんなに苦しませて、暴れさせて! その結果、皆傷ついて、死ぬかもしれなくて……! なのに……なんで、そんなに笑ってられるんですか!?」

「……何を言うかと思えば」

 

 ぎょろ、と。

 仮面の向こう側で、赤い目がソラを捉えた。

 

 それは最初の邂逅以来、初めて眼下の3人に向けられた視線であり、同時に彼ら彼女らを見下す意志がありありと透けて見えるもの。

 彼の瞳に込められている感情を、ソラは言われずとも理解できた。

 

 

 

「たかだが生き物が死ぬ程度で、何を騒いでいるのやら。()()()()()()()()()()を、わざわざ糾弾しにここまで来たのですかァ? あなたは」

 

 

 

 軽蔑、或いは嫌悪。

 

 道理を知らない子供が喚いているので、しょうがないから相手をしてやろう。

 そんな思惑が、これでもかと滲み出ていた。

 

 

「その羽根……あァ、巡礼に挑んでいるんですかァ。あんな()()()()()()()()()に熱心だから、そんな腑抜けた事を言うようになったんですかねェ」

「何を……言ってるんですか?」

「いいですかァ? 生き物は死にます。野生の世界でだって、ポケモンがポケモンを殺して食べるのは普通の事です。生き物は他の生き物を殺して生きています。それと同じですよォ」

 

 パン、と手を叩き、淡々と言葉を紡ぐ。

 そこに大した抑揚も無く、まるで学校の先生が、生徒に教えを説くかのように。

 

 

「あなた方だって、ポケモンを食べるでしょォ? ワタシはポケモンを実験台にして殺す。あなた方はポケモンを食べる為に殺す。そこに、なんの違いがありますかァ?」

「っ、それは……違うでしょう!? 生きる為に他の命を頂くのと、苦しませて殺す事が目的のこれとは……!」

「違いなんてありませんよォ。むしろ、生きる為に殺す、という方がくだらない。すべての命は“ヨミの神”へと捧げられ、かの神がいずれもたらすだろう新世界の糧となるのです。そちらの方がよほど有意義だ」

 

 

 話が通じない。道理が通らない。

 同じ言葉を話している筈なのに、価値観だけが明確に食い違っている。

 

 

 

「生き物は死にます。死ぬ為に生きているのです。万物は死に向かう。死した命は深淵の神に捧げられる。生きる為に殺すのでなく、殺す為に生きている。神へ命を捧げる為に生きて、殺し、そして死ぬ。それが自然の摂理ではァ?」

 

 

 

 頭がクラクラするのは、話の通じなさが故か、その身に纏う()()()()()()()が故か。

 当然の理屈を語っているかのような、淀みも悩みも無い言葉の数々に、段々と思考が噛み合わなくなってくる。

 

 もしかすると、相手の方が正しくて、自分は何も知らないお子様だったのではないか。

 男のあまりにも異質な雰囲気に気圧され、瞳孔が振り子めいて震え出し──

 

 

「バカみたいな戯言を真に受けるなっ──! ガプリコ、“ピヨピヨボイス”だ!」

「かろかろーう!」

 

 

《ガプリコの ピヨピヨボイス!》

 

 

 投じられたボールから飛び出すや否や、ガプリコは躊躇いなくその口から音波を放つ。

 聞く者の思考を掻き乱し、“こんらん”させる音のわざが狙う先は──仮面の男。

 

 ポケモンに人を狙わせる。

 その常識外れの行動に、リクやソラが声を上げる……

 

 

「ま、あなたはそうですよねェ」

 

 

 よりも早く、“ピヨピヨボイス”の波濤は、男の目前で四散する。

 それはまるで、彼の前に攻撃を防ぐ為の盾が出現したかのような。

 

 

「ですが……あなた方程度なら、ロゼリアさんで十分です。そうでしょォ?」

「ろォぜェ~」

 

 

《ヴォイドだんかんぶの ???は ロゼリアを くりだした!》

 

 

 赤い薔薇の右手、青い薔薇の左手を持つ、くさ・どくタイプの瀟洒(しょうしゃ)な佇まい。

 いばらポケモンのロゼリアが、仮面の男を庇うようにして、同じく屋根の上へと降り立っていた。

 

 だが、そうして現れた相手ポケモンにはひとつ、おかしな点がある。

 ぞの事実を、リクの鼻が嗅ぎ取った。

 

 

「あのロゼリア……秘薬の匂いがしねぇ。他のポケモンみたいに、薬漬けにされてないのか?」

「そりゃそうじゃないですかァ。あの秘薬を飲ませたポケモンは、性能(スペック)こそ一時的に向上しますが、それだけに()()()()()()。投与すればするほど、やがて体が耐え切れなくなる」

 

 

 ふい、と戦場の方を見る。

 爛々とした“にほんばれ”に照らされながらも、ナミノルロスは血走った目で暴れ狂っていた。

 

 その巨体にジャラランガがしがみついては振り払われ、その隙に神官たちのポケモンが攻撃を放つ。

 囲まれての度重なる攻撃に、強大なオヤブンポケモンが徐々に、徐々に疲弊しているのが目に見えて分かった。

 

 それでも止まらない。鎮まらない。崩れない。

 痛みや疲れなど感じないとでも言いたげに、ナミノルロスは腕を振るい、尻尾を振るい、唸り叫んでいる。

 

 

「強く鍛えたポケモンを秘薬で強化するには、投与量も相応に増やす必要があり、それだけ寿命も縮まる。末端の助祭(したっぱ)ならともかく、ワタシのような司祭(かんぶ)階級の手持ちに投与するには……ねェ?」

「あ、あんた……それを分かって、他の奴らには薬を渡したり飲ませたりしてんのかよ!」

「えェ、そりゃァねェ。()()()()()()()()()()()()調()()()()()()()()()()()()()。どのくらいの投与量までは耐えられて、どこまでは耐えられないか。それを確かめる為の実験は飽きるほどしましたしねェ」

 

 

 今度こそ、少年少女は言葉を失った。

 

 さらりと、日常会話でもしているかの如く、あっけらかんと言い放たれたそれ。

 さながら「何を分かり切った事を」とでも言いたそうな態度に、それ以上の追求も糾弾も、喉に詰まって出てこない。

 

 唯一、名無しの少年だけは変わらず男を睨みつけているが、それを意に介した様子は無く。

 その場の恐れも怒りも困惑も、すべてをちゃらんぽらんに聞き流し、男は「ですが、まァ」と言葉を続ける。

 

 

「この場でナミノルロスを解き放ったのは、先ほども言った通り実験の為でしてねェ。オヤブン個体が、秘薬の投与にどれだけの量、どれだけの時間を耐えられるのか。ただ……そうですねェ。折角ですし、()()の性能も試すとしましょうかァ」

 

 

 祭服(キャソック)から引き抜かれた()()()が、晴れの光に晒される。

 ()()を目にした瞬間、ソラは息を呑み、()()が何なのかを正確に理解した。

 

 

 

「そ、れ……まさか、“()()()()()()()”……!? でも、色が違う……」

 

 

 

 大きさも、形状も、風に揺らめく際の質感も。

 何もかもが、ソラや名無しの少年が持つ“かすがいのはね”──本物の巡礼の証と、まったく瓜二つ。

 

 ただ違うのは、その色だ。

 ソラたちの持つ羽根は、緑色の羽根に淡いオレンジ色が散りばめられているのに対して、男が取り出した()()は、鮮血のように真っ赤で色濃い。

 

 それはまさしく、これまで何度も「血のように赤い」と形容されてきた、ヴォイド団ら“ヨミの民”の瞳と同じ色彩で。

 そしてそれ以上に、思わず目を逸らしたくなるほどの毒々しさ、悍ましげな雰囲気を、これでもかとまぶされていた。

 

 

「何度かの実験を経て、ようやっと納得のいく調整が済みましてねェ。これを──」

「ッ! 不味い、止めろガプリコ!」

「ロゼリアさァん」

「ぜるるゥ」

 

 

《あいての ロゼリアの マジカルリーフ!》

 

 

 虚無より現れた何枚もの葉っぱが、弾幕めいて放たれる。

 1枚1枚が、柔肌程度ならば容易く引き裂けるほどの鋭さを秘めている事など、一目見ればすぐに分かった。

 

「やば──はるりん!」

「けりぃっ!」

「ウェボム、頼む!」

「むっきゅ!」

 

 

《はるりんの かぜおこし!》

 

《ウェボムの ひのこ!》

 

《ガプリコの ピヨピヨボイス!》

 

 

 咄嗟に繰り出したポケモンたちの放つ風が、火球が、音波が、それらを“ふきとばす”。

 そうして緑のカーテンが破られた後、露わになった向こう側では──既に男が、ナミノルロスに向かって真っ赤な羽根を投じているところだった。

 

 

「名付けて、“きょすうのはね”。さァ、ナミノルロスよ。“ヨミの神”の加護を受けなさい」

ブモォオ──ッ、ブ、モ、ォオ?」

 

 

 戦場に立つポケモンたちの攻撃、その余波を掻い潜り、“きょすうのはね”がナミノルロスの肌に突き刺さる。

 瞬間、羽根はたちまちにシルエットを崩し、モヤめいて粉々になった──その直後。

 

 

 

「モッ、モォ、モォオオ──モ、ァアアアアアアアアアアアアアアア!?!?

 

 

 

 ぶくぶくと肥大化した真っ赤なモヤは、瞬く間にナミノルロスの巨体を包み込む。

 モヤが肌に触れる度、それまで暴れ狂っていたオヤブンは、狂乱ではなく悶絶で以て絶叫し、その身をよじらせた。

 

 やがて赤色のモヤは光を帯び、電流のようなエフェクトへと変化する。

 赤い電流が体の上を走れば、より一層の苦痛に襲われ、それに伴う錯乱は、周囲のポケモンたちを近付けさせないほどに酷くなっていく。

 

 ソラたちは、それを見ている事しかできなかった。

 それ以外にできる事が無かった。何をすればいいかも分からなかったのだ。

 

 人々やポケモンが戦慄とともに見守る中、赤い電流はいくつかの纏まりへと収束し、それらは楔を思わせる形状へと固まった。

 ナミノルロスを取り囲む真紅の楔たちが、一斉にその体へと突き刺さり……そして。

 

 

 

「モォ、オ、ァア、ゴッ、ガァァァァァアアアアアオオオオオオオオオオンッ!!!」

 

 

 

 嵐の音にも似た咆哮とともに、その目が赤色に染まった。

 

 血走った目だとか、正気を失った目だとか、そんなチャチな表現では決してあり得ない。

 ナミノルロスの両目は真っ赤に光り輝き、最早まともな状態──否、尋常のポケモンではない事を、誰もが理解できるようにハッキリと表していた。

 

 

「な……んだ、なんだよ、アレ……っ!?」

「ポケモンを、暴走させてる……!? あれも、ヴォイド団の秘術なの!?」

 

 

 ソラたちだけではない。

 取り囲んでいた神官たちも、一様に言葉を失い、明らかな動揺を見せている。

 

 

「ジャ、ジャァ……ジャラララァッ!!

 

 

 そんな中、少しばかりのたじろぎを押し殺し、ジャラランガが“とびかかる”。

 

 タイプ相性の上では依然、こちらが有利。“にほんばれ”の補正もある。

 そういった理屈を野生の彼が理解しているかはともかく、鍛え上げられた灰色の拳が、今も咆哮を上げ続けている土手っ腹へと振り抜かれ──

 

 

「──モゴォオオアッ!!」

「ジャ、リャヒュ──ッ!?

 

 

 拳の到達よりも先に、ナミノルロスの拳がジャラランガの腹部に突き刺さった。

 

 目を見開き、大きく開いた口から様々なモノが吐き出される。

 そのまま撃ち抜かれたうろこポケモンは、十数メートルを吹っ飛んだのち、最も近い民家に叩きつけられた。

 

 轟音を伴って瓦礫が巻き上がり、砂煙が起こる。

 立ち込める砂煙の中で、強力なドラゴンポケモンの尻尾が、力なく横たわって動かなくなった事だけが視認できた。

 

 

「い、一撃かよ……」

能力値(ステータス)の向上、理性の喪失、攻撃性の増大。想定通りの挙動ですねェ。少なく見積もっても、すべての能力が“ぐーんとあがった”くらいの出力はあるでしょうか」

 

 

 顎を軽く撫で、冷淡に告げる仮面の男の態度は、まるで格闘試合の見物客だ。

 その一方、今の光景を見て、ソラの脳裏にふと過る記憶(なにか)があった。

 

 

「一体、何が起きたの……? あの赤い羽根が刺さった瞬間、ナミノルロスが苦しみ出して、それで──ッ!?」

 

 

 ソラの両手は、無意識に自身の口を抑え込んだ。

 

 気付いた。気付いてしまった。

 少女の記憶の中から、あるひとつの光景が掘り起こされ、今しがた目の前で起きた事と、寸分違わずピタリと一致した。

 

 

 

「……“ギムレの洞穴(ほらあな)”……テレネットの、オヤブン」

 

 

 

 あまりに鮮烈な記憶だった。

 少女の価値観に、大きな影響を与えた一夜だった。

 

 それ故に、色褪せる訳が無い。だからこそ、気付いてしまったのだ。

 

 あの時、幼いテレネットの子供や、ソラの必死の説得によって、正気に戻りかけていたオヤブン個体のテレネット。

 その体から、突如として赤い電流めいたエフェクトが湧き出し、彼を苦しませていた。

 

 そしてその電流は、楔の形を取って突き刺さり、オヤブンテレネットを更なる狂乱と暴走の中へ叩き落としたのだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 もしもあの時、オヤブンテレネットが放っていた毒々しい赤色の眼光が。

 今、ナミノルロスが放っているそれと、まったく同質のものであったなら。

 

 

「テレネットを……あの巣をめちゃくちゃにしたのも、あなたなんですか……ッ!?」

「テレ……あァ、“ギムレの洞穴”ですか。あの洞窟の奥に、テレネットの巣があるのは知っていましたからねェ。丁度よかったので、そこで“きょすうのはね”の試作品を実験してみたんですよォ」

 

 頬を掻きつつ「ああ、そんな事もあったなぁ」みたいに語る仮面の男。

 その声色には、なんの感慨も感じられず、また大した興味も見えてこない。

 

 

「オヤブン個体に使ってみたはいいものの、巣に籠もって威張り散らすだけだったので、結果としては失敗だったんですよねェ。もしかして、そいつと接敵でもしましたかァ? あなたがこうしてここにいるって事は、代わりに()()しといてくれたんですかねェ?」

「──ッ! 許さない……! あの子たちを、あの巣をあんな風にして、苦しませて……っ! あなたの事は、絶対に許さない!」

「何を熱くなってるんだか……。野生ポケモンに襲われる程度、旅に出たなら普通の事でしょォ? ワタシに責任を求められても困りますねェ」

 

 

 ギリ、と歯ぎしりをしながらに、モンスターボールを握り締める。

 激情に駆られ、動き出そうとした刹那──ソラの背中を、リクが力強く叩いた。

 

 

「落ち着け! 今、どうにかしなきゃいけないのは、あいつじゃないだろ!?」

「……っ、そ、れは……っ!」

「ジャラランガが落ちた今、神官たちだけじゃ保たないかもしれねぇ! ここが突破されたら、ナミノルロスは町まで突っ込んでくるぞ!」

 

 

 果たしてリクの指摘通り、更なる暴走を得たナミノルロスの苛烈さを前に、神官たちは徐々に……いや、一気に押され始めているのが見えた。

 あの場をあのまま見過ごしていれば、そう経たない内に大惨事へもつれ込むだろう事は明らかだ。

 

「今、町を救えるのは……おいらたちしかいねぇんだ!」

「──……そう、ね。ええ、そうよ。その通りだわ。ごめんなさい、ぜんぜん冷静じゃなかった」

「……奴の言葉に惑わされるな。どうせ人の心など、早々にドブへ捨てたような男だ。聞く価値は無い。それに……」

 

 1歩、前に出る。

 彼の動きに伴って、ガプリコもまた前へ。

 

 あたかもソラたちを庇うように、或いは彼女たちへの道を阻むように立つ彼らの視線は、依然として屋根の上へと注がれていた。

 

 

「どうせ、そう簡単に行かせてはくれないのだろう?」

「そうですねェ……。ワタシとしては、あなた方が死のうがどうなろうが、別にどうでもいいんですがァ」

 

 男が緩く手を挙げると、傍のロゼリアもまたゆるりと動き出す。

 その目は剣呑さを秘めていて、例え秘薬を飲まずとも、残忍なポケモンである事を暗示していた。

 

 

「ただ、できるなら()()()()()とも言われていましてねェ。ついでに、本物の“かすがいのはね”も回収させてもらいましょうかァ」

「ぜろォ……!」

 

 

 両手の薔薇がざわと揺れて、何かが射出されようとする。

 花弁の狭間より、いくつもの鋭い殺意が顔を見せんとした──まさにその時。

 

「させるかっ! “ミサイルばり”だ!」

「むしゅーっ!」

 

 

《あいての ロゼリアの マジカルリーフ!》

 

《ウェボムの ミサイルばり!》

 

 

 3人に向かって放たれた葉の弾幕を、針めいた光弾が迎え撃つ。

 小さく細い針なれど、迫る葉のすべてと的確にぶつかり合い、一切を相殺する。

 

 

「行け、ソラ! ここはおいらたちが引き受ける!」

「──っ! 分かった、ここは任せるわ! ……無事で勝って!」

 

 

 図らずともそれは、“ひみつきち”の時とは立場が逆転した構図になっていた。

 

 元より事態は、悪化の一途を辿っている。逡巡している暇は無い。

 リクの言葉と行動に背を押され、ソラは迷いなく戦場へと走り出し、その後をはるりんがついていく。

 

 そんな彼女たちの背後を守るように、リクとウェボム、名無しの少年とガプリコが、仮面の男へと立ちはだかった。

 

 

「あのロゼリア、ヤバそうってのが見ただけでも分かる。あんただけじゃ厳しいだろ? おいらも加勢するぜ」

「……余計な真似を。お前の助力が無くとも、おれ1人で十分だ」

「言ってろ。……すぐに終わらせて、ソラに合流するぞ!」

 

 

 少年2人のやり取りに、男が面倒そうに首を振る。

 彼の意志を汲んだロゼリアは、屋根の上から飛び降り、2人の前へと着地した。

 

 

「やァれやれ、これだからお子様は面倒なんですよォ。ロゼリアさん、さっさと片付けてください」

「ろぜろォぜ!」

 

 

《ヴォイドだんかんぶの ???が しょうぶを しかけてきた!》

 

 

 狂えるオヤブンを止めんと走る少女。謎めいた男を阻まんと立つ少年たち。

 晴れの光の下、2つの戦場にて、2通りの強敵との戦いが始まる。




マハル図鑑 No.022
【ロゼリア】
ぶんるい:いばらポケモン
 タイプ:くさ・どく
とくせい:しぜんかいふく/どくのトゲ(リーフガード)
ビヨンド版
 綺麗な 水を 飲んで 育つほど 花の 香りは 強く 花の トゲに ある 毒も 強くなる。
ダイブ版
 稀に 違う 色の 花を 咲かせる 事が ある。普通の 色の 花とは 毒の 種類も 違う。

《進化》
スボミー
→ ロゼリア(とてもなかよしな状態で朝・昼にレベルアップで進化)
  → ???(???で進化)



今回の書き溜めは以上。
またある程度のストックが完成したら更新します。
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