クジンシーに転生! 何でだよ、災難すぎるだろ! 作:パーフェクトクローザー
異世界転生。言葉だけ聞けばワクワクする単語だ。ゲームや漫画と共に育った俺も例外ではなく、夢見た事も一度や二度ではない。
キラキラに輝く鎧を付け、勇者の証が刻まれた剣を掲げ、悪の大魔王を信頼できる仲間達と共にうち滅ぼすのだ! うん、カッコいい!
その異世界転生を…俺は成し遂げた………そう、成し遂げたはずだったんだ…。
「クジンシー様! バレンヌ帝国の首都、アバロンへ攻め入る準備は整いました!」
渋面を作る俺の前に立ち、報告する獣人系の魔物。…そう、何故か俺は今、クジンシーになってしまっていたのだ。
クジンシー。SFCのゲーム『ロマンシング サ・ガ2』に登場する主人公の宿敵『七英雄』の一人。が、その実態は仲間の『七英雄』達からも同種の古代人達からも相手にされない嫌われ者だ。
まあ、目標は世界征服とかいう幼稚な物、やることなす事全て空回り、挙句の果てに七英雄の秘密を感情のままにべらべら喋る小者だ。そりゃ嫌われるだろ…としか。
その小物に何故か俺は今なっちまっている。そしてアバロン侵攻。本来ならここでレオン皇帝の長男、ヴィクトールを必殺技のソウルスティールで殺害、仇討ちに来たレオン皇帝をやはりソウルスティールで返り討ち、しかし、レオン皇帝の遺志を継いだ次男ジェラールに仕留められる運命だ。
…冗談じゃない! ハッキリ言って俺は何故こんな事になったのかすらわかっていないんだ。それを知りもせずに倒されるなんてまっぴらごめんだ! そう思い俺は大声で叫んだ。
「止め! 中止! アバロン侵攻中止!!」
が、そんな事はどうでもいい。問題はこれからどうするかだ。
とはいえ、レオンの目的は世界平定だった筈。となると、いずれは他の七英雄とぶつかる事となる。特に、ダンターグやロックブーケ…この辺りで七英雄を警戒しだし、伝承法に頼る可能性は高い。
ボクオーンもバレンヌに近い場所で活動しているが、あいつはぶっちゃけ弱いから戦闘にさえ持ち込めば何とかなるだろう。
それらを踏まえたうえで、この後どうするかの俺の考えは三つだ。まず一つ目は、素直に他の七英雄に助けを求める。勿論相手は一番会話が成り立つ可能性が高いノエルだ。
とはいえ、如何にノエルと言えども…いや、一番まともだからこそ同志の中身が入れ替わったとなれば容赦されない可能性もある。これは、古代人をだしに使って上手く言いくるめるしかないだろう。
次に二つ目、さっさとバレンヌ帝国に降伏する。やはり主役は彼等彼女等だからな。上手く潜り込めば生き残れる可能性も高いし、あわよくばこんな状況になった理由も知れるかもしれない。
しかし、これは七英雄全員にかけられた血の誓いに反する行為だ。どんなペナルティがあるかわかったものではない。
そして最後の三つ目だが、古代人…恐らくはまだアバロンに滞在しているであろうオアイーブに相談してみる事だ。
こういう不可思議な状況に一番強そうなのは奴だ。だが、どうやって奴に近づくかが問題だ。侵攻こそしなかったのだから警戒とまではなっていないだろうが、それでもこんなモンスター然とした姿で建前もつけずにアバロンに乗り込むのは不可能に近い。
更に相手は女狐と称されたるほどの策士。上手く接触できたとしても、腹を割って話してくれるとは到底思えない。下手をすれば逆に利用される可能性も…。
そうして長考を続ける俺だが、不意にハッと気づく。何も一つに縛ることはないんじゃないか?
とりあえず、まずはアバロンに出向いてみてはどうだろうか。書簡の一つもしたためれば、レオンもオアイーブもいきなり手を出してくることはないだろう。
そして、その結果をもってノエルに助けを求めるかどうかを決めるのだ。結果が芳しくなければ求めればいいし、思いのほか良ければ報告は先延ばしにすればいい。
よし! そうと決まれば善は急げだ! 早速それらしい書簡を用意するぞ!