クジンシーに転生! 何でだよ、災難すぎるだろ!   作:パーフェクトクローザー

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自己(クジンシー)の解析

「はあっ…はあっ…はっ! ふっ! ふんっ!」

 

 どことも知れぬ薄暗い洞窟の中、焚火の明かりを受けながら俺は一心不乱に剣を振り回す。暇があるのなら少しでも鍛錬をしていたいのだ。

 

 あのアバロンの惨劇の日以降、俺は古代の遺物の探索に戻ったノエル達とは別れて単独行動をとっている。自分に一体何が起こったのか調べたい…と言う理由を付けて。

 

 対して、ノエルはある条件を付けてこれを許可した。そして、その条件をクリアして今こうして単独行動を許されているという訳だ。まあ、その条件も結果的にとはいえ、特段難しい物でもなかったというのもある。

 

 そうして始まった一人旅。勿論、今、俺に何が起こっているのか知りたい気持ちは十二分にあるのだが、それを調べるためにもまず、強さが欲しいというのが本音だ。

 

 弱いゆえに散っていったレオン、ヴィクトール、ジェラール、ヘクター、そしてバレンヌ帝国。その彼等よりもさらに貧弱ゆえに、流されるままに逆らう事もできず望まぬ殺人までさせられた俺。そう、元の世界でもそれが見え隠れする事はあったが、この世界では非常に顕著なのだ。弱者に人権などない…という事が。

 

 加えて、俺の場合は半端な知識があるというのも問題だ。この知識自体は切り札たりえるのだが、無用無暗にひけらかしたところで、先のアバロンの様な惨劇をいたずらに引き起こすだけだ。人権の無い弱者が持つ知識など、強者の食い物にされるのは自明の理だ。

 

 だからこそ強さが欲しい。それこそ、ノエルやダンターグに迫られても自分の意志を押し通せるくらいの強さを。

 

 そう考え、道中はモンスターを相手にし、暇があるなら自己研鑽を積み重ねている。身分を隠しながらだが、モンスター討伐の依頼なんてのも受けたりしている。

 

 と、同時に自分自身の研究も怠らない。己を知らずして強さは身に付かないだろうからな。

 

 俺…というか、クジンシーの強さでまず議論に上がるのは、当然ソウルスティールだろう。この技、決まれば勝利確定なのは原作と同じだが、やはりそれなりに問題は抱えている。

 

 まず、技自体の消費が結構重いという事だ。決まれば相手の生命力を全て吸収できるのだから消費もチャラにできるのだが、決められなければ乱発は難しい。

 

 次に技の流れなのだが、①ターゲッティング→②耐性無効化→③生命力全吸収と言う工程だ。問題は②と③のあいだに数秒のタイムラグがある事。ノエルやヴィクトールの様な常在戦場の武人なら技を知ってさえいれば十分反応が間に合うほどの長さだ。

 

 更に言えば、この耐性無効化している間は標的に尋常でない違和感を感じさせるようだ。移動湖に向かう途中の砂蛇や、ここ最近戦ったモンスターも、この効果中は強烈に反応していた。つまり、この違和感を知っている者なら、例え不意を突いたとしてもまず当たらないという事だ。

 

 とことんまでに相手が内容を知らない事が前提の技であり、記憶を伝える事が出来る伝承法とは致命的に相性が悪い技でもある。技の挙動が素直過ぎてレオンに一発で見切られたのも納得だし、殺傷力だけなら七英雄達の持つ様々な技の中でも飛びぬけて高いにも拘らず、変わらずクジンシーが舐められていたのも七英雄の各々がしっかりとした対策を持っていたからだろう。

 

 とはいえ、当たれば確定一撃必殺はやはり魅力的だ。ならば、当てられる場を構築する手段を模索するべきだ。

 

 まず考えられるのは相手を行動不能にする事だ。実際にゲームプレイ中のラストバトルで、攻撃極振りの装備をしていた最終皇帝に動くな→ソウルスティールの最悪デスコンボが飛んできた事のある身としては、この方法が一番だと感じる。

 

 原作では第二形態になったクジンシーはライフスティールや死神のカマというソウルスティールの下位互換みたいな技を振り回してきていたが、個人的にはこんなのより上記の動くな、または麻痺効果のあるフレイムウィップ、もしくは初期技のみね打ちでもいいので、相手を行動不能にさせる技を覚えて連発するべきだった。こうなっていれば、もしかしたらみね打ちが見切り必須の技になっていたかもしれない。

 

 次に、行動不能にするのが難しそうなら、いっそ相手を掴んで直接ソウルスティールをぶち込むという方法も考えられる。これなら回避される心配はない。挙動的にはロマサガ3のレオニードの必殺技…ジェントルタッチに近いか。

 

 ジェントルタッチと違い、ソウルスティールは無機物やゾンビにも通じるというのが大きな違いだ。ゾンビはこれまで相手してきたモンスターの中で確認し、無機物についてはノエルの”妹を手伝うのだ”という先述の条件…すなわち守護者相手に確認済みだ。生命力はなくても、動いている以上は何らかの力は作用している筈、その何らかの力も全て吸い付くてしてしまうソウルスティールはやはり強い。

 

 欠点としては、近づかなければならない事か。相手がノエルの様な超人ではまず近づく事すらできないだろうし、そうでなくても爬虫類系モンスター最強の"リザードロード"の様な腕力お化けみたいな奴が相手になったら、近づくだけでも非常に危険だ。

 

 と、ここまでソウルスティール関連を見てきたが、それを操るクジンシー本体の成長度合いも決して悪いものではない。

 

 まず、剣の鍛錬をしている事からも分かるように、剣術自体は磨けばレベルアップは可能だ。原作の様な技を習得する事も出来るかもしれない。

 

 次に術の習得も出来る事は出来る。ただ、こちらには致命的な欠点があり、あろうことか天術が習得不可能らしいのだ。天術を生業としている術士に何度か教えを乞うたのだが、習得できる気配は微塵もなかった。

 

 という事は、天術を含む合成術も使用不可能だろうが、何よりも痛いのはこれでソードバリアへの道が断たれたという事だ。ノエルに対抗できる唯一にして絶対の要が覚えられない…あまりにも痛すぎる…。一応”金剛盾”という代替え案もあるが、これは発動が確実ではないという欠点がある。この差は大きい。

 

 そのほか、剣術の腕前は上げられても、身体能力そのものはいくら鍛錬しても上がらない様だ。これは吸収の法で何とかするしかないのだろうが、出来れば吸収の法はあまり使いたくない。

 

 予想だが、天術が会得できないのはクジンシーが好んで吸収していたモンスターの系統に問題があったからだと思われる。もう見た目や使用する技からして、悪魔や不死者みたいな天術の対極にありそうな奴らを吸収してそうだもんな…。これで、更に変な奴を吸収して今度は剣技が使えなくなった…なんて状況になったらたまったもんじゃない。

 

「はあっ…はあっ………。よし、今日はこれくらいに」

 

「ふふっ、お疲れ様です。やっと見つけましたよクジンシー」

 

 今日の日課の鍛錬を終えた俺の背後から、柔らかく…しかし、そこはかとなく不気味な女性の声が不意にかかった。

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