クジンシーに転生! 何でだよ、災難すぎるだろ! 作:パーフェクトクローザー
「ボクオーン!? どうした、何があった!?」
唐突に動き出したボクオーンの本体に、ノエルが声を掛ける。
「ぬっ!? …ノエルに、ロックブーケも? 何故お前たちがここに…いや! その前にそいつらは誰じゃ!? 何故この地に見知らぬ他人を呼びこんでおる!?」
対して、ボクオーンもその声に反応しこちらに近づいて来るが、その時に気づいたらしい俺と原初の歪みの存在に一気に警戒を最大限に上げる。
「こっちは、以前アバロンを襲撃した時に紹介した現在と未来を知る者だ。何やら事情があってこのような女性の姿に変わってしまった様だ」
「で、こっちが原初の歪みって言うんだって。ボクオーン以上に性格が終わってるっていう事以外は何もわからないわ」
「原初の歪み…のう。わし以上に性格が終わっとるとは、残念な奴じゃ」
そんなボクオーンに、ノエルが姿の変わった俺を、ロックブーケが原初の歪みを説明する。すると、ボクオーンは原初の歪みの方を睨み呟く。どうやらそっちの方が気になる様だ。
「ところでボクオーンよ。何故本体に戻った?」
「ぬっ、そ、そうじゃ! ノエル、報告がある!!」
しかし、続くノエルの質問にボクオーンはあからさまに慌て始めた。
「かのバレンヌ帝国の皇帝の奴が生き延びておったのじゃ! いや、継承者は途絶えておらんかった…と言う方が正確かの! その継承者が我が地上戦艦に乗り込んできおったんじゃよ!」
「それで…負けたの? 本体に戻ったって事は…」
「不意を突かれただけじゃ! 次こそは必ず根絶やしにしてくれるわ!!」
憐れみの視線を送るロックブーケにボクオーンは憤慨する。…いや、不意を突こうとしたのはお前じゃねえの? 成功か失敗かは知らんけど…。
「生きていた皇帝か…。しかも戦闘能力自体は低めとはいえ、ボクオーンを倒せる程度には実力を身に着け始めた…。やれやれ…この原初の歪みと言い古代人共の追跡と言い、問題が積み重なって来るな…」
「皇帝…根城を破壊しても生きてるなんて、タームよりもしつこい奴ね。どうするノエル兄様? もう一回新しい根城を破壊してみる?」
溜め息を吐くノエルに、ロックブーケも怖い顔をしながら提案する。根城を破壊って…またあのアバロンの惨劇を繰り返すつもりか…!?
「ま、待て! その案には反対だ! その……えー……そ、そう! ボクオーンを撃破した事によってその地の奴らから信頼を得た…つまり継承先が増えた筈! そんな感じで各地にも協力者…すなわち継承許諾者が増え始めているだろう! だから、新しい継承者が出てくるたびにその根城を破壊なんてしてたら、いつまでたっても終わらないぞ!」
慌ててロックブーケの案を否定する俺。若干言葉に詰まりつつも、その理由を何とかひねり出して。
「―――確かに、タームと同じく根本を叩かねば徒労となるだけだな。あのアバロン襲撃で俺達に抵抗せんとする者共も増えていると聞く。…今にして思えば、アレは少し浅はかな行為だったかもしれん」
「じゃあどうするの!? このまま皇帝が強くなっていくのを黙って見ているの!?」
少し考えた後に、ノエルが俺の案を取ってくれた事に俺は安堵したのだが、逆に自分の案が却下されたことに腹を立てたらしいロックブーケが、頬を膨らませて俺に詰め寄ってきた。ど、どうするったって…どうすりゃいいんだ…? 伝承法って、敵対してみるとホント厄介だな…。唯一明確な弱点は伝承法の行使には限界がある事だが、それを言ってしまってもいいのだろうか…?
「ふむ…。同化の法を改良…か」
と、ここでボクオーンが意味深に呟く。な、なんだ? 何か閃いたのか?
「いや、伝承法が同化の法を改良したものである事は間違いあるまい。その同化の法なのだが…実は短命種同士でこの法が適用されるか試した事があってな」
「うわ出た、ボクオーンの悪趣味…」
淡々と語るボクオーンだが、その内容にロックブーケが露骨に嫌そうに顔を歪める。短命種同士で同化の法を…それってもしか…しなくても人体実験みたいなもんか? 確かに、そ、それはちょっと…。
「結論を言うと、一代は成功した。が、次が続かなかった。どうも魂の強度が我らよりも著しく低い様なのじゃ。そして、その同化の法を改良したのが伝承法だとすれば、短命種に限りなく合わせてあるではあろうが、それでも必ず限界が来るはずじゃ。狙うのはそこかの」
「…成程。相手が完成するのをあえて待って、最後に出てくる本丸を潰す策略か。手の内さえ見せなければ、俺もワグナスも負けはしない。危険も無くは無いがそれが最良か…」
げんなりする俺とロックブーケを尻目に、話を進めていくノエルとボクオーン。流石知将を自称するだけあり、俺が伝えるまでもなく伝承法の明確な弱点を即座に推察して見せるな。
ただ…ど、どうだろう? 確かに無対策で挑むノエルやワグナスは非常に手ごわいが、継承の限界…つまり最終皇帝の頃だと向こうの火力もかなり上がっている。つまり、先制で致命傷を負わされる可能性もある。そう考えれば、五分五分くらいにまで持ち込まれていると思うが…。
「もう一つ…。ボクオーン、俺達の定めた血の誓いだが、これを解消…欲を言えば特定のメンバーを抹消する様な改良はできないか?」
「それは言うまでもなく、先ほどから癇に障る笑いを響かせるこいつの事じゃな?」
考え込む俺と違い、すぐさま次の議題に移るノエルとボクオーン。その厳しい視線の先には、先ほどまでの饒舌とは打って変わって、キキ…ケケ…という耳障りな笑い声以外は何も喋らなくなった原初の歪み。
「歪みか…。ときにノエルよ。我らがモンスターを退治していた時、とあるモンスターの親玉が何故モンスターが生まれたかを盛大に皮肉ってくれていたのう…」
「うん? ああ、そういえばそんな事を言っていた奴もいたな。たしか、同化の法という生死を歪める物がモンスターを生じて云々など………………まさか?」
世間話をするかのような自然体で語るボクオーンに、しかしノエルはハッとした様子でボクオーンに顔を向ける。正直、俺もハッとした。
「さて、真実は闇の中じゃが…もし本当だとしたら大変な事じゃぞ。原初の歪みと言うからには最初にできた歪みという事じゃろうから、同化の法が開発された頃にこ奴は生まれた筈じゃ。同化の法の開発…つまり、このわしが生まれる更に前の話じゃ。はっはっは、随分な大物じゃのう…」
そんな俺やノエルを尻目に、こんな
「まあ、こいつの見張り…及び正体の確認と誓いの改良はこのわしに任せておけ。もうわしの手の内は皇帝に読まれとるから、表には出ん方がいいかもしれんしの」
「分かった。ならば俺とロックブーケはまずワグナスとスービエに会い事の経緯を報告。しかる後、引き続き古代人共の調査とバレンヌ皇帝の動向にも探りを入れてみる」
「あ、ま、待ってくれ! ば、バレンヌ皇帝の動向については俺に任せてくれないか!?」
そうこうするうちにノエル達が方針を決めていくが、そこに俺が含まれていない事に慌てた俺は反射的に手を上げてしまう。物語の中核に関りがあるのに動向自体は蚊帳の外なんて、マジで原初の歪みの言う通りの”誰でもよかった”存在になっちまうじゃねえか! それじゃ駄目だ…ダメなんだ!!
「おやおや…。そんなに慌ててどうしたのです? 自分が呼ばれた理由は無いと自覚して、焦りでも憶えたのでしょうか…キキ………キキキ………」
そんな俺に、待ってましたと言わんばかりに口を開く原初の歪み。…こいつは俺だけを煽る機械かなんかなのか…? ホントにむかつく野郎だ!
「ああ、そうだな…。間違っていたのは認めるよ…」
対して、一見心中とは反対の言葉を放つ俺。それに気をよくしたのか原初の歪みは愉快そうに笑い声を強める。だが…!
「そもそも俺が呼ばれた理由をお前なんかに乞おうとしたのが間違いだった! 俺が呼ばれた理由は自力で探してみせる! 俺が納得のいく理由をな!!」
大声で啖呵を切って見せる俺。そうだ! なんで俺が呼ばれた理由で他の奴や、ましてやこんな
「…ふむ、そこまで言うのならお前に任せよう。現在と未来を」
「クジンシーだ。俺の呼び名はクジンシーで良い」
その言葉にノエルも納得してくれたのか、皇帝については俺に任せてくれそうだ。が、俺の呼び方については訂正を入れる。
そもそも、現在と未来を知る者…なんていう抽象的な呼び方じゃ自分の存在が薄れてしまうのも当然だ。そうならないためにも、ハッキリと名乗った方がいい。
無論、元の名前は惜しい。惜しいが、それを惜しんで苦しむのは多分この
クジンシー………お前の名前、借りさせてもらうぜ!!