クジンシーに転生! 何でだよ、災難すぎるだろ!   作:パーフェクトクローザー

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今の俺は死んだらどうなる?

 グジュッ……   グジュル……

 

 ―――ほう、これがわたくしの対となる存在…言うなれば『終焉の歪み』とでも称するものですか…。

 

 地中から不意打ちされる『恐怖』。大群に襲われる『恐怖』。寄生された仲間に襲われる『恐怖』。死すら無効化して狙われる『恐怖』。あらゆる『恐怖』を煮詰めて生み出すさまは、さしずめ『ドレッドクイーン』…と言ったところでしょうか…キキ……キキキ……。

 

「ふん…。ならばお前は…。享楽に誘い、力を無差別に分け与え、人心を惑い混沌にかどわかし、全てを破滅に導くお前の姿はまさに―――」

 

 

 

 

 

「………はっ!?」

 

 気色の悪い夢に目を覚ましてしまう俺。

 

 い、今のは…。以前見たクジンシーの夢に似ていた…。ただし、今回は相手が見るからに気持ちの悪い化け物だったのが違いだ。

 

 いや、相手だけじゃない…。その場所も、変な液体がそこかしこに垂れていたり、異様にテカテカになっている壁、巨大な虫の卵…の残骸と、生理的嫌悪感を催す物質のオンパレードだった。

 

 そして、ドレッドクイーンという呼び名…。当然、ノエル達が闘ったタームの親玉の事だよな。対して、ドレッドクイーンもこっちに向かって何かを言っていた。『終焉の歪み』の対になる存在…多分、『原初の歪み』の事だろう。

 

 その『原初の歪み』に向かって、ドレッドクイーンは何か別の名前を当てはめようとしていた。『終焉の歪み』を『ドレッドクイーン』と呼ぶなら、『原初の歪み』にも何か他の呼び方があってもおかしくはない。残念ながら何と言っていたのかはよく聞こえなかったが…。

 

 言うまでもなく、これは奴の…原初の歪みの記憶だろう。これを夢見たという事は、この記憶を奴は思い出したという事だろうか? となれば、夢を見れば見るほど奴の正体と過去の蛮行が明らかになる訳だ。

 

 それ自体は望むところなのだが、これ大丈夫なんだろうか…? 見続けると、精神もあいつにむしばまれていくとか、そんな副作用はないよな…?

 

 そんな一抹の不安を覚える俺。その所為で眠気が吹き飛んでしまったので、仕方なく起き上がり、建物の外に出ていく。

 

 まだ日も登っていない時間なので辺りは暗いが、それでも………右を見ても左を見ても広がるのはだだっ広い草原だ。

 

 草原…そう。俺は今ステップに来ている。ノエル達に皇帝の動向を探ると告げて別れた後、まずは皇帝の足取りを掴むためにステップのノーマッドの住処を訪れていたのだ。

 

 ノーマッド曰く、次の皇帝の目標はサバンナ方面だそうだ。なんでも、サバンナの住人たちは巨大なシロアリの集団に悩まされているそうだ。その被害は手ひどく、既に滅ぼされた集落もあるという。事態を重く見た皇帝は、ボクオーンとの戦闘での消耗を回復し次第、サバンナに赴くつもりだそうだ。

 

 シロアリ…まあ、いうまでもなくターム族だ。それを聞いて、俺も明朝にはサバンナに向かう事にした。皇帝の動向もそうだが、タームにも出来る事なら聞きたい事がある。…いや、タームと言うかその親玉であるクイーンに…だが。

 

「寝られないのか?」

 

 そんな事を考えている俺の背後から声がかかる。振り向くと、ノーマットの住人の一人…アルタンが微かに心配そうな顔で立っていた。

 

「少し…夢見が悪くてな」

 

「そうか。ところで…本当にサバンナに行くつもりなのか? 先ほども話したが、今のサバンナはかなり危険な場所だぞ」

 

「バレンヌの皇帝に用があってな。それにターム………い、いや、何でもない…」

 

 わずかな困惑が見て取れるアルタンの問いに、俺は頷きながら答える。のだが、うっかりタームという種族名を口にしてしまい慌てて口をつむぐ。

 

 現時点では古代人かモール族しか知らない筈の種族名だ。それをべらべら喋って、変な疑いを持たれたらたまったものじゃない。

 

 特に、この二股の尻尾な。この世界では、こんな感じの尻尾が生えた女性型のモンスターなんて珍しくもなんともない。その変な疑いが飛躍して、モンスターの一味などと疑われたらそれこそ一大事だ。

 

 この尻尾を隠すために、俺は今、俗にいう”鎧ドレス”なる物を着ている。まさかこんな、リアルではありえない防具を着る羽目になるとは…。この防具を注文した時の武具屋のおっちゃんの呆けた顔は忘れられねぇぜ…。当然、こんなもん流通してる訳ないから特注品だ。その所為で、今まで溜めたクラウンもほとんど吐き出しちまったしな…。

 

「良く分からんが、そんな変わった鎧を着てまでこのモンスターのはびこる世を女性の身で一人旅をしなければならない理由があるのか。分かった、もう止めはせん。ただ…死ぬなよ」

 

 寂しくなった手持ちを思い落ち込む俺に、多量の心配と微かな憐れみの見える瞳で忠告してくれるアルタン。いや、俺は死んでもバックアップが………いや待て。

 

 実際、もし今死んでしまったらどうなるんだ? 七英雄ならば、通常なら年月をかけて復活できるが、俺の場合はバックアップが既にウイルス(原初の歪み)に汚染されている状態だ。かりそめの肉体自体は復活できるだろうが、そこに俺の意思が変わらず宿っているのかと聞かれれば……正直かなり怪しい。

 

 ………まずい、マジで死ぬ訳にはいかねぇぞこれ。

 

 

 

 

 

 昨晩のアルタンとの問答で急激に死に対する焦りと忌避感を俺は覚え始めた。しかし、だからと言って縮こまっている訳にもいかない。もう引けないところまで来ているんだ。

 

 そうして、サバンナ南の集落を訪れた俺。そこには見覚えのある顔が先客として来訪していた。

 

「おや…? 貴女は…」

 

 ホーリーオーダーにして現皇帝のモニカ。変わらずその前を帝国重装歩兵が、両翼を帝国軽装歩兵とインペリアルガードで固め、背後に宮廷魔術師を控えさせている。

 

「あ、た、旅の……武芸者です。こちらの地方でシロアリなるモンスターが暴れていると聞き、出来る事なら退治を試みてみようと思いここに来た次第でして…」

 

 そのモニカの質問に、俺は正体は隠した方がいいと判断し、昨日から考えていた当たり障りのない自己紹介と来訪理由を口にする。

 

「旅の武芸者………ですか………ふふ…」

 

 そんな俺に、モニカは何処か懐疑的な視線を送って来る。な、何だ最後の意味深な笑みは…? ま、まさかもう正体がばれて…? いや、いやいやいや、モニカは伝承法を得ているとはいえ普通の人間だ。魂を見るなんて技術は持っていない…はず。

 

「アリだー!!」

 

 そんな俺の心の焦りなんぞ知った事か! と言わんばかりの唐突な無慈悲な叫び声。な、何でだよ!? まだ真昼間だぞ!? ここくらいゲーム通りに動いてくれよ畜生が!




 次回から、虫特有の気持ち悪い描写がそれなりの頻度で出てきますので、一応閲覧は注意してください。
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