クジンシーに転生! 何でだよ、災難すぎるだろ!   作:パーフェクトクローザー

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凶報はいつも突然に

「お、俺を殺すのか…?」

 

 グングンと高まる場の緊張感に耐えきれずに口を開く俺。勿論死を覚悟しての発言だが、対してノエル達の反応はどうにも鈍い。

 

「―――そうしたいのはやまやまなのだが…」

 

 少し間を置いてからノエルが喋りだす。のだが、これだけ言ってまた口を閉ざしてしまう。なんだ? 一体何を言い淀んでいるんだ…?

 

「どうやったのかは知らんがな、我らの”血の誓い”が貴様をクジンシーと認識しているのだ」

 

「…つまり、今アンタを殺したところで時が経てば復活するし、誓いの縛りによって私達がアンタの本体を殺す事は出来ない。ホント、上手くやったよね。一体どんな術を使ったの?」

 

 代わりに教えてくれたのがワグナスだ。更に、その簡潔な解説にピンと来ていない俺に、ロックブーケが追加で説明をしてくれる。

 

 血の誓い…って、あれか。他の七英雄が倒れたら残った一人は本体を守りに行くって奴か。ゲーム的にはそれくらいしか効果が分からないが、今の話を聞く限り七英雄同士で本体に危害を加える事も禁止しているっぽいな。

 

 まあ、そうしないとクジンシー、ボクオーン、ダンターグ辺りは危険だよな。特にダンターグなんかお前の強さが欲しい! 吸収させろ!! とか言ってノエルやワグナスに襲い掛かりそうだし、逆にクジンシーなんかボクオーンやスービエ辺りに、やはり邪魔者だったとして殺されかねない。

 

「どうやったのかを知りたいのは俺も一緒だ。何せ、気づいたらクジンシーになっていたんだからな」

 

「ほう、現在と未来を知る者にも知らない事があるのか」

 

 苦虫を噛み潰したような顔をする面々に、俺自身も状況が呑み込めていない事を伝えようとするが、返って来たノエルの台詞に俺の心臓は飛び跳ねる事となる。

 

「何故それを…? とでも言いたげな顔だな。簡単な事だ。血の誓いを通じてクジンシーに異変が起こったのを感知し、密偵を飛ばした」

 

 あとは分かるな。とばかりに言葉を切るノエル。密偵に俺とオアイーブの会話を盗聴されていた…ってことだろうな。あの時、怪しい奴はいなかったが、注視しないと分からない小型のモンスターにでも見張られていたのだろう。

 

「ふっ、貧弱で無知な短命種如きが、最強である我ら七英雄を打ち倒す…か。面白い戯言だ」

 

「伝承法…だっけ? はっ、あいつらもよくもそんな怪しい術を思いつくわね…」

 

 更にワグナスとロックブーケも思い思いの事を口にする。向いている方向こそ違うが、向ける感情はどちらも嘲笑だ。

 

「…一応言っておくが、アンタ達は力のぶつかり合いで負けたんじゃないぞ。全員が幾重にも立てられた対策に対応できずに負けたんだ」

 

 そんな二人と、言葉こそ発しなかったが負ける筈がないという自負の笑みを見せていたノエルに向かって、俺は忠告する。自分の能力に自信を持つのは構わないが、あまりにも危機感がなさすぎる!

 

「その筆頭が、ノエル…アンタだ。実際の実力はともかくとして、対策済みで相対したアンタの評価はクジンシーと並んで最低と言う、筆舌に尽くしがたい惨状なんだぞ」

 

「はぁ? ふざけないでっ! ノエル兄様があんな卑怯で汚らわしい小物と同列なんて、そんなことある訳ないでしょっ!!」

 

 その証左としてノエルを例に出す俺。当然ロックブーケは激怒するが、それをノエルが手で制した。

 

「聞こうか。何故俺が相対的にはクジンシーと同格になるのか」

 

「ひとえに、天術の”ソードバリア”という術の所為だな。相手の斬撃に反応して自動で弾いてくれる剣を召喚するという術だ。これでアンタお得意の剣術はほぼ封じられる。残るは”カマイタチ”か”月影”だが、カマイタチも狙い撃ちで封じれる術がある。残りの月影は防具で防げばいいという寸法だ」

 

「ソードバリア…だと? そんな術法聞いた事がないぞ…」

 

 俺の説明に、ワグナスがうむむ…と唸り始める。七英雄も知らない術か…やっぱ術研究所ってスゲエ所なんだな。

 

「成程、剣を抜けば逆に不利になるのは分かった。だが、俺は体術も使える。その術法の名前から察するに、直接な打撃ならその召喚された剣とやらは反応しないのだろう?」

 

「確かにそうだが、アンタからすればそれは手加減しているのと同義の筈。アンタたちすら知らない術法を開発できるほどに知識と強さを蓄えた皇帝とその一行は、手加減して倒せるような甘い相手じゃないぞ」

 

 そして、反論を試みるノエルに俺は淡々と言い放つ。実際、ノエルのカウンターは鬱陶しいが、ソードバリアを開発できるほど研究が進んでいるのならば対策はいくらでもある筈だ。

 

「このレベルの対策を七英雄全員がされてしまったと言えば、敗北の未来も見えてくるんじゃないか? 実際、その対策のガチガチ感は半端じゃないぞ。なんたって、追い詰められたアンタ達が同化の法で合体してすべての技を使える状態になっても、技の四割近くは行動不能にしない限りかすりもしない…ってレベルだからな。最悪、クイックタイムって言う反則技もあるし…」

 

「クイックタイムだと…っ!? 馬鹿な、あの時間を操る禁術を短命種如きが完成させたとでも言うのか! そんな事はありえんっ!!」

 

 説明を続ける俺に向かって、今度は声を荒げて否定してくるワグナス。ありえんって言われても、実際に皇帝側の正真正銘最後の切り札だからなぁクイックタイム。多分、作中で唯一ソウルスティールと同格を張れるレベルの壊れ技だと思う。

 

「この狂ったレベルの対策を可能にするのが伝承法だ。敗北し死亡しても、その戦いの記憶は次の伝承者に引き継がれる。つまり、戦えば戦うほど対策が進むという訳だ。勝敗に関係なくな」

 

 そうして説明を締める俺。実際、敵としてみた伝承法は滅茶苦茶厄介だと思う。戦場で同じ敵と2回以上相まみえるなどまずありえない。故に仕留めさえすれば自分の手札が晒されることはない…という常識が完全に潰されるからな。

 

「―――成程な。俺達が考えている以上に伝承法…そしてバレンヌ皇帝が厄介な存在だというのは理解した。それ故に、お前が帝国との敵対行為を避けたというのも。だが……………もう遅いかもしれん」

 

 神妙な表情で腕を組んで考え込んでいたノエルが、不意に口を開く。…お、遅いかもしれんだと…? な、何がだ…? 何だか猛烈に嫌な予感がするんだが…。

 

「数日前に密偵から連絡が入った。ダンターグの奴が…バレンヌ皇帝のレオンと、その次男ジェラールをルドン高原で殺してしまったらしい。何故ナゼールにいるダンターグがルドンまで北上しているのかは知らんが、その報を受けた長男のヴィクトールが、オアイーブの奴をアバロンに召喚したそうだ」

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