クジンシーに転生! 何でだよ、災難すぎるだろ!   作:パーフェクトクローザー

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帝国の滅亡

「ぐ…っ!」

 

 アバロン宮殿の玉座の間。ノエルの圧倒的な剣技の前に、フリーファイターのヘクターは膝を折って屈してしまう。持っている大剣を支えにしてさえ立ち上がれないそのボロボロの姿を見るに、もう限界は近い様だ。

 

「こ、これが七英雄か…。確かに英雄と呼ばれるにふさわしい強さだ…」

 

 俯きながらブツブツと呟くヘクター。しかし、唐突にグッと顔を上げ、ノエルとその隣にいる俺を睨む。

 

「だが何故だっ!? かつて世界を救ったと言われるお前達が、何故こんな暴虐に走るっ!?」

 

 怒りに顔を歪ませながら怒鳴るヘクター。情けない事だが、そのあまりに恐ろしい形相に俺は完全に怯んでしまった。

 

「―――そうだな。このまま何も知らずに滅亡するのも歯がゆかろう。冥途の土産に教えてやる」

 

 対して、ノエルはこの負の感情をたっぷり乗せた怒りを平然と受け流して答える。

 

「その世界を救った英雄達を、あろうことか古代人共は裏切ったのだ。だが、我らは戻ってきた。生死の境をさまよいながらも、再びこの地に。そして誓ったのだ。何処かへと消えた奴らを必ず探し出し、復讐すると」

 

 ここまで語り、周囲を一瞥するノエル。無数に横たわる、皇帝の護衛の兵士や内政の重鎮たちの亡骸…及び、その亡骸から流れた血でおぞましい惨状となっている玉座の間を。

 

 先ほど俺が怯んでしまったのは、この惨状も原因だ。全員やったのはノエルだが、その隣でこの残虐な行為を見せられ続けた俺には完全にトラウマものだ。まだ元の世界の感覚が殆ど抜けきってない俺には、人が目の前で切り殺される光景を見せ続けられるのは………つ、辛すぎる………。

 

「その古代人にそそのかされ、我らを討とうとしたのがこの帝国の運の尽きだ。そしてこれは見せしめでもある。黙っているのなら我らも介入しない。今を生きる人間のみで我らを討とうというのも見逃そう。だが、そこに古代人共の介入があったとなれば、我らも容赦はしない」

 

「ふざけるなっ! ルドンを訪れたレオン様とジェラール様を亡き者にしたのは貴様らだろうが! それで我らは介入しないだと? 笑わせるっ!」

 

「訪れた? 侵略しに来たの間違いではないのか? その様な身に余る野望など持たず、小国のまま安寧を享受すれば、そもそも古代人共などにそそのかされる事もなかったと思うがな」

 

 罪悪感で縮こまっている俺を尻目に言い合いを続けるノエルとヘクター。その時にノエルから出た見せしめと言う単語に、俺は思わず窓の外に視線を見遣ってしまう。

 

 今この場にいる七英雄はノエルと俺だけだ。他の七英雄たちはアバロンの街を蹂躙している。時折聞こえてくる怒号と微かに揺れる床。何かが倒壊する音が、その蹂躙の激しさを物語っている。

 

 そう、七英雄達はアバロンを完全に滅ぼす気なのだ。例え伝承法が発動しても、継承者がいなければ意味はない…という事だ。

 

「では、現在と未来を知る者よ」

 

 よそ見をしていた俺に不意に話しかけてくるノエル。

 

「お前が皇帝を討つのだ。そうすれば、お前を我らの一員と認めよう」

 

 そして、続くノエルの言葉に俺は震えあがる事となる。………お、俺が皇帝を討つ…つ、つまり、この、目の前で膝をついている男を、お、俺が殺す…? さ、殺人? ま、まさか、ノエルの野郎、こ、これをさせる為だけに、お、俺をここまでつ、連れてきたってのか…?

 

「一員…? どういう事だ? クジンシーは七英雄ではないのか?」

 

 ガタガタと情けなく震えている俺を見つめながら、ヘクターは不可解そうに問い質す。が、ノエルは何も答えない。勿論俺も答えられない。何とかこの場を穏便に済まそうと考えるばかりだ。

 

 どうする? どうすれば…? 後ろでノエルが見ている以上、殺す以外の選択肢はない。な、なら、せめてソウルスティールで殺せば、ちょ、直接殺すよりも僅かでも罪悪感が…。

 

「ソウルスティールは許さん。お前の持っているその剣で、目の前の男にトドメを刺すのだ」

 

 しかし、俺の浅はかな考えはノエルにあっさりと見抜かれる。更には、覚悟を決めたのかヘクターは俺の目の前に首を差し出してきたのだ! 口にこそしなかったが、構わん、やれ! という事だろう。

 

 この二人の圧を受け、遂に俺は何かが頭の中で切れる音を聞いた。

 

「う、うおおおおおっ!!!」

 

 狂乱の雄たけびと共に、両手で手にした剣をヘクターの首めがけて振り下ろす。彼の首は思いのほかあっけなく吹っ飛んでいった。

 

「―――いいだろう。これでお前も我らの一員だ、現在と未来を知る者よ。改めてお前の名を聞こうか」

 

 元の世界では考えられない凶行を実行し、肩で息をする俺に、ノエルは極めて冷静に名前を聞いてくる。ぐ、こ、この野郎…っ! 人に殺人をさせといて名前だとっ!? ぐっ、くそっ、くそっ!

 

「お、俺の名前は…」

 

 心の中で悪態をつきながらも、名乗ろうとする俺。しかし、何故かは分からないが、ここで俺は言葉を詰まらせてしまう。

 

「どうした? お前の名前は何だと聞いているんだ」

 

 再度訪ねてくるノエルだが、その問いに俺は答えられない。

 

 な、名前…な、なんだっけ? え、お、俺のな、名前…あれ? な、何故だ…? 何故俺は名前を思い出せないんだ…? お、俺の…俺の…名前…っ! な…まえ………はっ……!!

 

「ふむ…。何か事情がある様だな。しかし、もうそろそろここを離脱せねばならん。攻め落とす最後の締めとして、スービエの特大メイルシュトロームで地下のネズミごと洗い流す予定だからな。うかうかしていると我々も巻き込まれる」

 

 そういうやいなや、ノエルは茫然自失状態の俺を引きずりながら離脱を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 こうして帝国歴1003年。バレンヌ帝国は滅びる事となる。だが、この後の結果だけを見れば、俺を含む七英雄は皇帝の執念を、そしてその執念を支える伝承法と言う技術を侮っていたとしか言いようがなかった…。




 次の話辺りから本作の独自設定がずらずらと出てくる…かも知れません。特に七英雄の過去の話は捏造だらけになる可能性があります…。一応調べながら書くつもりではありますが、公式での七英雄の過去の情報ってまだあんまり出てません…よね?
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