狩人様によるおそらく正気な散歩道   作:Ωが来た!

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 実質、武器見せとコイツで思い付いた話ですね。


かつて星は奈落にあった

 

 なんとか落ち着いてもらう事は出来ないだろうか…。

 

 状況を整理しよう。

 

 第一の前提として彼女は寂しがっている。共に過ごし続けた、家族とも言って差し支えない存在を、その死に目に会うことすら叶わず殺されてしまった。いきなり失ってしまった。

 

 第二に、彼女は目標を失っている。共に何かを成す事がその人生であったと言っていた。つまり彼女は道に迷っているという事だ。

 

 ……では何故こうなっているのか?私は少し休んでから彼女の心が安定するまで待とうと……。……ふむ…置いていかないで……。

 

 あぁ、成る程、何故思い当たらなかったのか。人は事情が悪い時、その思考も悪い方向へと考えるものだと、自分もそうだというのに。

 

 

「……ぅッ!?」

 

 

 背に手を回す、まずは落ち着かせるところだ。遠い記憶、誰かにして貰った、そんな気がするのだ。

 

 

「………。」

 

 

 貴女には、勘違いをさせてしまった様だ。こちらの言葉不足、申し訳ない。

 

 

「……?……それっ…て…?」

 

 

 今の貴女の状態を見て、当分の休息が必要だと感じた。それにあたって自身もここに残る、置いて行くことは無い。

 

 それに、世に疎い私を、支えてくれるのであろう?

 

 青ざめた血について、身勝手な私の使命を、手伝ってくれるのだろう?

 

 

「………ッ!!!……はい!!お願いします!!!」

 

 

 うむ、良き笑顔だ。やはり貴女にはそれが似合う。

 

 

「…!?!あっ、私!?!」

 

 

 ハッとした顔の後飛び上がる様に私の上から飛び退く。その顔は涙とは違う別の赤みを帯びていた。

 

 

 ……元気そうであるな、出立は近そうだ。

 

 

「もう!!揶揄わないで下さい!!」

 

 

 ………?

 

 

「えぇ…。もう、この人は……。改めて、よろしくお願いします!ハンターさん!」

 

 

 こうして迎えた朝、打って変わって憂かない表情であるため声を掛ければ、彼女は何かを伝えようと、しかし喋りにくそうにしつつその事情を話した。

 

 

「実は……新たな調査地点に行って欲しいと……。」

 

 

 鳥によって運ばれた書類、その内容を纏めるとこうだ。

 

 一つ、調査員の死亡は大変悼ましく、それでも尚対応に当たった彼女の働きを労う。

 

 二つ、件の調査地点は可及的速やかな対応が求められる事が確定しており、今現在、彼女が一番近く現場に向かって欲しいと言う事

 

 三つ、本来ならば帰還を促すべきである立場ではあるが、無理を承知で要請する。断ってもらっても構わない、それによって何かしらの不利益を被る事はなく、また、被らせることは無い。

 

 

 以上…。成る程、文字通り道に迷っている訳か…、その調査とはどの様な内容であるのだ?

 

 

「…はい、海辺の地域にはなりますが、この海域では船や飛行船の消失が相次ぎ、近隣の漁村との連絡も途絶え……ハンターさん?大丈夫ですか?

 

 

 …漁村?……あぁ…いや、続けてくれ。

 

 

「とにかく漁村の皆さんの安全確保と、業を煮やしたギルドが原因究明の為に調査隊を派遣してくれと…。もしモンスターの仕業であるならば即刻退避し、ハンターを派遣すると。」

 

 

 初めからハンターを向かわせては行けないのか?

 

 

「正体不明、原因不明。そんな土地に行かせられるハンターさんは少ないんですよ?そして往々にしてそういう人は引っ張りだこ、下手なことできないんですよ。」

 

 

 成る程。

 

 

「……ハンターさん…やっぱり…え?行きたいのだろうって?……はい、あの夜から考え直しました、なぜこうして調査の道に進んでいるのかを。そして気付きました、未知を既知にして、正しく向き合って、皆んなを助けたいってことに。」

 

 

 ならば、躊躇する必要は無い、私も漁村には…縁がある。使命に、その根幹に関わる、その様な気がするのだ。

 

 

「………、はい。行きましょう、何があるのかをこの目で確かめてやります!!!」

 

 

 うむ!良い勢いだ。ではまずは腹拵えを、そして武器を取りに行こうではないか。

 

 

 

………

……

 

 

 その足は歩みを進める。しかしその視界は、その注意は、手に持つ得物に注がれる。

 

 工房長とでも言うべき、彼からの言葉を反芻する。

 

『余りのマカライトと、ドラグライト、そして元の金属とを繋ぐユニオン鉱石でもって、改めて鍛え上げた。そのボロ布は何もいじっちゃいないがな。…薄々気付いてたが、そりゃ元々農具だろ?なかなか骨の折れる仕事だったぜ。』

 

 

 刃を見る、今までにはなかった光沢がある。急拵えの有り合わせは、今や寄せ集めに在らず、その一つを成している。

 

 

『それとお前さんの散弾銃を散弾に対応できる様にした。言ってもレベルは1までだが…。にしたって、相手を毒状態にするのに水銀を使うとは、なかなかに面白い、今後の参考にさせてもらっちまったな。』

 

 

 何やら『カクサンの実』を軽く加工すればそのまま銃弾として使えてしまうらしい。まだ加工後のものしか見てないが、そこら辺に生えているらしく、自身の血液から捻出していたのがバカらしくなる。

 

 

『金?いらんいらん、金を積んでも出来ねぇ体験をさせてもらった身だ。大人しく受け取っておけ。お前さんの使命、果たせる事を願ってるぜ。うし、夜更かししちまった、店は閉めて寝るとしよう。』

 

 

 本当に感謝してもし足りない。思えばここまでの施しを受けた事が、自身の人生において一体、何度あったのだろうか?

 

 

「ハンターさんっ!!ちゃんと前見てください!」

 

 

 ……!

 

 

「全く…、武器が新しくなって嬉しいのは理解を示しますけど、ハンターさんがしっかりしてくれないと、私は見つけるのは得意ですけど、その後は何もできませんからね?」

 

 

 申し訳ない…。

 

 

「…とは言えど、まぁ、確かにある程度の安全は確保された道ですし、何よりハンターさんの嬉しそうなお顔を見るのは、私も楽しいですし、……はい、たのしいですよ〜、ちっとも、嫉妬なんてしてませんよ〜だ。」

 

 

 貴女も見ているでは無いか。

 

 

「うぐ!……チラ見ですよ、周囲確認くらいは常に怠らず、ハンターさんほどうつつは抜かしてません!」

 

 

 そんな、他愛のない話が、実に心地良い。目的地の漁村へと向かう我々はその移動手段を徒歩と馬車…鳥車?竜車?とにかくそれとした。途中までは兎も角、手綱を握る者は一般人だ、深入りさせるわけにはいかない。

 

 

 そうだ、人、我々は鳥車を使ったが、その行者はなんと、自信はないがおそらく猫であった。

 

「ハンターさん?まさかアイルーを知らないんですか!?どんな所からって、そのヤーナムって都市、どうなってるんですか!?」

 

 

 どうなってる?…とんでもないことにはなってはいるが…、これは普遍的に知り得るはずの常識らしい。怪物が存在する世界、二足歩行の喋るあの、おそらく猫の様な生き物も普通なのだろう。

 

 

「しかしハンターさんがアイルーを知らないとは…、もしかしてリオレウスとか、リオレイアとか、ティガレックス、ブラキディオスにラギアクスルも知らない感じですか!?」

 

 

 あぁ、知らない。

 

 

「成る程…、まだまだ遠い歩き道です。すこしお勉強してみましょう♪」

 

 

 …お手柔らかに頼む。

 

 

 

………

……

 

 

 

 焚き木を囲み、話を聞く。口頭と時折出されるスケッチでのみではあるが、巨大で雄大な様はありありと浮かび、それと同時にそれらと対峙した時、如何にして立ち回るかを考えている自分に気付き、よく分からない笑い声を出してしまった。

 

 

「………?何か面白い事でも?」

 

 

 いや、……そうでもないか…。すっかり狩人だと感じたまでだ。話を続けてくれ。

 

 

「う〜ん、こちらばかりというのもどこか不公平な気がしますし、ハンターさんの故郷のモンスターを教えてくれませんか?」

 

 

 獣…か……。

 

 

「……?」

 

 

 不意に空を見上げる。満点の星空という言葉が、そのままに出せる程に星に埋め尽くされた暗い空。獣狩りの夜と言いながら、何度空を見上げた事だろうか…。

 

 

 宇宙は空にある。……貴女よ、古龍と呼ばれる存在はその悉くが未知であり、分かることといえば我々や、そのほかの生物達とは起源を共有しないという事、途方もない生命力を保持している事、往々にして自然の権化と言わしめる程に強大だという事、だったか?

 

 

「はい、強いて他に言うならば四肢に加えてさらに一対の翼を持つ点ですね、種によって腕だったり、そもそも無かったりはしますけど…。突然どうしたんですか?」

 

 

 ……古龍は、宙から来たのではないか?……私の居た、そこではそう言う結論に至ったと聞く。

 

 

「宙…ですか…。あっ、モンスターについては話しにくい内容でしたか?……なんかすみません話の腰おっちゃって…、浮かない表情でしたからつい…。ですが、確かに宙から来たのかもしれませんね。」

 

 

 ……。

 

 

「古龍についてはこんな話もあるんです。我々が古龍として見ている姿は本来の姿ではなく、我々はただその現象を『古龍』と言う形に直して見ているのだと。斬れば血は出ます、悠久に思えてもいつかは死にます、得られた物は現実です。ですけど、誰もやっぱりその本質はわからない。」

 

 

 …本来の姿、見えざる本質、未知なる高次元。だがそれは生きている。

 

 さて、もう眠りに着くとしよう、明日も早い。

 

 

「…ハンターさん、最後に一つだけ。宇宙が空にあると判る前は、それはどこにあったんですか?」

 

 

 狩人は指を刺す。此処だと、此処に宇宙はあったのだと。

 

 その指は、どう足掻いても宇宙には程遠い、下を、地面を、地下を指差していた。

 

 

 

………

……

 

 

 翌日、起きたばかりは晴天だというのにその歩みを進める事に、天候は下り坂の様を呈していた。

 この様な場所で雨が降ろうものならその先行きは危うい事となる。せめて後よりくる者達との、合流地点と定めた件の漁村には着きたいものだ、と考えていたその時だった。

 

 

「ハンターさん!早めに出立したのが功をそうしました!もう時期着きますよ!ハンターさんは魚介類はお好きですか?私はなかなか食べられるものではないので楽しみです!」

 

 

 魚介類……貝以外なら食べてみたいものだ。

 

 

「貝…ですか?確かに他にはない食感ですよね。」

 

 

 ……そうではないのだが…。……?

 

 

「どうしました?空を見上げ…。早いですね。…急ぎましょう。」

 

 

 そう早い、異常なほど雲の流れが早過ぎる。黄金まじりの曇天は濁流を超えて連波する。

 

 嫌な気配がする。つい最近感じた、二度と感じまいとした、いっそ吐き気がするほどに濃密な。

 

 潮の匂いは僅かなものから次第に強まり、それに比例するかの様に疑問は確信へと変化する。変化してしまう。

 

 

「………ハン…ターさん…。また……なんでこうも上手くいかないんでしょうね…?」

 

 

 あぁ、悲劇とはどうしようもなくままならないものだ。大事ないか?

 

 

「…はい、確認を…進めましょう。」

 

 

 始めに感じたのは、どうしようもない既視感と寒気。よく見ればそれでは無いもののはずが、連想して仕方が無い。

 

 

……くろ……む……す…て

 

 

 その既視感は、極限まで重なり合った。ボロ布を纏う、骸のような風貌をした色白の翁が、覚束無い足取りで、細く腹の底からくぐもった呻めきを上げる。記憶に重なる翁を、彼の住む村で行われた、数々の冒涜的且つ理不尽極まりないそれを連想する。

 

 

 ……ビルゲンワース?

 

 

「……ハンターさん?どうしました!?生存者ですよ!助けなきゃ!」

 

 

 今にも駆け出そうとする彼女の肩を掴み静止する。何故そんなことをしたのかは…わからない。あの翁はただ呻めき歩いているだけで危害は加えてこなかった。……いや、恐ろしいのだ、翁を越えたその先を見るのが。

 

 

「………ハンターさんが、この漁村に何を感じて、何を見たのかはわかりません。ですが、それは似ているだけで、同じじゃないはず……だと思います。……えぇと、だからその…なんと言うか…。」

 

 

 ………目覚めてよりあらゆる面で弱くなってしまった。……普通になったと言うべきか…?……そうだ、そうだとも。似てるとは同じではないのだ。

 

 

 助けよう、あのご老人を。

 

 

「………ッ!はい!…おじいさん!いま行きますから!」

 

 

 急ぎ掛け寄った彼女は、ご老人に肩を貸し容体を確認する。下着すら履いておらずボロ布一枚のみを纏い、骨は皮から浮くほどに、手足は棒の様、体は絶えず震え続け、肩を貸したのにも関わらずその事にすら気づいていない様だった。

 

 そして何より、ボソボソと何かを、譫言を紡ぎ続けるその様は、見れば見るほどに重ね合わせて仕方が無い。

 

 ……いや、似ているだけだ。その体格は人間のそれであり、痩せこけてはいるが歴とした人間だ。

 

 

むく…ろ…む……ろ…

 

 

「…むくろ?……骸!?」

 

 

 次第にその譫言は、言葉として、外に放ち、意味を伝える言となる。

 

 

冒涜的に…理不尽な…逃れぬ事無き運命…によって…

 

みな…皆…奪われた…………たったの一夜…傍で共に暮らした誰もからもが…生まれたばかりの幼子も…みんな奪われてしまった…

 

 

「…………。」

 

 

 言葉を失うもの無理は無い。その身に受けた所業は、余りにも一瞬の内に過ぎ去ってしまった。彼だけを残して。………ッ!?

 

 

あぁぁぁぁあああ!!

 

 

「どうされました!ちょっと!?」

 

 

 突然、その声は生を取り戻し、その目は飛び出んばかりに開かれたかと思えば彼女の手を振り解き、私の目の前へ、そして自身の胸ぐらへと掴み掛かった!?

 

 

あんた!!ハンターなんだろ!?…頼む!頼む!全部だ!!全部くれてやる!

 

 

 唐突な動きに老人自体も着いて来れてはいないようで、体も声も依然として震えているが、その意思は、言葉は何よりも聞き取れるものになっていく。

 

 

「あの骸を!双頭の怪物を!!骸にしてやってくれはくれないかっ!?」

 

 

 …安請け合いはいつもの事だ。

 

 

「ハンターさん……。」

 

 

そうか……あぁぁ…鳴門の岩洞に…そこにいる…

 

 

 わかった。

 

 

廻してくれ…哀れな囚われを…儂等をここから…

 

 

「…お爺さん!?しっかりして下さい!!おじいさん!!……。」

 

 

 貴女……。弔おう、彼を、仲間を、弔いに…。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 その願いに、どう答えるかは全て貴方次第。しかし貴方は、今日も今日とて安請け合い、新たなるを得るのだろう。ほんの少しの好奇心を混ぜて。

 

 





 水中戦復活したら戦いたい。
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