狩人様によるおそらく正気な散歩道   作:Ωが来た!

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 我々は宇宙に居る。我々は既に宙に居たのだ!!!


宇宙はここにある

 

 異常な流動を見せる曇天は地平の彼方まで、だが反してその波打ち際は酷く凪ぎ、まるで生命の息吹を感じることはできなかった。 

 

 目の前には、恐らくそうであろう岩洞が聳える。おそらく、とは鳴門が存在しなかったからだ。彼女の考察では決まった時間に出現する、或いは件の双頭の骸の仕業であろうという。

 

 

「村一つを一晩で食い尽くす、そんなのイビルジョーでも中々難しい事ですし、それにあの村に残る青い粘液が、それを否定しています。相手は未知、その被害は想像を絶する。…無理に立ち向かう必要はありません。待つと言う選択肢もあります。」

 

 

 だが、しかし。なのであろう?

 

 

「…はい、あの食欲で食料がない場所に居座る意味はありません、直ぐに根城、或いは別のエリアに移るでしょう。予想される行動範囲は海洋全体。逃せば再度補足する頃には更なる被害が……。」

 

 

 ならば、やる他にない。安請け合いもした事だ。

 

 

「ふふっ…ハンターさんって、お人好しですよね。……私は役に立てそうな物を見繕ってから向かいます。使わせて頂けるのならば利用しない手はないですし、それに……報いる事が出来れば、浮かばれる…かな…と。…どうか、ご武運を…。」

 

 

 ……そうして、松明を片手に洞窟内を進んでいる訳ではあるが…、その道のりはどう考えても降り、何かの拍子に水が侵入して来ないか気が気ではない。

 

 

 …パキッ

 

 

 何かを踏んだ。足を退ければ白い粉末、…これは…?まさか?!

 

 

 足元を照らせばそこにあるのは骨、骨、骨。皮も血も肉も臓もない、綺麗さっぱりに、いっそ清々しいほどに骨のみが散乱しているのだ。

 

 

 歩みを進めるごとに次第に骨は辺りを埋め尽くし、それに呼応するかの様に洞窟は広くなり、骨も巨大になっていく。

 

 

 遂に人の背丈ほどもある頭蓋骨すら見つかった。分厚く、見るも頑強極まりなく、その牙はやり過ぎな程に巨大かつ鋭利、そんなものがズラリと並んでいるのだ。骨の主はどの様な猛者であったのだろうか。

 

 

 ……降りるより他なし…か。

 

 

 落下は恐ろしい、自身も数え切れない落下を経験し、その多くで命も落とした。

 

 慎重に足場を照らし、着地可能な場所を見極め降りていく。まさかこんな技能が役に立つとは…。

 

 パシャリと音を立てて降り立つ。

 

 ……しかしながら広い、広過ぎる。そして何よりもそれが分かると言うほど青く明るい。まるで夜空の星の如く、しかし光源をよく見ればそれは骨からであり、骨に付着した何かが青く光り辺りを照らしているのだと言う結論にたどり着いた。

 

 

 ……我ながら良き考察に思える。彼女から何かしら伝播したかも知れない、少なくとも、疑問なく突き進んだあの頃と比べれば…。

 

 

O"oooooo"OO"O………

 

 

 腹の底から響き渡る、そんな音だった。洞窟内に反響したそれは何重にも響き渡り空間そのものを揺るがしていく。

 

 松明が、消えた。

 

 

    ゆらり     ゆらり

 

ゆらり        ゆらり

 

       ゆらり

 

 

 ゆったりと地中より這い出たそれは確かに二本の首を持っていた。ズラリと並んだ青い発光器はよく目立つ。それはまるで竜、いや、龍の様な。

 

 しかしその首は酷くゆるい(・・・)ものであり、その首根っこは埋もれ視認することは出来ない。

 

 その前足はヒレの様、おおよそ龍に似つかわしくなく、後ろ脚は確認できず、尾は巨大な上顎の骨で隠されている様だった。

 

 

 そして、最たるは全身を埋め尽くす骨の数々。あらゆる部位が骨を纏い、本来の姿を特定する事はもはや不可能と言えよう。

 

 骸纏し双頭の龍…双頭龍…いや、『骸龍』と言うべきか?

 

 

O"oooo"!!

 

 

 縮こませた首に力を込め、解放するかの様に伸ばす。単純な動作ながらそれ故に力はよく伝わり、その動きは素早い。

 

 

 

O"Dooboo"!!

 

 

 青い粘液を鉄砲水の如き圧力で噴射する。首の座らない動きか故に狙いはブレにブレ、だからこそ正確な回避は難しい。

 

 

 ……左足に受けてしまった。

 

 

 濃い青に染まった左足を見る。飛散したそれを避けきれなかった訳ではあるが、それだけで済んだことをまずは喜ぶべきか?……直撃すれば足も無い威力であることには違いない。

 

 

 酷く粘つくそれは動く度に骨を纏わり付かせ機動力を的確に削いでくるそれは、足を払えば取れはする。しかし足だけで済んだからこその今である。直撃は死、浴びただけでもそのうちの死が確定する。

 

 

 ……有効打は…遥か頭上の頭部のみとは…。

 

 

 胴体はまるでその刃を通さない。首は刃は通るがしかし厳しいものがあり、ならば頭部は有効打になり得るが…余りにもその機会は少ない。

 

 

O"o"!!

 

 

 短く鳴けば首は地中へとその姿を隠し、そして遂には足下からの突き上げを伴って現れ、更に辺りを薙ぎ払う様に粘液を吐く。

 

 

 ……それが2本…。

 

 

 幸いにも首の根本はお留守の様で逆にそれを誘導することで共撃ちをかませば悲鳴と共に再び地面へと引き摺り込む。

 

 

 …見れば見るほどになんと奇妙な姿であることか…。

 

 

 これまでの観察で分かったことだが、どう考えてもこの首は尋常な生え方をしていない。人で言うところ、両端の肋骨、それも一番下より首が生えている様なものだ。せめて生えるならば両肩であろうに…。

 

 

 ………まさか!?

 

 

 思い至るもそれを抱き続ける時間はない。胸板を反り上げ、そして戻すと同時に大質量の突進として繰り出した!

 

 が、今更そんな分かりやすい攻撃に当たる程、柔な経験はしていない。確かに強力且つ恐ろしげに未知。しかしそれは、それらに触れてきた経験が、克した力が、その立ち回りを完成させ、打開の糸口を探し当てるのだ。

 

 

 ……突進中に見えた、口に蓄えたあの粘液。振り向きざまに吐きつけて来る腹づもりならば、あとは容易い。

 

 

 その予想は的確、思惑通りの軌道を描き頭を下げて突き出す様に粘液を吐き付けるも、既に射程内に潜り込まれ気付けば鉈と化したその得物を顕限りに振り下ろす!

 

 

O"O"O"AaaaA"!?

 

 正に断頭。だが、切り落とすまでは行かずとも相当に深く切り裂かれては敵わないと、直様片首は地中へ引っ込み、もう片首が懐の敵対者を追い払うべく勢いをつけ薙ぎ払おうとした瞬間、銃声が鳴り響いた。

 

 

 幾重にも擦り傷が積み重なった頭蓋骨は、例え低威力の銃撃であっても最後の一押しとしては十分すぎた。

 

 

 O"o"?!?!

 

 

 今まで被っていた頭蓋骨が弾け飛び、その衝撃に耐えかねた頭部…いや、触手(・・)が崩れ落ちる。

 

 

 お人形遊びは終わりの時間だ。

 

 

 ズダンッ!

 

 

 青い血が吹き出す。…何やらポーチが騒がしい、何かが内側で蠢めいている。

 

 

 ………求めるものはこれだったのか…確かに青い。

 

 

 急ぎ身を隠す様に地中へと姿を暗ます。突き上げを警戒しつつ、ポーチを上から抑える。

 

 

 …皺枯れた筈のそれは布一枚を挟んでも分かるほどに瑞々しく、弾力を取り戻していた。

 

 

O"O"O"O"O"!!!!

 

 

 離れた…と言えどもその巨体故かまったく離れた気がしないが…、ともあれ勢いそのままに地中から飛び出した骸龍。怒り心頭に事を発してか、発光器も、そして辺りの青光すらも呼応するかの様に赤く灯り始める。

 

 さらに不可解なことに地面すらも青く発光をし始め、赤、白、そして青が入り乱れる、異様な空間が完成した。

 

 

 そしてその息吹も様変わりを果たし、青い粘液からもはや何と言って良いのか分からない、とにかく赤く、そして仄かに黒い……雷…と言うには実体を帯びている…光線と言うべきものとなっている。

 

 

 …明らかに受けて仕舞えば、抗いようなく死が確定している事は分かる。

 

 

 だが、やはり怒りと言えども所詮はそのままであり、確かにその威力、その速度、その攻撃、変われど同じ、対応出来ない筈はなく、その程度で沈むと思われているのならば、一言。

 

 そこまで柔では無い。

 

 息吹の終わるその瞬間、鎌首下げたその面を狙い切り、削ぎ落とさんと武器を振るう。振るい続ける。

 

 劇的な一撃はないに越したことはない。が、やはり人より強大な相手には地道なそれが一番である。

 

 何せ気付くことはない。気付かぬ間に受けた傷を知る頃には、どうにも戻れぬからだ。

 

 

 赤きは弱々しく点滅を繰り返し、今や発光する大地は鳴りを潜める。終わりは近く故に警戒を怠らず。

 

 

 ……?

 

 

 互いに距離を取り睨み合いが続くが、それを破ったのは骸龍。なんとその場で半回転をし始め背後を見せたのだ。

 

 

 よからぬ事を企んでいるのだろう。ならばその前に叩くのみ……!?!?

 

 

KGYygxooooaaOaAAッ!!!!!

 

 

 一番近い声と言えば、聖職者の獣であろうか?しかしながらより濁り、より大きく、より恐ろしい。未知に、その命に、その存在に。

 

 

 尾を覆い隠す様に据え付けられていた頭骨。しかし尾など無く、それを捲り現れたるは巨大なイカ。そう、イカだ。海にいる、軟体的に、しかし骨のあるあのイカだ。

 

 

 恐ろしく大きく割けた口の上下には巨大な嘴、そしてその口の奥で蠢くピンクの棘の様なものの数々。

 

 瞳はただひたすらに黄色のみ。理性も、知性も、狂気も存在せず。あるのは刻まれた本能のみ。

 

 口付近の6本の触手はそれぞれに役割が違うらしく、上の2本にて頭蓋を支え、両端は特に太く、巨大であり、それに反して下の2本はかなり小さい。

 

 そして件の双頭、あれはやはり触手に骨を纏わせ頭の様に振る舞わせていただけだ。

 

 

……!

 

 

…………

 

 

 睨み合いに瞳を見れば、それは驚いたかの様に見開かれ、そして今度は静かに目を細める。

 

 …先程の瞳から感じた印象。あれは取り消さなければならない。

 

 そして訂正しなければ。この生き物は、この種族は、思うよりもずっと知性的であると。

 

 

 

………

……

 

 

 

 実に器用で、実に賢い。骸龍は自分を理解している、自分以外すらも。

 

 口の周辺は絶えず青黒い霧に覆われ、それが何かわからない以上近づく事は出来ない。

 何より、

 

 時にその触腕は火炎を撒き散らし、炸裂させた。四方に迸るそれを避けることは困難を極め、それを連打するのだから堪らない。

 

 時にその触腕は緑の粘液を纏い、爆破を引き起こした。派手な音と光は時として惑わせ、その爆発はこれまでのどの攻撃よりも死を思わせた。

 

 時に、槌の如く骨塊を持ってして、純然なる質量で叩き潰さんとした。鞭のようにしなるそこから振るわれるそれは単純であった。

 

 

 …時に、蒼き電棘を生やした骨塊は稲妻の一撃で私から動く力を奪った。

 勝利を確信したその瞳は三日月の様に細められ、確実に屠らんと左の雷を、右の粘液を、同時に振るった。

 

 

キィィィ…ンッ!

 

 

 甲高い音が響いた。私にはなんて事のない雑音であったそれはしかし、この骸龍にとっては大事だった様だ。

 

KYygxoooAAッ!!?!?!

 

 

 バキャン

 

 

 …何かが折れる音がした。凄まじい砕光が迸った。…どれ程大事だったか…。それは、そう自身の腕を自身にぶつけその力を自身に炸裂させるくらいには、であろうか?

 

 

「ハンターさん!受け取って下さい!」

 

 

 投げられた小袋を受け取れば、中には緑の小瓶が幾つか。よくもここまで届かせたものだと、彼女の健肩に驚きと尊敬を示す。さて、この小瓶は?

 

 

「わかんないんですか!?!?回復薬ですよ!それもグレーーートなやつです!ぐいっといっちゃってください!」

 

 

 …ぐ、グレートな回復薬?……少なくとも悪いものではないのだろう、輸血液も既に最後の一つだ。有り難く使わせてもらうとしよう。……今思えば得体の知らない血液を打ち込むことに、今の今までなんの疑問も浮かばなかった。

 

 

 ……夢の中どころの話ではなかったと言うわけか。

 

 

 自らを檻に閉じ込めた、宇宙と上位者が大好きな狂人の言葉が想起された。

 

 

 早速飲んでみる、ぐいっと……!?…なんと言うべきか独特な香りと味の中に、ハチミツの様な甘さを感じる。…それよりもだ、稲妻に打たれ動かない足が動く!体に負った数の数々が、全てにあらずとも癒えていく感覚がある!

 

 

 …まだ動ける。

 

 

 今、骸龍は怒りに震えていた。三日月は満月へ、再び世界は三光入り乱れる異界へとその姿を変えた。

 

 

「水が…発光している!?」

 

 

 相変わらず。だがそれで良いのだ。自己とは全くもってそのままで良いのだ。じっくり、仮説を聞かせてもらうとしよう。

 

 

KGYygxooooaaOaAAッ!!!!!

 

 

 

 得体の知れない霧は晴れ、醜悪な本性を露わにし、絶叫を轟かせる。

 

 

 ……そこまでの力を持ちながら、悪趣味な人形遊びに興じているわけでもない。

 

 散々恐ろしいと表現してきだが、その実恐ろしいなどと思ったことは不思議と無い。絶対的捕食者の地位に居る存在に、その命を狙われていると言うのにだ。

 

 

 それは何故か?決まっている。恐ろしいのだろう?

 

 

 狩人が(ハンターが)

 

 

……!

 

 

 図星の様だ。

 

 骸纏う冒涜者よ、惨たらしき捕食者よ、臆病な上位者よ、赤黒い稲妻を持ってこちらを睨むその真意は、憎しみか、怒りか…若しくは恐怖か?

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 オストガロア(奈落の妖星)

 

 時として同じ上位者の子供すら捕食する、暴食の権化。

 海より来たる、全てを分け隔てなく平らげる恐ろしき怪物のその正体は、何処にでも居る、怖がりでただ生きたいと願う生命であった。

 





 イカのルビは公式ではないですけど、武器の名前とか見た感じだいたい合ってる…と思う…。

 オストガロア(妖星の奈落)かもしれないですけど
 
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