『白馬の王子様って柄じゃないのはわかってるんだ』
魔法少女 リリカル はやて Striker’s
第5話 アイ・ワナ・ビー・ユア・ヒーロー
「ユーノ…君…?ヒック…なんで…ここに…?」
「そうだよ、はやてたん。超時空変質者の称号を持つ変態忍者ユーノ・スクライアだよ。なんでここにって?そんなの日夜、はやてたんの事を電柱の陰からハァハァしながら見守ってるからに決まってるでござるよーwww」
口ではそんなこと言いながらも、座り込んでるわたしと目を合わせてくるユーノ君。嘘やね、ほんまに嘘つきや。そんな優しい目をしとる人が本当の変質者やないことくらいわたしでもわかる。
普段の彼は決して自分から目を合わせようとしてこなかった。それは今、彼がここにいる理由と関係があるのだろう、そんなことすぐにわかった。
「フヒヒwwwそれにしてもこの星に転移してくるとは流石はやてたん!あっちに綺麗な湖があるんだよ。いってみようでわないかーwww」
ほら。なぜ泣いていたかも聞かないで…。きっと何があったか知ってるんやろ?でもそんなことお構いなしにわたしを連れてこうとする。きっと彼なりの優しさ、ほんまに不器用な人やなぁ。
「ここがその湖でごっざるーwwwねぇ今、どんな気持ち?どんな気持ち?www」
なんでやろ。このウザさがビミョーに心地ええのは…私オワタ!
「うわあぁぁ……。ほんまに綺麗やな…、水面に空が反射して水平線がわからんわ…。まるで…」
そう、空が大きな湖の水面と一体になっていて、この陸地がまるで空に浮かんでいるかのような光景にわたしは圧倒されていた。青空に浮かぶ雲が水面に浮かび、まるで逆さまの空を覗きこむ感覚にしばし、わたしは感動していた。さっきまで泣いていたことすら忘れて。
「ラピュタは滅びぬ!何度でもよみがえるさー!!!www」
「うっさい!人の感動を台無しにするセリフ吐くなや!!」
てい!目つぶし!
「あああぁぁぁぁ!!目があぁぁぁ!!私の目がああぁぁぁ!!!!」
いくらラピュタにいるような気分になれたからと言ってこのタイミングで何を叫んどるんや!!まったく!ユーノ君は相変わらず…って、そのまま転がっていったら…!
「あ!ユーノ君!そっちは…!」
「問題ない…!?」
彼はそう呟いて…言葉は失われた…。ぼちゃん…。ユーノ君、湖に落ちてもうた…。
「どう?はやてたん。少しは落ち着いた?もしそうなら冷静に聞いて欲しい」
「ありがとうな、ユーノ君のおかげでだいぶ落ち着いたわ。話ってなんなん?はよ湖からあがってこんと風邪ひくで?」
「すぐに上がるよ。でも、落ち着いて聞いて欲しい。座ったまま動かないで。どうか僕の話を冷静になって聞いて欲しいんだ」
「なんやねん…あらたまって…」
でも、ユーノ君ってなんかこう…普段の頼りなさげなところやふざけた態度がなくなって、真剣な表情をしてるところなんて、始めてみたわ…
彼はそう言って湖からあがってきた。
「ズボンごと、パンツ流された」
下半身素っ裸で…。
「………。わたしの『あっ、普段はオチャラけた彼が真剣な表情をしている…なに…この気持ち…!』みたいな感じの胸キュンな乙女心を返せやああああああ!!!!」
「らぴっとしゅーたー!ふるふぁいあ!」キュイイイン!ガガガガガガガ!!!
「はやてたん!?そこは!!集中的に狙わないでえぇぇぇ!!!僕の防御はもうゼロよぉぉぉぉ!!!」
ぴちゅーん!
「で?さっきのは正直いらんかったと思うで。本当に露出狂みたいな性癖でもあるんとちゃうか?変態なのはドMだけにしときぃや」
「ちがうんだよ、はやてたん。さっきのは本当に事故だったんだ…」
替えのズボンを着用したユーノ君はそう言ったが、どこまでホントやろうか…。
「この際やから聞いておきたい。ユーノ君はこの世界の事をどこまで知っとるんや?わたしやフェイトちゃんに、なのはちゃんのことも気づいとるんやろ?」
わたしがそう尋ねると、彼はうつむき…少しして、空を見上げながら語りだした。
「もちろん知っているさ。でも、きみたちと僕は違う。君たちの話は何度か盗み聞きさせてもらったよ、ごめんね、はやてたん」
彼はそう言い、わたしの方を少しすまなそうな顔をして見てきた。
「話に聞いた限りだと、はやてたんは別世界から人格だけこの世界に来た憑依。フェイトは…たぶん向こうの世界では次元震に巻き込まれて亡くなってしまったのだろう…種別は転生。なのはは、幼くなってしまったのは次元震の影響か知らないけど…並行世界への転移、トリップだね」
「ちょっとまってぇな。ユーノ君はそのどれにもあてはまらんちゅうことか?基本的にこの3パターン以外で……!? ………。ユーノ君、それって…わたしのことをはやてたんって呼ぶことに関係があるんやね」
「さすがはやてたん。君のお察しの通り
僕は逆行者、この世界の行く末を正しく知っている、たった一人の人間さ」
そう言ったユーノ君の表情からは、硬い決意と後悔、そして少しの悲しみの色が見て取れた。
「ここに来た理由はそんなに大したことじゃない、『はやてたん』と『はやて』が違う人だって事もわかっていたんだ。それでもね、どうしてもあの結末だけは許せなかったんだ…!」
「だから僕はここにいる。白馬の王子様って柄じゃないのはわかってるんだ。僕はね、はやてたん。君にとってのヒーローになりたくて、ここに来たんだ」
そういったユーノ君は、…今にも泣きだしそうな顔をしていた。
「わ、私のユーノ君がああぁぁぁぁ!!はやてちゃんに取られちゃうのおおぉぉぉ!!」
「わ、私のはやてがああぁぁぁぁ!!ユーノに取られちゃうよおおぉぉぉ!!」
「ふふふ…はやてちゃんには後でしっかりOHANASHIしないと…スターライトブレイカーなの…」
「ふふふ…ユーノには後でしっかりOSHIOKIしないと…ライオットザンバーカラミティだね…」
「「!?!? 急に寒気が…!!」」