異世界転移した男性Vtuberが、現実の有名女性V達からモテる話。   作:梯子田カハシ

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第3話 夢空ハルは王都に向かう

 

 

「あんた、一緒に王都へ来ない?」

 

そんなサラの一言が全ての始まりだった。

特に行く当てもない俺はサラに従ってケモミミ姉妹と一緒に王都へ向かうことにした。その方が配信のネタが多そうだし。

 

そして、今、俺はサラからこの世界について説明してもらいながら、馬車の荷台で寝っ転がっている。

王都へ荷物を運ぶ商人達の馬車の1つに一緒に乗せてもらった俺達は荷台でのんびりと過ごしていた。

 

 

「って聞いてるの?」

 

「きーてる、きーてる。」

 

「こいつっ!! 絶対聞き流してるでしょ!!」

 

「お姉ちゃん、落ち着いて。集中できない。」

 

「こいつらぁ…!!」

 

 

頭上にプリプリと怒るサラが見える。

そんな姉を宥めつつリアは反対側の席で本を読んでいる。

 

こんな状況も配信すれば見てくれるのだろうか。

…まあ、サラ&リア姉妹は絵になるし大丈夫か。

 

 

「なによ、ジッと見て。変態」

 

「いや、怒ってる姿もかわいいなーって」

 

「は?」

 

「お姉ちゃん、赤くなってる」

 

 

まだ数日の付き合いだが、サラの扱いが分かってきたように感じる。

俺がサラをからかって、リアが便乗する。そんなノリが定着しつつある。

 

 

「もう何にも教えてやんない」

 

「悪かったよ、サラ。許してくれ。」

 

 

俺は起き上がると、そっぽを向くサラのネコミミに低い声で囁く。

ビクッとサラの身体が跳ね上がったかと思うと、素早い動きで俺との距離を開ける。

 

…めっちゃ睨んでくるやん。そんなキモイ声だったか?

 

 

「あんた…、あんたぁ…‼」

 

「いや、悪かった。ごめん。」

 

「お姉ちゃんも、ハルも、いつの間にそんな仲良くなったの?」

 

「仲良くない‼」

 

「そんな否定せんでも…」

 

「いや、そう言う訳じゃなくて…」

 

 

サラちゃん、ホントに性格いいな。というかチョロい。

俺がリアを見ると、彼女も同じことを考えていたのか、生暖かい視線を姉に向けていた。そのあと、何故か俺にもジト目を向けてきたが。

 

 

 

「なんとなくは理解したよ。俺達がいるのはオルディネ公国っていう国で、世界各地にダンジョンがあるってことだよな? んで、サラとリアは王都にあるデカいクランに所属している割と優秀な冒険者って訳だ。」

 

要は“なろう系異世界”ってやつだな。オーケー、完全に理解した。

ただ1つ、なんで俺がこんな目にあってるかだけは理解できないんだけど。

 

 

「まあ、そう言うことね」

 

「“優秀な”って部分は否定しないのな」

 

「これでも私達はAランク冒険者だからね。あんたみたいなEランクのド底辺冒険者とは格が違うのよ」

 

 

そう言いつつもサラは俺の実力を買ってくれている。それはリアも同じだ。

だからこそ嫌味には聞こえないが、ド底辺配信者としては刺さる物がある。

 

 

「へいへい、サラ様には敵いませんよ。」

 

 

そんな軽口を交わす俺達を乗せて馬車は王都へと向かう。

朝に出発したが、既に陽は傾きつつある。…今日は配信どうしよ。ネタがねえ。

 

 

≪~♪≫

 

 

その時、通知音が俺の脳内に響く。

ステータスを確認すると、来栖からのメッセージが届いていた。

 

 

[お疲れ‼ 今日は配信する予定あるか? あるならAXで告知しとくぞ。]

 

 

会社の同期だったはずの来栖は完全に俺のマネージャーとなっていた。

何なら運用を任せた俺のAXアカウントに“スタッフが管理”とまで書いたらしい。

 

 

[おーす。考え中なんよな。]

 

[そうなんか。今何してるん?]

 

[今はケモミミ姉妹と馬車で王都に向かってる。]

 

[お前はバカか? 今すぐ配信始めろ。]

 

[ただダベってるだけだぞ? 需要あるか?]

 

[世間ではそれを雑談枠って言うんだよ。はよ始めろ。告知はしとくから。]

 

 

…来栖《マネージャー》がそう言ってることだし、配信するか。

まあ、これで同接増えなきゃ、アイツのせいにすればいいし。

 

 

「ってことだからカメラ起動していいか?」

 

「“ってこと”って、どういうことよ。別にいいけど。」

 

「リアも大丈夫か?」

 

「だいじょーぶ」

 

「んじゃ、配信開始」

 

 

カメラが出現し、カウントダウンが始まる。

そして、夢空ハルの配信が始まった。

 

 

「皆さん、こんばんは。夢空ハルでーす。」

 

 

【いち】

 

【こんばんは~】

 

【おつです‼】

 

【メッセージは削除されました】

 

【戦闘シーンの切り抜きから来ました‼】

 

【サラちゃんとリアちゃんもいる‼】

 

 

「はい、今回は馬車の中からの配信となっております。ゲストはもちろん、この2人。サラさんとリアちゃんです!! 自己紹介、どうぞー‼」

 

「急にテンション変わるわね、あんた」

 

「リアでーす。みてるー?」

 

 

ジト目で俺をみるサラ嬢とカメラに手を振るリア嬢。

カメラもそんなケモミミ姉妹を映し、視界の端(コメント欄)は加速する。やはりケモミミは最強。

 

 

「今日は特に何も考えていない雑談枠です。正直、配信するつもりはなかったんだけど、リアル知り合いの友達のアドバイスで配信を始めてみました。ちなみに、俺が連絡取れるのって、そいつ含めたリア友2名のみっていう。」

 

 

【リアちゃんかわいい】

 

【友達ナイス】

 

【AXに書いてあるスタッフってのも、その友達?】

 

【AXアカウントなんてあったんだ。】

 

【メッセージは削除されました】

 

「そうそう。リア友がいつの間にか俺のマネージャーになってた件。まあ、マジでいい奴なんだけどさ。AXのフォローもよろしくです‼ 多分、サラ&リアの写真が投稿されてるはずです‼ だよなぁ、スタッフぅ‼」

 

 

【すでに投稿済みです。】@夢空ハル

 

【マジか、フォローしてこよ】

 

【リア友をスタッフ呼ばわりで草】

 

【メッセージは削除されました】

 

【さっきから若干燃えてて草】

 

 

「メッセージ削除してくれてるのもスタッフ?仕事多くない? 普通に申し訳ないんだが。というか、削除前のメッセージは俺も見えないんだけど、何言われんの、俺。」

 

 

【現在はスタッフ1名体制にてコメント欄を管理しております。モデレーター希望者、絶賛募集中です】@夢空ハル

 

【確実にマリアちゃんの件だろ】

 

【マリアちゃんのコメント欄も少し荒れてたよね】

 

【メッセージは削除されました】

 

【モデレーター希望です‼】@Asari

 

【今日のマリアちゃんの配信はちょっと可哀そうだった】

 

 

「Asariママ、乙です‼ スタッフぅ、Asariママをモデレーター登録しといてくださーい。というか、俺にコメントしただけで燃えるんか。まあ、俺が異世界にいる限り、何かが起こる可能性は皆無なんだけどね。なんなら超絶安心枠ですらあるんだが。」

 

 

【確かにw】

 

【アリアリのリスナーってユニコーン比率高めだよね】

 

【なんか前にスタッフに男性がいて燃えてたことあるよね】

 

【超絶安心枠は草】

 

【Asariママのモデレーター権限登録が完了しました】@夢空ハル

 

【やったー】@Asari

 

 

「おい、スタッフぅ‼ 俺のアカウントでAsariママと会話すんなあ‼ Asariママは俺のAsariママなんだぞ‼ ちなみに、俺のスタッフは男です。安心安全、優良物件。Asariママとの接触禁止。」

 

 

【いや、Asariママはみんなのママだぞ。何人のVtuberを手掛けていると思ってんだよ。】@夢空ハル

 

【自分にマジレスされてて草】

 

【絶対スタッフくん楽しんでるでしょww】

 

【てかサラちゃん引いてるぞ。会話してやれよ】

 

【完全に放置プレイされてるw】

 

 

コメントを見て振り返ると、サラがジト目で俺を睨んでいた。ごめんて。ほったらかしたとか、そんなつもりはないねん…

 

 

「あのー、サラさん? ゴメン。」

 

「ハルがお姉ちゃんを怒らせたー‼」

 

「もう知らない」

 

 

サラがそっぽを向いてしまう。

しかし、こちらが気になるのか耳だけは俺の方に向けられている。器用なもんだ。

 

 

「ハル」

 

「ん?」

 

 

リアが小声で俺に手招きする。

俺が顔を近づけると、リアは小さな声で耳打ちしてくる。

…なんか、くすぐったい。あとコメントが嫉妬の嵐と化している。

 

「さっきのやつをやるですよ」

 

「さっきの?」

 

「お姉ちゃんの耳元で囁くやつ。」

 

「え?さっきサラ嫌がってたじゃん。」

 

「ハルは馬鹿ですね。騙されたと思ってやってみる」

 

「ええ、これ以上サラに嫌われたくないんだけど…」

 

「つべこべ言わずにやる」

 

 

有無を言わせない表情のリアの説得を諦めて、俺は渋々リアに従う。配信では俺達の会話が聞こえていたらしく、コメント欄も反応を楽しみにしている。

…マジでやるのか。普通に恥ずかしいんだが。

 

 

 

「悪かったよ、サラ。許してくれ。」

 

 

俺はサラに近づくと、彼女のネコミミに低い声で囁く。

サラはビクリと身体を震わせるが、耐えるようにそっぽを向き続ける。

 

 

「ハル、もう一声」

 

 

何故かリアが煽ってくる。

Vtuberさんがボイスの収録が恥ずかしいって言っているのを聞いたことがあるけど、こんな気分なんだな。コメント欄が直に見れる分、なおさら居たたまれない。

 

 

「もう二度と君を放置なんてしない。だからさ、こっちを向いてよ、サラ。」

 

 

今度は優しい声で囁く。

我慢できないとばかりにサラは俺の方を見る。

 

 

「……‼」

 

 

サラは顔を真っ赤にして俺を睨んでくる。

…ごめんて。怒るなら、そこで嬉々としてカメラに話しかけている妹を怒ってくれ。

 

 

「お姉ちゃん、喜んでます。耳がピクピク揺れてるのが証拠」

 

「リア? お姉ちゃん、話したいことがあるんだけど?」

 

 

良かった。怒りの矛先がリアに向かった。

てか、サラってマジギレすると笑顔で怒るんだな。気を付けよ。

 

 

【サラちゃん、声フェチ疑惑】

 

【てか、普通にいい声してるよな、こいつ】

 

【リアちゃん、ほっぺ引っ張られてるww】

 

【仕返しがかわいい】

 

【涙目リアちゃんカワイイ】

 

【顔真っ赤なサラちゃんも可愛かった】

 

 

サラにしこたま絞られるリアの様子にコメント欄も盛り上がる。

…いや、これで同接増えるんなら、俺が配信する意味なくないか?

 

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