異世界転移した男性Vtuberが、現実の有名女性V達からモテる話。   作:梯子田カハシ

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第22話 告知投稿と義姉候補との通話

 

 

≪…楽しかったぜ≫

 

 

お兄ちゃんの呟きと共に圧巻の戦闘が決着する。

キラキラと弾ける光の粒子を背景に笑う兄は、カッコよかった。

 

 

「やったぁ‼」

 

 

部屋の中で私は思わず声を上げてしまう。

配信用に完全防音の部屋を借りているため近所迷惑の心配はない。

 

 

【うをおおおおおおおおおおお‼】

 

【かっけええええええええ】

 

【あかん、これは惚れますわ】

 

【シーナちゃんも凄い】

 

【まじでアニメかと思ったわ】

 

【神 回 確 定】

 

【これには神回認定ニキも大満足w】

 

 

コメント欄もまさに大騒ぎで、視聴者の興奮が伝わってくる。

毎度思うが、これはズルい。ダンジョン攻略配信なんて、興奮しない方がおかしい。

 

 

≪ハル‼ アンタやってくれたわねっ‼≫

 

≪これにはリアも感服した≫

 

≪おう。って、2人とも飛びつくなぁ‼ 炎上するわ‼≫

 

≪…ハル、凄かったです≫

 

 

お兄ちゃんにサラちゃんとリアちゃんが飛びつく。…少し遅れてシーナちゃんが控えめにお兄ちゃんの裾を握る。

 

 

「か、かわいいっ‼」

 

 

…シーナちゃんの恥じらいの表情が堪らないですっ‼

 

私はシーナちゃんのいじらしい表情に思わず悶絶する。それは他の視聴者さん達も同じようで、再びコメント欄が加速していく。

 

 

【シーナちゃん、かわいい】

 

【その表情はズルいですって‼】

 

【夢空、許すまじ】@夢空ハル

 

【スタッフ君ブチギレで草】

 

【実際、シーナちゃんが現実にいたら国民的アイドルになってたと思う】

 

【ハル×サラ一派のワイ、揺らぐ】

 

 

…シーナちゃん、ホントにかわいい。

自分と性格が似ていることもあって、思わず感情移入してしまう。

 

 

≪これは完全にシーナのおかげだよ。マジであの瞬間死ぬかと思ったし、シーナのバフが無かったら一撃で倒せてなかったんだから。ホントにありがとう。助かったよ、シーナ≫

 

≪えへへ、嬉しいです。じゃあ、ハル? 頭を撫でてください≫

 

≪へ?≫

 

 

ずいっと頭を差し出すシーナちゃんに兄が固まる。…ああ、本当にかわいいしか言葉が出ない。これが“てえてえ”ってことなんだ。

 

 

【グハッ‼】

 

【あかん、尊さと羨ましさのダブルパンチで死ねる】

 

【かわいいいいいいいいいい‼】@Asari

 

【やば、撫でられる表情かわいすぎるのですが‼】@Asari

 

【絶対に配信レポ描く‼】@Asari

 

【Asariママ暴走してて笑う】

 

【いつもだぞ】

 

【今日もAsariママは平常運転っと】

 

【なんか私の扱い雑じゃない!?】@Asari

 

 

お兄ちゃんが照れくさそうにシーナちゃんの頭を撫でる。…生暖かい沈黙が配信を支配する。サラちゃんとリアちゃんもほっこりとした感じで2人を見ている。

 

 

≪も、もう配信はこんなもんでいいかな‼ この後は多分、広場に戻って終わりだし。サラとリアもそれでいいよな‼ いいよね?≫

 

 

あ、耐えられなくなった。

慌てて配信を締めようとする兄に少し笑いながら私はコメントを打ち込む。

 

 

【配信面白かったです‼ また見に来ます‼】@東雲マリア

 

 

≪Asariママも東雲さんも配信見て頂いてありがとうございます‼ もちろんスタッフ君も視聴者の皆も‼ マジで皆のおかげで戦闘できてます‼ それじゃあ、今日はこんな感じで、いいでしょうか!?≫

 

 

…今日も楽しかった。笑いあり、見ごたえありの4時間だった。

因縁のモンスターを倒して、シーナちゃんも完全に殻を破った感じだし。

 

 

「はあ~‼ 私も、がんばろ」

 

 

ゲーミングチェアを下げて手足を伸ばす。

深呼吸をしてから、準備していた明日の配信告知をAXにポストする。

 

 

 

“明日の配信で大事なお知らせがあります”

 

 

 

さあ、今度は私が殻を破る番だ。

お兄ちゃんの配信にコメントしたし、苦情もたくさん来るだろう。

 

でも、もう少し前の私とは違う。迷いながらも、進むと決めたから。

 

 

「…明日、楽しみだな」

 

 

終了した配信を閉じてベットにダイブする。

もう後戻りはできない。そんな思いと共に、私は目を閉じるのだった。

 

 

 

 

 

 

翌朝、私の告知投稿は大きな話題になっていた。

昨日のお兄ちゃんの配信へのコメントもそうだが、それ以上に最近の配信で元気がなかったことを心配するコメントがリプライ欄に多く寄せられている。

 

 

「やっぱり、落ち込んでるのバレちゃってたんだなぁ…」

 

 

上手く隠していると思っていただけに、これは反省しなきゃいけない。

でも、同時に小さな私の変化に気付いてくれている視聴者さん達がいたことが嬉しかったりもする。

 

今日の発表が、そんな人たちを悲しませるかもしれない。

 

 

「うう、緊張してきた」

 

 

あえて口に出して自分を落ち着かせる。

AXから逃げるようにしてディスコードを開くと何人かから連絡が入っていた。

 

 

[ねえ、引退しないよね?]

 

[志真ちゃん、やめないで]

 

[引退したら侑里と絶交だからね‼]

 

[おねがいだから‼]

 

 

リリアちゃんからは連続でチャットが送られている。

 

…これだけ引き留めてもらえるなんて思ってなかった。そんな嬉しい気持ちと、心配をさせた申し訳なさを感じながら、リリアちゃんに返信する。

 

 

[大丈夫。辞めたりなんかしないから]

 

[心配させちゃってゴメンね]

 

 

チャットを打つとすぐに既読が付く。

彼女の返信に微笑みつつ、他の先輩方への返信を打ち込んでいく。

 

…本当に良い事務所に入れたと思う。

 

 

 

≪~~~♪≫

 

 

その時、ディスコードの着信音が鳴る。

リリアちゃんかな? いや、明里さんからだった。

 

 

「はい、もしもし」

 

「あっ、もしもし…明里です‼」

 

「はい…もしかして明里さんも私を心配してくれたんですか?」

 

「…うん。昨日ハルくんの配信にコメントしてたし、そのあとのポストも結構話題になってるから、大丈夫かなって思って。志真ちゃん、引退なんてしないよね?」

 

「あはは、みんな引退の心配するんですね」

 

「あんな投稿されたら、みんな勘ぐっちゃうよ」

 

 

そう言う明里さんの声は少し切なそうだった。

自分がデザインしたVtuberさんの引退を何度か経験しているのだろう。もしかしたら、私もそうなると思っているのかもしれない。

 

 

「そうですよね。心配させちゃって、すいませんでした。引退はしないです。」

 

「良かったぁ~‼ 本当に心配したんだからね‼ 志真ちゃんは私の子供《推し》のなかでも特別なんだから‼ 朝からずっとソワソワしてたんだよ?」

 

「ありがとうございます。それでも、私はお兄ちゃんの次ですよね?」

 

「もう、イジワル言わないで。でも、元気そうで良かった」

 

 

困ったように明里さんが笑う。…本当に、かわいい人だと思う。自分とは違うタイプではあるが、彼女もVtuberに向いている気がする。

 

 

「そうですね。少し落ち込んでたんですけど、お兄ちゃんの配信を見て元気が出ました。それと、お兄ちゃんとディスコードも繋がって、話すこともできました。」

 

「そうなんだ」

 

「はい。それで、今日の配信でお兄ちゃんのことを言おうと思ってるんです」

 

「え、それってハルくんと兄妹ってことを発表するってこと?」

 

「そうです。」

 

「…そうなんだ。もしかしたら炎上しちゃうかもしれないよ?」

 

「分かってます。それでも、言うって決めたんです。」

 

「…そうなんだね。分かった‼ 応援してるね‼」

 

「ありがとうございます」

 

「大丈夫。マリアちゃんの配信を見てる人達なら分かってくれるよ。みんなマリアちゃんが真っすぐで、一生懸命で、努力家だって、知ってるから。だから…今日の配信、楽しみにしてるね‼」

 

 

明里さんの言葉に、少し涙が出そうになる。

彼女もまた、初期から私を応援してくれている視聴者の1人だ。

 

 

「…ありがとうございます」

 

「うん。それじゃ、準備もあるだろうし、そろそろ切るね?」

 

「…明里さん」

 

「どうしたの?」

 

「いつもありがとうございます。今日の配信、頑張ります」

 

「うん‼ 絶対見るね‼」

 

 

明里さんとの通話が切れる。

なんというか、本当に出来た人だと思う。

 

明里さんと話していると、無意識に自分が駄々をこねる子供みたいな気分になってくる。

そんな私を明里さんは笑顔で受け入れてくれる。…本当にお兄ちゃんは幸せ者だと思う。

 

 

「…バカ兄貴。乙女を待たせるんじゃない‼」

 

 

小さく呟いてパソコンの前に移動する。ゲーミングチェアに座った私は、今度はPCでディスコードを開いた。フレンド欄を見ると、シーナちゃんがオンライン表示になっている。

 

 

…シーナがオンラインになったのは、あの夜以来だ。お兄ちゃんと通話し終わった頃には既にオフラインになっていた。

 

 

「もしかして、今だったら…」

 

 

慌ててシーナちゃんのトーク画面を開く。

コメントを打ち込もうとして、少し躊躇する。

 

 

…今しかない‼

 

 

私は恐る恐るコメントを打とうとして、間違えて通話ボタンをクリックする。

鳴りだす発信音。慌てて止めようとした時には遅かった。

 

 

「…え?」

 

 

PC画面に不思議そうな表情を浮かべるシーナちゃんが映し出される。

 

…え、かわいい。いや、そうじゃない‼ それどころじゃない‼

 

 

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