異世界転移した男性Vtuberが、現実の有名女性V達からモテる話。   作:梯子田カハシ

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第23話 平凡だった少女達の出会い

 

 

「こ、こんにちは‼」

 

 

PC画面に映るシーナちゃんに恐る恐る話しかける。

 

シーナちゃんは少しだけ驚いたような表情を浮かべて、すぐに笑顔になる。

 

 

「こんにちは。あの…どちら様でしょうか? もしかして、女神様?」

 

「いやいやっ‼ 全然違います‼ というか、むしろシーナちゃんの方が女神様というか…私なんてお恥ずかしいばかりです…」

 

「そんなことはありませんよ? 濃赤の髪がとっても綺麗です‼ それよりも、私のことをご存知なのですね? …もしかして、ハルの知り合いですか?」

 

 

シーナちゃんはそう言って興味深げにこちらを覗き込んでくる。…今、シーナちゃんは私のことを赤髪と言っていた。もちろん実際の私は赤髪ではないから、おそらくシーナちゃんには東雲マリアとしての姿が見えているんだと思う。

 

 

「そうです‼ 夢空ハルの妹のマリアと申します‼」

 

「まあ、そうでしたか‼ ハルがたまにお話しされるので、一度お会いしてみたかったんです‼ 挨拶が遅くなり申し訳ございません。 オルディネ公国第三皇女のシーナと申します。よろしくお願いいたします、マリア?」

 

「シーナちゃん…」

 

 

いきなりの名前呼びに思わずドキッとする。

少しイタズラっぽい表情が、配信上の姿とのギャップで最高にかわいい。

 

 

「流石に呼び捨ては嫌でしたでしょうか?」

 

「全然大丈夫‼ むしろ友達みたいで凄く嬉しかったよ」

 

「それは良かったです。それにしても、ビックリしました。椅子に座っていたら、いきなり鏡は光り出して、気付けばマリアが映っているんですから。これも聖女の力でしょうか?」

 

「聖女? シーナちゃんって皇女様じゃなかったっけ?」

 

「あ、ああ、そうでしたわね。昨日はボス部屋を出た後のことは“カメラ”では撮っていないんでしたよね。マリアがいつも“カメラ”で私達を見守って下さっているのですか?」

 

「私だけではないんだけど…でも、私も見てるよ‼ 昨日の夜も見てたし、これまでのお兄ちゃんの配信は全部見てるよ‼ シーナちゃんがカワイイな~って、いつも思ってる‼」

 

「うふふ、恥ずかしいです。それに、マリアもハルのことが大好きなんですのね?」

 

「そ、そんなことないよ? それよりも、“聖女”って何があったの?」

 

「実はですね…」

 

 

そこから私達は、とにかく沢山お話した。

 

分かっていたことだけど、私達はどこか似ていて、だからこそお互いに意気投合した。

 

シーナちゃんの話を聞いては、私の話もする。皇女様としての悩みや、Vtuberとしての悩みの話もした。そして、お兄ちゃんの話もそれなり(・・・・)にした。

 

気が付けばあっという間に時間が経っている。

…名残惜しいけど、そろそろ終わりの時間だ。

 

 

「シーナちゃん、話せてホントに良かった‼ こんなに性格の合う友達、初めてだよ‼」

 

「私も、とっても楽しかったです‼ また一緒にお話ししましょう?」

 

「もちろんだよ‼ あっ、それと、さっきの約束はお兄ちゃんには秘密ね?」

 

「心得ております。ハルのおどろく顔が楽しみです」

 

「それじゃあ、シーナちゃん。またね」

 

「はい、マリア。また」

 

 

通話終了ボタンを押して画面が閉じる。

気が付けば2時間以上も話し込んでしまっていた。

 

 

「配信の準備しなくちゃ」

 

 

まだ配信までに時間はあるが、言いたいことを纏めなければいけない。もちろんマネージャーさんの確認も取りたい。そう考えると、やることが沢山残っている。

 

 

「シーナちゃん、かわいかったなあ」

 

 

私はいそいそと配信の台本を作り始める。

なんだか、先週までの悩みが嘘みたいだ。

 

“がんばろう”とそう思えるのは、お兄ちゃんや明里さん、リリアちゃん、事務所の先輩たち、シーナちゃん、マネージャーさん、そんな人たちに支えられているからなんだと、そう思う。

 

 

「…がんばろう」

 

そんな呟きが、自然と口から漏れていた。

 

 

 

 

 

夜の8時57分。

 

いよいよ配信の時間が迫ってくる。

待機人数を確認すると、今までで一番沢山の人が配信を見に来ていた。

 

 

「引退するかもって配信になってこうなるのは、皮肉だなあ」

 

 

思わず笑みが零れる。そう、こういう時は笑うに限る。

 

あんな告知にしたのは、少しだけ打算もあった。引退レベルの大事かと思わせて、実はお兄ちゃんがVtuberでした、くらいの話題の発表で視聴者さんに話を受け入れてもらうハードルを下げてもらえるかもしれないと、正直考えたりもした。

 

それでも、視聴者さんを心配させたことはちゃんと謝らなければいけない。

 

 

さあ、配信を始めよう。

 

 

「こんばんは、Alia:ReLive所属Vtuberの東雲マリアです‼ 今日も私の配信を見に来ていただきありがとうございます。えっと、まず最初に、みんなに謝らなければいけないことがあります。」

 

 

【やめないで】

 

【え、まさか本当に引退?】

 

【やめないで‼】

 

【マリアちゃん、頑張って】@Asari

 

【え? マジで言ってる?】

 

 

「私、東雲マリアは、引退しません‼ あんな告知をして大事にしてしまい申し訳ございませんでしたあ‼ 心配してくれた視聴者さん達には感謝しかありません。私、東雲マリアは全然引退する気はないので、安心してくださると嬉しいです‼」

 

 

【良かった】

 

【よかった】

 

【安心したわw】

 

【不安で夜しか寝れなかった私の1日を返して‼】@Asari

 

【Asariママww】

 

【引退しないの分かった瞬間ボケてて笑う】

 

 

「あはは、Asariママもありがとうございます。ママが産んでくれた私のこの姿を手放す気なんて一切ないです‼ 視聴者さん達も、本当にすいませんでした。それで、ここからは“大事なお知らせ”の話なんだけど…」

 

 

【ドキドキ】@一宮リリア

 

【リリアちゃん‼】

 

【釣りじゃないのか…気になるな】

 

【引退以外だと…案件とか?】

 

【そもそもマリアちゃんは釣りみたいな炎上しそうなことはしないタイプでしょww】

 

【↑それはそう。だから、みんな心配して大事になった感じはある】

 

【…緊張する】

 

 

「前から私に兄がいることは雑談配信とかで話してきたと思うんだけど…そのお兄ちゃんが、私の知らない間にVtuberになってました。少し前と昨日の配信に私がコメントしたのが話題になってたから視聴者さんの中には知っている人もいるかもしれないんだけど、“夢空ハル”っていう名前でVtuberをやっている人が、私の兄です。」

 

 

【知ってる】

 

【どうせ彼氏だろw】

 

【異世界行って戦ってる人だよね】

 

【いや、普通にあり得ないんだけどねww】

 

【だれ?】

 

【正直信じるしかないくらい異世界がリアルすぎる】

 

【↑それな。今の技術であれは無理だと思う】

 

 

「界隈では異世界に行ったVtuberってことで話題になってる人で、その最初の配信の時に夢空さんが兄だってことを知って配信にコメントをしたんだけど、そこそこクレームが届いちゃって、そこからコメントはしないようにしてました。」

 

 

【ほんとにユニコーン君はさあ…】

 

【配信荒れてたのは憶えてるけど、直接クレーム行くのか…】

 

【そこらへんは本当に良くない文化だと思うわ】

 

【メッセージは削除されました】

 

【まあでも複雑な気持ちも分かるわ…】

 

【そこらへん難しいよな】

 

 

「でも、その間ずっと悩んでて、それが配信にも影響しちゃってたかもしれないんだけど。昔から私を支えてくれたお兄ちゃんに恩返しができないのが悔しくて、それに、本当は優等生が嫌で始めたVtuberなのにコメントする勇気もない自分が本当に情けなくて…」

 

 

【確かに先週くらいは元気なかった】

 

【お兄さんの話も結構配信でしてたもんね】

 

【メッセージは削除されました】

 

【マリアちゃん…】@Asari

 

 

「だけど、私は自分の感情に嘘はつきたくないし、応援してくれている人達にも嘘はつきたくないって思ったんです。だから、些細なことかもしれないけど、ちゃんとお兄ちゃんのことを視聴者の皆に報告したかったんです。」

 

 

【かっこいい】

 

【メッセージは削除されました】

 

【事務所の許可は取ってるの?】

 

【マリアちゃんって今まで印象薄かったけど、こんな芯の通った子だったんだ】

 

【超真面目で、超努力家です。あと、私の親友】@一宮リリア

 

【リアリアてえてえ】

 

 

「もちろん事務所の許可は取ってます。それでも…信じられない人もいると思います。その気持ちもわかるし、Vtuberである以上は少しの不信感が事務所や業界に悪い影響や迷惑を掛けるかもしれないことも分かっているつもりです。」

 

 

【それは確かにそう】

 

【スキャンダル出ると同じ事務所の所属Vもって思っちゃうよな】

 

【それどころかVtuber自体の印象が悪くもなるし】

 

【そういう意味では、何か言われる前にちゃんと説明するのは賢いかも】

 

【メッセージは削除されました】

 

【削除コメ連投ニキもそろそろ辞めろよ】

 

【こういう人が苦情を入れるんやなって】

 

 

「今回の配信は私のなかでのケジメみたいなものです。今日を機に、今までの丸く収まっていたVtuber東雲マリアを卒業出来たらなと思います。これからは、脱常識人枠を目指して殻を破っていく姿を視聴者の皆に楽しんで貰いたいと思います。これからも東雲マリアをよろしくお願いいたします。」

 

 

【ケジメwww】

 

【マリアちゃんて割と硬派だよね笑】

 

【…これは決意表明配信?】@Asari

 

【なんかアイドルの総選挙演説みたい】

 

【これもマリアちゃんの良さなんやなって】

 

【これから応援する‼】

 

 

「私からの“お知らせ”は以上です‼ 長々と私の話に付き合って頂いてありがとうございました‼ この後は雑談しようかなって思ってるんだけど、質問とか、ありますか? 今日はコメント拾いますよ~‼」

 

 

【はい‼ 夢空ハル君と東雲マリアちゃんの両方のママである私は、正式に2人の母親を名乗って良いでしょうか!?】@Asari

 

【Asariママwwww】

 

【そう言えばそうだったな】

 

【言われるまで気付かなかったww】

 

【アリアリ所属Vも個人Vも描いてるんかこの人】

 

 

「あはは、そう言えば私もお兄ちゃんもAsariママがお母さんだね‼ こんな偶然も珍しいよね~‼ それならいっそAsariママもVtuberになっちゃえば?そうしたら私達と姉妹になれるよ?」

 

 

【え、そんなことが許されるのですか…?】@Asari

 

【Asariママも一応アバターあるしなw】

 

【………】

 

【……】

 

【…】

 

 

 

 

 

 

夜の11時30分。

長いようで短かった配信が終わる。

 

 

「はあ~~疲れた~」

 

 

思いっきり伸びをして、全身の力を抜く。

疲労感と共に、やり切ったという爽快感もある。

 

 

≪~♪≫

 

≪~♪≫

 

≪~♪≫

 

 

スマホを見ればリリアちゃんからメッセージが入っている。

さらに立て続けに事務所の先輩や明里さんからもメッセージが入る。

 

ああ、本当に私は恵まれている。

 

 

「明日から、また頑張ろう」

 

 

一通りみんなのメッセージを見て今度は自然と笑顔が浮かぶ。

さあ、まだやることは残っている。

 

 

[お兄ちゃん、コラボ配信はいつにする?]

 

 

私はそれだけチャットを打ち込むとスマホを閉じる。今日は疲れた。きっと今夜はよく眠れるだろう。

 

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