異世界転移した男性Vtuberが、現実の有名女性V達からモテる話。   作:梯子田カハシ

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第25話 国王謁見とチャンネル会議

 

 

「ん? ああ、そうだった…」

 

 

重たい瞼を擦って目を開けると、馴染みのない天井が見える。借りている宿でもなければ、もちろん現代日本のマンションの部屋でもない。

 

…あの後、宮殿に連れてかれたんだよな。

 

 

「あー、マジで地下牢じゃなくて良かった。」

 

 

宮殿に入った俺達が案内されたのは来客用の部屋だった。もちろん部屋の外の廊下には衛兵がいるが、ベッドもあり、俺は快眠を貪った。

 

 

「もしかしたら俺の人生で一番高級な寝具かもしれないな…」

 

 

サラサラのシーツを撫でながら、ボーっとする。

…ワンチャン粘れば1週間くらいこの部屋に住めないかな。

 

おもむろにステータス画面を開くと、時刻は10時半だった。気持ちよかったとはいえ、ちょっと寝すぎたな。

 

そんなことを考えていると、部屋の扉がノックされる。

 

 

「はーい」

 

「失礼いたします。」

 

 

俺が返事をすると、1人の執事が入ってくる。

イケオジ執事は俺を見て、にこやかな笑顔を浮かべる。

 

 

「お目覚めになりましたか。客間にて国王陛下がお待ちですよ。」

 

「…もしかして、俺が起きるの待ってました?」

 

「それは気持ち良さそうにお眠りになられておりましたから、起こすのは申し訳ないかと思いまして。国王陛下からも“起きてからで良い”との御沙汰を頂いております」

 

「…そこは起こしてくださいよ」

 

「私、この宮殿にて30年以上仕えさせて頂いておりますが、ここまでよく寝られた方は外国の王族の方を含めても、貴方様が初めてにございます」

 

「それ絶対に皮肉だよねえ‼」

 

 

そんな最高で、最悪な朝を迎えた俺は、トボトボと国王の待つ客間に向かう。

 

…あかん。これ絶対に怒られるヤツだ。

 

 

「失礼しまーす」

 

「おお、来たか。昨晩はよく眠れたか?」

 

 

国王はニヤニヤとした表情で俺に問いかけてくる。

 

怒ってはない…のか? 昨日の夜に見た国王は立派な人格者というイメージだが、目の前で笑う国王はどこか悪戯っぽい表情を浮かべている。

 

 

「よーーーく、眠れました。人生で一番気持ちよく眠れたかもしれません。」

 

「ははは、そうか。それは良かった。まあ、掛けなさい。」

 

 

国王は余裕のある表情で笑うと、俺を椅子に座るように促す。

 

多分、この国王はいわゆる“高貴な人”なんだと思う。だからこそ、ちょっとのことで自分の尊厳が失われないことを理解している。そして、俺みたいなフランク野郎を面白がってくれる。

 

 

「シーナから君の話は聞いたよ。あの子を助けてくれて感謝する」

 

「偶然、その場に居合わせただけですよ」

 

「だからこそだ。シーナを助けたのが、この国の事情に疎い君で良かった。あの子は君のことを“初めてできた友達”と言っていたぞ。」

 

「…それは、嬉しいですね」

 

「うむ。あの子が最近明るくなったのは私も感じていたことだ。まさか、夜に宮殿を抜け出してダンジョンに行っているとは思わなかったが、彼女なりに楽しく、成長できる時間だったんだろう」

 

「…」

 

 

俺は黙って国王を真っ直ぐに見つめる。

俺をここに呼んだということは、言いたいことがあるのだろう。

 

 

「ふむ。良い眼をしている。私が君を呼んだのは、聖女になったシーナのことだ。数日前から聖女降臨の兆候はあったのだが、昨日の夜、王立教会の大司教がダンジョンから聖女の魔力を察知した。そして、ダンジョンの前に向かったら、シーナと、君達がいたという訳だ」

 

「それで…国王はどうするんですか?」

 

「シーナが聖女であることを知っている人間は一部しかいない。父親としては、かわいい娘を危険なダンジョンの、しかも最前線に送り込みたいとは思わんよ。」

 

「…同意です」

 

「君ならそう言うと思ったよ。しかしだ。国王としては、違う判断をしなければならない。個人的な感情は、一国の主としての判断の邪魔でしかない。…さて、君ならどうする?」

 

 

国王はそう言って試すような視線を俺に送る。

それは、まるで俺を見定めるような、そんな視線だった。

 

…考えろ。俺だったら、どうするか。どうしたいか。

 

 

「俺だったら…シーナが望むことを応援します。でも、きっとシーナなら聖女としてダンジョンに入ることを選ぶでしょう。だったら、その後押しをするまでです。ただ…」

 

「ただ?」

 

「…別に急いで最前線に行かなくてもいい。シーナはシーナで今までのペースでゆっくりダンジョン攻略を進めればいい。そうすれば極端な危険も減るだろうし、聖女の存在を明かすのも最前線に着いてからで問題ない」

 

 

俺の回答はただ問題の先送りにするだけのもの。

シーナをある程度は納得させられて、かつ、現状をそのまま維持させるための、そんな方便。

 

そんな俺の回答に、国王はニヤリと人の悪い笑顔を浮かべる。

 

 

「…君とは気が合いそうだ」

 

「それは良かったです」

 

「うむ。君の話を聞けて良かった。もう家に帰っていいよ」

 

「ありがとうございます。それで…ネコミミ姉妹とシーナは今どこに?」

 

「ああ、獣人の冒険者姉妹は君が寝ている間にとっくに帰っていったぞ。シーナは2週間は自分の部屋で反省だ。…まあ、たまには君達の顔を見せてやってくれ。友人なんだろう?」

 

 

そう言って国王は笑顔を見せる。

俺は国王に深々と頭を下げてから、客間を後にする。

 

…国王陛下、万歳‼

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁー、流石に緊張したな」

 

宮殿から解放された俺は、のんびりと正午の中心街を歩く。

沢山の人が入り乱れ、立ち並ぶ屋台からは良い香りが流れてくる。

 

 

≪~♪≫

 

 

ディスコの通知音が脳に鳴り響く。

…時間的に昼休憩の来栖だろう。ディスコ画面を開けば、やはり来栖からのチャットだ。…もう面倒臭いから通話にしたい。

 

 

[おつかれ。昨日は大変だったな。]

 

[おすー。来栖もサンキューな。てか、配信終わったあとも大変だったんよ。ダンジョン出たら国王が待ってた]

 

[マジか笑]

[なんかあったん?]

 

[いや、シーナちゃんが聖女様になったらしくて、視察に来た国王にダンジョン入ってるのバレた。]

 

[いや、情報量多いな!?]

[え、聖女って、ジャンヌ・ダルク的な?]

 

[そう。なんか、ダンジョン攻略の前線に行くんだって。でも、とりあえずは反省も兼ねてダンジョン探索は禁止だってよ]

 

[マジかぁ]

 

[どうなるかは分からんけどな。まあ、シーナちゃん単推しの来栖くんにはツライか。昨日シーナちゃんしか応援してなかっただろ?笑]

 

[ソンナコトナイゾ!!]

 

[いや、少しは俺も応援しろよ笑]

 

[お前にはAsari先生と東雲マリアちゃんがいるだろ]

[そう言えば、東雲マリアさん、朝からめっちゃ話題になってるぞ。]

 

[え、俺の配信にコメントしたから?いまさらその程度で大炎上はしないだろ?]

 

[いや、なんか“大事なお知らせ”的な告知してて、もしかしたら活動引退するんじゃないかって騒がれてる]

 

[あー、なるほどね。]

[昼休憩だろ? 通話にして良いか?]

 

[いいぜ]

 

 

いい加減チャットを打つのが面倒臭くなった。

通話に切り替えると来栖の声が聞こえてくる。…なんかコイツとも久々に話す気がする。

 

 

「はい、もしもし」

 

「おすー。それで、東雲マリアさんのことなんだけど、俺の妹だったわ。多分、”お知らせ“って俺と兄妹ってことを発表するんだと思うぞ」

 

「は?…いや、マジで?」

 

「マジ、マジ。俺もついこの間知ったんだけどさ、なんならその時にコラボの依頼もされたわ。」

 

「いや、待て待て。昼休み中に処理できる内容じゃないわ。は? どーなってんの?」

 

 

ははは、来栖のヤツ混乱してる。

まあ、気持ちはわかるが。

 

 

「とりあえず、そういうことだから。把握よろしくな、スタッフ君!! あと、お前から東雲マリアさんに連絡とるのは禁止な。兄としてお前のようなヤツを妹に接触させるわけにはいかない!!」

 

「いや、朝霞の中で俺の評価ってどうなってんだよ…」

 

「ははは、冗談だよ」

 

 

そうそう。じょーだん、じょーだん。

…後半に関してはマジだけど。

 

 

「コラボのこととか、もう頭ぐちゃぐちゃだわ。てか、朝霞は今日配信するん? すまんけど今日、仕事詰め込みすぎて残業コースなんよ。」

 

「ああ、今日はダンジョン行くつもりないぞ。それにしても、来栖も大変だな。お疲れさん」

 

「ありがとさん。とりあえず配信無いことだけAXにポストしとくわ。それじゃ、そろそろ昼休み終わるから」

 

「おう。昼休みにゴメンな」

 

「全然いいよ。まさか朝霞が東雲マリアさんと家族だとは思わなかったけどな。お前、他に女子の知り合いいないか?多分その子もVtuberやってるぞ」

 

「俺に何人も女友達がいると思うか?それじゃ、仕事がんばれよ」

 

「あいよ」

 

 

来栖との通話が終わる。

結局、細かいところまでは話しきれなかった。

 

それにしても、志真は今日俺のことを発表するのか。変に大事にならなければ良いけど…

 

 

「志真、頑張れよ…!!」

 

 

届くことのない俺のエールは、王都に降り注ぐ青空に吸い込まれていった。

 

 

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