異世界転移した男性Vtuberが、現実の有名女性V達からモテる話。   作:梯子田カハシ

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閑話 愛すべき推し達と新衣装
第1話 ハルくんからの相談


 

「ふう~、疲れた」

 

 

キリの良いところまで作業を終わらせて私、朝比奈明里は席を立つ。

気付けば作業を始めてから6時間以上が経過していた。座りっぱなしで腰が痛い。

 

 

「今日は誰の配信があるかな~」

 

 

いくつかのVtuber事務所のサイトを開いては、所属タレントの配信予定を確認する。

そのほとんどが超大手事務所のサイトであり、子供(推し)達の今日の配信予定が表示されている。

 

 

「あ、今日ってリアリアの同期コラボの日だったっけ?」

 

 

思い出して確認すれば、やっぱり今日は東雲マリアちゃんと一宮リリアちゃんのリアリアコンビのコラボ配信が予定されている。内容はホラーゲーム。…ちょっと遠慮しようかな。別に怖いとかじゃないけど‼

 

 

「あとはハルくんが配信するか、だね」

 

 

私はAXを開いて“ハルくん”こと、夢空ハルくんのアカウントを開く。

だいたい配信がある日はお昼くらいの時間に告知が出ていることが多い。

 

 

「今日は…ないかあ。残念」

 

 

どうやらハルくんは今夜の配信はしないようだ。

まあ、昨日も一昨日もダンジョン配信をしていたから、仕方がない。

 

 

「健康が一番、だもんね‼」

 

 

最近のハルくんは1人でダンジョン探索をしている。

チャットで理由を聞いたら、“マリアちゃんとのコラボ以来登録者と同接が伸びてきているから1人でどこまでいけるか試したい”ということらしい。

 

…正直、彼が無理しすぎていないか心配なところもある。

 

 

≪~~~♪≫

 

 

ぼんやりと幼馴染のことを考えていると、スマホから着信音が鳴る。

誰だろうと思って画面を見れば、ちょうど夢空ハルからの着信だった。

 

 

「もしもし、ハルくん?」

 

「もしもし、明里ちゃん。晴斗です。作業とかしてた?」

 

「ううん‼ ちょうど休憩してたところ‼ どうかしたの?」

 

「久しぶりに明里ちゃんと話したいなって。ほら、こっちの様子は配信で教えられるけど、そっちのことは全然分からないからさ。…明里ちゃん、元気?」

 

 

こんな感じでハルくんは配信のない日に着信をくれることがある。

我ながらチョロいとは思うけど、正直、凄く嬉しい。

 

…この時だけは、私がハルくんを独占できる時間。

 

 

「元気だよ‼ 食生活もちょっとはマシになったかな?」

 

「あはは、なら良かった。前は週末いっつも俺の部屋に来てたもんね」

 

「そうだよ~‼ ハルくんの手料理おいしかったよね‼ そっちでも料理とかしてるの?」

 

「うーん、あんまりかな。まあ、俺の料理食べたことあるのって志真と明里ちゃんの2人くらいだから、おいしいって言ってくれるのは嬉しいな。そう言えば、ギルドの職員さんに聞いたんだけど、ダンジョンの上層に行けば食材になるモンスターもいるんだって」

 

「そうなんだ‼ なんか、最近のライトノベルでグルメ物の異世界ファンタジーとかあったから、そういう配信も面白いかもね‼ …ちなみに、その“ギルドの職員さん”って女の人?」

 

「ソ、ソウダケド…」

 

「ふーん、そーなんだー。ハルくんは私達視聴者の知らない所でも色んな女性に囲まれてるんだね~」

 

「明里ちゃん?怒ってる? 違うからね? ホントにそんなことないから‼」

 

「怒ってなんかないよ~? ただ、ハルくんは自分の顔を理解した方がいいと思うんだ。なんせこの私、Asariが丹精込めて描き上げた、最強フェイスなんだから‼ …あ、もちろん、晴斗君の顔もかっこいいと思うよ? なんなら晴斗君を参考に描いたわけだし」

 

「あはは、ありがとう。確かにAsariママに描いて貰ったんだもんね」

 

「そうだよ‼ だから、ホイホイ女の人に優しくしないこと‼ 分かった?」

 

「…気を付けるよ」

 

 

そんなことを言っても、彼はいざとなったら困ってる人に手を差し伸べるだろう。

私はハルくんのそんなところが…いや、何でもない。

 

 

「そう言えば、あのコラボ配信の後に志真ちゃんと会ったけど、ルンルンだったよ」

 

「なら良かった。志真ともチャットするけど、シーナともよく話してるみたいで嬉しそうにしてたな。なんか、お互いに波長が合うみたいで、見てて微笑ましい感じがする」

 

「サプライズの時とか、既に仲良い感じだったもんね‼ いいな~、私も異世界の友達とか欲しいかも‼ きっと美男美女が多いんだろうな~」

 

「…明里ちゃん、俺じゃ満足できない?」

 

 

少し不安そうな幼馴染の声に、私は思わず悶絶する。

しっかりしているように見えて、たまにこういう一面を見せてくる。

 

…この幼馴染、あざといっ‼

 

 

「そんなことないよ‼ いたらいたで、面白いかもってだけ‼ ハルくんが一番だから‼ あっ、そう言えば、前の戦闘の時に剣が壊れちゃってたけど、大丈夫だった?」

 

「ふーん、ならいいけど。というか、いまさら思い出したけど、壊れた剣のことで明里ちゃんに相談したいことがあったんだった。ちょっと申し訳ない相談なんだけど…」

 

「どんな相談?」

 

「最初の衣装についてた大剣って明里ちゃんがデザインしてくれたやつでしょ? 実はその効果に“破壊不可”ってのがあってさ、それで試してみたいことがあったんだ」

 

「試してみたいこと?」

 

「うん。明里ちゃんって、いわば正式な夢空ハルの産みの親って訳で、例えば明里ちゃんが新しい装備品とか、新衣装を作成したら、こっちに反映されたりしないかなって思ったんだよね」

 

 

“新衣装”という言葉にゾクッとした感覚を覚える。

 

そうだ、新衣装という手があった。しかも、もしそれが異世界のハルくんに反映されるなら、彼の助けになれるかもしれない。その可能性に、思わず胸が高鳴る。

 

 

「たしかに‼ それは面白いかも‼」

 

「うん。でも、今の状態だと明里ちゃんに依頼料を払えないから、申し訳ないなって」

 

「そんなの気にしないでいいよ‼ 今でもお金貰わないでハルくんのイラスト描きまくってるし‼」

 

「それはそうだけど…」

 

「もうっ、ハルくんは真面目過ぎ‼ 私が描きたいから描くんだよ‼ それじゃあ、ハルくんの新衣装、楽しみにしててね‼ 明里は今、すっごく燃えてるよ‼」

 

 

こうなれば居ても立っても居られない。

すぐに作業に取り掛かりたい。今、この瞬間の熱量を、思いっきりぶつけたい。

 

 

「あはは、こうなった明里ちゃんは止められないね。うん。楽しみにしてるね」

 

「まっかせて‼ それじゃ、今から描くから‼」

 

「え、今から!?」

 

「善は急げ、だよ、ハルくん‼ それじゃあ、通話切るね?」

 

「う、うん。分かった。…明里ちゃん? 無理しないでね?」

 

「分かってる‼ それじゃ、またね‼」

 

「…またね」

 

 

通話が切れる。

さあ、忙しくなるぞお‼

 

私は気合を入れなおすとパソコンの前に座る。

思考は既に新衣装のデザインのことでいっぱいになっている。

 

「うふふ、楽しみにしててね、ハルくん‼」

 

 

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