異世界転移した男性Vtuberが、現実の有名女性V達からモテる話。   作:梯子田カハシ

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第2話 赤髪の冒険者との出会い

 

一宮リリアがマリアと過ごした夜を自慢してVtuber界隈を騒がした日の夜。もう一つの話題が界隈を騒がせる。

 

それはシーナのダンジョン復帰の話題。

 

 

『【異世界V】シーナちゃん復帰戦‼ いつメン+先輩冒険者とダンジョン探索』

 

 

夢空ハルchannelに上がった予告タイトルは視聴者をざわつかせた。

 

東雲マリアの配信に登場した事でシーナの知名度はこの数週間で格段と増していた。そんな雰囲気の中で久々にシーナが配信に出るということで、以前から夢空ハルを視聴していた層も、そうでない層も、期待感が高まっている。

 

 

「いやぁ~、参ったな…」

 

 

夜の王都を歩く俺は、近づくダンジョンを見上げて小さく呟く。

 

期待感溢れる視聴者達の反応を来栖から聞かされた時は思わず苦笑いを浮かべるしかなかった。配信を期待してくれるのは嬉しいが、まさかこれ程とは思わなかった。何なら俺が燃えそうで怖い。

 

”まっ、頑張れや”という来栖の無責任なチャットを眺めて、俺は小さく溜息をつく。

 

 

「視聴者さんも待ってくれてることだし、やるっきゃないな。」

 

 

俺の配信を待ってくれる視聴者がいるだけで十分恵まれている。炎上なんて同接0人の虚無に向かって配信をしていたころに比べれば嬉しい悩みだ。

 

ダンジョン前広場に着くと、既に何人かのメンバーの面々が待っていた。

 

 

「よっ、おっさん。夜だとスキンヘッドが光らなくて見えにくいな」

 

「…お前、マジで失礼だからな? ぶん殴られたいのか?」

 

 

そう言ってジャスパーが俺にゲンコツを落とす。

…いや、もう殴ってますやん。まあ、今のは確実に俺が悪いんだけどさ。

 

 

「あんた、怖いもの知らず過ぎない? ジャスパーさんにそんな口きけるの王都であんただけよ」

 

「おう、サラ。一昨日ぶり。それにリアも。」

 

「ゲンコツ、痛そう。」

 

「そんなでもないよ。それにしても、サラとリアはおっさんのこと知ってるんだ」

 

「そりゃ、“黒龍の鱗”の大幹部だからね。何なら冒険者でジャスパーさんのことを知らない人の方が少ないわよ? そんな人にアンタは…」

 

 

サラが呆れたように俺にジト目を向ける。

…サラとはこんなやりとりが定番になってきたな。

 

 

「ガハハ。まあいいよ、嬢ちゃん。これでも坊主のことは気に入ってるからな。」

 

「おい、いきなり背中を叩くなよ、おっさん。って、すっかり配信回すの忘れてたわ。」

 

「ハイシン? 何だそれは?」

 

 

興味津々といった様子でジャスパーが近付いてくる。…まあ、そうなるよな。てか説明するのメンドイな。

 

 

「サラさん?」

 

 

俺がチラッとサラに目を向けると、サラは心底嫌そうに首を振る。そんなサラの反応を無視して、俺はニッコリ笑顔をサラに送り続ける。

 

 

「お、嬢ちゃんが教えてくれるのかい?」

 

「えっ? あっ、はい。配信っていうのは…」

 

 

おっさん、ナイスアシスト。

鋭い視線を送ってくるサラを横目に、俺は無言でステータス画面を開いて配信開始ボタンを押す。…サラには今度お菓子でも渡そう。

 

 

球体カメラが出現しふわふわと浮かびながら俺達を捉える。カウントダウンが始まり…配信が始まる。

 

 

「こんばんは〜、夢空ハルです!!」

 

 

【きた!!】

 

【シーナちゃんどこ?】

 

【シーナちゃんの勇姿が見れると聞いて!!】

 

【こんばんは〜】

 

【シーナちゃんwkwk】@夢空ハル

 

 

配信開始と同時にこの勢いである。…やっぱりコイツら分かりやすいな。とはいえ、シーナはまだ来てないんだけどね。

 

 

「おうおう、お前ら分かりやすいな!! “シーナ”の3文字にホイホイ釣られてきたんだろ。残念ながらシーナはまだ来てません!!」

 

 

【シーナちゃんが、いない、だと…!?】

 

【釣りですか。失望しました。】

 

【なら大丈夫です(戻るボタンをクリックしながら)】

 

【さて、今日のアリアリの配信予定はっと】

 

 

「いや、見切りつけんの速すぎんだろ!! このあとシーナもちゃんと来るから。ブラウザバックだけはやめてくれ!!」

 

 

ちょっと煽ったらこのザマである。

視聴者は自分の行動が俺の生死に関わるのをしっかり意識して頂きたい。まぁ、冗談だけど。

 

 

「ってことで、シーナが来るまでにシーナがダンジョン配信を休んでいた理由を話しま〜す。つっても結構な頻度でマリアの配信出てたみたいだから休んでた感じはしないけど」

 

 

【それはそう】

 

【マリアちゃんとのコラボから来ました!!】

 

【しのっち呼びは辞めたんだw】

 

【シーナちゃん、すっかりマリアちゃんのチャンネルで定着しているよね笑】

 

【ここでも妹にお株を奪われる兄者ww】

 

【哀れで草】

 

 

「うるせー、うるせー。とりあえず説明だけするからな? シーナさま、公国皇女から公国皇女兼聖女になりました!! すごいね、設定が盛り沢山!!」

 

 

【ま?】

 

【言ってる内容がゲームの世界観すぎてもはや凄さがわからんww】

 

【シーナちゃんってガチ皇女様なんか…】

 

【↑いや、逆に何だと思ってたんだよw】

 

【マリアちゃんのリア友が個人Vしてるのかと…】

 

【たしかに仲は良いけどwww】

 

 

「んで、聖女様になったときに、国王にダンジョン潜ってたのがバレて謹慎させられてたって感じです。だから部屋にいる時間が長くて、マリアの配信に顔出してたっちゅーわけや、工藤」

 

 

【唐突な服部平次で草】

 

【そういやコナンの映画見なきゃ】

 

【異世界にいるせいで新作コナン映画が見れない夢空ハル(我が息子)、哀れなり】@Asari

 

【Asariママ!!】

 

【ほんと良く見てるな、この人ww】

 

 

「待って、俺もコナンの新作観たい…ってその話は置いといて、聖女様であるシーナに万が一が無いように今後はメチャつよ冒険者も同伴で探索をすることになりました。これは国王が出した絶対条件ね。」

 

「それで俺の出番って訳だ。」

 

「うおっ!? いきなり出てくんなよ、おっさん」

 

 

横からジャスパーが割り込んでくる。

ジャスパーはカメラに向かってサムズアップをカマしている。いや、サラはコイツにどんな説明したんだよ…

 

 

【いきなりスキンヘッドおじさん出てきて草】

 

【なんでおっさんを見なあかんねん!!!!】

 

【俺はシーナちゃんが見たいのに…】

 

【海外のCMに出てくるタイプのゴリマッチョだ】

 

【コメ欄が阿鼻叫喚で草】

 

【夢空ハルChannelもここまでだな】

 

 

「おっさん、下がってくれ… このままだと同接が死んじまう…」

 

「ん、ドウセツってなんだ?」

 

「サラさーん?解説してあげてくださーい」

 

 

俺が振り返るとサラリアがニヤニヤとこちらを眺めている。コイツら、やりやがったな。

 

もはや完全にグダグダである。

どうしようもならない状況に俺が絶望を称えて天を見上げたその時、聖女が降臨した。

 

 

「ハル? お待たせしました」

 

 

振り返ると、そこには赤髪の凛々しい女性と一緒にいるシーナの姿があった。

 

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