異世界転移した男性Vtuberが、現実の有名女性V達からモテる話。   作:梯子田カハシ

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第5話 先輩冒険者の威厳とレイの内心

 

ダンジョン22層のボス部屋。

私、レイ・アインエガーはシーナ皇女殿下と夢空ハル君の戦闘を見守っている。

 

 

「なかなか、やるな。」

 

「だろう? アンタが認めてくれるんなら坊主にも箔が付くってもんだ」

 

 

華麗な連携で6匹の狼の巨躯をいなす2人を見て、思わず私は感心の声を上げる。それに反応するように”黒龍の鱗“の大幹部たるジャスパーさんがニヤリと笑ている。

 

 

「…ジャスパー殿は随分と夢空くんを気に入っているようだな。クランに勧誘はしないのか?」

 

「したけど断られたんだよ。なんでもサラ嬢とリア嬢に筋を通してからって事らしいぞ。…まぁ坊主のことだからアンタのとこのクランが女性冒険者しかいないことなんざ知らないだろうがな」

 

「…そうか。ふむ…」

 

 

別にウチのクランに男子禁制なんてルールはないんだけどね…。ただ憧れの冒険者になって、カッコいいキャラを演じていたら、いつの間にかファンの子達が集まってきてクランになってただけで。

 

 

「シーナ、スイッチ!!」

 

「はい!!」

 

 

会話をする私達の視線の先でシーナさまと夢空くんの2人が囲まれながらも1匹、また1匹と的確に敵を屠っていく。

 

 

「ハッ!!」

 

«Gyaaaaaaaaaaaaaaa!!»

 

 

シーナさまの剣が狼の喉元を貫き、敵は残り1体。その時、一瞬だけ皇女の動きが固まるのが見えた。…何かあったのかな?

 

 

「シーナっ!!」

 

 

夢空くんが叫ぶが、シーナさまに声は届いていない。固まる皇女に向かって最後の1匹となった狼が飛び込んでいくのが見える。

 

狼の牙が妖しく光り、シーナさまもそれに気付いたけど、既に獰猛な牙はすぐそこに迫っている。

 

 

「あぶないっ!!」

 

 

とっさに私も声を張りあげる。

慌てて魔法発動の準備をするが間に合わない。

 

その時、夢空くんがシーナさまと狼の間に割って入るのが見えた。彼の手には金属製の筒のようなものが握られており、そして、彼は笑っている。

 

 

「こんなすぐに使い時が来るとはね」

 

 

そんな彼の呟きの直後、破裂音のような音が私の鼓膜に突き刺さる。思わず目を瞑ってしまい、目を開けた時には、既にモンスターは消滅していた。

 

…魔法、なのかな?

 

 

「いっちょあがりっと。ほれ、シーナ」

 

「あ、ありがとうございます、ハル」

 

「いえいえ、お姫様。」

 

「ハル、恥ずかしいです…」

 

 

最後のモンスターを退けた彼は皇女に優しく手を差し伸べて微笑みを浮かべている。その光景は幼い頃に読んでもらったお伽噺《とぎばなし》のようで、何処か眩しく見えた。

 

 

「…いいなあ」

 

 

23層に移動しながら、思わず零れた自分の言葉に驚く。今、自分は何に対して「いい」といったのか。それが分からずに困惑してしまう。

 

その時、隣にいるジャスパーさんがこちらを向く。…もしかして、聞かれた?

 

 

「レイ殿…何か言ったか?」

 

「いや、なにも。…ただ、あの2人が良いコンビだなと」

 

「そうだな。皇女殿下も坊主もいい連携だった。皇女殿下が魔法をあまり使わなかったのは不思議だが…アンタが皇女殿下に魔法を指導したんだろう? 使えない訳はあるまい。」

 

「もちろんシーナ殿下は魔法に覚えはおありだ。ただ、まだ使うほどではないと考えておられるのかもな。それこそ聖女様のお力も使われていないようだしね。」

 

「確かにそうだな。とりあえず22層もクリアだ。23層はアンタのところのネコミミ姉妹暴れさせるかい? あの様子だとそろそろ我慢の限界だろう」

 

 

試すようにジャスパーさんが私の方を見る。

サラちゃんもリアちゃんもさっきから戦いたそうにウズウズしている。…でも、私もちょっと戦いたいかも。シーナさまと夢空くんにもイイとこ見せたいし。

 

 

「いや、我々が行こう。」

 

「え?」

 

「暴れたいのは彼女達だけではないってことさ。それにここまで新人組が頑張ってくれたんだ。我々も冒険者の先輩として恰好良いところも見せないとだろう、ジャスパー君?」

 

 

私はそう言ってジャスパーさんに笑って見せる。…ちょっとカッコつけ過ぎかな?

 

そんな私の内心とは裏腹に、ジャスパーさんも獰猛な笑顔を浮かべる。

 

 

「そうだな。25層までは俺達が行こう。いい加減、坊主にも実力を見せなければな。」

 

「そうだ。力は隠す為じゃなく使うためにあるのだから。」

 

 

私は懐から深紅と金で装飾された短剣を取り出し、ジャスパーさんも背負っていた大斧を手に持ち、首をコキコキと捻っている。私達の様子を見たサラちゃんとリアちゃんは黙って一歩下がる。

 

 

「さあ、ここからは我々の時間だ。」

 

 

▲ ▽ ▲

 

 

更にダンジョンを進むこと30分ほど。

私達の歩いた道のあとには、深々と刻み込まれた地割れと業火によって禍々しく溶けた壁が残されている。

 

 

「なあ、サラ。こんな目茶苦茶やって大丈夫なん?さっきからモンスターよりもダンジョンの方が可哀想なことになってるんだけど…」

 

「大丈夫よ。10分もすれば綺麗に戻ってるわ。」

 

「ダンジョン破壊ってラノベの世界だけやないんやな…。正直、俺も視聴者さんもドン引きなんだが」

 

「今更よ、ハル。普段は80層にいる人達が20層で暴れたらこうなるわ」

 

「サラは随分得意気だな?」

 

「そりゃあ、私達の団長の活躍をこんなに間近で見られるんだから。さすがレイ様」

 

「あー、サラさんが女子校の王子を見つめる後輩の目をしている…」

 

 

後ろを歩く夢空くんとサラちゃんの会話が聞こえてくる。…たまに夢空くんは私の知らない言葉を使う。

 

 

「レイ殿」

 

「ああ、わかっているよ」

 

 

24層も終りに近い。

次の層は安置となっているから、今日の探索はこの層で終わりだろう。…そんなことを考えながら私はコチラに迫ってくる2つ頭の狼の群れを見据える。

 

 

「業火の道《ロード・ヘルフレイム》」

 

 

詠唱とともに全てを焼き尽くす炎が通路を埋め尽くす。…彼らの主であるケルベロスが護るはずの冥府の炎が、彼らを焼き尽くす。

 

 

「おりゃよっと!!」

 

 

駄目押しとばかりにジャスパーさんが大斧を振り下ろせば、衝撃波とともに地割れがモンスターを襲い、跡形もなく彼らの痕跡は消し去られる。

 

 

「同じ攻撃ばかりで飽きてしまったかな?」

 

「そんなことないです!! レイさまっ!!」

 

 

振り返ってそう言うと、サラちゃんがキラキラとした視線を送っているのが見える。…ギザ過ぎるというか、カッコつけ過ぎ。夢空くんに変に思われてないと良いけど。

 

 

「レイさま、相変わらず凄い。ぱちぱち」

 

「レイ、かっこいいですわ」

 

 

リアちゃんとシーナさまもそう言って駆け寄ってきてくれる。そういえばシーナさまにもこの手の魔法は見せたことがなかった。

 

 

「いや、すげぇわ。レイさんも、おっさんも。あと、レイさん、ありがとうございます。お陰様で同接がめっちゃ伸びてます」

 

「ドウセツ?が何かはわからないが、良かったよ」

 

「どうだ坊主。ちょっとは俺の凄さがわかったか?俺にも感謝してくれてもいいんだぞ?」

 

「いや、戦闘は凄いけど、おっさんは同接に貢献してるわけではないからな。世間は非情だな。」

 

「なんで俺は坊主に慰められてんだ?というか、もう24層もボス部屋だけだが、どうする?戦ってくか?」

 

「えーっと、最後くらいはサラリアで良いんじゃないか?さすがに可哀想だろ。」

 

「それもそうだな」

 

 

そうしてサラちゃんとリアちゃんが24層のボス、ケルベロスと戦うことに決まる。張り切った2人の前にあっさりとボスは倒れ、今日の探索は終了になる。

 

探索終了後、シーナさまと夢空くんを中心にローテーションで探索に行くことを決めて、解散になる。

 

 

 

「はあ~、緊張したっ!! それに、疲れたなぁ」

 

 

1人で歩く帰り道。

クランの構成員の前では絶対に言わない弱音とともに溜息をつく。…なんだか最近は1人になるとずっとこんな調子だ。

 

 

「でも、楽しかったな♪」

 

 

時刻は朝の4時。

ぼんやりと明るくなり始めた東の空を眺め、少しだけ新鮮な気分で誰もいない道を歩くのだった。

 

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