異世界転移した男性Vtuberが、現実の有名女性V達からモテる話。 作:梯子田カハシ
「こんばんはー‼ お待たせしました、夢空ハルです‼ そしてっ…」
「シーナですっ‼」
「むっ…レイ・アインエガーだ。よろしく」
完全にアドリブだったがシーナもレイさんも付いてきてくれた。シーナの上手くいったと言わんばかりのドヤ顔が輝いている。かわいい。
【きちゃ】
【きたぁー】
【こんばんはー!!】@Asari
【シーナちゃん!!お兄ちゃんも頑張って!!】@東雲マリア
【レイさま!!】@夢空ハル
【今日もコメ欄に身内が多い笑】
【もはや見慣れた光景だな…】
【レイさまカッコいい!!】
俺達の挨拶に反応してコメント欄が加速する。
若干だが身内の割合が多い気がしてならないが、まあいいだろう。
「やっぱレイシーナのコンビだと同接多いな⁉ この間のシーナと俺とジャスパーの3人で配信した時の1.5倍くらい人がいるぞ。スタッフ君もレイさんが登場してから女性視聴者の割合が増えたって言ってたしな…」
「レイ、人気みたいですよっ‼」
「恐縮です。それにシーナ様の方がきっと皆さまから愛されていますよ」
目を輝かせるシーナにレイさんが膝を付いて優しく微笑む。…これは女性視聴者が付くのも頷ける。事実、コメ欄には阿鼻叫喚のお姉様が大量発生中である。
【これはイケメン】
【なんだろう、男なのにドキドキするぞ】
【↑目覚めててワロタ】
【まあ実際カッコいいし】
【まさに女子校の王子様】
一部、乙女心に目覚めた男性視聴者もいるようだ。そいつらは放置して俺は前から気になっていたことを聞いてみることにする。
「そう言えばシーナって、多分だけど呼び捨てにしてるの俺とレイさんだけだよね?レイさんとは結構昔からの知り合いなんだっけ?確か、魔法を教わってた?みたいなことを言ってたよね」
「ハル、呼び捨てなのが自分だけでなくて寂しいんですか?」
「そ、そんなことないぞ?」
シーナが少し口角を上げてジト目を向けてくる。
まさに小悪魔。いったいどこで俺達の皇女様はこんな表情を覚えて来たんだ…
【夢空、効いてて草】
【これはクリティカルヒットやんね】
【シーナちゃん…恐ろしい娘っ!!】@Asari
【実際シーナちゃんが目の前にいたらマジでなんも言えなくなりそう】
【夢空さん固まってるやんw】
【不意打ちだからしゃーない】
コメント欄は少し動揺を見せた俺を煽りに煽る。腹立たしいが、今は無視する。シーナは俺をからかって満足したのかレイとの関係を話し出す。
「レイには5年前から魔法の家庭教師をして頂いているんです。父上が同年代の知り合いが少なかった私に配慮して、年が近くて、当時話題になっていた冒険者のレイを推薦してくれたんです。」
「そうなんだよ、夢空くん。私は17歳の時に王都フィリーアに来たんだが、当時の攻略階層最年少記録を更新していたら国王陛下の目に留まってね。それでシーナ様に魔法をお教えすることになったんだ」
「なるほど…って、待って。5年前に17歳だったってこと?」
「そうだが… なにか変な事を言ったか?」
「…いや、なんでもない」
…この人、歳下だったのかよっ‼
強さと威厳で完全に年上だと思ってた。23歳ってことは俺の2歳下だから、それこそ部署の後輩と同い年だ。その年齢にしては隙が無さすぎだろ。
【速報:レイさま、23歳】
【まじかwww】
【言動だけだともっと上に見えるけど、たしかに外見だと違和感ない年齢ではある】
【てか最年少の階層踏破記録ってめちゃ強いってことじゃん。スゲーな】
【異世界だと俺より若い子がこんな威厳あるんか…がんばろ】
コメント欄を見るかぎり俺の感覚が変なわけではないみたいだ。てか、もともと他人の年齢を当てるのが下手なのに、これは完全に罠である。
「そう言えば、ハルは私の年齢は分かってますよね?」
「流石に分かってるよ。来月の誕生日で20歳でしょ?」
「そうです‼ マリアと同じだと流石に間違えないですね」
「まあ、そりゃね。てか誕生日パーティーしないとなっ‼」
「夢空くんにシーナ様? そろそろダンジョンに入りますよ?」
誕生日トークに花を咲かせていた俺達はレイさんに従ってダンジョンに向かう。今日は32層から。日々の配信とシーナのおかげで同接も2万人程度で安定してきている。
「それじゃ。今日も頑張るか~‼」
「頑張りましょう‼」
「シーナ様も夢空くんも安全に」
各々の武器を携えて進む。
今日も俺達はダンジョン潜入へと身を投じるのだった。
▼ △ ▼
ダンジョンに入ってから約1時間。
俺達は34層を踏破し35層に繋がる階段を昇っている。
「そう言えば、シーナって戦闘中あんまり魔法使わないよね。なんか理由とかあるの?」
「いえ、使わないというか…使う場面が少ないだけです。」
「?」
俺は顔を上げるとレイさんと目が合う。
レイさんを見ると、シーナのレイさんが代わりに説明をしてくれた。
「シーナ様の一番の得意魔法は回復魔法なんだ。だから君達が怪我をしない限りは使う機会が少ないんだ。まあ、使わないに越したことはことはない、という訳だ。」
「なるほどねえ。あれ、でもシーナが
「それなんですけど、実は発動の仕方が分からないんです。あの時はハルが死んじゃうと思って必死だったから…無意識に発動してたんですけど…」
「そうだったんだ。いや、ゴメン」
「いえ、大丈夫です。それに、回復魔法以外にも風魔法は使えますよ」
シーナはそう言って得意げに胸を張る。かわいい。それは置いておいて、確かにシーナの風魔法は数回見たことがある。
「ハルこそ全然魔法を使わないですよね?」
「そうだね。スキルで”念動力《サイコキネシス》”を使うくらいだな。それも指輪《コレ》の力だし。」
そう言って俺はオルクスがドロップした指輪を見せる。レイさんが興味深そうに俺の指を見つめていて、なんか恥ずかしい。
「ま、まあ、もともと指輪なんて付けるガラじゃないんだけどな」
「ふうん、面白いアイテムを持っているね。そのスキルには上位スキルがあるんだけど、それが以前に話題になってたことがあったよ。“絶対念動”というスキル。夢空くんは聞いたことがないかい?」
「うーん、ないなあ」
「そうか。ジャスパー殿が詳しいと思うから、聞いてみると良いよ。」
「へえ、覚えとこ」
俺達は軽口を交わしながら進む。
あと1時間くらいは行けそうかな? そんなことを考えながら俺達は35層へと到達するのだった。