異世界転移した男性Vtuberが、現実の有名女性V達からモテる話。   作:梯子田カハシ

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第17話 フレンチトーストとチキンサンド

 

多くの冒険者達がダンジョンに挑む昼下がり。

俺がいつものように冒険者ギルドに顔を出すとエルフの受付嬢フィオネさんが笑顔で挨拶してくれる。

 

 

「ようこそ、冒険者ギルドへ」

 

「こんにちは、フィオネさん。今日も魔石と素材の交換をお願いします」

 

「分かりました。ちょっと待っててくださいね」

 

 

フィオネさんはそう言って受付の奥に消えていく。

 

配信やディスコがあって、現実世界とやりとりができるとは言っても、冒険者ギルドの建物やフィオネさんとのこういうやり取りはやっぱり異世界ならではな感じがする。

 

ここで他の冒険者に絡まれようものならお約束の異世界モノの展開になるんだけど、あいにくそんなヤツはいない。

 

 

「流石に真っ昼間のギルドは空いてんな〜」

 

 

人が疎らな冒険者ギルドの風景を眺めながらそんなことを考えていると、リアが1人で入り口から入ってくるのが見えた。

 

リアがサラと別行動なのは珍しい…サラと喧嘩でもしたんかな

 

 

「お待たせしました‼ 昨日は何層くらいまで行ったんですか?」

 

「昨日はオフでダンジョンには行かなかったんですよ。今日は友達(シーナ)の分です。」

 

「そーなんですねぇ…ちなみにそのお友達(・・・)って女の子ですか?」

 

「あー…そうですけど、なんでそんな目で見てくるんですか?」

 

 

フィオネさんは明らかに自分のなにかを強調するように腕を組んで俺にジト目を向けてくる。…そんな姑息な手に乗る俺ではない。なんせ俺は貧乳派《ミニマリスト》なのだからっ‼

 

そんな俺の考えを読んでか、フィオネさんがニッコリと笑う。

 

 

「いえ、何やら風変わりな新人冒険者が女性冒険者達をた誑かして夜な夜なダンジョンに行ってるって、ギルド内で専らの噂ですから。あと、無理に私の顔を見続ける方が意識していることを自白しているようなものですよ?」

 

「否定しづらいっ‼ でも、それ言ったらジャスパーのおっさんはどーなんすか」

 

「まあ、あの人は戦闘狂で有名ですし。それに既婚者ですしね。変な噂はたたないですよ」

 

「えっ、あのおっさんって結婚してんの?」

 

「あれ、知らなかったんですか?」

 

 

…知らなかった。

 

あの人も40代だから流石にしてるか。強いし、稼ぎも多いみたいだし。

 

それにしても、定期的に一緒にダンジョンに潜っていてもお互いに知らないことも多いのかもしれない。

 

それこそ公園で会ったワンピースに青髪姿のレイさんにはビックリしたし。

 

 

「そ、そういえばなんですけど、レイさんって…」

 

「レイさんですか?」

 

 

…あー、あの姿のことを聞こうと思ったけど、やっぱ止めとこう。なんか秘密にしてるっぽかったし、変な噂の情報源になったら申し訳ないし。

 

 

「あの、レイさんってどんな人なんですかね? 経歴とか、好みとか」

 

「…もしかして、手を出そうとしてます?」

 

「そんなんじゃないからっ‼ シンプルに仲良くなりたいだけだからっ‼」

 

「ふーん、そうですか。つまんないの」

 

「いや、なんでフィオネさんは俺を遊び人にしたがるんすか」

 

「おもしろそうだから。王都で有名な美人たちを誑かすなんて、夢があるじゃない? あ、その時は私も入れてね? これでも私もそこそこ美人ってことで通ってるから」

 

 

…このエルフの受付嬢は、本当にいい性格をしている。まあ、美人ってのは俺もそう思うから何も言わないけど。

 

 

「あ、レイさんのことを聞きたいんだったらちょうどいい子がいますよ?」

 

「ちょうどいい子?」

 

「ええ、ほらあそこに。あの子の人を見る目は凄いですから」

 

 

そう言ってフィオネさんが指さす先にはギルド内のカフェに入ろうとするリアの姿があった。…あっ、目が合った。いや、フィオネさんはなんで手を振ってこっちに呼んでるんですか。

 

てくてくと歩いてきたリアが声をかけてくる。

 

 

「やっほー、ハル。フィオネさんも、やっほー」

 

「やっほー、リアちゃん。そこのオニーサンがあなたたちの団長について知りたいんだってさ」

 

「レイさまのこと?いいよー、教えてあげる」

 

「ノリ軽いな。あー、そしたら何か食いながら話す?カフェ入るみたいだったし」

 

「自然な流れでカフェデートの誘い。ハル、策士」

 

「ほうほう、これが噂の誑かしか〜」

 

「違うからねっ!! てか、リアもなんでそんなノリノリなのよ」

 

「タダでおやつ、うれしい」

 

「結局それが目当てかよっ!!」

 

 

リアの視線に負けた俺は2人でギルド内のカフェに入る。

まあ、ちょうど換金が終わったとこだし、お腹もすいていたからちょうどいい。

 

 

「リア、なにがいい?」

 

「おまかせしますっ‼」

 

「なんでそのセリフを自信満々に言えるんだよ…」

 

 

リアが好きそうなもの…そんなこと考えながら俺はメニューとにらめっこをする。

 

それにしても、いつもサラと一緒にいるからか、リアと2人で話すのは意外と初めてかもしれない。

 

悩みに悩んだ結果、俺はフレンチトーストとチキンのサンドイッチを注文する。…甘い系とさっぱり系の両方を頼んで相手に合わせる、我ながら無難な選択だ。

 

 

「お待たせしました~」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「…」

 

 

数分待っているとフレンチトーストとサンドイッチが運ばれてくる。

 

少し緊張しながらリアを見ると、リアの視線はメープルシロップがたっぷり掛かったフレンチトーストにくぎ付けになっている。なんならネコミミもピクピク動いて待ちきれない感じだ。

 

…なんだこのカワイイ生き物。

 

 

「リア、こっちにするか?」

 

「ハル、ナイスセンス。ありがとう」

 

「お眼鏡にかかって良かったよ。それじゃ、食べるか」

 

「うん」

 

 

それから数分間、俺達は無言で軽い昼食にがっつく。

照り焼きチキンのサンドイッチもめっちゃ美味しい。通おうかな、この店。

 

お互いに目の前の皿を平らげてから、ようやく本題に入る。

 

 

「それで、レイさまのことを知りたいの?」

 

「どんな人かなってな。めっちゃ強いのは知ってるけど」

 

「団長は…かわいい人。でもちょっと不器用」

 

 

リアの回答は俺にとって少し意外な物だった。

てっきりカリスマでカッコイイ、みたいな感じの答えが来ると思っていた。

 

サラの熱狂ぶりを見るに、クランの団員はみんな彼女の強さとカリスマ性に魅せられている。

 

 

「意外だな」

 

「…ハルもわかってるでしょ?」

 

 

リアは試すような視線で俺に微笑む。

そのライトグリーンに瞳は俺の考えをどこか見透かすようで、けど悪い気はしない。

 

 

「あはは。流石だな」

 

「レイさまはやさしくて、ちょっと怖がり。でも、とっても頑張り屋さん」

 

「…そうかもな」

 

「うん。でも、もっと頼って欲しい。みんなもそう思ってる」

 

 

なんとなく、彼女のことが分かった気がした。

 

普段は強力な魔法とリーダーシップでクランを率いている彼女だが、本当は年相応の女子としての一面があるのかもしれない。もしかしたら彼女は責任感でそんな一面を出せずに孤独を感じているかもしれない。

 

 

「でも大丈夫。みんなちゃんと受け止められる」

 

「…リアって、凄いな」

 

「エッヘン」

 

 

ドヤ顔で胸を張るリアに思わず笑ってしまう。

ちょうどいい頃合いだし、そろそろカフェを出るか。

 

俺達は席を立ちカフェを後にする。…もちろん俺の奢り。

 

 

「リア、ありがとう。参考になったよ」

 

 

横を歩くリアに声を掛けて、俺はリアの頭を撫でる。リアの流石の妹力(いもうとりょく)というか、なんだか志真にやるノリで無意識に頭を撫でてしまった。

 

 

「…あんまりそーゆうことしない方がいい」

 

「あっ、ごめん。嫌だった?」

 

「イヤじゃない。ハルは、やさしい。でも、いつかは何か(・・)を捨てないといけない。そんな時が、ぜったいに来る。」

 

 

急に発せられた言葉に俺は足を止める。

思わず見ると、そこには真面目な表情を受けべるリアが立っている。

 

 

「ハルは、どっちを選ぶ?」

 

「それは…どういう?」

 

「それじゃ、ばいばーい」

 

 

リアはニッコリと笑顔を浮かべると何事もなかったように飄々と去っていく。

俺は軽い足取りでギルドを出ていくリアの後ろ姿を眺める事しかできなかった。

 

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