異世界転移した男性Vtuberが、現実の有名女性V達からモテる話。   作:梯子田カハシ

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第20話 ファーストムーブ(美弦スズ視点)

 

最初の動きは戦場の東側。

第3のアテナイ拠点から1,000人の兵士が出撃していく。

 

 

「それでは、皆さん頑張ってください‼」

 

 

そう言って私、美弦スズは自分が守るアテナイ拠点Ⅲを出発する赤兵と青兵の皆さんを少し複雑な気分で見送ります。船に乗って彼らは自分の本当の主人(・・・・・)の下に帰ります。

 

つい3か月前にミディアックスからデビューした駆け出しのVtuberの私には、メンバーシップ登録をしてくれている視聴者さんが少なく、今回は特別に先輩のベルさんとリンさんから33人ずつ企画に参加してもらえる視聴者さんをお借りした形です。

 

 

「あとは残ったみんなで頑張りましょう!!」

 

 

私は拠点に残った本当の視聴者さんに声を掛けます。とは言ってみたもののカナタさん達の作戦会議の話だと、主戦場は対岸になるとのことでした。

 

…何となく蚊帳の外になっている気分です。

 

 

《…あっ、スズちゃん? 聞こえてる?》

 

 

そんなことを考えていると、事務所の先輩Vtuberのリンさんから私に通話の音声が繋がります。

 

 

「はい、聞こえています。作戦通り、それぞれ500人の兵士が半島の拠点に向かってます。何かありましたか?」

 

《うん、ありがとうっ‼ 実は【偵察】で一宮さんの第3のスパルタ拠点の状況を見て欲しいの》

 

「了解しました。確認しますね。」

 

《ごめんね。ありがとう。私は東雲さんの方を確認するから》

 

「承りました。それでは」

 

《うん、よろしくっ》

 

 

戦闘中に1回しか使えない【偵察】をここで使うのは惜しいですが、仕方ありません。

私はゲーム内の【偵察行動】を選択して半島の北、スパルタ第3の拠点の状況を確認します。

 

画面には拠点から続々と敵軍が出発し、海岸で船に乗り込んでいる様子が表示されました。

既に先発している船もあるようで、そちらは半島の南に向かって舵を進めています。

 

聞いていた想定では陸路でリンさんの拠点を攻めると思っていたので、若干内容が違っていますが、とはいえ海岸沿いにあるリンさんの拠点を目指す、という意味では想定通りです。

 

 

「確認できました。一宮さんですが、海路で南下中です。」

 

《陸路じゃないんだ。もしかしたらお姉様と交戦するのを避けたかったのかな?》

 

「そうかもしれないです。カナタさんの読み通りリンさんの拠点を目指している事には変わりないと思いますが…海上を移動しているのなら、このまま移動中の戦力で海戦に持ち込みますか?」

 

《うーん…確かに海戦ならウチが圧倒的に有利だよね。お姉様、どうする?》

 

《やっつけちゃおうっ‼って言いたいけど、私達がいない状況で戦いが始まるのは怖いかな?多分、一宮さんも一緒に移動していると思うし、無理に戦わなくてもいいと思う》

 

《私もお姉様に賛成かなあ。読みが合ってるなら作戦通りに行けば勝てる訳だし。スズちゃんはどう思う?》

 

「…そうですね。私もそう思います。」

 

《よし、それじゃあ作戦通り、まずはスズちゃんからの援軍の合流を待とう。》

 

「…了解です」

 

 

個人的には圧倒的に有利な海戦に持ち込んでしまうのが良いと思いますが、先輩たちは配信のことを考えてメンバーの指揮していない軍隊が最初に戦うのは良くないと思ったのかもしれません。

 

その時、効果音が鳴り、カナタさんの声が聞こえてきます。

 

 

《はいはーい。戦闘中に失礼しまーす。実況の赤城カナタでーす。ここでミディアックス陣営の子達にインタビューをしたいと思います‼ あ、戦闘が始まりそうだったら切り上げるよ~。ってことで、アテナイのみんな、聞こえてる~?》

 

《カナカナ~、聞こえてるよ~。敵の作戦聞いてきてくれた?》

 

《ベル、不正はダメだよ‼それに、先にこっちにインタビューしてるから向こうの作戦は分からないよ。》

 

《あははー、それもそっか》

 

《冗談はさておき…まずはスズちゃんっ‼ あなたにインタビューです‼ 今はスズちゃんの兵士1000人が半島に向かっているけど、これはどんな作戦?》

 

「はいっ‼ アリアリさんは今回、拠点を獲得しないと行けないので、ベルさんかリンさんのどっちかの拠点を挟み撃ちで攻めてくると思いました。1人分の戦力で拠点防衛をしているとスパルタ2人分の戦力には対抗できないので、みなさんと相談して、攻撃されにくい私の拠点から援軍を送る作戦にしました」

 

 

…なんとか作戦の内容を言い切れました。

正直、これだけでも凄く緊張しました。

 

 

《なるほど~。考え抜かれた作戦だね~。これはみんなで考えた作戦なのかな、リンちゃん?》

 

《そうですね。とにかく今回こそは負けるわけにはいかないので。》

 

 

…ちなみに今回の作戦会議には本当はカナタさんも一緒にしていただきました。

 

ベルさんからお願いしたみたいですが、カナタさんも負けっぱなしなのが悔しいみたいで、積極的に参加してくださいました。

 

 

《うんうん。良い調子だね。…ちなみに実況として解説すると、スズちゃんの兵士が合流するとベルとリンちゃんの拠点は2101人で拠点防衛することになって、拠点防衛はバフが1.5倍かかるから戦力は3,151になる。もしアリアリから2人が全兵士を引き連れて攻めてきたら向こうは2202人に地上戦バフ1.5倍で戦力は3,303になるから、ミディアックスとアリアリの戦力はほぼ拮抗って感じ。》

 

《カナカナ、頭いいねっ‼》

 

《ベル、バカにしてる?》

 

《違うよお~!! でも、多分だけどアリアリの人達も全兵士を出すことはないんじゃないかなってベルは思いますっ!!流石にそんなことしたら攻められてない私達のどっちかが拠点を攻めちゃえばいい訳だしね》

 

《流石はベル。なんにも考えてなさそうで意外と考えてる。》

 

《カナカナこそバカにしないで!!》

 

《あはは、冗談、冗談。それではインタビューはここまで。ミディアックスの皆さん、引き続き頑張ってください!! それではっ!!》

 

《しっかり作戦聞き出してきてね~》

 

《お姉様、それは不正だから》

 

 

カナタさんのインタビューが終わりました。

 

予定通りの受け答えをできてホッとしたところで、私が送り出した兵士の方たちもそれぞれの拠点に到着したようです。これで半島側の拠点防衛も万全。一安心です。

 

私はこれから戦闘が始まるであろう対岸に向けて視線を送ります。

 

…仕方ないとは言え、少し自分が情けない気分です。自分の意見をハッキリと言えないのに、それに少し不満を持ってしまっている状況が、なんだかどうしようもなくもどかしい、そんな気分です。

 

 

「え?」

 

 

その時、私の視界にこちらに向かってくる船団が見えます。

 

船団の抱える旗には”一宮リリア”の文字が風に揺られてたなびいていました。

 

 

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