光を渇望する巨人の旅路【裏】   作:謎の食通

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第一話「友人」

もしボタンを掛け違えば英雄は大悪党になり、神は悪魔となる。それはこんなお話。

 

 

 

 

一見すると普通の病室に彼は横になっていた。

 

 

「ぬ・・・此処は?」

 

 

彼は、見知らぬ部屋で目覚めた。部屋の様子から病室だと推測できる。だが、普通の病室とは決定的に違う要素があった。それは部屋に、いや世界そのものに立ち込める瘴気だった。

 

 

「ここは、かなり負の力が、マイナスエネルギー強いな。・・・誰が私をここに連れてきたのだ?」

 

 

彼は思考を巡らす。自分自身の知識や力に色々と混ざり物はあるが人格自体は今の自分が主になっていること。元が聡明な科学者だった彼は自身の居る場所が病室のような部屋なので何者かが自分をココに運び込んだと推測した。

 

 

『ふむ、どうやら目が覚めたようだな』

 

「ぬ?・・・なんだ、これは!?」

 

 

彼が声がした方向に目を向けると、そこには触手に包まれた眼球が浮いていた。そして、彼がその異形の存在驚愕している間に部屋の床に黒い血のような物で魔法陣が描かれ、その魔法陣の中心から頭に二本の角を持つたくましい身体つきの男が現れた。

 

 

「初めまして、タイムダイバーよ。私は魔王アシュタロスよろしく頼むよ?」

 

 

その男は、そう名乗った。彼こそかつては神の一柱でありながら世界に悪魔として悪であることを決定された魔神である。

 

 

 

 

***

 

 

 

時は少し遡る。

 

魔王アシュタロスは、己の居城の研究室で研究を重ねていた。それは彼の予てよりの宿願、その為のある装置の作成の為だ。

 

 

「むう、我が本願を果たす鍵、今だ完成は見えずか・・・」

 

 

だが、その装置の開発はアシュタロスの深遠たる知能を持ってしても困難を極めた。現状ではブレイクスルーが起きない限りこれ以上の発展は見込めなかった。

 

そんな時だ。彼が装置の開発における副産物として生まれた時空間の歪みを観測するセンサーがそれを察知したのは・・・。

 

 

「時空センサーに反応だと?」

 

 

アシュタロスは咄嗟に研究所の外を見る。ここは魔界、アシュタロスの領地であり別荘の城の周りには荒野が広がっていた。一見すると何も異常は無い。だが、魔王は空間の歪みを見抜いていた。そして、彼はソレを見て少なからず驚愕する。

 

 

「あれは・・・何らかのゲートか?」

 

 

魔界の空、そこは暗雲に覆われていた。だからこそ直ぐにそれは見つかった。十字手裏剣のような装飾の突いたリング、その真ん中には青い膜が張っていた。

彼の知識でも見たことが無い代物、それどころか自身の持つ理論では解明できない未知の産物だった。

だが、世界を旅するモノたちがこれを見たらこう呼ぶだろ。

 

《クロスゲート》と・・・。

 

 

「あのリングにより時空間そのものが変動している?・・・あれを使えば」

 

 

クロスゲートの性質はアシュタロスにとって非常に興味深いモノだった。それゆえ彼はクロスゲートを良く知るためクロスゲートを観察する。

 

だが、クロスゲートはその名の通り門の役割を持つ。そして、門からは何らかの存在が出入りするものだ。

 

 

「ふむ、出てくるか・・・ッ!?こ、これは!!」

 

 

蒼い膜の内側からソレは出てくる、ソレは40メートルクラスの巨人だった。ただの巨人ではない。白銀の肉体の黒い文様で体を彩り鎧のような肉体、人のようで人でない相貌、胸には赤に点滅する宝玉が埋め込まれていた。

 

 

「銀色の巨人、だと?この霊力は上級神魔クラスでは、いやそれ以上では無いか・・・!」

 

 

巨人伝説、各神話世界に存在する。だが、これはそのどれとも異なる巨人。なによりもその巨人が内包する力は各神話における主神級だった。

 

その巨人の力にアシュタロスは戦慄する。さすがの彼もあれほどの存在を正面切って戦うのは厳しいからだ。だが、そんな彼の心とは裏腹に巨人は空気に溶けるようにその姿を消していった。

 

 

「消えた・・・いや、あれは!」

 

 

巨人の消失。突如として会われた存在、いきなりの消失、さまざまな気持ちがアシュタロスの中で争う中、彼はそれを見つけた。巨人が居たと思われる場所に倒れている人影を・・・。

 

 

 

***

 

 

 

「と言った感じで貴公を保護したのだ」

 

 

アシュタロスを彼が横になっているベットの近くにある椅子に座りながらそう言った。アシュタロスの目は彼の存在、魂すらも見通そうと注意深く彼を観察していた。

 

 

「そうか・・・」

 

 

それを聞いた彼は顎を人差し指と親指で掴みながら現状について思考を巡らしていた。

 

 

「いくらか聞きたいことがあるのだが良いかね?」

 

「ああ・・・構わん」

 

 

彼は一旦思考を打ち切りアシュタロスの方へ顔を向ける。

 

 

「まず人間であるはずの貴公が魔界の瘴気に耐えれる理由、それは貴公があの巨人だからだな」

 

「記憶には無いが、おそらくそうだろうな」

 

「ふむ・・・どういうことか聞いてみても?」

 

 

それから彼はアシュタロスに説明した。自分は3体の知性体が一つに融合した存在だという事。巨人、ウルトラマンの存在の事。そして、融合を果たす前に自分が何をなそうとしていたかをアシュタロスに説明したのだ。

 

アシュタロスとの会話は更に弾んだ。話の内容は平行世界の出来事や、平行世界の自分の行動にすら話が及んだ。

 

 

「なるほど・・・貴公は、そのような手段で運命を覆そうとしたのか」

 

「あくまで私のベースになった同位体の話だがな」

 

魔王アシュタロスは、彼の特異性そして彼の成そうとした事から彼に興味を持ち、保護した。そして会話を続けるウチに彼らの中に絆とも呼べる物ができていた。

 

 

「クロスゲート・パラダイム・システム・・・興味深いな」

 

 

アシュタロスは思わずそう零す。己が開発しているコスモプロセッサは未だに目途が立たない。そんな彼にとって『彼』の作り出した代物は喉から手が出るほど欲するものだった。

 

 

「ならば提供しようか?」

 

 

そしてそんなアシュタロスに彼は提案する。その言葉を聞いたアシュタロスは目を剥いて彼を見つめる。

 

 

「何、良いのか?それは貴公の研究の集大成であろう?」

 

 

クロスゲートパラダイムシステムは、『彼』が数十年の時をかけて作りあげたモノだ。それを彼はアシュタロスに提供すると言うのだ。アシュタロスの口から疑念が飛び出るのも当然だった。

 

 

「あくまで基礎的なものだ。それにお前の目指す物に私も共感を覚えただけだ」

 

 

運命に縛られる身、そして技術者的思考、それらの要因が『彼』にアシュタロスを他人と思わせなかったのだ。

 

 

「・・・礼を言おう、私は良い友人を持てたようだな」

 

 

『彼』の言葉にアシュタロスを笑みを壊す。彼もまた運命に立ち向かう彼に親近感を覚えていたのだ。

 

 

「かの魔神の友人と呼ばれるとは、恐れ多い物だな。・・・だが、注意するべき点がある」

 

「ほう、何だ?」

 

 

彼はアシュタロスに語った。運命に逆らう事の難しさを。

 

 

「運命の改変は因果律に対する反逆だ。お前のような存在の場合は、お前を打倒しうるような英雄、そして因果律の番人が立ち塞がるだろう。奴らに敗北したらお前は因果地平の彼方へ飛ばされることになるぞ」

 

 

事象や歴史の改変は世界のバランスを崩す。そして一つの世界のバランスの崩壊は他の世界をも巻き込むのだ。それゆえに因果律を乱すものを討つモノ達がいる。そして、その中の何人かは彼にとっても因縁のある人物だ。だからこそ、因果律改変のリスクを彼は周知していた。

 

 

「ほう・・・それは、好都合だ」

 

 

だがアシュタロスは彼に向かってそういった

 

 

「何・・・?」

 

 

その言葉は彼にとっては全くの予想外の言葉だった。彼が因果地平の彼方から逃れる事が出来たのは偶然が重なった奇跡でしかない。もう一度同じことをしろと言われても彼単体では不可能だ。それほどの事なのにソレに対し是と言ったアシュタロスの言葉は彼にとって想定外だったのだ。

 

 

「運命を変えることは出来なくとも、この忌まわしい魂の牢獄から抜け出せるということであろう?私にとっては、どっちに転んでも問題は無いな」

 

 

そうアシュタロスの目的は、それでも構わなかったのだ。自らを滅ぼしても再び魔王アシュタロスとして復活する。新たなアシュタロスではなく、全く同じアシュタロスとして・・・。世界から縛られたその宿命から逃れるために彼は世界を変えようと企む。だが、世界から追放されることもまた、彼の目的にはかなっているのだった。

 

 

「そうか・・・では、お前の宿願の達成を祈って」

 

 

彼はアシュタロスから受け取ったカップを掲げた。中身はアシュタロスとの長い対談での眠気を晴らすためにコーヒーだった。

 

 

「「乾杯」」

 

 

それでも彼らにとって、そのコーヒーはどんな美酒よりも勝るものだろう。

 

こうして彼らは、運命に立ち向かう。二人は、お互いの願望の達成を祈りあった。

 

アシュタロスは、クロスゲート・パラダイム・システムを入手し、コスモプロセッサーの開発に着手した。

 

彼は、そんなアシュタロスを補佐しつつ自らの力の完全復活に取り組んだ。

 

運命に縛られた孤独の彼らの間に育まれた友情を彼らは満喫していた。

 

 

 

 

 

この先に何が待ち受けるか知らないまま・・・。

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