ユーゼスは地上より遥か彼方の虚空より英雄たちが争い、悪に蝕まれている星を見ていた。
「戦乱は、英雄を呼ぶ、だがその英雄を束ねるには・・・」
彼は救世主たちを探し、集める為に策謀を練っていた。
「そう・・・奴らのような存在を束ねるには、イングラムのような存在が必要だ」
そう言うと彼はクロスゲート・パラダイム・システムを立ち上げた。
「さて、私の複製人間を作る施設を確保しなければ・・・。いや、それだけでは駄目だ。この世界の因果に絡めるためにも、この技術も取り込む必要があるな」
彼は世界の事象を観測する。その結果ある因子を見つけた。
「ほう、これはこれは・・・あの白い悪魔からその存在を予想は出来たが、まさか地球にあったとはな」
そういうと虚空に浮かぶ巨人は虹色の立方体に包まれ、その姿を消したのだった。
***
地球のアラビア半島と呼ばれる土地にその都市は存在した。
神話の時代よりも過去の時代でありながら、その街は高度な技術力により作られていた。空飛ぶ車、摩天楼、およそ人が想像するような未来都市の街だった。
この街の名は学術都市アルズラット、この時代における学問と科学の頂点にある街だ。
「ゴッツォ博士、スカルエット博士はこちらです」
「ああ。案内ご苦労」
ユーゼス・ゴッツォは、この時代に転移した後、自身の持つ次元と空間の知識を元にこの学術都市に潜り込んでいたのだ。
今では彼はアルズラットにおいて高名な科学者として知れ渡っている。
「失礼する」
ユーゼスは部屋の中に入っていく。そこはいくつモノ巨大な容器がある研究所だった。そこにある容器は人ぐらいなら簡単に入れそうな大きさだった。
部屋でモニターに向かって作業をしていた人間はユーゼスが入室したのに気付いたのか、席を立ち上がりユーゼスに近寄っていった。
「やあ、君がユーゼス・ゴッツォかい?君の論文は見たよ。いやあ、非常に興味深い」
青っぽい紫色の髪をした、白衣の男が話しかけて来た。その男の顔には、子供のような貪欲さ、そして狂気を貼り付けていた。
「貴様がジェイク・スカルエット博士か。こちらこそキサマの論文は中々面白かった。今回こういう形で会えたの幸いだったな」
彼の名前はジェイク・スカルエット。彼は生命工学の第一人者で人体の改造や生成に深い知識を持っており、ユーゼスが接触したいと思っていた人物だ。
「それは、こっちの台詞さ」
彼とユーゼスはお互いを自己紹介をしながら握手した。
「・・・そろそろ良いか?」
その彼らの様子を傍観していた女性が彼らに近寄ってきた。彼女も白衣を纏っていた事から科学者だというのは推測できるが、彼女の目はただの科学者が持ちえるモノでは無かった。
「む?貴様は・・・何処かで見たような」
アルズラットにおける著名な科学者は大抵を脳にインプットしたユーゼスは彼女に見覚えがあった。というか、自身の研究の一部に強い関心を持っていたのが他でもない彼女だったからだ。
「ああ。彼女はミュカレ女史、魂や転生術の研究関わっている科学者で今回のプロジェクトリーダーさ」
彼女の名はミュカレ。このアルズラットにおける永遠の命をテーマに研究している女性だ。その研究内容から上層部と深い繋がりが持つ人物だ。
「ユーゼス、キサマの霊子理論と次元干渉における考察は非常に興味深い。グレンゼ計画などよりも、この計画でこそキサマの頭脳は活かされるだろう」
霊子理論、それはバルマーの霊力を科学的に分析した理論と次元力の理論を絡めユーゼスが独自に構築した理論だ。その理論がミュカレの研究に大きな影響を与え、それが今回の邂逅の一因となったのだ。
なお、グレンゼ計画とは、他世界への移民計画で外宇宙から来る外敵に備え新たな生存権を確保するというのが目的だった。
だが、計画は突然の中断。移民船は数隻の建造で止まった。ユーゼスは今回の突然の中断にはミュカレが関わっているのでは無いかと推測したが、彼にとってはどうでも良いことだった。
「それはどうも・・・」
もっとも、ミュカレの上から目線の物言いには、あまり良い感じはしなかったようだ。
「では早速取り掛かるとするか・・・Unsterblichkeit Reinkarnation計画の始まりだ!」
「無駄に長いな」
「長いね」
***
UR計画、Unsterblichkeit Reinkarnationすなわち不死転生。
あらためて作っておいた肉体に転生する事で擬似的な不死を実現する計画だ。
スカルエットの人工生命創造技術、ミュカレの魂転生術そしてユーゼスの持つ知識。これらがこの計画のための実現に備えられた物だ。
この研究は、ある程度の成果を見せた。今ではアルズラットや一部の地域では年老いた肉体を捨て、新たな肉体に転生している人間が増え始めている。
まさにアルズラット文明は黄金期を迎えようとしていた。
・・・陰に潜む落とし穴にも気付かずに。
***
UR計画が達成された後ユーゼスはアルズラットの科学技術習得とに勤めていた。最低限に必要な技術を確保した彼はこれからの為にも知識を保存する必要があると考えていたのだ。
「さて・・・因果を読み解いた事象からして、もうまもなくか」
彼がそう呟いた。瞬間、施設の電源が落ちた。いや、電源だけではなく、ありとあらゆるエネルギーが尽きていった。それは生き物も例外ではなく、外で歩いていた人々は灰になっていった。
「約束された滅びの日か・・・」
外にいる人々は逃げ惑う。だが、ある地点を中心にあらゆる存在が灰と成っていった。
「あの方向は、次元炉か。やはり暴走したか」
この最悪の事件の中心にはユーゼスも関わった次元炉という都市、いやこの時代のエネルギーの殆どを賄う発電機関が存在していた。
「次元炉の許容限界を超えた次元力集積の影響か・・・。危険性事態は報告してあったのだがな」
次元炉、それは地球から次元力と呼ばれるエネルギーを汲み出し、エネルギーとして利用する為に作られた物だ。その機関が今暴走している。暴走した次元炉は周囲から無差別に次元力を収集し始める。それによりありとあらゆる物質が生物・無機物を問わず灰となっていったのだ。
「ふむ、これがサハラ誕生秘話か。だが、本番はこれからだな」
そういうとユーゼスは外を目指す。これから起きる事象を予測して・・・。