祝え!!ブルーアーカイブの瞬間を!   作:とんぱる

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祝え!!シャーレ就任の瞬間である!

(じゅう)がないね?」

 

 アビドスの教室にて言われたそれは異常を指す言葉であった。丸腰(まるごし)の俺は端的(たんてき)に言葉を返す。

 

「いりませんよ」

 

 銃を持たない生徒は裸で徘徊(はいかい)する人数よりも多いといわれるここキヴォトスでは今の俺は異常者だろう。

 

「ウォズは日に日にカッコよくなってる。大丈夫…!」

 

 銀髪狼の先輩シロコから謎のフォローがはいる。それって裸で出歩けってこと???

 

「うんうん。髪型も様になってきたよ~!」

 

 ウォズの役者にどんどん容姿を近付けているためか、俺のコスプレ過程を見る対策委員会はだんだんとアイドルに憧れる幼子を見る目になっている気がする…。

 

「そういうことではないよ、我が魔王」

 

 タブレット端末を思わせるデバイスを本のようにパカッと見開いて文字を書き込んでいく。タブレットの裏側には逢魔降臨暦(おうまこうりんれき)と書かれたシールをはりつけてある。

 

 タブレット画面から空中にコードが投影され、最後にベルトが浮かび上がる。揺らぐように現れたベルトをしっかりと掴み、腰に当てる。

 

 ビヨン(ビヨンッ)ドライバー(ドラァイバァー)

 

 俺の腰にベルトが巻き付く。黄緑色のベルトは右側にあからさまな空白箇所が存在していた。右端を掴んで前に折り込む。

 

 デーデーデデー

 

「…えっと…」

 

 ベルトから鳴った音声にホシノ先輩が神妙な顔で眉毛をよせている。いやちげーよ、失敗した訳じゃねーよ!

 

 ジカン(ジィカン)デスピア(デエェスピァア)

 

 鍬の形に近い黄緑色の斧がベルトから生成されて、俺の手におさまる。ついでのように俺は靴の爪先で床を叩く。砂がどこからともなく集まり黒い箱を生成した。

 

 ジカンデスピアの可変部位である先端を手で動かし、槍型に変形させる。ヤリモードだ。

 

 くるんと回転させたヤリによってシロコ先輩の肩にかけてあった銃が絡めとられて黒い箱の中にすっぽりとおさまる。

 

「…油断してない…はず…」

 

 驚愕の目を見開くシロコ先輩の言葉をスルーしてジカンデスピアを消し、両手をかまえる。砂が集まり武器を形作った。

 

「シロコちゃんの…だね?」

 

 黒い箱に吸い込まれたはずの銃が俺の手に握られていた。片手を離して空いた手を軽く握ろうとすると、同じ銃がもう一つ生成された。どちらの銃にも、本来銃弾(じゅうだん)の供給箇所に見覚えのない丸い砂のドームが取り付けられている。

 

「どうかな?我が魔王。なかなかの戦闘力になりそうだろう?」

 

 シロコ先輩がコクりと頷く。

 

「説明して」

 

「これは対象をブラックボックスにすることで中にあるカメラを目として…その……量子的に対象を固定化しているんだ。つまり…えー…設計図を増やしているってことだね」

 

「ウォズ君、それは解説だよ~。説明、説明」

 

「あっ、んん゛。このように中にあるものは何でもコピーし複製する。そして、あらゆる可能性を保持のさ。維持だけではなく消耗したり壊れたりということがおこるわけだ」 

 

 ガッと銃同士を叩きつけて破損させる。脳内で端末を操作して見やすいように銃をかかげた。

 

「このように可能性を狭めるだけで元に戻るし破損もしない武器となる」

 

 時が巻き戻るように破損前の形と成った2丁の銃を見せびらかす。欠けた部分が空中を舞い、砂でできた銃が元通りに修復されたのを二人は驚いたように見つめている。

 

「このドーム状のやつは砂の弾丸を供給するためのものだ。屋上に浮かぶ発電機で砂を集めているだろう?その砂を転送する機能がある。いまのところ砂を使った分だけ課金とする予定だね」

 

 課金と聞いて二人が顔をしかめる。アビドスはテスターとか部活援助とかの理由をつけて流石に対象外にするよ…。

 

「これらの武器とさっきの動きだ。銃を持たなくても問題はないだろう?」

 

 デバイスをぷらぷらと、ふる。シロコ先輩が銃を奪われたのは俺の不正によるものだ。アビドスのいや、キヴォトスの上空には衛星をこっそりと配置してある。

 

 その名も通信衛星ゼア。ゼアは常に地上を観測しており、リアルタイムに対してコンマ数秒の差で現実を観測する。ウラシマ効果によりコンマ数秒の過去をうつしだすゼアの未来の観測を書き換え、現実の可能性を量子的に多面化して出力してやる。

 

 すると動画をcgで修正するがごとく、ゼアにより対象の動きをコンマ単位で選択していけるのである。多面化とはすなわち起こりうる可能性を全て観測するということ。

 

 本質的には何も変わらないからこそ量子により見た目を変化させるだけの代物(しろもの)。しかし物理においては見た目の変化とは現実の変化そのものである。

 

 故にタブレット型デバイスである不思議なノート、いわゆる未来ノートによって、対象を俺の思いのままに導いたかのようにみせかけられる。いや、俺は黒ウォズなので、白ウォズの未来ノートである救世主伝説ではなく本である逢魔降臨暦を持つべきなのだが。

 

 脳を外部から弄って認識の空白を生み出すくらい造作もないし、奇跡的にヤリモードの先が銃のどこかに引っ掛かり奇跡的に箱におさまる可能性も当然存在する。

 

「それからこれも、だ」

 

 未来ノートを操作したように見せかけて脳内で端末を操作して新たな箱を置く。内部をアンテナとカメラで張り巡らせたこの箱はコピーの大型バージョンである。

 

「これっておじさんかな~?」

 

 砂によってホシノのような姿が瞬時に生成された。配置地点から存在する全ての可能性を出力するこの装置は、まだ設置時間が浅いためかホシノ先輩の動きしか観測していないらしい。

 

「おやっ、ミラーマッチのようだね?存分に戦ってくれ」

 

 うへ~、というホシノ先輩に無言の砂ホシノが向かっていく。銃の持つ砂ホシノに盾をかまえるホシノ先輩の対決だ。

 

「ふっ、よっ、…ちょ、ちょっと…」

 

 だんだんと砂ホシノは洗礼された動きになりホシノ先輩のガードが破られはじめる。ガリガリと銃が盾を擦る。

 

「すごい…。これが先輩の本気…?」

 

 シロコ先輩と観戦していると、ホシノ先輩が勝利する。盾で行動を制限しつつ銃を多用するスタイルだ。どことなく最後の方は砂ホシノに動きが近かった。

 

「ふぅ~、危ない危ない。おじさんこんなに厄介だなんて─」

 

 砕け散った砂を見下ろしながらわざとらしく額をぬぐっているホシノ先輩の目の前で砂が新しい形をとる。またホシノ先輩の姿である。

 

「─うへへぇ~!まだ終わらない感じ~?」

 

 しわぁ~とした顔をするホシノ先輩の前で砂ホシノの動きを停止させる。操作して砂ホシノの上から砂でできた布を巻き付ける。覆われることで姿が隠れ誰だかわからなくなり、身長等も自由自在だ。

 

「どうかな?これで相手には誰かわからない無限の防衛が可能になるわけだ。相手にあわせて最適解の対応が可能にもなる。良いと思わないかい?」

 

 砂で象っただけの存在であるため、持ってきた世界の対象に耐久力や攻撃力は依存する。それでも神秘を外見といった動きだけなら再現できるし、別の存在に急に変更可能なために最適な効果になる部位をバラバラに繋ぎ合わせることもできる。対処も毎瞬更新されるため、相手からしたら容易だったのにどんどん変化する異常な存在としてうつるだろう。

 

「なるほど~、これはキツいねぇ。技もどんどん変化してたし。こっちが勝てるまでやったら強くなって何度でも、なんてさぁ。消耗したのに不利になっていくってことでしょ?突破方法は振り切るくらいしかないんじゃないかなぁ」

 

「同じ加速度では振り切ることも難しいだろう。この装置の周りで戦闘すればするほどサンプルが増えるからね。設置した時点から、現在、未来、平行世界から量子的に動きだけ呼んでいる利点さ」

 

「立ち止まったら囲まれてやられる…」

 

「その通りさ、我が魔王!故に基本的に破られない」

 

「これでアビドスの防衛を─」

 

 希望に目を輝かせようとするシロコ先輩を制止する。

 

「それはダメだ。予備として校門の左右に設置はするが、ね」

 

「な、なんで?」

 

「これも未来のためさ、我が魔王。君の覇道、いやアビドスの未来、かな」

 

「うへぇ、ならしょうがないね~」

 

「??なんで?先輩」

 

「ともかく!これで私には装備がいらないということがわかっただろう?砂の銃、観測の量産兵士そしてウォッチと未来ノート。どれも有象無象では届かない」

 

「ウォッチ?」

 

 ウォズミライドウォッチをとりだして見せる。

 

「そのベルトのへこんでる部分に取り付けられそうな形だね?」

 

 靴の爪先で発動させたように見せたやつも、実際は電気信号によって脳内で端末を操作している。どんな操作も思考で元々の図を選んでいるだけというゼア様々(さまさま)の働きである。個々の装置には、予備の端末も別につくってあるので未来ノートが奪われても安心できる。

 

「さあ、ホシノ先輩!付いてきてください」

 

 話しは終わったとばかりにホシノ先輩の手を引き、俺は装置を砂に戻して教室をあとにする。

 

「ん、仕方ない。勝てるようになるまで訓練する」

 

 闘志を燃やしているシロコ先輩は一人の世界に入っていったのでしばらく(ほう)っておいてもいいだろう。ドアを閉める前に見たシロコ先輩は銃をかまえて真剣な横顔をしていた。

 

 お前(たち)キヴォトス(じん)って野蛮(やばん)じゃないか?(ヘイローなし一般人並み感

 

「これらで企業カイザーのシェアを俺達運営部が奪っていきます。インフラも何もかも」

 

 アビドス高校での新たな部活、運営管理部。俺を部員としてホシノ先輩を部長とした部である。内容は、何かしらについての運営を試作的に行うというもの。実際は俺が好き勝手するための部活だ。

 

 金額がはねあがった場合にアビドス高校運営管理部に注文を切り替える(むね)の契約書の(たば)をホシノ先輩に差し出す。カイザーは大企業なので値段を一時的に最低ラインまで下げる持久戦を延々と可能な資金力を持つ。

 

 あくどい方法として、値段を下げて対抗馬がいなくなったとたん高額にすることも容易である。故に、各校でこの協定を結ぶことでアビドスを拠点とした警戒網をカイザーへ周知させるのだ。

 

「カイザーがインフラに食い込んでいるここキヴォトスで経済力を持つには、カイザーから仕事を奪い取るのが一番です。公的にはカイザーは動けず、借金返済額を増やす理由にはならないですから、この書面にサインしていってもアビドス高校は大丈夫です」

 

 ホシノ先輩が運営管理部の発行した契約書を読み込んで頷いている。後はホシノ先輩に放るとしよう。俺は先に現地に行って─

 

「うんうん、これからつめていこうね?」

 

 ─ガシッと俺の手が掴まれる。

 

「え?俺も書類を?」

 

(後はホシノ先輩が全部やってくれたりしねぇの?部長でしょ?)

 

「もちろん!おじさんは代表として名前は貸すけれど、フォローだけだよ?はい、生徒会室行くよ~!」

 

 君が好き勝手するための部活だよね?と、見透かしたホシノ先輩は目配せしてくる。怖いぃ…。

 

「な、ななな…やります…うぅ」

 

 (たい)大人(おとな)に向ける鋭い目付きでズルズルと俺を引きずっていく。これは維持でもやりとげさせる気の目だ。

 

「さっきみたいに説明と解説を間違えるなんてことがもう絶対にないように、まずは書類からきっちり文章の意味と使い方を理解しようね~」

 

 いやだー!書類なんてダルいことしたくねぇー!

 

 

──

 

 

 電車に乗って校門をくぐる。綺麗なビルが立ち並ぶこの学園はミレニアムサイエンススクール。

 

早瀬(はやせ)ユウカです。セミナーにて会計を担当しています。本日は─」

 

 青い髪をサイドツインで軽くまとめ黒いスーツの上からミレニアムの制服を()()った少女がハキハキと出迎えてくれる。(すみれ)色の(ひとみ)綺麗(きれい)だ。

 

 セミナーとはミレニアム学園における生徒会だ。俺とホシノ先輩は運営管理部の売り込み先として審査を公平に行ってくれるユウカが在籍するミレニアムを最初に選んだ。

 

「─ミレニアムをこの子機複数でまかなえる計算になります」

 

「この価格は永続的なものでしょうか?取り付けの容易さや稼働の性能はこの場で決済の判断がつく程のものですから、その…停電対策にしては過剰ではありますが…」

 

 停電対策と言ってもなかなか発電機の買い取りは受け入れられないようだ。本当の狙いは約半年後の行政管理の停止による機器が動かない時の予備電源なのだが、未来のことを話したって信じてくれるわけもないのでしかたない。

 

「では、こちらの商品はですね─」

 

 砂の兵を召喚する箱を実際に起動させる。小柄な体に不釣り合いな強大な剣を持った兵が生成された。いつかの未来にてアリスが箱に対して戦いを行ったようだ。

 

「いくよ~」

 

 商品説明のためのサンドバッグと化したホシノ先輩のゆるゆるな声で俺は起動ボタンを押す。

 

 圧倒的な速さで殴りかかった砂のアリスをアッサリとかわして反撃するホシノ先輩。幾らかの応酬(おえしゅう)(すえ)にアリスが一瞬固まる。EXスキルだろう。

 

「大技きますよ!」

 

 俺の声にホシノ先輩は(かま)えながらも体をひねり逃げの体勢をとる。砂アリスは軽々と振り回していた大剣の切っ先をホシノ先輩へと向けていた。

 

「………」

 

 光よ!と、言ったであろう砂アリスの剣先から電撃が()け抜けて周囲をなぎ払う。レールガンの余波(よは)によってユウカの髪がバサバサとなびいている。

 

「止めて、止めて!!」

 

 ユウカの言葉に箱を停止させると、ユウカはこちらにかまわず電話し始めた。

 

「はい!はい!これだけの─」

 

 レールガンごときでは飄々(ひょうひょう)としているだろうと思っていたユウカが感情的に話している。

 

(何で?)

 

 原作の時期より短い青髪がやっとのことでたなびくのをやめた。

 

(そっか。原作より前の時期だから立場に慣れてないんだ…)

 

 ソワソワしていて妙に可愛いと思ったら、本編のキリッとした大人らしさが作られかけだからか。一人で納得しているとユウカから電話を渡される。

 

「会長をしているわ、調月(つかつき)リオよ。アビドス運営管理部の今回のお話だけど─」

 

 ミレニアムのトップ、リオ会長が電話であった。理知的な声に脳が固まりかけるが、根性で動かす。性欲よりもロールプレイが大切だ。

 

 でもこの声でスタイル抜群の黒髪長髪はズルいだろ!!

 

「ありがとうございます。こちらは子機もありまして、個々を対象にする警備ロボットのような使い方も可能でございます。端末から通報機能で召集すれば防衛においては─」

 

 ユウカが一礼(いちれい)して校舎へ帰っていくのを眺めながら、俺は電話を続ける。発電機、召喚兵、砂のコピー銃の宣伝協力、モモトークより多機能で使いにくいサブアプリ、といった全てにOKをもらった俺は油断していた。

 

「それで?ここまでの機器は何のためのものなのかしら?」

 

 エリデゥに設置することを薦めようと思っていたのがよまれている。いや、逆に会話で露骨に誘導しすぎたのだろうか。

 

「ぜひとも都市においていただきたく。遺産として残っている無名の司祭による技術を使うだけではこころもとないでしょう?」

 

 会話の主導権を握られないためにこちらの優位性を全面に出して交渉を進めたい。

 

「……これらは確かに良いものでしょう。でも、後一押(ひとお)しが欲しいわ」

 

 リオも主導権を譲る気は無いようだ。何故か秘密にしている情報がバレているという優位を示されても、なお強気で注文をしてくる。

 

「もちろん。しかし、ドローンも飛んでいませんし渡そうにも─」

 

 道を歩いていたのに、スッとメイドが俺の方へ近づいてきた。監視の目は張り巡らされていたようだ。

 

「ミレニアムのエージェントよ」

 

「…ではこれを」

 

 C&Cモブにウォッチを渡す。リオの手のモノであるのは明白だ。渡す時に悔しい表情を出さないよう精神をだいぶ使わされた。

 

 ふと見るとホシノ先輩は銃を肩より下に下げていない。彼女は気がついており警戒してくれていたのだと今やっと俺は気づいた。

 

「これはビルドジーニアスウォッチ。そして、アナザービルドウォッチだ。上手く使ってくれたまえ」

 

「共犯ね…」

 

 預言者ウォズとしてのセリフはキチンとリオ会長に届いたようである。ウォッチの詳しい説明をした後に俺とホシノ先輩はミレニアムを去っていった。

 

 

──

 

 

 騒音が他の地域の比ではないゲヘナもここまでくれば静かなものだ。

 

空崎(そらさき)ヒナ風紀委員長、本日はお受けいただき感謝いたします」

 

 彼女の頭が動く(たび)に白く反射する銀色の髪がふわふわとたなびく。交渉役を果たすためか俺をしっかりと見てくる。いや、

 

「風紀委員の強化ができるということだもの。些細なことよ」

 

 ヒナは答えた後にチラチラとホシノ先輩を見ていた。ヒナはホシノ先輩に憧れを持っているようなのだ。それは実際にうちの機器を使うことになった風紀委員会の訓練場でも同様であったことから確定だ。

 

「このためにおじさんを使ったね?」

 

 ただの交渉の一員として連れてこられたホシノ先輩もようやく俺の思惑(おもわく)に気が付いたようである。微笑を浮かべながら睨まないでください。器用か!

 

「生徒会が予算を握ってるから」

 

 手間をかけて申し訳ないわね。と、いいながらヒナ委員長は生徒会への招待状を書いてくれた。決定権や採用するかは別なのだ。あれ?この二人一言(ひとこと)も話してねぇ…ヒナ委員長マジメか!

 

「推薦するわ」

 

 そういって俺に渡された封を受け取って開き、如何(いか)にも軍服ですといった服装の生徒会長の返答を待つ。

 

「キキキッ!それで?このマコト様の傀儡(かいらい)になりに来たのか?」

 

 場所は移って生徒会室。羽沼(はぬま)マコト生徒会長に敵対的な目を向けられていた。マコトはヒナに敵対的な意識を向けているのだ。

 

「風紀委員の味方になるつもりはないですが、傘下(さんか)に入るわけでもありません。我々、運営管理部はアビドスの部活動ですので」

 

「ふん、貴女は生徒会副会長だな、小鳥遊ホシノ」

 

 マコトの目がホシノへとうつる。今はホシノが生徒会の役員としてではないと理解しての発言だ。

 

(頭が回るな。なんとか動揺を…いや、ちょうど良い)

 

 アナザーW(ダブル)ウォッチをホシノ先輩に起動する。

 

 W(ダァブゥルゥゥ)

 

 ホシノが口を開く前に黒いモヤに勢いよく(まと)われ、黒紫と水薄い緑を顔のちょうど半分でそれぞれマスクしたアナザーダブルと変身した。

 

「ヒナ風紀委員長へこのようにウォッチを押すと良いでしょう」

 

 マコトは突然のことで固まっている。

 

「お前、雷帝の弟子(でし)か?」

 

「いいえ?そのように言われるのは(ほこ)らしいですが、ね」

 

 検討違いの言葉に俺は悠々(ゆうゆう)と返答することができた。いきなりのことだったが、マコト議長(ぎちょう)すぐに復帰して反応する。流石はゲヘナの生徒会長なだけはある。

 

「何これぇ!?」

 

 ホシノ先輩の驚きをスルーし、返答を待つ。交渉中だぞ!ホシノ先輩!!

 

「キキッ、良い取引だ。これからもよろしくしたいな」

 

「ありがとうございます」

 

 うちの機器を全て導入してもらえた。ついでのようにアナザー電王ウォッチを(わた)す。当然のようにマコトは受け取った。こわ…。

 

「イブキさんにはこれを。マコト様と一緒に使うとよろしいかと。融合用です」

 

 アナザークウガウォッチを渡す。何か言おうとしたマコトは融合と聞いて黙り込んだ。おそらく作戦を練り始めたのだろう。そうでなくては困る。

 

「条約締結時にお使いになるのがいいかと」

 

 マコトがキキッと声をもらす。どうやら上手く煽てられたらしい。ダメだったら後で調整しなきゃ…。

 

 急な決定に不満そうなイロハなどの声を聞きながら俺達は生徒会室から去り、ゲヘナをあとにした。

 

 あっ、帰り道で俺はホシノが置いてきぼりにしてウォッチを埋め込んだことに対して怒られました。ごめんて。

 

──

 

 

 壮大でありながら優雅さも溢れるトリニティの門が俺を出迎えてくれる。ホシノ先輩もいないため俺だけを祝福(しゅくふく)してくれているように感じられてしまう。祝福ッ!?!?

 

 慣れてきた俺は悠々と交渉にのぞむ。

 

「ティーパーティー所属の桐藤(きりふじ)ナギサです」

 

 話す彼女は気品に溢れていた。紅茶を飲む姿もどこか綺麗な程である。トリニティ総合学園のティーパーティーは生徒会に相当する部活だ。

 

「他の自治区やスクールはもう導入していますよ?」

 

そしてナギサはトリニティ総合学園の生徒会長の一人であり

 

「これは個人的なプレゼントです。我が魔王、これを」

 

 我が魔王である!

 

「…これは?」

 

 ジオウウォッチとミラージオウウォッチを渡す。

 

「少々時を戻せます。暗殺や毒殺にも安心ですよ」

 

 交渉も悪くない結果であり、警戒しながらも仲間意識の芽生えはナギサから確認できた。

 

 さあ、我が魔王!私に祝福をさせてくれ!!

 

 

──

 

 

「手紙をかきたいです」

 

 入学してすぐの頃、俺はホシノ先輩へ借金をねだっていた。

 

「誰ぇ?おじさんもここの借金で厳しいから…ウォズが友好関係を広げるのは大歓迎だけどね?」

 

 いつものゆるゆるなホシノ先輩へ俺は返答する。

 

「そうではありません。カヤ防衛室長に手紙ですよ。連邦(れんぽう)生徒会公認(こうにん)でカイザーの息のかからない土地を買うんです」

 

(これでカイザーとの癒着(ゆちゃく)がバレてるぞってカヤへの牽制(けんせい)になってカルバノグの(うさぎ)(へん)2章がなくなると嬉しいんだけど)

 

 ギャグテイストで片付けられたけど、なかなかにストーリーが悲惨だからね。

 

「それなら喜んで出すよ。いや~、良い後輩を持てて嬉しいよ~!」

 

 そして連邦生徒会長にはジクウドライバーとバールクスウォッチを手紙をそえてプレゼントだ。失踪時に持っていってくださいっと。

 

 

──

 

 

「ごはん食べた所、あれは新しく買ったうちの土地だよね?」

 

 廃校対策委員会から物理的に一番近い教室が、運営管理部の部室である。ホシノ先輩はチンピラやヘルメット団等からもこのアビドス高校副校舎を守るために飛び出して行かなければならないからだ。

 

「住民から最近の治安低下が言われてる」

 

 対策委員会の皆にチケットが当たったと(いつわ)って連れていった砂漠にポツリとそびえ立つビルで、盛大に食事をとったのである。

 

「マッチポンプでしょ?あれ」

 

 今やトリニティの生徒も訪れる場所となったあのビルで食事をしたのだ。そのため、ビルの全てを作り上げた運営管理部の予算も潤いまくっていた。そして、その影のように莫大な身代金や商売場を不正に広げようと意地が汚いやつらも集まってきていた。

 

「じゃあ、どうやって解決するんですか?」

 

 10億円近い借金を持つアビドスの未来は決して明るくない。よってきた犯罪者を悪名高く押し上げてから賞金首としてぶちのめして、少しでも余裕を持っておきたい。預言者をうたう俺だが、所詮はゲームの知識だ。

 

「奇跡うんぬん何てモノの結末はおじさんの貴女(あなた)が一番よくわかってるでしょ!?」

 

 現在プレイヤーではない俺はいるだけでストーリーを壊すかもしれない存在であり、それはキヴォトスを滅亡させるミスをひきおこす存在と同義だ。どうにかするための修正する分の余裕というものが俺には必要だった。

 

「不器用な貴女が!!」

 

 その俺の言葉に反応してホシノに服を(つか)まれる。俺もホシノ先輩の胸ぐらを掴んだ。未来のためにも譲れない。

 

「ちょ、ちょっとウォズはヘイローないんだから!」

 

 セリカが焦ったように部室に入ってくる。どうやら声が大きすぎてあちらにも聞こえてしまったらしい。

 

「あの電車、列車砲シェマタの再来って言われてるよ?」

 

 ビルの行き来に空を飛ぶ電車を使っている。ビル間で行き来出来るように仕組みを組んだものとなっている。巨大な大砲のように正確にビル内の駅を狙い打ち、電車を運ぶ。揺れをなくすのにめっちゃ複雑な素材の砂ブロックを使ったよ…。

 

「ハイランダーを入れるよりはましでしょうが!」

 

 アロナが解析した太陽のプラズマくらいならば、ギンガウォッチで再現するために太陽自体を作成せざるおえなかったのに比べれば低級もいい機能だ。雷帝のシェマタなんてとっくに超えた。

 

「ッ…」

 

 堂々と覗き見しているノノミが息を詰まらせている。彼女は鉄道系のハイランダーに入学予定だったんだっけか。

 

「こんなことをして…それ以外でも、もし本当に困っている人がいたらどうするの?」

 

 (さと)すように聞いてくる。イラつく言葉だ。自分しか信じないで他人に目を向けてないくせに。悪い大人の契約に騙されてのっかる未来を持つくせに。

 

「何ですか?モドキしてる内はわからないですよ!」

 

「私が何て言ったのか知ってるんでしょ?」

 

「周りの皆は悪党で、すぐ裏切られるって!学校を守れないって、言ったのは知ってますよ!というかわかるでしょう?!」

 

 こんなセリフを過去に言ったくせに先輩ヅラして余裕ぶるな!

 

「なら、何て説得されたかも知ってるよね?」

 

 唸るように俺は答えた。

 

「自分を見失う…でしたか?」

 

「そう。そうやって取り戻しても私達が取り戻したいアビドスにはならない。人が戻ってきても私は悲しいよ…。」

 

 ホシノ先輩は変わらない。同じ調子で諭すように俺に話してくる。

 

「だから!!モドキじゃ─」

 

「─違うよ。どんな思いなのかわかるでしょ?」

 

 生徒会室の鍵を閉めるのを躊躇うホシノ先輩のゲームスチルが脳裏によぎる。引き延ばしてでも認めたくない事実は、逆に決意となって強く方針になっているのだと、今のホシノ先輩の顔を見て理解した。

 

(これは…折れなさそうだな)

 

 感情的じゃダメだ、と俺はようやく頭を回し始める。俺を連れて生徒会室の扉を開けたあの時から、ホシノ先輩は乗り越えたんだと思っていたが…ホシノ先輩は俺より頑固なようだから。

 

「それにね?奇跡は続いてるよ。終わると思っていた日常がこんなにも続いているんだから」

 

(なら、この言葉を否定したらアビドス1と2章が狂うかもな…)

 

「わかりました。変えますよ」

 

 俺が折れるしかない。未来をゲームの通りに進めるために。

 

「流石ウォズ君!代案(だいあん)があるんじゃないか」

 

 俺は席を立つ。

 

「謝ってきます」

 

 住民への最悪なネタばらしの時間である。

 

「私も一緒に謝るよ」

 

 俺を見ているようで目を細めている。な、何?

 

「俺の責任ですけど?…」

 

 次の言葉で、我が魔王の1年時を思い返していたんだとわかった。

 

「良いよ。先輩だからね?」

 

 何故か楽しそうなホシノ先輩を眺めているとセリカが混乱した顔で発言する。

 

「結局なんなわけ!?」

 

 (さっ)したのかハイランダーの()()でもあるのかノノミ先輩が(かば)ってくれる。

 

「誰にでも秘密はあるものです」

 

「先輩に秘密はあるものさ~」

 

 ホシノ先輩もゆるゆるに戻って乗っかっている。

 

「絶対嘘!シロコ先輩はないでしょ?」

 

「秘密くらいある」

 

 そう言って我が魔王はかけだしていった。気を使わせたかな。セリカも我が魔王を追いかけて行ってしまった。

 

「何よ~!なんで逃げるの~!」

 

「ウォズ君睨んでる?」

 

「当たり前です!予言者特効なんて卑怯ですよ!」

 

 彼女は意味がわかっていないだろう。当たり前だ、未来なんて知らないのだから。それでも頷いた。

 

「わかってくれて嬉しいなぁ。予言、信じてるから!」

 

 折れない彼女が言うのだ。信じよう。そのために俺は祝福を完遂させよう。それがホシノ先輩を信じるってことの返答だと思うから。

 

「わかりました。俺はウォズ()をやり続けます!…それはそれとして、しばらく口聞かないですから」

 

 可能なはずだ。サブアプリもだいぶ生徒間で浸透(しんとう)している。管理者権限で情報をすいとり、上手く動かせばいいだけなのだから。自信を持て、俺!

 

「アヤネちゃんは、セリカちゃんと追いかけないんですか?」

 

 ふん!と、怒っている俺を横目に彼女達は話しを続けていた。

 

「先輩、残っていれば教えてくれたり…」

 

「今はダメかなぁ~」

 

「いずれっていうことで☆」

 

 ピロリン、と新しい顧客からの招待状がタブレットの通知に届く。

 

「あの…ホシノ先輩…。」

 

「いいよ~」

 

 ひぃん!!さっそくホシノ先輩を頼ることになることになるなんて!

 

「行ってらっしゃい、ウォズくん」

 

(行ってきます、アヤネちゃ~ん…。)

 

 素敵な笑顔で俺達は見送られる。

 

なんでこうなるー!

 

 

──

 

 

「やあ、みちる部長?」

 

「!?!?!?」

 

 ()(じく)の裏から転移門を開いて俺は、部屋であぐらをかく彼女に声をかけた。

 

「どこからあ(りゃ)(りぇ)─部長って何?」

 

「おっと、少し読みすぎたようだね。」

 

 タブレット逢魔降臨暦を取り出しペラッとめくる動作(ただのスクロール動作)をした後に電源を切り、(ふところ)にしまう。

 

「仮面ライダーシノビのためにぜひ君の火遁(かとん)を見せてほしい」

 

 パチパチと目を何度もやるこの彼女の技術が、本気で俺がウォズになるためには必要なのだ。

 

 

………。

 

 俺は川で洗濯をさせられていた。

 

「なんで私が…んわぁ!?ふんどし!!」

 

「落とした洗濯物は洗い直して()ぇ」

 

 

──

 

 

 おそらく連邦生徒会長が失踪してから半年後、連邦生徒会につけた極小の監視カメラに(ほか)地区(ちく)の生徒4人が入っていったのが確認された。連邦生徒会長さんはどうやら失踪時期をこちらに合わせてくれたようだ。

 

 それが最善だったのだろうか…。いや、ホシノ先輩に言ったんだ。俺は俺の目的を達成する。絶対に!

 

 出てきた5人の前に、渦巻きのようにふるったマフラー中からマジシャンのように転移しあらわれる。

 

「祝え!!シャーレ就任の瞬間である!」

 

"だ、誰!?"

 

 4人の後ろにいる人物。あれがブルーアーカイブのプレイヤーこと先生だろう。

 

「我が名はウォズ、もう一人のウォズである君を手助けに来たのさ。我々は瞬瞬必生なんて醜いことはしない、そうだろう?」

 

"もう一人の…?瞬…なんて?"

 

 明らかに戸惑っている先生を楽しんでいると、生徒の一人が割り込んでくる。ユウカだ。

 

「ウォズさん、いえウォズ…時間がないんです!貴方は敵か味方かどっち何ですか?!」

 

 警戒しながらも声をかけてきた。そんな危険さはなかったはずだが…状況が怪しすぎるか。

 

「もちろん味方だとも。そんなに怒らないでくれるかな?逮捕は出来ないよ、衛生省 (えいせいしょう)

 

「??私はセミナーです!」

 

「いや、エグゼイドでは君は衛生省のはずだよ」

 

「エ、エグゼイド?、???」

 

 こんな不思議キャラだったかしら、とユウカは小声で呟いている。いや、仮面ライダーエグゼイドでの役回りはお前のポジションでピッタリなんだがぁ。

 

「コレが必要ということですか?」

 

 アクセルウォッチを取り出しながら羽川(はねかわ)ハスミが割り込んでくる。我が魔王ことナギサの頼みで正義実現委員会のNo.2である彼女達を訓練したことを覚えていたのだろう。

 

 ユウカもだが、記憶力いいな!あと、スカートまくれてるよ。

 

(タア)()(ムッ)(マッ)ジーン(ジィィィンッ)

 

「これに乗った先に必要になるだろう」

 

 俺の呼び出した空飛ぶロボであるタイムマジーンを見て、先生が興奮気味だ。

 

「敵かと思った」

 

 守月(もりづき)スズミがホッとしたように銃を下げる。こういうのはサプライズ感が大切なんだよ?まあ、自警団をしている彼女には自分が動かねばと考えて最悪を想定してもしかたないが。

 

「でも、これで安全に行けます…!」

 

 不良達を相手に先生を合わせるのは不安があったのだろう。火宮(ひのみや)チナツの言葉に俺は反論する。

 

「いや、乗り降りの際には戦闘になるだろうね。そして速度重視で行動せねば囲まれることになる」

 

「そんな!…先生はヘイローが無いんです。銃弾一発でも危険といえます」

 

「君の医療支援があればたどり着くまでなら余裕だろう。それに先生もただ守られるだけじゃない」

 

"戦術指揮くらいなら…皆、頼めるかな?"

 

 先生の指揮!?、とガヤガヤと騒ぐ4人は、先生という大人故か最終的に提案を受け入れた。

 

"大丈夫?失踪の報で治安や違反装備品が2000%上昇って聞いたんだけど…。"

 

 俺を見て先生が心配そうに聞く。まあ、俺もヘイローはないからその気持ちはわからなくはないが。ベルト、ビヨンドライバーを腰に巻き、ウォズミライドウォッチを手にふるふると見せびらかす。

 

「もちろん問題ないとも。仮面ライダーだからね」

 

"仮面…ライダー…"

 

 先生の手にはグランドジオウウォッチが握られている。俺が半年前に送った手紙の通り、無事に渡されたようだ。でも、ベルトがないから先生は使えないよ?ウォッチしまって!なくすなよ?

 

「さあ、まずは一戦して乗り込むところからだ!」

 

 5人は頷き、地に降りたタイムマジーンに向かって走り出した。

 

 

──

 

 

 ハッチが開き銃声がより近くに響いている。

 

"うおおぉぉおお"

 

 先生の情けない声をバックにタイムマジーンから降りる。

 

「さあ、あと一息だ!」

 

 この先導(せんどう)(かん)!まさしくウォズの序章にふさわしい!!

 

(これから我が魔王との継承式に共にあれる未来が楽しみだ!)

 

 (ひた)っていると大砲の音が気分を阻害(そがい)してくる。ウォッチをスロット部につけてベルトを折りポーズをとる。

 

ウォズ!(ァア)クション(クショォン)!!

 

「変身」

 

投影(とぉおえぁい)!フューチャータイム(タイム)

 

スゴイ(スゴイッ)ジダイ(ジダァイ)ミライ(ミライッ)仮面(かめんん)ライダ(ライダ)ーウォズ!ウォズ(ウォォズッ)

 

 変身音声と共に発生した変身バンクが大砲のたまを逆に吹き飛ばす。

 

"変身!"

 

 絶妙にキモい目のキラキラ具合で見てくる先生をスルーして目標をつげる。

 

「戦車は私が止めよう。進むべきだ!」

 

 少なくとも防御面の信頼は得られたのか、俺から目を離し5人がかけていく。タイムマジーンに乗る前の一戦よりも4人は上手い連携がとれている。指揮してる先生の成長が凄まじいな。

 

 生成された固有武器ジカンデスピアを手にとって槍先の横にあるボタンを擦る。同時にタイムマジーンを操作して、敵の戦車を持ち上げてひっくり返し乗っている不良を振り落とした。

 

ビヨンド(ザッ)タイム(タイム)

 

「いきなりだが、悪く思わないでくれ」

 

タイムエクスプロー(ロォォォ)ジョン(ジョンッ)!!

 

 擦ったエネルギーでキューブ状の時計型エネルギーを生み出し、ジカンデスピアで突くことによって戦車にぶち当てる。

 

ドゴオオォォォオオ!!

 

 戦車が爆発し、余波が地上の不良達を襲った。これがウォズの必殺技、タイムエクスプロージョン(蹴りなしバージョン)である。

 

 あとは、細々と気絶させていくだけである。あっ、遠くの不良も倒さなきゃ!

 

 

──

 

 

 シャーレのビルから出てきた生徒、ワカモにフォーゼウォッチを渡す。

 

「友の力だ。集められたこれは─」

 

 ワカモはこちらの話を聞くこと無く去っていった。おい!

 

「…友…」

 

 何か呟いたみたいだが、聞き取れない。まあ、聞き直す気もない(衛星ゼアから再生可能)。彼女は先生に恋をしたんだろうから聞かないのが優しさだろう。

 

 今度はリンが入っていった。連邦生徒会の行政代理をつとめる七神(なながみ)リン。彼女が入っていったならサンクトゥムタワーの制御権も元に戻るだろう。先生がそうするはずだ。

 

 こっそりと彼女のロングな服に砂を仕込ませる。これで転移門を開く分の量がシャーレの内部に届くことだろう。

 

 少ししてビルの電気がついていく。4人が戦闘を終了したようでビルの中に入っていった。彼女達が出てくるタイミングで俺も入ろう。

 

 時に、俺の転移する(すべ)は材料が砂だけではない。俺の記憶(つまり体験や経験)も原子に詰め込んである。例えば、ナラム·シンの玉座に染まったプラナならば、実在と非実在が確定していない空間である混沌の領域にいれるだろう。

 

 しかし、観測眼として選択する存在にはなりえない。実在というものを体験出来ない、つまり世界と一体になったことがないプラナには俺に届かない。経験のないアロナならなおさら無理がある。

 

 つまり、俺はシッテムの箱のOSでAIをしているアロナやプラナに全く観測されないことが可能なのだ。シャーレオフィスに転移し、シッテムの箱の裏に救世主伝説と書かれたシールをはりつける。

 

"え?"

 

 A.R.O.N.Aが俺を探知出来なかったようで、先生の反応は明らかにタブレットの画面の誰か(アロナかのちのプラナ)への反応への返答であった。

 

「それはつけておいてくれ。私と勘違いされないためにね」

 

 タブレットをとりだし、逢魔降臨暦と書かれている裏にはられたシールを見せる。

 

"…。"

 

 タブレットシッテムの箱は連邦生徒会長の残したオーパーツである。影武者ではない我が魔王の残したものに何てことを!、と叫ぶ自身の声で涙が溢れそうになる。しかも、当然なことにシールの材料は砂であるため監視や干渉するための機能がてんこ盛りである。

 

(我が魔王!我が魔王~!!ぐっ!しかしウォズをやり遂げねば!!!)

 

 キヴォトスも救われる最高最善の選択のための犠牲に苦しんでいる俺に先生は声をかける。

 

"それで何の用事かな?"

 

 事務的なようで気遣いのある言葉が胸に響いた。

 

なんだ…先生って良いやつじゃん(勝手に好感度が上がる

 

「これ、もろもろが終わったら最初にお願いするよ」

 

"わかった。任せて"

 

 アヤネの手紙を渡す。アビドス高校を救う始まりの手紙だ。

 

「アロナも頼むよ、知らせてあげてくれ」

 

 先生以外にA.R.O.N.Aは見えたり聞こえたりしないはず…、と驚いている先生達を置いて俺は転移した。本当はもう少しおちょくりたかったが。だって恐ろしいものが流れてきたのだ。

 

 カシャッカシャカシャ、と先生の顔をタブレット目線で撮る音が俺の脳内で響く。

 

 狐坂(こさか)ワカモが仮面ライダーフォーゼの歴史をウォッチから解放し、レーダースイッチとカメラスイッチを早速使っているようだ。説明書とかないのに流石は災厄の狐。

 

(怖すぎィ!)





"あれ?この写真に写ってるのってウォズ?"

 アビドスの制服を着たボサボサ髪の男の子が祝入学という看板の隣で花束を抱えてたっている写真だ。

「そうです。お祝いの時は記念に写真を撮るものだからってきかなくて!どうせエミュなくせに…!」

「違うよー意思を受け継いだっていってよー。それに撮ってよかったでしょ?」

「どこがですか!?恥ずかしいだけです!」

 ホシノとウォズの言い争いで、私はやっとウォズの素を見れた気がした。
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