祝え!!ブルーアーカイブの瞬間を!   作:とんぱる

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祝え!その名も仮面ライダージオウ!

 もらった手紙を元に、アビドス高校へ向かうために砂漠を渡っている。が、街が見えてきたところで力が尽きる。

 

 A.r.o.n.a(あろな)の調べてくれたマップ頼りに来たが、古い地図だったからか迷うことになった。手紙を読んで急いで(しかし丁寧に)他の物事を終わらせてきたためか過労なのもあるだろう。

 

 動けないでいると、誰かが近づいてくる。アビドス高校、と言えただろうか?口が乾いて感覚がない。

 

 効果音と共にバイクと書かれた腕時計が投げられるのが、どこかスローモーションで見えた。そのウォッチは変型し、大型バイクになった気がした。

 

「これよりライドストライカーの方がきっといい」

 

 掠れた目を何とか動かし、チャリを背負ってバイクにのせる少女をみる。飛び飛びの意識の中、液体を飲んだという喉の感触と汗の良い匂いが記憶として染み付いた。

 

 

───

 

 

「わっ!☆シロコちゃんが大人を拉致(らち)してきました!」

 

 我が魔王が大人を背負って登校してきた。十中八九シャーレの先生である。これにより、ついにアビドス編のストーリーがスタートするというわけである。

 

「ウォズは?」

 

 自己紹介を済ませた対策委員会と先生の面々を盗聴していると俺が呼ばれた。祝いのタイミング以外で出る気はなかったのだが、いきなり予定変更である。

 

「私を呼んだかな?我が魔王」

 

 転移して黒マフラーで格好よく登場したというのに、目の前シロコ先輩は眉に力を込めていた。怒っている。

 

「私が魔王だってバラしたの?」

 

 チラリと周りを盗み見るとセリカが堂々とこちらを見ていた。バラしたのはこいつらしい。

 

「今日は記念すべき日になるからね。仲間同士の不和で台無しにしたくないだろう?」

 

"えっと、その魔王?というのを使いたくないなら私が物資を持ってきたから"

 

「これが…大人…!」

 

 ドローンといった物が召喚された。銃弾は金属のようだ。俺の介入により、砂でできた銃弾が広まったおかげでキヴォトスではもう金属性の銃弾は珍しいものになってしまった。

 

 まあ、課金アプリで使用毎に引き落とされるより実弾の方が連邦生徒会所属のシャーレとしては誠実だということなのだろうが。威力は変わらないんだけどなぁ。

 

ガダダダダッ!

 

 銃声が校舎の外から聞こえてくる。

 

「うへ~、カタカタヘルメット団め~!変身ッ!」

 

 W(ダァブゥルゥゥ)

 

 ホシノ先輩がアナザーダブルに変身して窓から飛び降りる。

 

「性懲りもなく、許せないわ!」

 

 セリカも怒り心頭といったようで窓から飛び降りる。

 

 なんで(みんな)窓から飛び降りるんだ?危険すぎるだろ。

 

「ウォズ!」

 

 シロコ先輩が飛び降りて声をかける。

 

「よいのかい?」

 

「ん、全部守りたいから」

 

 ライドウォッチが光に包まれ、年が刻まれる。変身タイムだ。

 

 ジオウ(ジッォォォオオウ)

 

「こちらを」

 

 受けとれるように掲げたのはベルト。

 

 ジクウドライバー(ジクゥドライバァー)

 

 シロコ先輩は自己主張するベルトを手にとって腰にあてがう。自動でベルトが巻き付いて固定された。

 

「ん、変身!」

 

 ライドオンリューザーを押すことで本体が傾き、豪快にベルトが回される。スロットに装填したジオウライドウォッチのデータが読み込まれ、鎧が顕現し身体に巻き付いていく。

 

 ライダータイム(ゥライダータァイーム)

 

 拡散する装甲の名残がとても美しい。俺の仮面ライダー再現をした造形はもはや完璧だ!本家を知っている人でも興奮できる偽物の出来だと自負できる。

 

 仮面ライダージオウ(カメェェンライダァァアアジォォオウ)

 

 俺は、腕を挙げて賛美する。

 

「祝え!全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来を知ろしめす時の王者!その名も仮面ライダージオウ!…まさに生誕の瞬間である!」

 

 顔面のマスクにジオウとデカデカに文字が飾られ黒を基調とした線路のような前掛けが股下まで伸びている。

 

「こっちも変な格好だぞ!」

 

 ヘルメット団員が騒ぎだす。いくつもの弾丸がジオウに向かってくる。

 

「やれ!やれぇ!」

 

 ジカンギレード(ジカァンギレェェィド)!! ケン(ケェン)

 

 音声とともにジオウの手元に黒を基調とした剣が生成される。

 

「ふっ!やぁ!」

 

 息づかいとともに剣をふって弾丸を切り伏せた。紫色の残像がエフェクトととして空中に残留し消えていく。

 

「ん、使いづらい。えっと…」

 

 剣先を掴んで根元をひっくり返す。剣が銃へと変形した。

 

 ジュウ(ジュゥゥウ)

 

 紫色のエネルギー弾が銃先から発射される。その威力はヘルメット団の弾より明らかに強いものだった。

 

「これなら、いける気がする…!」

 

 順調に戦闘が始まったようだ。

 

 祝えたことに感動で身体が震える。こんなにも良いものだとはッ!我が魔王最高!!最高の─いや、最っ高のカタルシスだ!

 

 ちなみに、俺の 祝え! を誰も見向きもしていなかった。テレビ本編のように全員が止まったりとはいかないか…。……これは…演出、頑張ろっ!

 

"ホシノのアレ、凄いね。"

 

 タブレットの中では凄まじい勢いでヘルメット団員を射ち飛ばすホシノの姿があった。アナザーダブルのもつ歴史、メモリの力を存分に扱っている。

 

「数ヶ月前から使い出したんです。借り物だってホシノ先輩は言っていましたが、受け継ぎとウォズ君が言っていましたしシロコ先輩のモノなんでしょうあの力は」

 

"あれ?ウォズは戦闘に参加しないの?"

 

 対策委員会室内で指揮をとる先生とアヤネが会話している。先生はシッテムの箱の表示に疑問を持ったようだ。

 

「はい、ウォズ君は対策委員会ではないので」

 

"そうなんだ。届いた手紙を念押ししに来てたんだけど、メンバーじゃなかったんだね。"

 

「そ、そうだったんですか!?ウォズ君…!」

 

 目前の戦闘は続く。

 

「ウォズ!援護しなさい!」

 

「やれやれ…人が余韻(よいん)(ひた)っているというのに」

 

 セリカの前にマフラーを伸ばして遮蔽物(しゃへいぶつ)として防御する。飛んできた弾丸を見事に弾き、セリカはその影から反撃した。

 

"セリカと仲が良いね"

 

「シロコ先輩の恋がどうとか猫がなんだとか…なにか秘密の設定?がセリカちゃんにあるらしいんです。ウォズ君にとってセリカちゃんは第二のシロコ先輩という感じですかね」

 

「我が魔王の恋はキバウォッチの継承を始める(かなめ)だからね。まあ、ここの地(ダブルの歴史)にとってはキヴォトスの巫女でもある。」

 

 二人の後ろに現れて会話に加わる。

 

「わっ!急に出てこないでください!」

 

 アヤネの赤いメガネがずり落ちかけている。

 

"ダブル?"

 

「マフラーを巻いたのだから転移の予兆はあっただろう?」

 

 アヤネのタブレット画面をトントンと指差す。

 

「そういう問題ではありません!こ、心の準備があるんです…!」

 

 口論をやんわり押し退けて先生が口を開く。

 

"あはは。戦闘はもういいのかな?"

 

「ああ。もう終わることだろう」

 

 アナザーダブルがルナメモリの力で腕を伸ばし、残ったヘルメット団員に巻き付いてひとまとめに集合させる。

 

 フィニッシュタイム(フィニッシュッタアァァイム)

 

 ジオウがケンモードにしたジカンギレードのライドウォッチスロットにエネルギー満タンのジオウライドウォッチを装填し、必殺技を放つ。

 

 ギリギリスラッシュ(ギレィギレィスラアァッシュ)

 

 横なぎにジカンギレードが振られる。剣先から残撃が飛び、団員達を切り裂く。

 

「「「ぐあぁぁあああ!」」」

 

 様々な声をあげてぶっ飛ぶ団員達。

 

 ジカンギレードが振られ残像が出来る(さま)は時計の針を高速で回しているようであった。

 

「て、撤退!撤退ー!」

 

 復帰した団員が倒れている団員を背負って撤退しはじめる。

 

「えーい!☆」

 

 ノノミ先輩のガトリングが容赦なく撤退の陣を追撃していた。

 

 先生とアヤネが終わったとみたのか校庭に降りてくる。

 

「ねぇ、先生の援護もあることだしさぁ…追撃しない?」

 

 うへへ、と笑いながらホシノ先輩が声を皆にかける。

 

 アナザーダブルの()()ぎフェイスで言うと完全に悪役にしか見えない。

 

「やられっぱなしじゃいられないわッ!」

 

 そういうことになった。

 

 

───

 

 

 前哨(ぜんしょう)基地(きち)の襲撃のための移動を開始する。アヤネの特定した位置を頼りに進んでいく。

 

「あっそうだ、セリカ。勝手に我が魔王にバラした罰だ。あまんじて受け入れるんだね。」

 

 そういって髪飾りを彼女の髪にくくりつける。装飾に発信器付きになっているがそれとなくでわからないであろう髪飾りだ。

 

「な、なにすんのよ!…似合ってる?」

 

 発信器なのでもちろん(のち)の伏線のためのものである。

 

「そ─」

 

 言おうとしてポンッと、頭を叩かれる。

 

(痛っ、何ごと?)

 

 ニコニコとした顔がスリッパを片手にこちらを見ている。目がなんか怖いよノノミ先輩?

 

「秘密にしてたお仕置きです~♣」

「それはダブル相手に使いたまえよ…」

 

「そもそもこのスリッパは何ですか~?」

 

「私も詳しくないが、それは仮面ライダーダブルの所長のスリッパだね。金銭を管理する立場でね。ツッコミの時に使うものさ」

 

 ダブルの歴史を少し話す。所長は鼓舞や更正のためにもスリッパを振るえる人格者だから誇りをもって振るってほしいね。

 

「ウォズ君は私に管理されたいんですね☆」

 

 なぜかノノミ先輩はご機嫌になった。頬がゆるんでさらにニコニコとしている。

 

 やめろ!スリッパ素振りすんな!

 

「いや、W(ダブル)にウォズはいないよ。(ゆえ)に私が今、対策委員会と共に行動する必要はないと言え(r)─」

 

 セリカが髪をふりふりしながら突っかかってくる。

 

「ちょっと!無視するんじゃないわよ!似合うかって聞いてんの!あと、対策委員会の会計は私だし!」

 

 そんなにツインテール揺らしても…スリッパ振り上げ時ノノミ先輩の胸揺れの方が明らかにインパクトあったぞ。

 

「…ん、セリカ喜んでる」

 

「よ、喜んでない!シロコ先輩はちょっと黙ってて!」

 

「皆さん!!スキャン終わりました!基地にはヘルメット団員だけのようです!」

 

 会話を遮る大声がドローンから聞こえくる。俺達だけ楽しんでごめんねアヤネ。

 

「こっちも目視で見えてきたね~。じゃ、攻撃!」

 

 アナザーダブルに変身したホシノ先輩が生成された銃のトリガーをひき、エネルギー弾をぶっぱなす。

 

ゴオオオオ!!!

 

 轟音と共に基地が全てぶっ飛んだ。

 

"ふぉぉおおおっ!"

 

 こちらに届いた爆風によってふっ飛びそうになる髪を先生が必死で押さえている。もしかして先生ってカツラ?

 

 強いと炎・高性能な射撃、から(さっ)せられる。Wの歴史、ヒートとトリガーのガイアメモリだろうと予想がつく。

 

「…魔王なのに…活躍…」

 

「ああっ!!シロコちゃんがいじけちゃいました!」

 

 もうあいつ(ホシノ)一人でいいんじゃないかな。

 

 

───

 

 

 俺のマフラーで皆を包み、転移で対策委員会の室内へ帰ってくる。

 

 ほら、我が魔王!いつまでも落ち込まないで!

 

「凄かったわ!ホシノ先輩!!」

 

「うへへ~、それ褒めすぎだよセリカちゃん」

 

 指を銃の形に曲げて格好つける。

 

「なによそれ?」

 

 Wの主人公がやっていたポーズだ。

 

「ハードボイルドだろ?」

 

 ホシノ先輩も乗ってポーズをとってくれた。

 

「さあ、お前の罪を数えろ!、とね」

 

 パチパチと目をしばたかせるホシノ先輩。どした?

 

「私の罪…」

 

 ホシノ先輩、一人称が私になってますよ?

 

「よ、よくわからないけど、こんなに戦力があるならなんだってやれるわ!これで借金も─」

 

"借金?"

 

 あ゛っ、という声が聞こえるような気がした。雰囲気それくらい空気が凍ったのだ。

 

「…おじさんは、先生に話していいと思うなぁ~」

 

 ホシノ先輩が同意した。何が先生への信頼になったのだろうか。

 

「…」

 

 ホシノ先輩が俺に目配せをした後に我が魔王をみる。

 

 俺はウインクしてやった。

 

「はぁ…」

 

 どうやら違うらしい。ぜんぜん意図がわからねぇや。

 

「大人は何かしてくれた?ずっとずっと私たちで解決してきたじゃん!!!」

 

 感情的に言うとセリカは部室から逃走していった。

 

"…"

 

 先生が申し訳なさそうに皆を見てくる。

 

「実は約9億の借金があってさ。実際はもう少し多いけど」

 

 フォローのようにホシノ先輩が話し始める。

 

「返済が出来なければ銀行に明け渡さなければならないんです」

 

 お嬢様故かノノミ先輩は口が重そうに発言する。

 

「ほとんどの生徒達はこの学校を去っていったんだ。仕方ないことなんだけどね。数十年前の砂嵐で今やゴーストタウンだし」

 

「ん、悪徳金融が相手だった。毎月の利息で精一杯(せいいっぱい)

 

「復興のために有志で集まった部活ですから」

 

"顧問になるよ。何ができるかとは言えないけど、相談にはのれるから。一歩ずつ"

 

 発信器を見ればセリカが少しずつ遠ざかっていく。先生の顧問就任をきちんとドア越しに聞いてくれたようだ。

 

 

───

 

 

「先生連れてきて私が折れるとでも?ふざけないで、ホシノ先輩!」

 

 内緒でバイトするセリカの店、柴関ラーメンに対策委員会と先生とで客として訪れた。

 

 最初は動揺していた彼女だが、先生を見たとたん明らかに眉がつり上がった。

 

 おそらく朝からストーカーされたのであろうセリカは先生を警戒している。これがブルアカの先生ってやつだ!…最低だよ。

 

 

 

 

「お疲れ様です!!」

 

 そう言ってバイト場の扉を開ける。

 

 我ながら今日はよく乗りきったものだと思う。

 

 朝からシャーレの先生にストーカーされかけて自由登校を名目に振り切ったらホシノ先輩が先生までつれて対策委員会の皆をここに連れてきたのだから。

 

 いつの間にか回り込んでくる先生は正直気持ち悪かった。先生に言ったら笑顔になりそうだから言わないけど…。若干大型犬ぽさがあるわね。

 

 (しば)大将が客として受け入れたから仕方なく接客することになったし。キレながらも何とか注文をこなせた私自身を褒めたいところだ。

 

 柴大将はシロコ先輩のウォッチを見て、店内にいつの間にかあったらしいダブルウォッチをシロコ先輩に渡すなんてアクシデントもあったし。

 

 シロコ先輩はダブルウォッチを結局ホシノ先輩に渡してた。いいのかな?ウォズの話だとライドウォッチってシロコ先輩のモノなんじゃないの?

 

 …そう言えば、注意するだろうウォズはいなかったな。やっぱり対策委員会じゃないこと気にしてるのかしら?

 

 いつもだらけているホシノ先輩と一緒にいるし、一年生の途中で入学したこともあって結構変わっているヤツだと思う。最近はなりを潜めてた感じだったし。

 

「でも、昨日の戦闘では守ってくれたし、晴れ舞台って感じだったし。これからは元気になるかも。一緒に色々やれたらいいわね!」

 

 なんて深く考え事をしていたからだろうか、

 

「何すんッ─

 

 柴関ラーメンを少し離れてパンッと狙撃された。

 

 ─ッガハァ!」

 

 物量の勢いによって大した反撃もできず、私は気絶することになった。

 

 

───

 

 

「セリカちゃんが登校してないんだよね」

 

 ホシノから先生に話がつげられる。

 

 先生は部室の皆に、セリカの直近での話を聞くが情報は芳しくない。

 

「でも、まだ聞いてない人がいる」

 

「ウォズは…」

 

 シロコがスマホのトーク画面を見せる。トークには『自分達で解決しろ』と返答されていた。

 

"…黒幕?"

 

 困惑気味に先生のボケがはいる。

 

「ウォズがそんなことしてたらキツいお説教かな~」

 

 ホシノの前では洒落にならないボケであった。

 

"…えっと、なんでウォズは参加しないのかな?"

 

 先生もホシノのキツいお説教(物理)による圧を言葉の端であっても感じたようで露骨に話を変える。

 

「まあ、対策委員会に所属してないからね~」

 

 ホシノの建前はシロコによって()がされる。

 

「…ん、私が魔王だから」

 

"ウォッチのことだったよね?その魔王っていうのは"

 

 シロコがジオウライドウォッチを手に握り、呟くように話す。

 

「ウォズは私を魔王にするために行動してる。それが本来の歴史…規定路線だって。だから魔王になるために必然の騒動が起きることになる…はず」

 

 昨日のヘルメット団との戦闘を思い出している顔だ。

 

「えっ!そういうことだったんですか!?」

 

「うーん☆無理矢理止めるべきでしょうか?」

 

 アヤネとノノミがそれぞれ反応する。

 

「デメリットだけじゃないよ?こうして会議が悠長にできるのもウォズが焦ってないっていうことで~、つまりセリカちゃんがそこまで危険にはなってないってことだから」

 

"未来でも見えるのかな?ウォズは"

 

「多分そうだね~。本人は『この本の言う通りに』ってタブレットをなぞるだろうけどね」

 

 ウォズが手に持っていた緑の枠で囲まれた白いタブレットを想起する。昨日の戦闘中もマフラーで弾丸を()らす(かたわ)らタブレットに何か書き込んでいた。

 

「ウォズはね、知識を使うと記憶が消えるんだ」

 

 そんなことはない。しかし既に対策委員会のメンバー内での共通認識と化していた。ウォズの作成技術と実物説明の差が顕著すぎるためである。

 

"それなのにウォズに行動させるの?"

 

 真剣な顔で問う先生に、シロコは胸をはって答える。

 

「アビドスを良くしたい、皆の笑顔を守る魔王になる。…それに私はウォズの先輩だから」

 

 それは後輩に楽しく過ごして欲しいという願いが込められた返答であった。

 

「後輩の皆でなら乗り越えられるよ。先生もいるし~?」

 

「お~!☆」

 

「おー!…そ、それで、どうしましょうか…」

 

 未だ解決策がでないセリカ探索に頭を悩ませる。

 

"大丈夫、方法はあるよ。セントラルネットワークにアクセスする"

 

 皆の決意を聞いたからか、頼もしく笑う先生はシッテムの箱に指示を出しながら続けた。

 

"バレたら始末書だけどね"

 

 各地域のデータを痕跡として探すことでセリカを探す。A.r.o.n.a(あろな)が。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 アヤネが頭を下げる。

 

「ウォズ、聞いてるよね?これ」

 

 当然、シッテムの箱には盗撮盗聴のためのシールが未だ貼ってある。先生いるところ(メインストーリー)にいつでも介入する気が満々なウォズである。

 

「理由だけでも教えて?」

 

 虚空に向かって返答を待つ。

 

「彼女は歌姫でもあるがその前に、地球…ん゛ん゛、キヴォトスに眠る記憶にアクセスできる巫女だ。ダブルのガイアメモリも記憶が元になって作成されている。彼女をキヴォトスに陣取る衛星に1つでも接続できれば地上を全てのガイアメモリの力で破壊できる、これが計画といった所だね」

 

 マフラーでしゅるしゅると部室内に転移してきたウォズは観念したかのように返答する。話を進めるために出てきたらしい。

 

「ん、つまり変な通信装置があれば片っ端から破壊すればいい」

 

 少しずつ方針が固まっていく。

 

「うへ~、なるほどなるほど。それで?誰の差し金なのさ」

 

「発端は組織での地位確立といってもいい。奴の動機は結婚」

 

「け、結婚!?素敵なことをそんな手段で達成しようとするんて!」

 

「セリカちゃんの心まで傷つける気ですか!許せません!」

 

 アヤネが自身のメガネのふちをワナワナと掴んで怒りを(あらわ)にする。

 

「ユートピアメモリ保持者による独断。つまり、痴情のもつれだね」

 

「奴っていうのは?そのメモリ保持者はどこにいるわけ~?」

 

「さぁ…?」

 

「ええ!?いえ、そのための捜索ですもんね。頑張りましょう」

 

 アヤネが先生を見ながらふんすっ!と、やる気をだす。

 

「いや、ガイアメモリはライドウォッチに封じ込められているはずだよ。ダブルの歴史と共に、ね」

 

 会議室の空気がどんよりと固まる。

 

 つまり…今までのウォズの話はただの妄想であり─

 

「─役立たないってことね」

 

 ホシノのその言葉で会議は終了した。

 

"だから巫女のバイトを…お姫様…"

 

 先生だけが納得したようにぶつぶつ呟いていた。

 

 

 

 

 セリカを救い出すのは順調だった。道中の壊れた暴走ドローンや暴走ロボットを相手に無双する勢いで対策委員会一行+先生はヘルメット団の車を襲撃し、涙目の子猫ちゃんを保護した。

 

 セリカの端末の場所、廃墟になったエリアでチンピラことヘルメット団が集まっており、わいわいと報酬を話題に華をさかせている。

 

 トラックの荷台に詰まれたセリカを助けるためアビドス郊外(こうがい)を渡り出てゆく一行。砂漠に線路が敷いてあり、対策委員会-(先生もいるけど)-がそこを通るのが原作してる感じしてウォズは感動したものだ。

 

 改造戦車flak41の対空砲を箱から顔を出した子猫ちゃんがくらってしまい、ワァ…泣いちゃった…ッ!

 

「さあ、お前の罪を数えろ!」

 

 そのダブルのセリフ気に入ったの?ホシノ先輩?

 

 ぶちギレ一行は包囲網を殲滅して帰還。後に倒れたお姫様な子猫はシロコに保健室に連れていかれることとなった。保健室へ出荷よ~!

 

 戦闘での破片は違法機種であり、その流通ルートを調べれば不自然な装備の安定感も解消できるとのこと。

 

 夜にセリカを保健室へ見舞いに来た先生は、不自然なそれらを伝えたりメンバーの心配や想いを伝えたりと先生していて、見事セリカとの仲が解消されていた。

 

「大人も頼りになるじゃない!えへへ、これからよろしくね、先生!私も頑張るんだから!!」

 

 発言が完全にチョロインなのはどうにかした方がいいと思うが…

 

 

───

 

 

「では、これより対策委員会定例会議を開始します!」

 

 アヤネの号令に、わーわー、パチパチ、とメンバーが騒ぎ立てる。

 

「会計のセリカちゃ…黒見セリカさん!」

 

 先生が会議に参加しているためかアヤネはキビキビとしている。

 

「は、はい!アビドス高等学校対策委員会の会計担当、黒見セリカよ!毎月788万円の返済を我が委員会は達成しているわ!」

 

"どんなことをしてるのかな?"

 

「指名手配犯の報酬金が最近の主ですね☆」

 

「あとは、セリカちゃんのバイトも~」

 

「そ、そうだけど!やめて!!」

 

 セリカは手をブンブンとふって照れ隠しをしている。アヤネは光らせたメガネをクイッと指で押し上げて会議を進める。

 

「皆さん、案を出してください」

 

「特別な鉱石が使われたコレ!このブレスレットを持っていれば幸運になれるんだから!!がっぽがっぽ、よ!!!」

 

 チラシを見せながらセリカが熱弁を始める。胡散臭い文字が羅列されたチラシに、皆の反応は微妙である。

 

「悪い大人に騙されて人生取り返しのつかないことになっちゃうよ~?」

 

「いや!これは本物よ!本物!!私、2つも買ったし!ウォズがここにいるのが証拠よ!」

 

 ふすーっ、と成果を見せびらかす子猫のようにブレスレットでウォズを指すセリカ。お行儀悪いヤツめ。

 

「何でいるの?いつも『運営管理部』だから~って言って参加してないよね?」

 

「もちろん借金への良い案があるからさ。先生という外からの視点で見えてくるものがこの会議にもあるだろう?今回は私もそれを手助けしようと思ってね。故に、幸運のブレスレットは関係ない」

 

「そんなぁー!お昼抜いて貯めたお金だったのに…」

 

「それでも参加の理由には弱いと思いますが…いえ、今は会議会議。次、案がある人!」

 

「はい~はぁい!生徒の数は学園の力になる。他校の登校中なバスに乗り込んで入学届けにサインするまで出さないっていうのはどう?」

 

「つまりバスジャックか、王の選定だね。流石、アナザーライダー!」

 

「ん、選定?」

 

「そうとも。ツアーと称して集められた子供たち、最後部の座席に陣取るアナザーライダー。『子供たちの中に、時空を超え、過去と未来をしろしめす時の王者の候補者がいる』と告げ『死を賭した試練』は()の者によって与えられた。バスが暴走し時間が止まり助けのない中で、力を発揮し生き残った。それこそが貴女だ。我が魔王」

 

 語りだしたウォズによる突然の告白に、シロコは目を見開く。ホシノの脳裏には出会った頃のボロボロのシロコがよぎっていた。

 

「そんなわけない!シロコちゃんは─」

 

 言葉を遮って続ける。

 

「─凍えるような風が吹くあの日。その首にマフラーが巻かれた。歴史の管理者の証が」

 

 凍える寒さの中、マフラーを巻いてあげたあの時が想起される。シロコのまるで全て終わったかのようなあの目は─

 

「─ッ!…そんなの偶然で何の証明にもならない。マフラーだって管理者のなんとか(なん)かじゃないよー?」

 

パンッ

 

 頭をスリッパで叩かれる。

 

「あいたぁ!ノノミちゃん?なんでぇ!」

 

「近いです!唐突な展開は、先生も話についていけなくて戸惑ってますよ」

 

 ホシノとシロコは乗り出した身を遠ざけられる。

 

「そうよ!シロコ先輩も近いぃー!ウォズも固まってるんじゃないの!」

 

「あっ、セリカ。でも、もっと私を…過去を知りた─」

 

「はい、ウォズ。案をどうぞ」

 

 アヤネの有無を言わせない声でゴタゴタが無理矢理終息させられる。ご立腹だ。

 

「我ンが魔王こそ最高最善最大王なのだから!バトロワだ!」

 

"バト…ロワ…?"

 

 本を掲げて至高さをアピールする。

 

「広大な土地を使って集団戦を行ってもらう。勝ち残ったらアビドス高校と対決できるバトルロワイヤルだ。夢中の戦闘で少しばかり他の自治区で戦ってしまうことも期待できる!」

 

「うへ~、ウォズはお説教ね」

 

 ホシノ先輩の目が怖い。フォ、フォローしなくては。

 

「領域も広がり、いずれ未来において結成される我が魔王に対するレジスタンス共を苅る!良い案だろう?」

 

「最高最善?」

 

「違うのかい?最低最悪になりたいのなら、我が魔王の望みのままに」

 

「ん…。いや、最高最善ならいい…」

 

「今よりも多く生徒がいれば議員も輩出(はいしゅつ)できるし連邦生徒会での発言権も与えられる。負けた者はアビドスに在籍してもらおう」

 

「大丈夫だよシロコちゃん。おじさんがアナザーにならなければいいだけだから」

 

「それは…大丈夫。私は最高最善になる。でも…」

 

「心配しないで。アナザーライダーにならない方法はもう見つけてある」

 

「え?」

 

 アヤネがビシッと指をウォズに差し向ける。

 

「却下です!それ侵攻じゃないですかっ!はい、次の案がある方!」

 

 待ってましたとノノミが服の写真を机に広げる。

 

「はーい!スクールアイドルです◇その名も『覆面水着団』!」

 

 ノノミは器用にポーズをとっている。

 

「アビドスアイドルのクリスティーナだお♠️」

 

「おおっ!おじさん興奮する~。セリカちゃんとか期待の歌姫だ~」

 

「えぇ!?嫌よ!アヤネちゃんも嫌でしょ?」

 

「そ、そうですね。流石に恥ずかしいというか…はぁぁあああ!」

 

 アヤネの頭から湯気が吹き出して見える(幻覚)。

 

「ん、アヤネは意外と乗り気」

 

「ち、違います!シロコ先輩だって恥ずかしいですよね?!」

 

「私は王様だから。これも予行練習」

 

 シロコは言葉とは裏腹にマフラーで口を隠してモゴモゴと(しゃべ)る。

 

「私はやらない!やらないからね!!ホシノ先輩!はい、次の案いきましょ!次!!」

 

 シロコが目を光らせてスケッチブックを机に広げる。

 

「ん、銀行強盗。5分でウン億は行ける。逃走ルートもバッチリ」

 

 スケッチブックには銀行強盗のための詳しい作戦や銀行の情報、防衛設備や警備員の配置等が記載されていた。

 

「おすすめは2番ルートを通るのがいい。近い銀行なら4番が警備員が薄め」

 

 肩をわなわなふるわせてメガネがガタガタ揺れている。

 

「何言ってるんですか!?」

 

 アヤネの怒りゲージがMAXだ。

 

「出揃ったし、先生に決めてもらおうか~」

 

 うまい!先生ならアヤネの怒りを鎮めてくれるだろう。

 

"え゛!?"

 

「スクールアイドルですよね☆」

 

「ん、銀行強盗に決まってる」

 

「いや、レジスタンス殲滅作戦だね!我が魔王の領土を広げよう」

 

「ブレスレット爆買い!!運で全部解決よ!」

 

"…じゃあ、格好良いバトロワで。あのタイムマジーンって言う大型変形ロボットも使おう!"

 

 童児にかえった目で先生は決める。

 

「いい加減にしてくださーい!」

 

 アヤネのちゃぶ台返しが炸裂した。

 

 

 

 

 はむっ…はむっ…ごくごく…

 

「こんなことしても…はぐっ…許してあげないですから…もぐもぐ…」

 

 アヤネのご機嫌直しのため柴関ラーメンへ。ノノミとホシノで両手に華なアヤネは、両側からご飯を食べさせられて(なお)ご立腹の様子。

 

「ウォズ、あんた注文は?」

 

 ただの店員と化したセリカの言葉に考えて肩をすくめる。

 

「580円のラーメンを3杯、おごりで」

 

 お金を渡す。

 

「いいの?ウォズ」

 

「君たちへのおごりではないよ。奢られたいなら先生に奢ってもらうんだね」

 

「???」

 

"!?"

 

 それぞれが雑談に華を咲かせる。

 

"ウォズにはシャーレの仮名義生徒として同行してもらったり、当番として手伝ってもらったりしてるから"

 

「ん、ウォズがよくアビドスにいないのも納得」

 

 話していると柴関の扉が開かれる。

 

「あ、あの…失礼します…」

 

 帽子を被った紫色の髪の少女がおどおどとした態度で来店する。会話途中のウォズはマフラーで転移した。

 

「ん、ウォズが消えた」

 

「うーん、今しがた来店した方のことが好き、とかでしょうか?☆」

 

 握りしめられ続けたノノミの(はし)が悲鳴をあげている。

 

「それよりも大変なことじゃないかなぁ。ノノミちゃん、それ以上はお箸が折れちゃうよ」

 

「ま、また物騒なことですか!?食べ終わってないんですけど!」

 

「先生に食べさせてもらっちゃう~?」

 

 シロコはジクウドライバーをコッソリと腰に巻いて机の下でウォッチを構えた。

 

 セリカの案内で4人が店に入ってくる。

 

「ほら、600円以下あったじゃない!偉いわハルカ!」

 

 赤髪のスーツ姿の少女が来店する。後頭部からはえた(うわ)向いた左右の角がキリッとした雰囲気を後押ししている。

 

「あ、ありがとう…ございます!!!流石、アル様です!!」

 

 先ほどの紫髪の少女が嬉し気にペコペコと赤髪の少女に頭を下げる。

 

「散々探したじゃん!お腹すいた~!」

 

 言葉とは裏腹に元気に入ってきた白髪のゴスロリ姿の少女は赤髪の少女の隣に座る。

 

「はぁ…良かった。なんとかなったね」

 

 白髪に黒メッシュの氷を連想させる雰囲気のパーカー姿の少女はホッとしたように席についた。

 

「えーっと、580円のラーメン一杯!…箸4(ぜん)で…」

 

 4人を代表してつげられた注文にセリカは戸惑う。

 

「4膳ですか…?4(はい)ではなく?」

 

「ご、ごごご、ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

「依頼の詳細を聞くべきだったね…。報酬達成リスクで1杯か全員分かを考えることになるなんて…」

 

「た、食べればいいのよ!達成すれば報酬が出るんだから!そうよね、ムツキ室長!」

 

「クフフ~!まあ、一人150円のラーメンはないし、これしかないよねー!アルちゃん!」

 

「こら、外ではアル社長でしょ!!」

 

 セリカに柴大将が手招きする。

 

「あのお客さんたち結局はお金ないんじゃないの?」

 

「た、確かに…」

 

「手が滑るけど自然に出してあげてね」

 

「それって…!…私に言い案があります!」

 

「良いのかい?それって…」

 

 ウォズから受け取った奢りのお金を柴大将に見せる。

 

「はい、私達のじゃないって言ってましたし。多分アイツも喜びますから」

 

 盛り盛りのラーメンをもってテーブルへおくセリカ。

 

「こ、これは注文ミスでは!?」

 

 赤髪の少女、アルがぎょっとして柴大将を見る。

 

「いやー、どうも手が滑っちまってな。食べてくれはしねーか?」

 

「て、手が滑ったってこんなのは…」

 

「セリカちゃんの惚気(のろけ)話が凄くてなー。手も滑るってもんさ」

 

「た、大将!?」

 

 セリカの赤面を背景に4人は話し合う。

 

「はぁ…多分、お金ないって勘違いされてるよね。まあ普通はこんな変な依頼あると思わないだろうし」

 

「カ、カヨコ課長、えっと、その…一杯ではありますから…これを食べれば…報酬は貰えるはずです」

 

「面白~い!騙して達成するのアウトローじゃなーい?」

 

「んん゛~!うぐぐぐ…!ッ…ありがたくいただきましょう」

 

 手を合わせ、行儀よく麺を(すく)って食べ始めるアル。ムツキ、カヨコ、ハルカもそれに続いて一杯のラーメンを食べ始めた。

 

「美味しい!?なんて美味しいのッ!!こんな美味しいラーメンが辺境にあるなんて!」

 

「流石アル様です!このような場所を予見していたとは!」

 

「と、当然よ!フフフッ」

 

「アルちゃん冷や汗たれてるよ?はいムツキちゃんのあーん♪」

 

「ダメだよムツキ。自分で食べないと依頼達成にならないかもしれないから。どうしてもっていうなら依頼の後で私が社長に食べさせておくから」

 

 ガヤガヤとする4人にホシノが声をかける。

 

「変なことで苦労してるみたいだねぇ。実はこっちもでさぁ」

 

「あ、あら?そうなの?えーと、常連さん?」

 

「うへ~、ここのラーメン美味しいでしょ?うちの学校近いんだよねぇ」

 

「それは良いところにあるのねぇ!」

 

「そうそう。良い立地良い後輩…なんだけど一癖持った後輩もいてねぇ」

 

「あら、そうなの?うちも変な依頼主がいてね─」

 

 守秘義務を守りながらもアルは話していく。

 

「─書道?おじさん初めて聞くなぁ。確かに変な依頼だね」

 

「練習しろって依頼よ。なんでも変態な先生なら高く買ってくれるから、とか」

 

「へぇー…」

 

 食べながらもムツキ達は話す。

 

「ウォズとかいう依頼主っていつもアルちゃんを甘やかす依頼してくるよねぇ」

 

「甘やかすというか誘導にも思えるけど…」

 

「なんか私達を下に見てるのに報酬は高いもんね」

 

「社長へも下に見てるけど私達とは扱い違う風だから。アイスキャンディ貢いでるし。私達は敵…みたいな」

 

「えー?そしたらアルちゃんも敵じゃないの?同じ便利屋68なのに」

 

「ウォズの中で何かのランクがあるのかもね。ともかく敵扱いではあるんだからいつかは依頼を断らないと面倒なことになる」

 

「だよね~。っていうかさ、気づいてる?」

 

「はぁ…社長が今話してる人たちの制服でしょ?」

 

「…アビドスだよねぇ、確実に」

 

「い、いいんでしょうか?」

 

「クフフ!面白いから黙っとこーよ♪」

 

「はぁ…社長、楽しく話してる…次の依頼の対象なのに」

 

 

 

 

 

「楽しかったわ!借金返済頑張ってね!!」

 

「ありがとう~!依頼頑張ってね~!」

 

 すっかり打ち解けた便利屋68のアルと対策委員会のメンバー達は柴関ラーメンを出てそれぞれ向かっていった。

 

「便利屋の人たち良い人だったわね!」

 

 バイト終わりのセリカが陽気に笑顔を咲かせる。

 

「ね~。ウォズの影がチラホラ見えてたけど~」

 

「ん、やっぱり一度ウォズに友好関係を聞くべき」

 

「ウォズといるとどんどんセリカちゃんが考えなくなっているような気がする」

 

「ア、アヤネちゃん!?それは良い意味で言ってるのよね?」

 

「ウォズの未来視からおこす行動って突拍子もないですから!◇」

 

「それってフォローなの?ノノミ先輩」

 

"未来視か…"

 

 『先生。

私が信じられる大人である、あなたになら─』

 

「「「先生?」」」

 

 振り返る生徒達。どうやら立ち止まっていたらしい。

 

"今、行くよ!"

 

 連邦生徒会長の言葉がリフレインする。彼の未来は彼女の目指す未来と同じなのだろうか。…いや、私は生徒を導くだけだ。

 

 

 

 

「良い人たちだったわね!」

 

 満足気な社長にムツキがニヤニヤと笑っている。

 

「そろそろ言っちゃおうかなー?」

 

「どうしたのよ」

 

「ねぇ…社長、あの制服はアビドスのだよ」

 

「アビドス?」

 

「つ、次のターゲットです…アル様!」

 

 ハルカの一言がとどめになったのか、白目をむいてわなわなふるえる。

 

「な、なな、なんですってー!!!」

 

 

 

 

 画面で陸八魔(りくはちま)アルのギャグ絶叫を確認した後に依頼達成として報酬の金額が入ったケースをドローンで便利屋68の頭上へとちょうど落とすと、対策委員会メンバー+先生が入ってくる。

 

「およ?こっちの部屋にいたの~?」

 

 対策委員会の室内で窓を開けてふちに腰掛けるウォズの姿を見つける。

 

「もちろん。私なりの配慮と思ってくれ。君たちがすぐに窓から飛び出せるように、ね」

 

「???」

 

「飛び出すって何よ?」

 

「ん、ウォズがさっき急に転移していなくなった理由は?」

 

「すぐにわかるとも」

 

 ザッザッザッ、ガダダダッ、と音が響く。

 

「校舎より南15キロメートル地点付近で大規模な兵力を確認!」

 

「ヘルメット団ですかぁ~!?」

 

"いや、これは…"

 

 警戒してゆっくりと地点にたどり着いた対策委員会メンバーは驚いた様子だ。

 

「あれ、さっきの依頼主のウォズだよね?社長」

 

「あの依頼の意味は敵対するなということだったの…でしょうか…あわわわ」

 

「え~?ヤバくなーい?」

 

「黙りなさい!金払いのよさだけでこれからも意味不明な依頼を受け続けたくなんてないわ!別口のお得意様を探すに決まってるでしょう!!」

 

「うわー!アルちゃん言うねぇ!クフフッ」

 

 ざわざわと雇われたであろう傭兵達が後ろで騒いでいる。

 

「こ、こんな数!どうすればっ!!」

 

 上空から人数を把握できてしまうアヤネが焦った声でメンバーを見る。

 

「恨むなら今まで依頼していたウォズにしなさい?たんまりと報酬を払ってくれた良い依頼主だったわ。まあ、今からは敵だけど」

 

 先程の白目をむくギャグ顔が嘘のように、美しい微笑を浮かべる彼女は完璧に悪役だった。

 

「フッ!恨むなら自身の悪運だろう?こんなもの我が魔王にとって試練にすらなり得ない。さあ、我が魔王!覇道の一歩へと…!」

 

「ん、変身!」

 

 仮面ライダージオウ(カメェェンライダァァアアジォォオウ)

 

 ジオウライドウォッチでスロットが埋まったジクウドライバーが回転し、鎧がシロコの体を覆う。ベルトの回転と共に背景の景色が一回転する演出が美しい。

 

「そう…。あなた仮面ライダーだったのね。なら、私達も仮面ライダーの力を使ってあげる。古代に世界の征服に手をかけた王の力を、ね」

 

 対策委員会は目をぱちくりとさせる。

 

「古代に?」

 

「世界の?」

 

「征服に?」

 

「手をかけた?」

 

 ジオウが驚きの声をあげる。

 

(おう)!!」

 

 アル達の体から銀色のメダルが溢れだし、背後の傭兵生徒たちに殺到する。

 

「うわぁぁあああ!」

 

 シャリンシャリンとメダルが空を飛ぶ。

 

「メダル使いだ!ああああ゛あ゛!!」

 

「ひやぁぁあああ!」

 

「いやだああぁぁぁああ!!」

 

 傭兵生徒達のコメントに怒るように便利屋は呟く。

 

「その名前、嫌いなのよねぇ。本当はグリードって呼ぶべきなのよ」

 

「でもアルちゃん、グリードって名前も嫌いじゃん!」

 

「ふっ、そうね…!私達は便利屋68!社長の陸八魔(りくはちま)アル」

 

「室長の浅黄(あさぎ)ムツキ♪」

 

「課長の鬼方(おにかた)カヨコ…」

 

「ひ、平社員の伊草(いぐさ)ハルカ、です!」

 

「私達、便利屋68が!いずれ仮面ライダーオーズをも取り込むアウトローよ!!」

 

 一人一人の額にメダル程の穴が空きメダルが一枚吸い込まれる(ように見える。ウォズの作った偽物ゆえに)。

 

「その欲望、解放しなさい?」

 

 投入された箇所から今度は人型が飛びだす。薄汚れた包帯をぐるぐると巻いた黒い人形。腕を平行に突き上げてゾンビのようだ。

 

「これはヤミー。成長する存在でね、宿主の欲望が貯まるまで待たなきゃいけないの」

 

 アル達がメダルを取り出し、へし折る。

 

 ペキリと音を立てて地面に落ちたメダルの破片1つ1つから成り損ないのようなヤミーが生成される。

 

「これはクズヤミーよ。成長しないからメダルもとれないけど、時間を稼ぐには充分ね」

 

 傭兵生徒達の体が動くようになる。全ての傭兵生徒達はクズヤミーに囲まれたために逃げることが出来なくなり、便利屋に従うしか選択肢がなくなった。

 

「傭兵共ぉ、撃ち始めなさい!クズヤミーぃ?前進!目標はアビドス(せい)!!」

 

 アルの号令で戦闘が始まる。

 

「うへ~、凄い数」

 

 ホシノが走り回り手に持つ盾でアビドス生の被弾を軽減するが、多勢相手には一瞬の妨害にしかなっていない。

 

「私ではこの数は捌けません、先生!指揮を!」

 

"わかった。戦闘に集中して"

 

 アヤネと指揮を変わった先生も奮闘してシッテムの箱を操作する。

 

 対策委員会メンバーの動きが迷いなく滑らかな行動へと変化する。先生の指揮があるのとないのとでは段違いだ。

 

「こんな風にお金を使うなんてッ!私達が正しい使い方を教えてあげます!」

 

 むんっ!とやる気をみなぎらせてガトリングの如く射撃するノノミ。

 

「いらないお節介。これも契約の範疇だから。本当にやりたくないなら傭兵も突撃命令はきかないだろうし」

 

 傭兵に指示を出しながら口角を上げてアルの背中をみやるカヨコ。

 

 ジャコンッ!という音が傭兵達と便利屋から鳴る。

 

「あんた達、サービス受けてないのね!なら、時間はこっちの味方じゃない!私達は料金払わなくていいもんねー!」

 

 リロードしたことで、砂で再現された弾丸を相手が使用していないと知ったセリカは得意げだ。運営管理部のあらゆるベータテスターとしてアビドス生は利用料金が無料になるよう登録されているからだ。

 

 つまり有限の弾vs無限の弾という構図に必然的になる。弾や武器のサービス等のみという使用制限があるものの()()()()()()()()という事実は、あまりにも他の勢力や個人に対して有利であった。

 

「そう?─

 

 パチンッ、とアルが指を鳴らすタイミングで、立っていただけのヤミー達がことごとく姿を変えて進化する。

 

─奇遇ね、私達も時間が味方してくれるの」

 

 進化したヤミー達はそれぞれの特殊能力でもってアビドスメンバーを攻撃し始めた。

 

「どうどう~?この子達って私達便利屋が投入した相手によって能力が変わるんだぁっ!それに─

 

 ムツキがヤミーの体に手を突き刺す。抜き取った手には大量のメダルが握られていた。

 

─どんどんメダルが増えてくれるの!か弱くて可愛いヤミーも今これだけの数が全て一つになったら私達便利屋の一人には届くかもしれないねぇ!クフフッ!」

 

ブォンッ!!

 

 ムツキの真横を何かが高速で通りすぎ、残像を残す。

 

シャリンシャリンッ

 

 過ぎ去る影に押し出される近くのヤミー同士がぶつかり合い、互いに攻撃を当てあう光景がそこらじゅうでみられる。

 

ジャラジャラジャラ

 

 割れたメダルから出てくるクズヤミーも影が通りすぎると目にも止まらない(うち)に消滅していく。

 

「うわぁ!そんな力ずくあり得るのぉ!?早い、凄いねぇ!」

 

 ヤミーと傭兵生徒を高速で薙ぎ倒し盾を振りまわすホシノが、虎の爪に変形した腕を振るってくるムツキに鋭い目で口を開く。

 

「可愛いとか、成長とか、本気で言ってるわけないよね?おじさん先輩の身としては、後輩の前でそんなふざけたことは学ばせられないんだよねぇ!!」

 

 ジカンギレード(ジカァンギレェィド)

 

 ジュウ(ジュゥゥウ)

 

 紫のエフェクトを(まと)った時間の弾が、傭兵達とヤミー達を一直線で貫通する。傭兵は生徒であるため衝撃を受けるだけで気絶しているが、ヤミーはメダルを撒き散らしながら体が爆散していく。

 

 一発一発を同じ所に何度も撃ち込むことで、必殺技でなくとも効果的に相手を戦闘不能に追い込んでいく。ジオウの頭部前面の裏側に表示されるディスプレイが、シロコにその技術を確実に達成できる力へと押し上げていた。

 

「ウォズも戦って!」

 

 戦うメンバーを見下げ校舎から見ているだけのウォズ。我が魔王の成長のためという名目(めいもく)でまったく戦う気がなかった。

 

「参加する気はないよ?我が魔王…君の覇道には─」

 

「おい!校舎ぜんぜん傷つかねーぞ!!」

 

「タネがあるに決まってんだよ、こういうのは」

 

「これじゃね?皆ー!これこれ!!」

 

 一部の傭兵によって校門の左右に配置された召喚箱が攻撃される。動く時は強力な存在の情報をコピーして生成する召喚箱も、動作させなければただのオブジェ。反撃手段がないただの箱は容易く壊されてしまう。

 

「─!?まったく、バグったらどうしてくれる!!」

 

 壊されないために、箱に勘違いで攻撃している傭兵を急いで拘束する。

 

 戦闘に参加することとなったウォズを見て、セリカも 調子が出てきた!! と、やる気をさらに(みなぎ)らせる。

 

「ウォズも素直じゃないんだから!よーし、これならコテンパンに叩き出してやれるわッ!」

 

 銃をうつセリカの前で時空が歪む。

 

 フィニッシュタイム(フィニッシュッタアァァイム)ギリギリスラッシュ(ギレィギレィスラアァッシュ)

 

 飛んでいく残像の針が歪む。バツンッという音と共に時空は元に戻った。

 

「うひゃぁぁあっ!な、何よ!」

 

 ケンモードにした必殺技でギリギリのタイミングで(ふせ)いだジオウ。同じ剣を警戒した結果の産物である。

 

「よく被害を出さずにすんだわねぇ。流石は仮面ライダーってことなのかしら?」

 

 いつの間にか剣をもったアルが持ち手の少し上となる投入口から3枚コインを入れている。

 

「メダジャリバーもオースキャナーで振れば結構儲けられるのだけど。これだけじゃダメそうね?」

 

 アルが紫のメダルを軽く握り混み地面に手を突っ込む。恐竜の頭を模した紫色の武器、メダガブリューを地面から生成して取り出す。

 

「やらせない!」

 

 セリカのEXスキルによる高火力な一撃が、壮大な雰囲気によって取り出されたメダガブリューを粉砕する。

 

「ふふっ!セルメダル一枚ですぐに撃てるのよ」

 

 再び紫色の恐竜セルメダルを握り地面からメダガブリューを生成する。幻想の存在すら概念として内包する負のあり方がまたも武器として取り出される。

 

 プトティラノ必殺(プゥットォッティラァーノヒィッサアァーツ)

 

 ちなみに校舎含めた地面はウォズが不可視のバリアを展開しているため、地面からメダガブリューを取り出すのはアルの筋力である。キヴォトス人の(ちから)ヤベーィ!

 

「くっ!量が多すぎてッ…」

 

「よく耐えるね。専念したから?実力か先生の力か…」

 

 メダルの津波を操るカヨコにアヤネが3機のヘリを遠隔操作してどうにか押し留めている。指先1つで形と勢いの変わり()(くぐ)る波に、的確に狙撃しアビドスメンバーの回復も操作で行う激務同士の対戦だ。

 

「倒れてください倒れてください倒れてください倒れてください倒れてください倒れてください倒れてください倒れてください倒れてください…!!」

 

「えーい☆体幹と先生の指示した所に移動することでなんとか前進を防いでますが、いずれこれでは…」

 

 メダルを吸収してはやく重く硬くなり突進してくるハルカに、マシンガンによる大量の乱射で押し返すノノミ。ミニガンを軽々しく振り持つノノミだが、先生の指揮下に入ったためかゲーム性能による会心率頼みの攻撃になってしまっている。

 

 ノノミは、傭兵生徒とセルメダルを取り込むハルカにミニガン(筋力)で押さえるのが精一杯となる。ハルカは圧しきれるとわかってなどいないが敵を前にしたからと、がむしゃらに発砲しながらノノミへと突進する。

 

「ホシノ先輩!アナザーライダーになって!このままじゃっ、皆が!アビドスが!」

 

 仲間のおされる状況にシロコが声を尖らせてホシノへ叫ぶ。

 

「それはできないよ。シロコちゃんが、そんな未来は来ないって安心できるように…」

 

 ジオウであるシロコが最低最悪の魔王になる未来、そんな未来に連れていくかもしれないアナザーライダー。脳裏に作られる悲惨な未来がホシノの選択権を(せば)めていた。

 

「…はぁ…はぁ」

 

 ホシノが葛藤により息をきらす。正確に攻撃を(さば)きながら鋭く反撃するその姿はより葛藤の重さを感じさせる。

 

「あはは!!仮面ライダーだったのッ!手を抜くなんて余裕、舐めてくれたものだよねぇええ!!!」

 

 さらにムツキの攻撃が激しさを増す。速さの増したそれを紙一重(かみひとえ)の位置で悠々と避けるホシノは、攻撃のついでに盾でモブ傭兵とヤミー同士を衝突させアビドスメンバーを守りながらムツキに反撃する。

 

「その通りさ!我ンが魔王の記念すべき継承の儀!!ライドウォッチを継承する時だ!!!」

 

 我が魔王がダブルウォッチを取り出すのを期待した俺は、逢魔降臨暦(おうまこうりんれき)を広げ撫でながら興奮して叫ぶ。

 

「でも、未来を変える方法はあるよ。…アナザーをっ、辞める」

 

 ムツキをぶっ飛ばしたホシノがダブルウォッチを取り出す。ウォズを一瞬見たホシノは確信したようにウォッチのボタン部分に指をそえる。

 

「!?なぜお前が持っている!?我が魔王の物だぞ!やめろッ!!一人では変身できない!!」

 

 忠告を無視してダブルウォッチが押される。ウォッチから伸びた光がホシノの体を覆って、腰に光から形作られたベルトが巻き付く。

 

ジョーカー(ジョォォオオカアァァアアア)

 

 光から掴みとったガイアメモリのボタンを押してベルトへと押し込んで装填する。待機音声も聞かずにホシノは装填部分を傾けた。

 

「変身!」

 

 黒を基調としたアーマーがはじけるようにホシノの体全体を覆った。鳥が翼を広げたようなエンブレム型ガジェット、エクストリームが空中に姿を現しカシャンと音をたて地面に落下して転がる。

 

「ジョーカーウォッチに…仮面ライダージョーカーなってしまった…!」

 

 ウォッチが押された以上、俺が裏から操作して停止しない限りは起動し運用されてしまう。ライドウォッチは俺が作った偽物であるゆえに。

 

 それを騙して我が魔王にウォッチやもろもろを渡している状況であるのでむやみに説明したことに矛盾した急な停止はできない。

 

 ホシノの体からこぼれ落ちたアナザーダブルライドウォッチが風に吹かれている。

 

「私はもう罪を数えたよ。…さあ、お前の罪を数えろ!」

 

 仮面ライダーダブル特有の指差しポーズをとったホシノに、キラキラと目を輝かせたアルが答える。

 

「今から作るのよッ!アウトローにね!!」

 

 アルがダブルに、仮面ライダージョーカーにかけだす。

 

「ムツキ!交代よ!!」

 

 突っ込んでくるムツキにジオウとセリカが射撃する。

 

「は~い!っよ!ほっ!」

 

 一撃も当たらずに避けられることに焦る二人。

 

「ムツキちゃんは~、そういうメダルの特性だから!遅いとそもそも勝負にならないよっ!!」

 

 ムツキ達を見て、カヨコも動く。

 

「ハルカ、私達も交代!下手に見える波の壁より不可視の衝撃波の方が()く。ヘリを落として」

 

「は、はい!カヨコ課長!あの、えっと…」

 

「わかってる。相手が体幹で耐えてるだけなら…私の津波で全弾包み込む!」

 

 便利屋の効果的な配置交代によって、さらに劣勢に追い込まれるアビドス生。

 

「な、なんで!?ッ!アァっ!」

 

 必殺技のマキシマムドライブがサイクロンメモリだけスロットから勝手に弾かれる。それはジョーカーの誘導と攻撃で破壊され続けたヤミー達のセルメダルを全て吸収することで早く強く精密に強化されたアルにとって明確な隙だ。

 

「お得意のライダーキックもそこまでなのかしらぁッ!」

 

 いくつのもガイアメモリを変更して使用することで連発されるマキシマムドライブを避け続けたアルが、ついに好機とばかりに攻撃する。

 

「遅い!遅いねぇ!仮面ライダーがこんなものならオーズも楽勝かもねぇ!!」

 

 ムツキのトラの大爪がジオウの顔を目掛けて振り下ろされる。

 

「ダブル、ウォッチを渡せッ!継承するんだ!!我が魔王!!!」

 

 促すウォズを無視してダブルとアルは攻撃を試みあう。

 

「メダルよこしなさい!仮面ライダー!」

 

 アルが右手に炎を渦巻く形にしてセルメダルの塊となった拳をつきだす。

 

「お願いです、先輩!私に力を貸して!!─ユメ先輩ッ!!!」

 

 言葉虚しくスロットにはじかれたサイクロンメモリとアルのセルメダルによる火球が融合する。

 

 融合したソレは二人の放つ風圧によって校門へととばされる。

 

「うおっ!あぁああ!何なになにぃ~!」

 

 突然、ジオウの顔を目掛けて振り下ろされた爪が当たる寸前でムツキの体が急激に後ろへと引っ張られて空中に浮く。ムツキの体からは大量のメダルが後方へと流れだしていた。

 

「ムツキ、手を伸ばしてッ!カヨコ、覆って!ハルカ、()()()止め置きなさい!」

 

 融合したソレを核にしてセルメダルを取り込み巨大な存在へと成長をとげていく。便利屋68は一塊(ひとかたまり)となり、水流でメダルが吸収されないように防御を、振動で地面全体に()()()()()()()自ら()りつくことで浮くのを阻止していた。

 

「アルちゃん…ありがとう」

 

 アルの腕の中でムツキが目を潤ませてぎこちなく笑う。ムツキは幼馴染みの頼もしさと自身の不甲斐なさを隠しきれていなかった。

 

「いいのよ。…それより、雇った傭兵達が…!」

 

 吸収されたセルメダルと共に傭兵達も半透明な巨大な存在に吸い込まれていく。吸い込まれる生徒はヤミーの宿主となっている者のみであるとアルは結論づける。

 

 ヤミーも気絶した生徒も吸収されていくが、ヤミーを破壊された気絶している生徒は地面に残っている。起きている生徒は再び宿主になる可能性があるためか吸収されていく。クズヤミー達はメダルにもなれない矮小な存在のためなのか吸収されずスルーされている。

 

「っ!面倒な…!」

 

 校門に設置した箱が破壊されており、機能が暴走しているとウォズは理解する。大方、我が魔王に目を向けた隙に傭兵共が箱を破壊したことで観測機能が暴走したのだろうとあたりをつける。

 

 さっきの丁寧な融合演出を見るに、偽の衛星ゼアの情報を壊された箱が偏って受信したのも含まれていそうな暴走具合だ。

 

 ある程度吸収し終えたのか、形がとれるようになったからか、アル達グリードへのセルメダル吸収が()む。

 

 地面に残っているのはアビドス生、ウォズ、先生、便利屋68、気絶した元ヤミー宿主の傭兵達、クズヤミーのみとなった。

 

 ついに巨大な存在の輪郭が炎を肉体としながらハッキリと形作られ、ジオウのようなデフォルメ容姿に肩から上がバッタのような頭部となる。まるで仮面ライダー一号(いちごう)だ。

 

 オーズのメダルとガイアメモリを核にして、下半身のバイクと上半身が仮面ライダー一号が融合したような炎の見た目。その正体を、 作品:仮面ライダー として知っているウォズだけが正確に判別できる。

 

「仮面ライダーコア…!こんな、ことが…」

 

 巨体を見据えて先生が言葉を発する。

 

"総力戦(そうりきせん)だね"

 

 





 セリカにプレゼントした髪飾り回収のために保健室による。

セリカ「き、きたの?…えっと、えっと、…先生来てたわよ」

 表向きは先生のセントラルネットワークだが、髪飾りは誘拐事件での影の功労者だ。

ウォズ「タカキも頑張ってたし。何やってんだよ!団長!!」

セリカ「ふふっ、何言ってんのあんた?相変わらず意味わかんないヤツ。…はぁ、ベッド使う?」

ウォズ「ネタが通じねーよな!そりゃそうだよな!!」

セリカ「ほら、添い寝してあげる♪」

ウォズ「ネタだっての!ネットミームぅぅううう!!!」

 力ずくで引きずり込まれた。発信器付き髪飾り回収はきっちり達成した。
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