冒険記録~ギルド『疾風の狼』~   作:弧埜新月

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こんかいは とても なんざんでした



ミドルフェイズ・妖精との戯れ

 ノーラと合流し、再び三人になった彼女達は、魔獣の襲撃を辛くも凌ぎながら森を抜け、再び十一番を訪れていた。祠の側では彼女達を待っていたのか、初めから実体化した妖精達が思い思いの姿で宙に浮いている。最初にキャサリン達に気付いたのは、腹を上にしただらけきった姿で暇そうに横笛を回していたエウテルペだった。彼女は横笛をキャッチすると、反り返った姿勢のまま重力に引かれて逆さに垂れ下がる淡い青の髪を気にもせず、ひらりと手を振ってくる。

 

「おかえり〜」

「エウテルペ、ちょっとだらしなさすぎ」

 

 流石に目に余るのか側にいたメルポメネが顔を顰めたが、言われた方はどこ吹く風だ。

 

「ええ〜? いいじゃん今更さぁ」

「良くないわよ。妖精としての品位が疑われるわ」

「品位とかどうでもよくない?」

「そうそう。楽しければそれでいいの」

 

 そのまま見るからにいい加減な方(エウテルペ&テルプシコラ&エラト)比較的そうではない方(ポリュムニア&メルポメネ)の言い争いが始まる。それを横目に、また始まったとばかりに肩を竦めたクレイオが三人の元へ滑ってやって来た。

 

「戻って来ましたね、人間。村人達と話はつきましたか?」

「はい。村の方も再び盟約を守ることに同意しました。私達が魔獣を倒した後、詳しい内容について話し合うために村長がここに来ることになっています」

「それは重畳」

 

 キャサリンの言葉に、クレイオは素直に笑みを見せる。

 

「これで見窄らしい家ともおさらばできそうですよ」

「村長には、貴女と話をするように伝えています。問題ありませんか?」

「ええ。それが一番問題が起こらないと思いますよ」

 

 クレイオは後ろの三馬鹿に一瞬目をやってから頷いた。彼女達は他の二人の周りを飛び回りながらぎゃーぎゃーと煩く騒いでいる。どうにも建設的な話が進んでいるようには見えなかった。

 

「村人の反応はどうでしたか?」

「そうですね……村長は盟約のことを知らず、被害が出たことに憤っていましたが、人間側の盟約が果たされていなかったから、ということで納得してもらえたと思います。関係の再構築には前向きに臨んでくれると思いますよ」

「なるほど、なるほど。少なくとも村長は、村側に非がある、という認識を持った訳ですね」

 

 これは好都合ですよ、とクレイオは悪い笑みを見せる。それは妖精というイメージからはかけ離れた、厭世的で真っ黒な笑みであった。

 

「えっと……?」

「何せ村には盟約の詳細が伝わっていません。これを機に、少しばかり条件を吊り上げても分かりはしませんよ」

「あ、あのー……?」

 

 ククク、と含み笑うクレイオに、キャサリンは乾いた笑顔を引き攣らせる。

 

「……我々の依頼主はあくまであの村だ。あまりに無体を言うようならこちらにも考えがあるが」

「ちょっとした冗談なのですよ。そんな怖い顔をしないで欲しいのです」

 

 後ろで立っていたアイビスが口を挟み、クレイオは表情を苦笑に変える。

 

「こちらとて、人間とは良好な関係を保ちたいと思っているのですよ。快適で恒久的な住環境は取り戻したいですから。まぁ、要求は多少盛ると思いますが」

「盛るのか」

「盛ります。先にも言いましたが、ワタシ達には不満が溜まっているのです。これまで長いこと放置されながらも、前回まで盟約に従い続けて来たのです。ここで少し強請る位は許されて然るべきでしょう」

 

 そう宣うクレイオの後ろで、いつの間にか言い争いを止めていた妖精達がその通りだとばかりに頷いている。

 

「そもそも、以前の盟約を結んだのはあの村の人間ではないのです。よくよく考えてみれば、今回は言わば新規契約のようなもの。以前の契約と同じ条件を結ばねばならない謂れはないのですし、時が立てば条件が変わることも良くあることなのです。レートが変わったとでも言えばいいですか?」

「それは、確かに」

「勿論、無体なことは言わないと約束しますよ。欲を出したばかりに、相手に臍を曲げられるようでは本末転倒ですから」

「ならばいいが……」

 

 そう言われてしまえばこれ以上何も言えず、アイビスは引き下がった。

 

「村の出方は分かりました。貴方方へ要求していたものはどうですか?」

「ああ、花なら俺が持っている。貴殿らの欲しい花はこれで良いか?」

「可愛い……」

 

 最終的に花を纏めて預かっていたアイビスの元に、最初に花を希望した妖精であるメルポメネが真っ先に近寄って来た。前回の話し合いであまり発言しなかったことから消極的な性格と思いきや、そうでもないらしい。手を伸ばした彼女に求められるまま花を手渡すと、クレイオ以外の妖精が彼女を囲んでその手を覗き込んだ。

 

「おお、いいじゃんいいじゃん」

「でも……ひのふの……五個しかないね?」

「一色分は最初に渡しただろう」

「ケチだなー」

「後で、村長がたくさん持って来てくれる筈ですよ」

 

 不平を漏らすテルプシコラに、キャサリンが苦笑で応える。唇を尖らせつつ、まぁいっかー、と頷く様子に、アイビスは次だとばかりに声を上げる。

 

「戦いを望むものは?」

「ボクー!」

 

 花の側からぱっと離れたエウテルペが手を挙げ、

 

「私とー」

「それから私ちゃんだぜ!」

 

 軽くリュートを持ち上げたエラトと、ハープを小脇に抱えて胸を張る(何故かドヤる)テルプシコラが参戦の意志を示す。

 

「相分かった。三対三ならば公平であろう」

「よーし、じゃあ、早速やろうか!」

「待ちなさい」

 

 前のめりになったエウテルペの腕をクレイオが抑える。

 

「そちらの人間、何やら酷いことになっていますが」

 

 クレイオの指摘にキャサリンは表情を少し曇らせると、彼女の目を向ける方──これまで一切口を挟まず、後ろで静かに佇むだけだったノーラを見た。

 

 ──そう、ノーラは血塗れだった。村人から入手した服は再び大きく裂け、身体の前面が首元から短く破れたスカートの裾までが真っ赤に濡れている。

 

 彼女はここに来るまでに受けた二回の襲撃において、逸早く魔獣の存在に気付き、雄叫びを上げて真っ先に切り掛かって行ったのだ。気迫は十二分。しかし、気迫だけで通用するような甘い相手では当然ない。いずれもあっさりと躱されてしまい、攻撃に全振りして回避も防御も疎かになっていた彼女はガラ空きになっていた胴や首に強かな反撃を喰らうこととなった。それも、蘇生魔法を必要とする程の。服の破損や血はその結果であった。しかし、

 

「えー、こんくらい大したことなくない?」

 

 エウテルペはそんなノーラを改めて見て、少し不満そうに首を傾げるだけだった。すかさずクレイオが口を出す。

 

「人間はワタシ達とは違うのですよ。服や装備がああも壊れる程のダメージを負えば、身体の方も壊れて動けなくなるのです」

 

 クレイオがそう人間と妖精の常識の違いを諭す。霊的な側面もある彼女達にとって、肉体への損傷はそこまで大きな痛手にはならないようだった。彼女達がノーラの様子を見ても何も騒がなかったのはその辺りが原因らしい。

 

「見たところ、回復魔法の使い手はいるようですが」

 

 ちらり、とクレイオの赤い瞳がキャサリンを向いたので、軽く頷いて応える。頷きを返したクレイオは、改めて三人を見渡した。

 

「万全でないのなら、先に回復しても構いませんよ」

「大丈夫です。問題ありません」

 

 食い気味に、きっぱりと答えたのはノーラだった。いつの間に抜いたのか、逆手にした短剣を両手に握る彼女を見て、ふむ、とアイビスは一つ頷く。

 

「その好意に甘えよう。暫し待て」

「アイビスさん!? わたしはやれます!」

「たわけ。傷こそ癒えた(HPは回復した)かも知れぬが、ここまで戦闘が続いている。そろそろ気力(MP)が尽きる頃だ」

「……そうですね。そろそろ、私も魔力(MP)*1が心許なくなってきました」

 

 反駁したノーラをあしらうアイビスの言葉に、キャサリンも僅かに眉尻を下げながら同意した。

 

「決まりだな。MPポーションを飲め。足りなければ俺が持っていた分を渡そう」

「アイビスさんはいいんですか?」

「俺は抑えていたからな。お前達程消耗はしていない」

 

 キャサリンにそう応え、アイビスは背嚢からMPポーションの瓶を取り出すと、下唇を噛むノーラに押し付ける。

 

「焦るな。周りが見えなくなる」

「……はい」

 

 ノーラは何かを押し殺すような表情でポーションを受け取ると、封を切って口を付ける。その様にアイビスは小さく嘆息すると、視線をキャサリンに投げた。言いたいことは伝わったのか、同じくポーションを飲んでいたキャサリンはそっと目を伏せる。何か声を掛けるべきと分かっているが、なんて掛けて良いか分からない。そんな顔を彼女はしていた。

 暫く無言のままポーションを飲み──何度も回復魔法や蘇生魔法を使った所為で消耗の激しかったキャサリンなどは四本も飲んで少し気分を悪くしていた──空いた瓶を背嚢にしまったところで、万全になったと判断したのか辺りに思い思いに漂っていた妖精達が集まってくる。

 

「もう準備はよろしいのですか?」

「ああ」

 

 アイビスが短く応じると同時に、待ちきれないとばかりに三体の妖精が前に出た。

 

「待ってました!」

 

 手にした得物(ハープ)には似つかわしくない獰猛な笑みを浮かべたテルプシコラが一歩先んじ、長い緑髪を靡かせて激しいステップを踏み始める。その猛々しくも華のある動きに、記憶を刺激されたアイビスがほう、と声を上げる。

 

「その動き、《ステップ:ファイア》*2か。バードかと思っていたが、よもやダンサーとはな」

 

「楽器も得意だけどね! 私ちゃんの大得意はこっちだぜ!」

 

 ハープをぶんぶんと振り回しながらも、微塵もステップを乱すことなく動き回るテルプシコラはにかりと笑った。

 

「テルプシコラばっかり目立ってずるいぞー!」

「よーし、こっちも……クレイオ、援護よろしく〜」

 

 テルプシコラの立ち位置から一歩引いた所に立ったエウテルペが両手を振り上げて文句を言い、隣に並んだエラトがリュートを構えながら後ろを振り返った。だが後ろに下がっていたクレイオは、お前は何を言ってるんだ、とばかりに冷えた視線を彼女に返す。

 

「こちらは約束通り花を受け取りました。なのに手を貸してしまってはルール違反というものなのですよ」

「そうケチくさいこと言わないでさー」

「ケチとかそういう話ではないのですよ。いいから、後は貴女達だけで何とかするのです」

「えぇー……じゃあ、メルポメネの応援歌もなし?」

 

 すげなく断られたエラトは上目遣い気味にちらり、と別の妖精へ目線を送るが、

 

「なし……」

 

 受け取った花を眺めるのが忙しいとばかりに、視線を返しもせず断ってくる。まるで興味が無さそうだった。

 

「全く……見苦しいわよ。所詮お遊びなんだから、与えられたルールの中で全力を尽くしなさいな」

 

 離れて様子を見ていたポリュムニアにそう言われ、エラトはちぇー、と舌を出して前を向く。

 

「……始めて構わんか?」

「いいわよ、始めて」

 

 アイビスの問いに、完全に傍観者の面持ちのポリュムニアがそう返す。勝手にゴーサインを出されたことに再び文句を言おうと彼女達が後ろを振り返り掛けたところで、ぶわりと総毛立つような気配が広がった。首筋を這うようなその気配に慌てて妖精達が目を戻せば、目と鼻の先に四刀を構えて突っ込んで来たノーラの姿が。意識を外したのはほんの一瞬。その一瞬でここまで距離を詰めて来たらしい、と彼女達が状況を理解するより早く、ノーラが手にした刃を振るう。

 

「うあああああああッ!!」

 

 妖魔としての力を隠そうともせず、叫び声を上げながらノーラは広い範囲を四刀で我武者羅に薙ぎ払う。その声は、攻撃を仕掛ける側というよりかはまるで、追い詰められた側が発するような喚声のようではあったものの、全身のバネと柔軟さを存分に活かしたその一撃は、油断していた妖精達の身体を存分に斬り裂いた。

 

「うわわわッ!?」

「ちょっとー!?」

 

 手応えは十分。しかし妖精達は斬られた場所を押さえて痛がりこそするものの、この手応えであれば本来噴き出すであろう血や臓物が飛び散ることは全くない。効いていないわけではなく、そういう存在ということなのだろう。

 

「やったな! お返しだぜー!」

 

 だからなのか、ちょっと顔を顰めただけですぐ気を取り直したテルプシコラが一足飛びにノーラとの距離を潰すと、そのステップの勢いを利用して巻き込むようにハープを叩き付けてきた。

 

「どっせーい!」

「くっ……!?」

 

 全力で短剣を振り切り、体勢を崩したノーラには避けられない。咄嗟にクロスさせた短刀を割り込ませるのが精一杯だった。キャサリンの《プロテクション》が間一髪間に合うも、特殊な足運びにより威力を増したハープは張られた障壁を易々と砕いてノーラの軽い身体を吹き飛ばす。

 

「くぅぅぅうッ!?」

「チャーンス。追撃しちゃえ!」

 

 それを見ていたエラトが後ろに下がりながらリュートを掻き鳴らすと、彼女の頭上に小さな光の球が次々と浮かび上がった。一音毎に増えていった光弾は、10を超えた辺りでエラトが強く弦を弾いたりゃんっ、という音に合わせて吹っ飛ばされた勢いを殺しきれていないノーラに殺到する。

 

「く……舐めるなぁッ!」

 

 ノーラは見えざる手で地面を叩き、転がるようにして辛くも攻撃範囲から逃れた。体勢を崩した彼女を庇うように、キャサリンが楯を構えて前に出る。

 

「ノーラさん、攻めが強引になってますよ! 一旦落ち着いて、体勢を立て直してください!」

「っ……! はい……!」

 

 ノーラは言葉に殴られたような顔をすると、唇を引き結んで頷いた。その様子にキャサリンは眉根を寄せるも、すぐに視線を前に向けてメイスの柄を握り締める。視線の先では、エウテルペが手にした横笛に唇を当てようとしていた。

 

「ボクも追い打ちを──」

「──そうはさせんぞ」

 

 派手に動いたノーラを隠れ蓑にして気配を断ち、側面から接近したアイビスが槍の穂先でエウテルペの手を掬い上げるように打ち払った。完全に彼を意識から外していたエウテルペは笛を頭上に弾き飛ばされてしまう。

 

「ああっ!? ボクの笛が!?」

「おっと、後ろはやらせな──どわぁっ!?」

 

 後ろの異変に気付いて振り返ったテルプシコラの足を、振り下ろした槍で強かに叩いてひっくり返すと、アイビスは槍を手元に戻して構え直した。左手を添えた穂先を引き絞る先は、少し浮かび上がり、わたわたと落ちてくる笛をキャッチしようと手を伸ばしているエウテルペの、その喉元。丁度良い高さにある細い首に、ぴたりと照準を合わせた。

 

「我が槍の一撃を受けるがいい」

「ぐぺッ!?」

 

 一切容赦せず放たれた槍の一突きが、妖精の白い喉元に鋭く突き刺さる。衝撃でもんどり打って転がったエウテルペは、観戦していたポリュムニアの足元に倒れて止まった。

 

「あたたたたたた……」

「アウトよ、エウテルペ」

「えっ、ボクまだ戦えるけど!?」

「あんな風に喉を突かれたら、普通の生き物は死ぬのよ」

 

 だから大人しくしてなさい、と、ポリュムニアは慌てて立ち上がろうとするエウテルペの頭を小突く。不満いっぱいの顔で胡座をかいて不貞腐れるエウテルペだが、その姿は多少砂塗れになった位で傷らしい傷も付いていない。

 

「やはり、傷は付けられんか……」

 

 伸び切った体勢を素早く整えながら、アイビスは目を僅かに細めた。先程のノーラの後先考えないような攻撃程ではないにしろ、自分の一撃とて首一つ貫けぬ程易い代物ではない自負がある。ましてあのように細い少女の首なら尚更だ。突いた感覚からして硬い(物理防御力が高い)という感じでは無かったから、おそらく通常の武器では傷付けることが出来ないのだろう。

 

「これは、仮にまともにやり合う事態になれば骨だったな」

 

 独りごちたアイビスはすっ、と一歩横に身体を引く。その引いたところに、おりゃー! と気合いを入れたテルプシコラのハープが豪快に空振った。

 

「……戦い方はまるで素人だが」

 

 能力やスキル自体の熟練度の高さは見て取れるのだが、根本的に戦い方がなっていないのだ。テルプシコラの武器の振り方──ハープを武器と言っていいのかは謎だが──は癇癪を起こした村娘が感情に任せて振り回す盆か何かのようだし、獲物を弾かれたエウテルペは目の前のアイビスではなく飛ばされた笛の方に気を取られてしまっていた。残るエラトも脱落したエウテルペの方が気になるようで警戒が疎かになっており、同じことに気付いたのだろう、死角側から回り込むようにして駆け出したキャサリンに気付けないでいる。

 結局エラトが接近するキャサリンに気付いたのは既に彼女がメイスを頭上に振り上げた後のことで、

 

「覚悟してくださいっ!」

「ちょっまっ……ぷぎゅッ!?」

 

 エウテルペのことで遠慮はいらないと分かったのだろう、全力で振り下ろされたメイスがめしっっ! とエラトの顔面にめり込んだ。勢いの止まらないメイスはそのままエラトを後頭部から地面に叩きつける。どう考えても凄惨な結果を生むしかない一撃だったが、キャサリンがぽんっ、とどこかコミカルな音を立てて陥没した顔面からメイスを引き抜くと、冗談のように顔面を凹ませたエラトが目を回していた。常軌を逸したその姿にどんな顔をすればいいかよく分からなくなったキャサリンは引き攣った困り笑いを浮かべると、戦闘中だというのにゆっくりとメイスを降ろし、膝を折って思わず問い掛けてしまう。

 

「えっ……と……。……大丈夫ですか?」

「……めっちゃいたい」

「あ、あはは……」

 

 顔を凹ませたまま返事を返すエラトのシュールなその姿に、キャサリンは乾いた笑い声を上げた。もう笑うしかないのだろう。

 

「……本当に遊びなのだな、これは」

 

 先程のポリュムニアの台詞を思い返しながら、そうもなるか、とアイビスは一人納得する。命の危険が無く必要も無いのなら、どうしても娯楽の域を出なくなる。楽しければそれでいいのだから、技の研鑽は不要だし、判断も興味優先で問題ない。そこまで考えたアイビスは自身のやる気が削げるのを自覚したが、直後に振るわれたハープを反射的に躱して思い直す。

 

「逃げてばっかりでずるいぞー! 真面目に戦えー!」

「……確かにその通りだ」

 

 意識の差はあれど、それが手を抜く理由になってはならない。戦いだろうが遊びだろうが、相対した以上は真剣に向き合うのが礼儀である。そう思い直したアイビスは槍を構え直して軽く頭を下げた。

 

「あいすまぬ。では改めて、真面目にお相手いたそうか」

「そうこなくっちゃ」

 

 テルプシコラは左右にステップを踏みながら獰猛に、けれども楽しそうに笑う。アイビスも応えて口許に僅かな笑みを浮かべた。

 

「それじゃーいくぜっと……おぉ!?」

 

 ハープを持ち上げたテルプシコラが、唐突に横に大きく跳んだ。半瞬遅れて二人の間に割って入るように突っ込んで来たノーラが矢継ぎ早に四刀を振るうも、テルプシコラは踊るような動きでそれ等を回避してしまう。短刀全てを振り切って勢いの死んだノーラは、くるりとステップを決める妖精を見据えて悔しそうに舌打ちした。

 

「さぁ、今度こそこっちの番だ! 意地を見せるぜー!」

 

 回避後も左右に動きながら激しいステップを繰り返していたテルプシコラは、不敵な笑みを強めると更に一段動きのギアを上げた。そして急にステップを踏む向きを変えると、稲妻のような動きで一気にノーラとアイビスの間に滑り込む。意表を突かれた二人が反応出来た時には、既に彼女は腰溜めに武器(ハープ)を構え、最後の踏み込みを終えた後だった。

 

「おらーッ! 妖精舐めんなぁーッ!」

「くぁ……ッ!」

「ぬ……」

 

 片足で踏み切って跳び上がりながら、突進の推力を全て打撃力に変換して勢い良く振り抜かれた一撃を、ノーラとアイビスはその場で武器を構えて受ける他無かった。再び十字に構えた短剣で弾こうと試みたノーラは体勢が不十分だったこともあり、威力を受け流し切れずに大きく後ろに弾かれる。一方のアイビスも衝撃を殺せずに後退したが、彼にはノーラと違うことが三つあった。一つは純粋な体格差。二mを超す長身とその鍛え上げられた肉体は単純に重く、それだけ弾かれにくくなる。二つ目は体勢で、攻撃直後で姿勢の崩れたノーラと違い、万全に近い防御姿勢を取れていた。

 

 そして三つ目は、精神的な余裕である。

 

「成る程。今のは良い攻撃だった」

 

 斜めに槍を跳ね上げられたアイビスは無理に衝撃に逆らわず右手を離すと、左手一本で支えてぐるりと身体を回し、数歩下がる頃には再び両手で槍を構えた元の姿勢に戻っていた。素早く冷静に対処した彼の前には、空中に飛び上がったまま振り切ったハープの反動を御し切れていないテルプシコラが、結末を悟ったのか苦笑しているのが見える。

 

「我が本気の一槍を返そう」

 

 アイビスはそう言うと、一瞬身体を引いてから雷光の如き突きを放つ。空中で身動きの取れない妖精は胸のど真ん中にそれを受けて吹き飛ばされ、後方にあった木の幹に背中から叩き付けられて止まる。べちゃりと地面に落ちた彼女は、よろよろと頭を上げるとアイビスに向けてぐっ、と親指を立てて見せた。

 

「……ナイス、ファイト!」

「うむ。最後の攻防は、良き戦いであった」

 

 アイビスの頷きにやり切った笑みを浮かべたテルプシコラは、がくーっ、と頭を落として──効果音は自分で言っていた──倒れ伏した。なんだかんだ元気そうである。が、兎にも角にも妖精側の三人が倒れたことを見届けたクレイオが、パチ、パチ、パチ、と手を鳴らしながら歩み出てきた。

 

「お見事です。では、約束通り傷を癒しましょう」

 

 冷めた表情のクレイオがそう後ろに話を振ると、控えていたメルポメネが愛でていた花をそっと崩壊した石畳の上に置いて、悲哀の片仮面を付けながら静々と進み出てきた。

 

「歌う……」

 

 何をするのかと見守る三人の前でぽつりとそう漏らした彼女は、小さく深呼吸をするとそれまでのぼそぼそとした喋り方から一転して朗々とした歌声を上げる。その歌詞こそ三人の全く知らない言語であったが、身に付けた仮面に反して明るく力強さと希望に満ちたその旋律は聴いているだけで力が湧き出てくるようだった。

 

「綺麗ですね……」

「うむ……良き歌だ」

 

 目を閉じて息を吐くキャサリンと、頷くアイビス。

 

「痛みが引いていくな……これも呪歌の一種か」

「その通りです。よく効くと思いますよ。メルポメネの歌は」

「そのようだ」

 

 見れば、ばったりと倒れていたテルプシコラもむっくりと身体を起こしているし、顔の潰れていたエラトも陥没した鼻を引っ張って──実にシュールだ──元に戻している。ノーラも手をにぎにぎとして身体の調子を確かめているようだった。そうこうしている間に曲はクライマックスを迎えたようで、高音のロングトーンを力強く綺麗に出し切ったメルポメネが小さく息を吐く。優雅な仕草で一礼をすると、キャサリンが惜しみない拍手を贈る中、彼女は再び少し陰気な雰囲気を纏って花の方へと戻っていった。

 

「治療、感謝する」

「約束ですからね。当然のことをしたまでなのですよ」

「そうか。では、魔獣討伐の助力の件だが」

「全く、せっかちな人間ですね。分かっているのですよ。ほら、手を出すのです」

 

 片目を閉じて嘆息したクレイオに促されるまま、アイビスは左手を差し出した。クレイオはアイビスの身長に合わせて浮かび上がると、その手の上に握り拳を乗せる。その手には何も握られていないようだったが、彼女が手を広げて離すと彼の掌の上には虹色に光り輝く小さな珠が残されていた。

 

「これは……?」

 

 アイビスの側に寄ってきたキャサリンが珠を見て首を傾げる。

 

「ワタシ達の力を集めた物です。持って近づけば、獣の力を大分削げる筈ですよ」

「それだけでいいんですか?」

「ええ。それで奴の穢れを浄化できる筈ですから」

 

 事も無げに答えるクレイオ。面倒だと言っていた割には随分簡単なのだな、とキャサリンは思ったが、直ぐにこの珠を作るのが面倒なのだろうと思い直した。

 

「前にも言いましたが、この珠に出来るのは奴から穢れを取り除くことまでです。穢れの影響を受けて強くなった獣自体は、貴女方が倒す必要があるのですよ」

「分かっています。それが私達の仕事ですから」

「そうですか。良かったですよ、貴女達が、ついでに獣の始末もしてくれとか言い出さなくて」

「そんなこと、言う訳ないですよ」

 

 何を言ってるんですか、とキャサリンは返すが、クレイオはただ肩を竦めただけだった。彼女も色々なことを経験した結果、このような捻くれた性格になったらしい。

 

「さて……後は頑張ってくださいとでも言いたいところですが、折角です。一つ、お節介を焼きましょうか」

 

 そう言ったクレイオの目が向いた先は、ずっと俯いているノーラだった。

 

「そこの人間。いえ、貴女は妖魔でしたかね? まぁ面倒なので人間で良いでしょう」

「……いきなり何ですか? もしかして喧嘩売ってます?」

「喧嘩なら既に売って負けてるのです。いいから聞くのですよ」

 

 剣呑な声色で噛み付くノーラを、つまらなそうな顔でクレイオはあしらい言う。

 

「穢れを祓ったとて、獣はそれなりに危険な相手です。足手纏いでいるのはやめるのですよ」

 

 反応は劇的だった。

 

「貴女にッ……! 貴女に、何が分かるって言うんです!?」

 

 激したノーラが今にも獲物を引き抜いて飛び掛かっていきそうな形相で号ぶ。反射的にアイビスが首根っこを捕まえなければ実際飛び掛かっていったかも知れない。首筋をアイビスに掴まれたことで、激発していたノーラの気勢が一瞬萎縮したように弱まる。その様子をクレイオは鬱陶しそうに見詰めていたが、その前に、ノーラを庇うようにして眉を吊り上げたキャサリンが立った。

 

「訂正してください! ノーラさんは、役立たずなんかじゃないです!」

「ええ、元々はそうなのでしょう。しかし、仲間想いは結構ですが、であれば尚更、先程の彼女の行動を思い返して欲しいのです」

 

 クレイオは、感情の読めない瞳でキャサリンの目を真っ直ぐに見詰めた。

 

「後先も仲間との連携も考えない行動。あんなもの、自分と仲間を危険に晒すだけなのです。あれで足手纏いでないと本当に言えるのですか?」

「……それは」

 

 言われたキャサリンは咄嗟に返す言葉が無く、唇を噛み締めた。足手纏いはともかく、それ以外の部分は内心彼女も危惧していたことだったからだ。

 

「貴女も分かっているなら言えばいいのです。傷付けることを恐れて踏み込まないのはただの怠慢なのですよ」

 

 何も言えなくなったキャサリンをばっさり斬ったクレイオは、そこを退くのです、と彼女を押し退けると再びノーラの前に立つ。ノーラは二人のやり取りを見てすっかり意気消沈していたが、目の前に来たクレイオを見て濡れた瞳に僅かに反抗的な色を浮かべて見返した。

 

「さて、貴女の何が分かるか、ですか。月並みですが分からないと答えましょうかね。ワタシは貴女とは違うのです」

 

 一々癪に障る言い方をするクレイオに、ノーラの目に再び怒りが灯る。しかし、彼女がそれを言語化するより先に再びクレイオが口を開いた。

 

「ですが、想像することはできます。当ててみましょうか、人間。貴女は何か大きな失敗をしましたね。とても大きなミスなのか、それなりの失態を繰り返したのかは流石に分かりかねますが。両方ですかね?」

「失敗って……ノーラさん、あれは」

「おっと、今は黙っていてください。ワタシの話を聴くのですよ」

 

 ノーラに向かって口を挟みかけたキャサリンに掌を向けて牽制したクレイオは、しかし思い当たるフシはあるようですね、と頷いた。

 

「では、それでこう考えたのでは? 自分は役立たずだ。このままでは捨てられる。だから急いで役に立つ所を見せなければ、と……違いますか?」

 

 つらつらと、まるで心を覗きでもしたかのように言葉を並べるクレイオに、ノーラは歯を食い縛って俯いた。色が無くなる程に握り決めた両手は細かく震え、目には涙が盛り上がっている。

 

「その反応、図星のようですね」

 

 クレイオは、いいですか、とノーラに向けて人差し指を立てた。

 

「最初に言いますが、貴女はアホです」

「アホ!?」

 

 突然貶され、思わず顔を上げて目をまん丸に見開いたノーラに、そうです、と続ける。

 

「貴女は臆病者です。ついでに言うなら孤独耐性の低いかまってちゃんなくせにコミュニケーション能力はクソ雑魚なタイプですね。付け加えるなら視野と見識が狭いために自信過剰になりがちで、他人を根拠無く侮るタイプ……平たく言えば世間知らずのクソガキという奴なのですよ」

「な、な……」

 

 そのままつらつらと面罵され、ノーラはそれまで感じていた怒りや悔しさ、諦観といった感情全てを忘れて唖然となった。拍子に溜まっていた涙が一筋頬を溢れ落ち、それまでずっと冷淡な目で話を続けていたクレイオが、それを見付けて僅かに眦を下ろす。

 

「貴女はこれまで、周りの顔色を伺いながら生きてきたのでしょうね。貴女は逸れの妖魔です。きっと、色々な所で排斥されてきたのではないですか?」

 

 彼女は、淡々とした声色をほんの少し緩めて、言う。

 

「貴女の物言いは、言わば貴女達冒険者の言う十フィート棒(危険を避けるために地面を叩く棒)のような物。敢えて挑発的な物言いをして、自分がどこまで受け入れてもらえるのか探っていたのです」

「……分からないと言った割には、まるで見てきたように言いますね?」

「ワタシのかつての趣味は人間観察ですので。貴女自身の考えを直接読むことは出来ないですが、貴女のような子供であれば飽きる程見てきた。それだけなのですよ」

 

 せめてもの抵抗とばかりに嫌味ったらしく言うノーラだったが、しれっと返されて頬を膨らませる。クレイオは少しだけ笑った。

 

「貴女は幸運な子供なのでしょう。貴女はきっと、受け入れてもらえる所を見つけることが出来た……だから、再び追い出されるのが怖いのです」

「……その通りです」

「そんな時に、貴女は大きな失敗をしたのです。今の居心地の良い場所を、このままでは失ってしまうかも知れない。だから貴女は焦っているのです」

 

「……その通りですよッ! でも! だったらどうすればいいんですか!?」

 

 歌うように述べたクレイオに、ノーラは再び激して反駁した。

 

「わたしは! 敵を見つけて、前に出て殺すのが役目で! でも、それが出来なくて……アイビスさんも、傷付いて。だから、敵を探して、斬りつけて……がんばってるのに、うまくいかない……!」

 

 ボロボロと涙を零してしゃくり上げながら喚ぶノーラを受け止めるように、クレイオは二度、三度と頷いた。そして言う。

 

「だから、アホだと言うのです」

「アホってなんですか!? わたしの気持ちもしらないで……わかったようなことをいうなァッ!!」

「落ち着け、ノーラ」

 

 クレイオに殴り掛かろうとしたノーラを、再びアイビスが抑える。先程とは違い暴れる彼女を何とか留めながら、彼は顔を顰めてクレイオを見た。

 

「貴殿のことだ。何か考えがあるのだとは思うが……流石に言葉が過ぎるように思う」

「必要だから言ってるのです。貶めるだけのつもりなら、ここまで言葉は尽くしませんよ。面倒なので」

 

 苦言を呈したアイビスに素っ気なくそう返すと、拘束を外せずに憎々しげに自分を見るノーラを見返す。

 

「では、何処がアホなのか説明しましょうか。貴女は何の為に敵を探すのです。何故前に出、何故敵を殺すのですか」

「それは……」

「仲間の為でしょう。貴女のような人間は、居場所が出来ればそれに縋ろうとするものです。その為に、仲間の役に立とうとするのですよ」

 

 違いますか、と言うように首を傾げたクレイオに、何も違わないノーラは押し黙る他ない。

 

「であれば。何故その話を仲間にしないのです」

「えっ……」

「貴女達の顔を見れば、そんなことしていないのは分かるのです。仲間の為と言いつつ、貴女のしたことは本当に仲間の望んだことなのですか」

「そんなのっ……!」

 

 ノーラは慌てて隣にいるキャサリンを、背後で自分を抑えるアイビスを見る。しかし、キャサリンは苦悩するように眉根を寄せて目を伏せ、アイビスは何も言わずにただ彼女の視線を受け止めた。二人ともに無言だったが、その無言が彼女の行いは間違っていたと雄弁に語っている。

 ひぅ、と顔を青ざめさせて息を呑むノーラに、クレイオは改めて声を掛けた。

 

「今からでも話をするといいのですよ。二人の顔を、改めて良く見てみるといいのです」

 

 言われるままに、ノーラは二人の顔を見直す。キャサリンはノーラを気遣うような視線を、アイビスは先程から変わらないが、静かに見守ろうという意志を感じさせる目を返して来た。

 

「貴女を見捨てるつもりなら、こんな顔はしないのです。むしろ見捨てる気は更々ない顔をしているのですよ」

 

 クレイオの言葉に、キャサリンとアイビスが頷く。

 

「貴女のすべきことは、アホな頭で思い詰めて変なことをやらかすことではないのです。もっと仲間とよく話をすることなのですよ」

 

 クレイオは、止めどなく涙の溢れるノーラの金の瞳を見据えて、言った。

 

「貴女の居場所は、まだあるのですよ」

「ぁ──ぅあああああっ──!」

 

 ノーラが大粒の涙を零し、声を上げて泣きじゃくる。アイビスがそっと手を離したところをすかさずキャサリンが抱き留めれば、その背に縋り付くように手を回し、更に大声で泣き始めた。その様子を見て、彼女に任せれば問題ないと考えたアイビスは穏やかに二人を見守るクレイオに声を掛ける。

 

「一時はどうなるかと思ったが……助力、感謝する」

「本来は貴方達が自分で何とかすべきことですよ。猛省してワタシに感謝するといいのですよ」

「あい、すまぬ」

 

 半眼で睨まれたアイビスは、表情を改めて素直に妖精に頭を下げる。鼻を鳴らす彼女に、彼は追加で訊いた。

 

「しかし、意外だ。失礼だが、貴殿はこういったことに労力を割いてくれるようには見えぬ」

「確かに失礼ですね。気持ちは分からないでもないですが」

「クレイオは貴方達を気に入ったのよ」

 

 口を挟んできたのは、ここまで空気を読んでか口を出さなかったポリュムニアだった。他の妖精達も、真面目な話が終わったと見てかわらわらと集まってくる。

 

「なんだかんだ、クレイオって気に入った相手には甘いよねー」

「というより、人間全般に甘くない?」

「甘い……私達には、もっと厳しい……」

「煩いのですよ! 黙るのです!」

 

 クレイオが怒鳴ると、妖精達はきゃー、と声を上げて散る。全く、と嘆息した彼女は、小さく咳払いするとアイビスを見上げた。

 

「まぁ確かに。貴方達のことはそれなりに気に入っているのです。そんな貴方達があからさまな問題を抱えてやってきたら、口を挟みたくもなるというものなのですよ」

「そういうものか」

「そうです。……些細なことであれば、勿論口出しはしませんでしたがね。あれは、放置すれば貴方達の誰かが死んでもおかしくはないのですよ」

「……穢れとやらを祓っても、その獣とやらはそれだけ危険か」

「獣の危険度は関係ないですがね。ああいう無理をする人間は大抵周囲の人間を巻き込んだ挙句、ロクな結果を生まないのです」

「……確かにな」

 

 アイビスも覚えがあるのか、深く嘆息した。

 

「それと、獣の方ですが。穢れを祓ったとて、劇的に弱くなるわけではないのですよ。どう考えても無理だったものが、何とか手が届くかも知れないレベルになる、くらいに考えておいた方がいいのです」

「なに、何とか手が届くなら充分だ」

 

 アイビスの答えに、そうですか、とクレイオは返す。

 

「なんにせよ、ここまでやったのです。貴方達に死なれては寝覚めが悪いですし、徒労感も半端ではないことになります。その上討伐に失敗して祠が修理出来なくなった、なんてことになったら目も当てられません。くれぐれも注意して、きっちり始末をつけるのですよ」

「ああ。ここまでお膳立てして貰ったのだ。任せてもらおう」

 

 何とも素直でない妖精の激励に、アイビスは苦笑しながら頷きを返す。

 その後は再び集まってきた妖精達が騒ぐのを聞きながら、大切な仲間が泣き止むまで、暫しの時を過ごしたのだった。

 

*1
アリアンロッド2ERPGではMPはメンタルポイントの略で、精神の耐久値を表すそうです。魔法にも物理的なスキルにも使うので、戦士系のキャラは気力、魔法系のキャラには魔力と言わせています

*2
自分の攻撃力を大きく上げるダンサーのスキル。ちなみに他のパッシブスキルと合わせて命中と回避も上がっている




妖精戦はあっさり終わりました。
言い訳すると、六人全員と戦うことも想定してシナリオ作ったので三人だけだと大したことなかったという……
ちなみに要らなそうですが、供養の為に六妖精のポジションを書いておくとこんなです。
・テルプシコラ:前衛物理アタッカー
・エラト:バッファー兼魔法アタッカー
・エウテルペ:デバッファー兼魔法アタッカー
・ポリュムニア:前衛物理アタッカー
・メルポメネ:ヒーラー兼バッファー兼デバッファー
・クレイオ:バッファー兼魔法アタッカー
でした。バランス良くない。

暫く置いておいたアンケートですが、05/03になったら締めたいと思います。回答していただいた方もいらっしゃったので、GW中にアンケート結果に沿って全文直す予定です。ご協力ありがとうございました。
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