冒険記録~ギルド『疾風の狼』~   作:弧埜新月

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再開します。
このセッションは2021年08月29日に行われたものです。


『吸命の館』
プリプレイ・インターミッション


 ログレスのアーケンラーヴ神殿、その食堂。本来、聖職者が静かに朝食を取る為の施設は、しかし今日も穏やかな朝とは言いがたい空気を醸し出している。それは、この食堂が駆け出しの冒険者達にも開放されているためだ。この施し(地獄)から逃れようとする者達の熱気と、それを疎ましい目で見る現状で満足して(諦めて)いる者達が放つ鬱屈とした空気が混ざり合い、早朝にも関わらず既に混沌とした雰囲気となっていた。その様子を、聖職者の方々(本来の利用者)は隅の方で細々と朝食を摂りながら、悟り切った顔で無視している。実にいい精神修行になりそうだった。

 

 その窓際の席で、一人の冒険者が憂鬱そうな顔をして酢キャベツ(ザワークラウト)とニンジンのスープをかき混ぜていた。

 

「……ひもじいわ」

「お金がないから仕方ないですね?」

 

 アルミナの対面に座るノーラが、によによと笑いながらスープに浸した黒パンを齧る。

 

「冒険者って、儲からないのね……」

「まぁ、まだまだ駆け出しですしね?」

 

 ノーラは自分の装備に視線を落とす。前回の冒険でボロボロになった装備はすっかり修復されていた。同時に彼女の懐もすっかり寂しくなってしまったが。

 

「ところで、アルミナさんはどうして素寒貧に? MPポーションくらいしか消耗して無かったですよね?」

「今度は素寒貧じゃないわよ! いざという時のために少しは残してあるわ!」

「……」

 

 ノーラはすっ、と笑みを引っ込める。冷たく細められた金の双眸が、ひたりとアルミナを見据えた。

 

「……アルミナさんをどこへやったんですか?」

「どういう意味よ!? というか、貴女の中で私のイメージはどうなってるのよ!?」

「……。知力4?」

 

「知力4馬鹿にしてんの!?」

 

 うにゃー!! と噴火するアルミナを見て、ノーラはくすくす笑う。

 

「まぁ、知力云々は置いておくとしてですね?」

「置いとかないでよ私のアイデンティティなのよ!?」

「はいはい凄いですね? それで、何にお金を使ったんですか?」

 

 キレ散らかすアルミナに早々に飽きたノーラはぞんざいに応えて話を元に戻す。アルミナはぶつぶつと文句を言いながらも、腰の後ろから一本の短杖を取り出した。天然の古木の枝から削り出したらしいその杖は、先端に緑色の輝石が嵌めてあり、どこか神秘的な雰囲気を纏っている。

 

護人の杖(ドルイドワンド)。師匠から譲り受けた物よ。魔法の制御を助ける力があるの。平たく言うと魔法が当てやすくなるわ*1

「それは素晴らしいですね? そんなものがあったなら、どうして前回は使わなかったんですか?」

 

 師匠から譲り受けたならば、つまり彼女がログレスに来る前から所持していたことになる。首を傾げるノーラに、アルミナは気まずそうに僅かに頬を染めて視線を反らした。

 

「その……旅をしている時に、岩の影から魔物が飛び出して来て……反射的に杖でぶん殴ったら、こう……ポキっと」

「アホですね?」

「誰がアホよ!?」

「敵に殴り掛かって大事な杖を折るメイジなんて、アホ以外言い様がないじゃないですか?」

 

 煽るような笑顔でド正論を返されたアルミナが押し黙る。上手い反論が思いつかなかったのか、再起動したアルミナは小さく咳払いした。

 

「この街に着いた時点で、ナイフを買うお金位しか残ってなかったから、修理は諦めたのよ。前回まとまったお金が入ったから早速修理したって訳」

「そこでナイフを買っちゃう辺りアルミナさんらしいですね?」

「自衛用の武器は必要でしょ!? 結局使わなかったけど!」

 

 半ばヤケクソになって叫ぶアルミナ。むっすりとした膨れっ面に少し笑った後、ノーラは改めて首を傾げる。

 

「しかしそうなると、また魔物が飛び出してきた時、また反射的に杖を折ってしまうんじゃないですか?」

「あら、もうそんな事態にはならないわよ」

 

 アルミナは自信満々に言い切った。

 

「だって、今度は貴女達が魔物を押さえてくれるでしょう?」

 

「──。貴女という人は、本当に」

「? 何よ?」

「なんでもないですよ? ええ、どんな魔物が来ても必ず押さえて見せましょう。またアルミナさんが素寒貧になっても困りますしね?」

「だから素寒貧じゃないって言ってるじゃないの」

 

 普段に比べて少し柔らかく微笑うノーラに向かって鼻を鳴らし、アルミナは残りのスープを掻っ込んだ。

 

「何にせよ、そろそろまたお金を稼がないとね。キャサリンを呼んで、次の依頼を探さないと」

 

 彼女達の装備で一番時間の掛かったキャサリンの鎧は、今日修復が終わるという話だった。元々昼過ぎに合流するつもりだったが、予定を早めてもいいかもしれない。そんな風に空になった器を置きながらアルミナが考えていると、

 

「ああ、それなんですけどね? ちょっと、面白そうな噂話を聞いたんですが、興味ありませんか?」

 

 ノーラは思わせぶりな仕草でテーブルに肘を立てて両手を組むと、小首を傾げてにたりと哂った。

 

「なんでも、郊外の人気のない林の中に、突如洋館が現れたんだとか。お宝の匂いがしませんか?」

 

*1
魔術判定+1




前回までと違って今度は書きながら投稿するので投稿ペースはお察しください。
ちなみに、前回は書き終わるまでに3年掛かりました。
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