BLUE ARCHIVE -1.0   作:あたー

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11話です。
平均評価が赤色表示に!皆さんありがとうございます!

ひょっとしたら来週1話更新できるかもしれませんがそれができる前に現実に忙殺されて休載入るかもしれません。
その場合再開は11月くらいになると思います。


各々の『対策』②

-3日目-

~アビドス高等学校~

 

「セリカ、例の店に強力な武器が入荷されたって。」

「えっ?シロコ先輩それ本当!?」

 

 そう会話をするのはアビドス高等学校の生徒、砂狼シロコと黒見セリカの二人である。

 二人はなにやら物騒な会話をしているが、そこへ声をかける者がいた。

 

「ちょっと~、二人ともなんの話~?」

「あっ、ホシノ先輩。」

 

 二人に声を掛けたのは同じくアビドス高校の生徒、唯一の3年生である小鳥遊ホシノ。

 普段なら武器の売買等の会話はキヴォトスでは特に珍しいものではないのだが、今だけはそういった話題にも目を光らせていた。というのも…。

 

「強力な武器って、一体どこから買う気?」

「えっと…その~…。」

「ん…。」

 

 ホシノからの質問に後輩二人は露骨に目を逸らす。明らかに良からぬことを考えているのがわかった。

 だがホシノも大方の見当はついていた。

 

「…ブラックマーケット。」

「うっ…。」

「はあ。二人とも、あんな場所で売ってる武器なんてどんな違法なものかわからないから駄目だよ。下手したら買ったこっちが犯罪者にされちゃうよ?」

「ん…。でも、今みんなが怪物1号を倒そうと銃火器を買ってるせいでキヴォトス中で武器の値段が跳ね上がってる。」

 

 『怪物1号(ゼロワン)

 連邦生徒会が発表した件の巨大生物の呼称。

 固有名すら与えず、まるで囚人のように番号(ナンバー)で呼ぶところに相手を蔑む意図が感じられた。

 勿論生徒達の側もそれに異を挟むつもりは毛頭なく、当たり前のようにこの呼び名を使っている。

 

「私達は正規の店で買うことを完全に出遅れたからもうブラックマーケットくらいしか残ってない。多少高くても、今手に入るものを確実に入手しておかないと本当に何も手に入れられなくなる。それに、情報をくれたのはあのファウストだからの品質のほうは信用できる。」

 

 シロコはホシノに対して反論する。

 どうやら今回彼女に情報を提供したのは覆面水着団のリーダー、ファウスト(阿慈谷ヒ○ミ)だったらしい。ブラックマーケットに入り浸っている彼女の情報ならば確かに信用できるものだろう。

 だがホシノとしてはそれを許可することはできなかった。

 

「シロコちゃん、あの場所にあるお店で使ったお金なんて、間違いなく犯罪の資金源に使われるよ。そんなの嫌でしょ?」

「ん…。」

「それは、そうだけど…。」

「だからそれを買うのは駄目。これは会長命令だからね。」

 

 ホシノは二人に優しく話掛ける。

 ブラックマーケットに流れたお金が一体どんな使われ方をするかは、一度カイザーローンに騙されていたアビドスとしては嫌でも悪い方へ考えてしまうのは仕方ないことだった。

 ホシノからの命令でシロコとセリカはガックリと肩を落とす。

 二人がやたらと火力増強に焦っているのとは対称的にホシノは普段通りの態度を崩していなかった。いや、一度崩しかけて持ち直したという方が正しい。

 実は彼女も報告のあった当日は相当気を病み、それこそ以前のように一人で飛び出して行ってしまう寸前まで行った。しかし犯人が海中にいて見つけようが無く、今はヘリコプターを動かせるアヤネ達に頼るしかないこと、そして待機している間に残った後輩達の方が自分より酷い暴走の兆しを見せ始めたことから、逆に冷静になれてしまったのである。

 

「武器を買うのが駄目って言うなら、ホシノ先輩は何か良い案とかないの?」

「え?」

「ん、反対する人は最低限代案を出すべき。前にユウカがシャーレに来た時そう言ってた。」

「そうだなあ…。」

(アヤネちゃん達が頑張ってくれてるけども、早く怪物1号を見つけてもらわないとかな…。あんまり長引くと押さえきれなくなるかも。)

 自分達に反対したホシノに詰め寄る後輩二人。

 ホシノはそんな二人を宥めながら海へと繰り出しているアヤネとノノミに想いを馳せるのだった。

 

 

 

 

 

~キヴォトス外洋~

 

「吊下式ディッピング・ソナーでの探索作業、終了しました。すみません、本日も発見できなくて…。」

『お疲れ様でした。気になさらないでください。捜索期間はまだ当分ありますから。アビドス高校の皆さんも無理をなさらず、しっかり休息を取ってくださいね。』

 

 アヤネとノノミは雨雲号(SH-60)を用いて捜索活動を行っており、現在はトリニティ総合学園に所属する艦艇の一つを補給と整備の拠点として利用させてもらっていた。

 艦へ帰投後、トリニティのオペレーター生徒への報告を済ませた二人は最低限のチェック作業を行った後休憩を取り始める。

 

「お疲れ様でした。アヤネちゃん。」

「あ、ありがとうございます。ノノミ先輩もお疲れ様でした。」

 

 パイロットらの休憩室として割り当てられた部屋でノノミがアヤネに飲み物を渡す。

 二人は現在操縦士と副操縦士の役割を努めていた。

 

「中々見つけられませんね。怪物1号。」

「この広い海を捜索するのでは仕方ないですよ。それに、本格的に捜索が始まってからまだ2日しかたっていませんから。」

 

 捜索を始めて2日目。

 依然として怪物1号は発見に至っていない。

 こればかりはどうしようもないことだが、逸る気持ちは皆同じだった。

 二人がしばらく休息を取っていると、部屋の扉がノックされる。

 

「あっ、どうぞー。」

「失礼するっすよ~。」

「あっ、イチカさん。」

 

 扉を開けて真っ黒い服を着た人物が入室してくる。正義実現委員会の一員、仲正イチカだ。

 正義実現委員会は本来海上での活動を中心に行う組織とは別の管轄なのだが、今回トリニティ外の生徒を指揮下に入れるに当たって生徒同士のイザコザが起きた場合の対処を任務として与えられていた。いわゆるMP(憲兵)である。

 イチカが選ばれた理由は、ひとえに彼女の人柄によるものだろう。

 

「捜索活動ありがとうございました。どうっすか?何か不便なこととかないっすかね?」

「いえいえ、不便なことなんて全く。むしろ普段のアビドスよりも良いような所があるくらいで…。」

 

 イチカはどうやらアビドスの二人が窮屈な思いをしていないか気にしていたようだった。

 立場的にはトリニティがアビドスの機体を『乗せてあげている』立場ではあるが、実際のところトリニティ側も今回の全力出撃が祟って航空機が払底している状況で、今の状態は願ったり叶ったりなものだったのである。

 一方でアビドスの面々にとっては、いくら狭苦しい軍艦といえども普段生活している学園よりも遥かに便利な設備が備え付けられているこの艦での生活は不便とは程遠いものだった。強いて挙げるとすればスペースが物理的に狭いことだが、船である以上そこはどこも同じだろうし、それを文句として指摘するのは贅沢というものだろう。

 

「あの、それよりもトリニティ自治区内のほうは大丈夫なんですか?ヒフミさんからは事件の発表がされてから大分荒れていると聞いたんですが…。」

 

 ノノミがイチカに心配していたことを尋ねる。

 トリニティに関することは阿慈谷ヒフミを通じて幾分かアビドスにも情報が入ってきており、その混乱ぶりもある程度把握していた。特にあちらは今のアビドスとは比べ物にならない数の生徒を擁するマンモス校なうえに、先生が以前起きたエデン条約を巡る事件解決の立役者となったことでトリニティ内で特に高い人気を集めていたことも混乱の大規模化を後押ししてしまっていた。

 

「あー、そういった混乱は既に終息に向かってるっす。ちょっと強引な解決手段を使ってますけど。」

「強引な解決手段…ですか。」

 

 イチカが何やら不穏なワードを含みながら説明する。普段は常に微笑みを浮かべている彼女だが今は目に見えて引きつった表情をしていた。

 その反応を見たアビドスの二人はトリニティ側が抱える苦労を察せざるを得なかった。

 

 

 

 

 

-少し前-

~トリニティ総合学園内~

 

「ハスミ副委員長、トリニティ・スクエアで発生していた暴動の鎮圧が完了しました。」

「わかりました。ご苦労様です。」

 

 正義実現委員会の教室で、委員会副委員長の羽川ハスミは部下の生徒から報告を受ける。

 トリニティ総合学園の治安維持組織である正義実現委員会は、昨日からトリニティ全体で頻発している暴動への対応で休みなく働き積めとなっていた。

 

「また、現在のところ新たな暴動の発生は報告されておりません。」 

「そうですか。それでは各部隊は補給を完了した後、出動待機態勢へ移行、即時対応可能な状態を維持しつつ、交代で休息を取るようにしてください。」

「了解です。」

「ふう。それでは、私達も少し休憩に入ります。貴女もお疲れでしょうし、こちらで休んでいってはどうですか?」

「えっ?…と、その…では、お言葉に甘えて。」

「ふふっ。皆さん、少し休憩にしましょう。」

 

 ハスミの誘いに答える正義実現委員会の生徒。普段なら目上の人への謙遜が勝って断ることが多いのだが今回は素直に承諾した。それだけ疲れが溜まっていたのだろう。

 それを受けてハスミは作業の手を止めて教室内にいた他の生徒達にも休憩を取るよう呼び掛けると、アフタヌーンティーの準備を始める。

 その間、ハスミに誘われた生徒は通信機で各部隊へ連絡を行っていた。

 準備を終わらせた頃、教室の扉がゆっくりと開かれた。

 

「ヴゥゥゥゥゥ…」

「あら、ツルギ。お疲れ様でした。丁度お茶の用意をしたところだったのですが、いっしょにいかがですか?」

 

 部屋に入ってきたのは正義実現委員会の委員長、剣先ツルギだった。

 ハスミはツルギを見ると馴れた様子でお茶に誘う。ツルギは無言で数回頷くとゆっくりと着席した。

 

「ツルギもずっと動きっぱなしで疲れているでしょう?こちら、晄輪大祭の時にノアさんから教えて頂いたハーブティーです。緊張を解して熟眠を助ける効果があるそうですよ。」

「ア?ああ、ありがとう。」

 

 ツルギはハーブティーを受け取り、ゆっくりと飲み始める。歩く戦略兵器とも称される彼女だが、お茶を飲む所作はまるで小動物のように慎ましいものだった。

 そうして教室にいた皆で揃ってティータイムを送る。

 すると教室に来客がやって来た。

 

「みんなお疲れ様~!☆」

「あら、ミカさん。お疲れ様でした。ちょうど今お茶を淹れたところです。ミカさんもいかがですか?」

「ハスミちゃんありがとう!いただくね。」

「すみません。ミカさんのお手を煩わせるようなことになってしまって。」

「平気平気☆。それに私に正義実現委員会(ここ)のお手伝いをしろって命令したのはナギちゃんなんだからみんなは気にすることないよ!」

 

 入室してきたのは聖園ミカ。今回ナギサ達が一際心配していた生徒である。

 ミカは現在正義実現委員会の指揮下で彼女らの戦力として活動している。

 このような対応になった理由は、以前、虚妄のサンクトゥム攻略戦の最中に発生したトリニティ自治区防衛戦における彼女の功績が大きく影響している。

 当時、ミカは単独でトリニティ自治区の防衛に当たっていたが、遺跡地帯の聖堂に残されていた住人の救助に正義実現委員会よりも先んじて駆けつけ、襲撃者たちを全滅させる働きをした*1

 そういった活動を奉仕実績として認められたことで、今回ナギサの手引きを受けて臨時の助っ人として参加できることとなったのである。

 当然、本来正式な構成員ですらないミカが治安部隊に混じってブイブイ言わせるのは間違いなくマズイことなのだが、現在のトリニティにおける著しい治安悪化に対してティーパーティーが凄まじい強権を振りかざして対処を行っており、更に本来異議を申し立てする立場にいる筈のシスターフッド、救護騎士団等もそちらに同調する様相となってしまったことから現在のトリニティ自治区内はまるで独裁政権下で非常事態宣言が発令された時のような、警察組織による強力な監視体制が築かれた状態になりつつあった。

 正義実現委員会の部員達も最初の頃は一部でミカに対する不信感を露にする者がいたのだが、ミカ自身がシャーレでの活動で培った協調性を発揮してチームメイトとしてしっかり動いてくれたことから、ゆっくりとではあるものの確実に信頼関係を築くことに成功していたのだった。

 一方でミカも、最初は先生が亡くなった報告を受けて引きこもり一歩手前までいってしまったが、ナギサから連邦生徒会が怪物1号の駆除に総力を挙げること、またキヴォトス全体で悲しみに暮れて塞ぎ混むよりも報復のために行動を起こす生徒の方が多数派となっていることを知らされた。

 それらに誘発された結果、今の彼女は以前アリウススクワッド追撃を独自に行った時のように攻撃的な感情を強くした状態で半ば八つ当たりのように暴徒鎮圧任務に積極的に参加していたのである。普段通りに見える態度も実際は気を紛らわせる為に無理矢理行っているような状態だった。

 

「よし!水分補給完了!次は何処へ行けばいい?」

「いえ、今は各地の暴動鎮圧が一段落したところなので私達も休息を取っていたところなんです。ミカさんも少しお休みになってください。」

「え、本当?ん~、でも今はじっとしてるよりも体動かしてるほうが気が楽なんだよね…。」

 

 ハスミからの気遣いに対してミカは申し訳なさそうな態度でそう話す。

 元々悲しみを怒りに変えることで活動の原動力にしている現状では、じっとしているよりも目の前の出来事への対処に専念している方が余計なことを考えずに済んで気が楽であった。

 そんな彼女の返事を聞いて、今度はツルギがある提案をする。

 

「であれば、このあと私が戦闘訓練のお相手をしましょうか?」

「え?」

「先程、ミカさんと共闘した時に動きを見ていたのですが、パワーは圧倒的ですが戦闘方法がワンパターン化しがちなように見えます。特に回避を行う際に必ず同じ方向へ飛び退く癖があるように見えました。それは実戦で致命的な一撃を貰う原因になりかねません。できることなら矯正をしたほうがいいです。」

「あちゃー、そっか。流石ツルギちゃん。よく見てるね。」

「あ、いえ、その…。ありがとうございます…。」

 

 ミカからの称賛を照れながらも受けとるツルギ。

 ミカの基本的な戦闘スタイルはその圧倒的な攻撃力で真っ向から叩き潰す、所謂ゴリ押しでありテクニック面ではその道の専門家達には数段劣るものだった。過去の戦闘ではその弱点を持ち前のパワーと頑丈さで捩じ伏せることができていたのだが、件の強靭な巨大生物を相手とする場合はどうなるかわからない。

 …と言うより普段ろくに戦わない立場にいる筈のミカが戦闘力でツルギと並び立てるだろうと言われていることがむしろ異常なのだが。

 

「ツルギ、訓練はいいのですが体調は大丈夫ですか?」

「心配ない。私も今は動いている方が気が楽だし…。それに巨大生物相手に闘うとなれば訓練はいくら積んでも無駄にはならないだろうから。」

 

 働き詰めでありながら訓練までしようとするツルギをハスミは心配する。

 だがツルギもミカと同じようにじっとしているのは嫌な様子で、更にハスミから貰ったハーブティーを飲んでもケロっとしているので*2そんなに疲労が溜まっていないのは本当のようだった。

 

「わかりました。では訓練用施設の使用申請を出しておきます。お二人ははそのまま現地に向かっていただいて大丈夫ですよ。」

「助かる。」

「ありがとうハスミちゃん☆。」

 

 その後、トリニティの訓練用施設は大規模修理を必要とするほどの損傷を受けてしまい二人はこっ酷く叱られることになってしまった。

 そして模擬戦の結果は、戦闘経験で上回るツルギがミカを完封する形となりミカは一回も白星を取ることができなかった。

 

*1
但し、ミカがこの行動を起こした動機はその場にとある補習授業部生徒が居たため。

*2
以前疲労状態でこれを飲んだユウカは飲んだ瞬間気絶するように寝てしまった。




 原作でツルギとミカがまともに話してないので二人が会話するときの口調は作者のオリジナルです。
 ツルギは真面目な娘なので元とはいえ立場上上司だったミカには凄く丁寧に接してそうな気がするので。

 怪物1号の呼称は最初元ネタの怪獣大戦争の呼び名そのまま、怪物01にしようと思ったのですが、「いや番号呼びするにしても日本語で生き物の呼び名が01はなんかこう、違うだろ!」と思ったのでこの呼び名になりました。
 01なんて呼び方で違和感ない奴なんていない…

コールサイン01
「ご主人様と一緒に!楽しい一日を始めちゃおう!」

 …いたわ。
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