BLUE ARCHIVE -1.0   作:あたー

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 皆さんお久しぶりです。
 仕事が段々落ち着いてきたので思っていたよりも早く次話投稿ができました。といっても次回の投稿にはまた期間が開きそうですが…。
 この1ヵ月くらいの間に海洋堂からサキのリボルテックが発表されたりゴジラ-1.0の地上波初放送が決定したりと色々ありましたね。
 あと少しでゴジラも70周年を迎えるので、そちらのお祭り騒ぎも楽しみです。
 それでは13話をどうぞ。


-1.0(マイナス)の日常

~小ウサギ公園内~

 

 ソラから貰った弁当で朝食を済ませたRABBIT小隊の面々は拠点内で各々の時間を送っていた。

 以前なら街の治安維持や犯罪組織の摘発などに出動していたのだが、今はそういった活動は停止している。というのも…。

 

『RABBIT1へ、こちらFOX1、正面入り口にて侵入者を一名拘束した。対応指示を求む。送れ。』

「こちらRABBIT1了解、また以前と同じ対応を取りますので、その場で待機をお願い致します。RABBIT1通信終わり。」

 

 あの日以降公園へ武装を整えた生徒がポツンポツンと襲撃してきてはこうして迎撃するということが繰り返されていた。

 現在は警備をFOX小隊に任せており、怪しい者が来訪してきた場合、まずは呼び掛けて目的を確認し、実力行使に出た場合は鎮圧するという対応を取っていた。

 ユキノからの通信を受けてミヤコは公園の入り口へ向かう。

 この騒動の中心となってしまった、彼女の見張りを他の二人に任せて。

 

「RABBIT1、到着しました。その方が今回の侵入者ですか?」

 

 辿り着いてみると、両手を後ろ手に縛られて膝立ちにさせれている生徒が一人。その隣には鎮圧を行ったとみられるユキノが立っていた。

 

「ああ。一人で仕掛けてきたが、中々骨のある奴だったぞ。RABBIT1、この生徒が誰かわかるか?私には全く分からなくてな。」

 

 そう言われてミヤコは侵入者の特徴を確認する。

 彼女の短髪と髪色、そして頭部の猫耳から思い当たる人物を導き出す。

 顔を確認すると、正体はシャーレでよく見知った人物だった。

 

「杏山カズサさん、ですか?」

 

 トリニティ総合学園の一年生、杏山カズサだ。

 だが首から下は普段の彼女とはまるで違う格好だった。

 服装はトリニティの制服ではなくスケバン達がよく着ているような服である。

 よく見ると足元にはマスクも落ちており、どうやら変装してやって来たようだった。

 

「カズサさん。他のお友達は今一緒に来ていますか?」

「…私一人だけだよ。みんなはこの件には関係ないからね。」

 

 ミヤコからの質問に、カズサはばつが悪そうに答える。

 

「この件には関係ない、ですか。…貴女も先生の敵討ちが目的ですか?」

「…フン。」

 

 カズサは不服そうに鼻を鳴らす。答えるまでもないといったところか。

 

「相手が精鋭なのはわかってたから、なんとか相討ちまで持っていければいいなって思ってたんだけど、まさかこんなボディーガードが付いているなんて想定外だったな。」

 

 カズサはもう全部諦めたと言わんばかりの冷めた態度でそう話す。

 今日までに多数の侵入者と相対したミヤコにとってその態度は最早見慣れたものとなりつつあった。

 

 大戸島で発生した事件で正式に公開されている情報の中に、空井サキの名前は一切入っていない。

 何故なら、今の状況で同行していた者の個人名を明らかにすればそちらに余計なヘイトが向くことは明らかであり、明確な敵への対処に集中したい連邦生徒会にとってそれはなんの得にもならないからだ。

 だが、情報を完全に封じ込めることなど不可能である。

 しかも今回の場合は、シャーレ内部で最近になって先生自身のスケジュールをある程度の範囲で公開する形に変更していたことが仇となっていた。

 きっかけはエデン条約調印式の最中に起きた襲撃事件にて先生が負傷した一件からである。事件の解決後、先生を慕う生徒達からは身辺警護を申し出るものが大勢現れた。それはもう四六時中付きっきりでも構わないといった態度を取る者までいた程である。

 しかし先生が自分のことで生徒に迷惑を掛けたくないと主張したこと、そもそも先生のプライベートが消滅する可能性があるため*1良くないといった理由から身辺警護の申し出は断られてしまった。

 それでも先生の身の安全を心配する生徒が大勢いることも事実だったので、折衷案として先生のスケジュールをシャーレの活動予定として所属生徒向けに公開する形へ変えていたのである。

 特に何処へ出向くのかという情報を皆気にしていて、もしも何か起きた際には即座に対応を取れるようにと、気にする生徒はとても細かく予定の確認を行っていた。初日に襲ってきたワカモもその気にしていた生徒の一人である。

 更に今回は出発前にサキ自身が、

 

『別に隠す必要は無いんだから何日間、誰と、何処へ行くかまで知らせておこう。私が他人の立場だったら把握できる情報が多いほど安心するからな。みんなも同じだろう。』

 

 と主張していたためシャーレ所属の生徒には二人が大戸島へ向かったという情報がほとんど筒抜けだった。

 故にこれまでの侵入者もミヤコの顔見知りが大多数だった。

 幸運にも他の学園が総力でこちらに向かってこないのは、どの学園も首脳部が怪物1号の駆除に全力を上げているためだろう。

 

「もうこんなことはやめてください。今生徒同士で争うだなんて馬鹿げています。今は怪物1号の対処に全力をあげているのですから…」

「そうだね。その通りだよね。でもさ…」

 

 

「また私に用事があるやつが来たのか?」

 

 

 ここにいる3人とは別の声が聞こえる。それを聞いたミヤコは全身の血の気が引いていく感覚がした。

 皆の視線が声のした方向へと向く。

 

「空井サキ…!」

 

 お目当てだった人物の登場に、カズサは先程とはうって変わって怒りの感情を露にする。

 一方のサキは感情が抜け落ちたような態度でそれと相対していた。

 

「サキ!?駄目です!貴女が来たら…!」

「あっ!見つけた!!」

「サキちゃん!」

 

 この場に絶対居てはいけない人物の登場にミヤコは狼狽える。

 それとほぼ同時にモエとミユが後ろから走ってくる。どうやら見張っていた二人が目を離した僅かな隙にここまで抜け出してきたようだった。

 これまでどうにか彼女を危険から遠ざけようとしていたのに、こうして自分から姿を現されたら全部水の泡である。

 今朝の弁当回収も本当はサキを行かせたくはなかったくらいなのだ。しかし彼女が皆の足手まといにはなりたくないと頼み込んできたことと、人通りの少ない朝早くであればまだ大丈夫だろうという判断からFOX小隊の面々にこっそり護衛についてもらった上で回収に行ってもらったのである。

 

「空井サキ!!アンタの…アンタのせいで先生は!!」

 

 サキに向けてカズサが叫ぶ。

 急に暴れだそうとした彼女をユキノが再び取り押さえた。

 

「カズサさんそれは違います!サキはあの時怪物1号に対して間違いなく適切な対処を行ったんです!彼女に怒りを向けるのは間違っています!それにサキも襲撃に巻き込まれた被害者なんですよ!」

「そっちの事情なんか私達には関係ない!!それに何?被害者!?アンタ達戦闘のプロだったんじゃないの!?怪物を倒せなかったのはしょうがないとしても、なんで先生一人守りきれなかったのさ!とんだ役立たずじゃんか!!」

「っ!それは…。」

 

 カズサの容赦ない言葉に、ミヤコは思わず閉口してしまう。サキの行動を擁護することならいくらでもできるが、その結果役立たずだと言われては何も言い返せない。先生が亡くなったのは間違いなく事実なのだから。

 彼女達SRTの生徒が他の一般生徒と比べても高い戦闘能力を持っていることは既に広く知られており、彼女達の実力を信用していた生徒もそれなりの数いたのだが、その信頼を裏切ったようなものなのだから尚更であった。

 

 暫く反論できずに黙っていると、ハァハァと荒い呼吸をしていたカズサは興奮が収まってきたのか、次第に表情から怒りの感情が消えていき、今度は悲しげなものへと変わっていった。そして今にも泣き出しそうな声色で再び話し出す。

 

「わかってるよ…。今アンタを傷付けても何も変わらないなんてこと。悪いのはその怪物で、アンタは何も悪くないってことくらい。」

「…え?」

「確かに、今キヴォトス中が怪物を倒そうって動いてる。うち(トリニティ)だってそう。だけど…。」

「今のトリニティはこの数日間で前とまるで変わった。怪物を倒そうと武器を持ち出して行動を起こせばすぐに鎮圧される。そのくせ正規の駆除作戦に参加が認められたのなんて上層部直轄の公的な部活だけ。私達みたいな一般生徒は何もできやしない。まるで独裁だよ。」

「それが今治安を守る為に必要なことだってのはわかってる。現に駆除云々関係なしに事件はそこらじゅうで増えてるんだから。きっと武装してる相手が犯罪目的なのか、怪物討伐が目的なのか判別がつかないから纏めて対処してるんだって、頭じゃとっくにわかってるよ…」

 

 カズサは一度そこで言葉を切ると、悔しさを滲ませながらこう続けた。

 

「でも、それなら私達のこの気持ちはどこにぶつければいいの?」 

 

 行き場のない怒りと悲しみ。それが彼女が今回襲撃を掛けた理由だった。

 

「私達は何もできずに、他人が復讐を果たす様子を指を咥えて見ていろって言うの?そんなの、納得できるわけないじゃん…。」

 

 言いたいことを全て吐き出したカズサの目から涙が溢れ始める。

 

「先生…なんで死んじゃったのさぁ…。」

「返してよ…先生を返してよぉ…。」

 

 彼女の悲痛な叫びはサキ達の心を揺さぶった。

 

「ごめんなさい…。」

 

 泣き続けるカズサに対してサキはか細い声でそう謝罪することしかできなかった。

 

 

 その後、戦意を失ったカズサはニコに連れられて学園へと帰って行った。

 本来であれば学園外で問題を起こした生徒は公的な手続きを経て逮捕者として母校の治安組織へ引き渡されるのだが、RABBIT小隊側、特にサキが今回の件では彼女を不問にして欲しいと頼んだため本人に大人しく帰ってもらい、この問題を今後蒸し返さないという約束を取り付ける形で終息した。

 その後は新たな襲撃者が来ることも無く、そのまま夜を迎えた。

 

 カズサとの一件以降サキは魂が抜けたかのように無気力となっており、その日はただ虚空を眺め続けただけで一日を終えようとしていた。

 あの事件以降彼女がボーッとしていることは度々あったものの、今日に至っては朝以外食事すら取ろうとしない有り様で、これまでと比較しても間違いなく酷い状態だった。

 そんな様子を見た小隊の皆も心配してどうにか彼女の支えになろうとあれこれ策を練った。

 しかし結局何も好転することはなく、その日の消灯時間を迎えてしまったのだった。

 

 

 皆で寝床についてから数時間後、真夜中にサキは突如として目を覚ました。

 覚醒した彼女は既に心臓が激しく脈打ち、全身が嫌な汗でぐっしょりになっていた。

 

「はッ!…はぁ、はぁ…。」

 

 目覚めた瞬間から荒い呼吸を繰り返すその姿は、どう見ても落ち着いた眠りについていたようには見えなかった。

*1
元から盗聴だの何だのでプライベートなどあって無いようなものだったというのは禁句





先生のスケジュール云々は正直原作でも色々設定されてそうな気もするのですが全然掘り下げが無いのでオリジナル設定として入れさせてもらいました。
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