更新に時間かかっちゃいました。
頭で考えてることを文書にするって大変ですわ
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それではどうぞ。
「はい、コーヒー。」
「あっ、ありがとうございます。カヨコさん。」
みなさんこんにちは。ゲヘナ学園、風紀委員会行政官の天雨アコです。
今私は普段通り仕事をしています。
いえ、正確には風紀委員会内でとある変化があったことで普段通りに仕事ができるようになった、と言った方が正しいですね。
そしてその変化というのが、たった今私にコーヒーをくれた人物の存在です。
「はい、どうぞ。」
そう言って他の皆さんにもコーヒーを渡していくのは便利屋68の鬼方カヨコさん。
先日私が連れてきた便利屋68の4人は今、それぞれの得意分野で委員会の補助に就いてもらっていて、カヨコさんは現在事務作業の手伝いをしてもらっています。
え?カヨコさんにそんな雑用だけをさせるなんて勿体ない?
勿論、私も彼女の優秀さは良く知っていますとも。
カヨコさんだけでなく、便利屋68の皆さんは皆個性が尖ってこそいますが総じて高い能力を持っている面々なのはよく知っています。
では何故今の立場に就いているのかといえば、便利屋68、特にリーダーの『ある一面』を宛にしていたからです。
「ただいま。」
「おかえりなさい。ヒナ委員長。」
おや、外仕事に出ていた方々が帰ってきました。
私が敬愛するヒナ委員長と、風紀委員会の仲間達です。そして今はそれに加えて…。
「くふふ、イオリちゃんまた落とし穴に落ちちゃったね~。」
「う、うるさい!だいたい舗装道路に落とし穴があるなんて普通考えないだろ!」
「そういうのは無ければ作るものなんだよ。私達だって何回も使ってた手だし。イオリちゃん前も同じようなのにやられてたじゃん。」
「うぐぅ…。」
「私そういうの仕掛けるの得意だから~、引っ掛からないで済む方法教えてあげよっか~?」
そんな言い合いをしながら入ってきたのは私と同じ風紀委員の銀鏡イオリと便利屋68の浅黄ムツキさんです。
どうやらイオリがまた不良グループの罠に引っ掛かったようですね。
彼女の実力はキヴォトス全体で見ても間違いなく上位に入るものだと思っていますが、周囲確認が散漫になりがちなのが弱点です。
そして罠によく引っ掛かる上に生真面目な性格なこともあってかムツキさんのからかいのターゲットになっています。
もっとも、ムツキさんはからかい好きではありますが、別に他人が苦しむ様子を見て楽しむような性格では無いですし、本当に越えてはいけない線はしっかり弁えて行動するのでああ見えて風紀委員の面々と馴染むのも早かったんですよ。
今の罠に引っ掛からない方法を教えるというのも決して適当を言っているのではないでしょう。
まあ協力的な時とそうでない時の差が激しいのがちょっと苦労するところですが。
「ハルカさんとチナツがいませんがお二人はまた救急医学部室ですか?」
「ええ。…ハルカがまた張り切りすぎちゃって…。」
私が二人がいない事に気付いて尋ねるとアルさんが答えてくれました。
便利屋68の一人、伊草ハルカさんは精神面が少々不安定な所があり、何かと自身の身の安全を考慮せずに闘う傾向があります。
彼女は最前線で鬼神の如き暴れっぷりを発揮する実力がありますが、その実態は多少の負傷を気にしないで闘うやり方なので一度戦闘が起きれば生傷が増えることが常になっていました。
そのためまだ数えるほどしか共闘していないにも関わらず風紀委員達、特に元救急医学部の火宮チナツにはかなり目を付けられてしまっているようで、既に何度も手当ての為に二人で救急医学部室に行くところ見ています。
今回も間違いなくその類いでしょう。
「その…ごめんなさい。無茶しないように言ってはいるのだけど…。」
「まあ、貴女が言っても治らないということは彼女の性分なんでしょうねあの戦い方は。」
アルさんが申し訳なさそうにする傍らでヒナ委員長が一言、アルさんをフォローするようにそう言います。
数日前、アルさんはヒナ委員長の補佐官に就任しました。アルさんとヒナ委員長はこの短時間でお互いに強い信頼関係を築いていたのです。
そして私が便利屋68を頼った真の目的は、正にこの状態を作り出すことでした。
私はシャーレに所属した当初から先生の指揮する作戦に何度も参加していました。
特に連邦生徒会が『総力戦』と呼称する作戦に参加することが非常に多く、その過程で様々な生徒と直接交流する機会がゲヘナ学園の生徒の中で最も多かったのです。
そのため便利屋68の方々とは度々チームを組むことがあったので彼女らの特性だけではなく人柄にも触れる機会が度々ありました。
ゲヘナで不良生徒と風紀委員という関係でいた頃には気づかなかったアルさんの善性や人柄、特に相手の持つ権威や力に物怖じせずに自らが正しいと思ったことを正面から言ってのける豪胆さに注目し始めたのはこの頃からでした。
そして先日の先生が亡くなった一件。
連邦生徒会からの正式発表以降、ゲヘナ学園は他の学園と同じように大混乱が発生しました。
私も万魔殿からの報告を受けた直後は現実を受け入れられず仕事を放棄する直前までいきました。
ですがヒナ委員長は他の方と違いました。
彼女は学園内で混乱が拡大する中、それらの解決に奔走し、普段以上に仕事にのめり込んでいったんです。誰にも相談せずに。
私は先生が死亡した報告を受けたその日は自宅に帰ることもせずに風紀委員会の教室で一夜を終えてしまいました。
そして次の日、目を覚ました私の目に入ったのは前日から変わらず仕事を続ける委員長の姿でした。
予定ではヒナ委員長はその日お休みを取ることになっていました。彼女はここ数日間毎日朝早くから夜遅くまで激務の日々。相当疲労が溜まっているに違いないはずなんです。
ところが委員長はそこから更に既に出動していた部隊からの応援要請を受けてそちらに向かおうとし始めました。
当然私は止めようとしました。お休みになったほうがいいと。
ですが委員長は私を睨み付けるとこう言ったんです。
『私の邪魔をするようならたとえ貴女でも容赦しないわよ。アコ。』
この一言でやっと私は委員長の身に起きている異常に気付きました。
彼女は何かに取り憑かれたように心身の疲労も関係なく仕事をするようなっていたのです。
私はどうにか彼女を正常な状態に戻そうと策を練りました。
ですが本気状態になった彼女に正面から物怖じせずに物申せる者は風紀委員会内にはいません。それは私自身を含めてです。当然力ずくで止めるのも無理です。間違いなく返り討ちにあいます。
もう選択肢を選んでいる余裕なんてありませんでした。誰でも良いから力を貸してほしいと、それだけで必死でした。
そしてたどり着いたのが便利屋68でした。理由は先述のとおりです。
当初、便利屋68と風紀委員達はの関係は良好なものではありませんでした。。
つい先日まで敵対していた相手同士なのだから当然です。
そんな彼女達の間を取り持っていた私の苦労がどれ程のものだったかわかりますか?頑張った私を誉めてくださいよ。ほんとに。
委員長は相変わらず周囲の人間へ威圧的に接し、アルさんはそんな彼女の態度にビクビクしていました。ですが実際は目に見えて無理をしている委員長のことを心配し続けていたのは明らかでした。
しかしそれからほどなくして事態は大きく変わりました。
ヒナ委員長が過労で倒れたんです。
元から疲労が溜まっていたことに加えてここ数日の無茶が重なった結果でした。
当然この事態を無視する筈もなく、私達は皆どうにかしてヒナ委員長を仕事から遠ざけようしましたが、私達の言葉だけでは彼女の心持ちは全く変えることはできず、彼女は早々に仕事に戻ろうとし始めました。
そしてそんな委員長の様子を見ていたアルさんはついに我慢できず彼女に真正面から文句をぶつけたんです。
病み上がりの人間に向けるには少々きつい言葉遣いの説教でしたが、今のヒナ委員長にはこれくらいをぶつけなければきっと変わらないだろうと判断してアルさんに全てを任せることにしました。
それに、彼女のお説教は言葉遣いは乱暴でも相手を気遣う気持ちが伝わってくるものだったのはよく覚えています。
一方で説教を受けた委員長はというと、反発するかと思いきや黙ってアルさんのの説教を受けた後、急に幼子のように泣き出してしまいました。
そしてそのまま皆が見守る前で自分の気持ちを全て吐き出したんです。
もう先生に会えないことが信じられないという気持ち。そんな中で少しでも気持ちを紛らわせられることと、先生から誉めて貰った記憶が忘れられず意地になって仕事をしていたこと。
そして、これだけ苦しい思いをするくらいならいっそ
その全てを聞いたうえで、委員会の皆も、便利屋68もそんな彼女を受け入れました。
完全無欠の風紀委員長としてではなく、一人の生徒として。
それ以降、ヒナ委員長を取り巻く環境は少しずつ変わっていきました。
仕事が多忙なのは相変わらずですが、以前よりもはるかに周りと共同で事にあたるようになりました。
元から風紀委員会そのものが仕事量が膨大で劇的な業務体制の改善まではできませんでしたが、周囲との協力がスムーズに行えるようになったことで、以前より睡眠時間が増える等したので彼女の身辺状況は次第に改善されていきました。
普段は色々と邪魔をしてくる万魔殿が特に何もして来なくなったのも大きいです。
万魔殿は今回の連邦生徒会からの協力要請に対して珍しく積極的に対応する姿勢を見せており、現在はそちらに全力を挙げています。
一方で私達風紀委員会はゲヘナ内の治安維持に専念しろということでした。
学園の内外で役割分担を明確にしたほうが効率的だろうとのことでしたが、これまでなんでもかんでもこっちに押し付けておいて今さらどの口が言うのかという話です。私達は駆除作戦からは完全に蚊屋の外にされました。
特別戦力として選抜されたヒナ委員長を除いて。
皆さんがヒナ委員長の事を色々と気に掛けている中で特に態度が変わったのはアルさんでした。
当初の怖がっていた様子は何処へやら、今では何かと委員長のことを気に掛けており、まるで姉妹か親子のように見えます。
そのためアルさんがヒナ委員長の補佐官として就いていることには誰も文句を言うことはありませんでした。
それは私も同じです。
今回の件を解決してくれたのは、間違いなく彼女です。
私だけではこれほど良い結果をもたらすことなんて絶対にできなかったでしょうから。
ですが、こんな状態を望んでいたのは私達だけではなかったようです。
先日カヨコさんに、
「皆さんがアルさんを慕う理由がよく分かった気がします。」
と言ったところ、
「社長…いや、アルも最初は先生が亡くなったこともあって精神的に参ってたんだよ。今回委員長の支えなるっていう役目ができてアル自身結構救われてると思うよ。今さらだけど、ありがとう。今回依頼をしてくれて。」
と言っていました。
そして現在。
皆で揃って休憩するこの時間も以前より和気藹々としたものなったような気がします。
するとアルさんがこんなことを言いました。
「そういえばヒナ達は今日の夜に先生に会いにいくのよね?」
実は私達シャーレ所属の風紀委員4人は事件から5日たった今日、初めて先生との面会に行くことになっていたんです。
ここまで時間がかかった理由は先述したことがあって中々ゲヘナを離れられなかったこと、それ以外にも皆が皆、自分だけで会いに行くということがどうにも許せなかったのだとか。まあ私もその一人ですけども…。
「ええ。今日の夜9時からね。…確認なんだけど、本当にその間の業務お願いしてもいいのかしら?」
「今さらなに言ってるのよ。もう当直だけなら慣れたものよ。任せてちょうだい。」
心配そうに確認を取るヒナ委員長に対して自信満々にアルさんが答えます。
少し前まで争う相手同士だったとは思えないようなやりとりです。
でも、私の心持ちは決して穏やかではありません。
何しろこれから会いに行くのは先生、の亡骸です。
これはお別れの挨拶。
便利屋68の皆さんは初日に会いに行ったそうですが、彼女達から言われたことは一言、『覚悟して行ったほうがいいよ。』だけでした。
下手に後回しにしたせいで今になって行くのが余計に怖いのです。
もうこのまま会いに行くこと無く、ずっと生前の先生の幻を見続けるほうが幸せではないかとも思ったこともありました。
でもそんなことはできない。いいえ、したくありません。
先生はいつも生徒達が強く、逞しく成長していくことを、自分達の足で前に進んでいけるようになることを望んでいた人です。
だからこそ、それを放棄することは先生への裏切りに他ならないと思えたんです。
だからこそ、先生に伝えに行きたい。
『ありがとう』と『さようなら』を。
それが、最後まで叶えられなかった先生への恩返しになると信じて。
今回のアコは普段の暴走してる状態ではなく、ストーリーのエデン条約編3章や最終章のような本当の緊急事態に参謀として働いてる時の状態です。
アコちゃん平和な時はネタ扱いだけど、ここぞという時はしっかり活躍してますからね。
アコ持ってる先生なら総力戦なんてアコ常連だよねえ?…そうだよね?