BLUE ARCHIVE -1.0   作:あたー

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16話です。
面白くて一気読みしたというコメントがいくつも来ていてとても嬉しいです!
これからも頑張ります。

それではどうぞ。



あなたのために、みんなのために

-5日目-

~D.U 中央病院~

 

 ミヤコの宣言通りRABBIT小隊はサキの診察をしてもらうために病院を訪れていた。

 本来ならば診察はとっくに終わっている時間だが、現在キヴォトス全域で先生の死亡を受けて精神的な不調を訴える者が増え、診察を受ける患者が急増したため病院の受付時間が延長されたことでこの時間にも対応して貰えることができた。というよりこの時間しか空いていなかったのである。

 一方でミヤコ達の側から見ても人が少なくなる時間帯に病院を訪れることができたのは好都合だった。

 現在のサキがキヴォトスの生徒達からどう思われているのかを考えれば人目に付くリスクを抑えられるのは非常に喜ばしいことだったのである。

 それでも尚ここに来るまでには相当気を揉んだ。

 病院に入る際も正面玄関を繰り返し偵察して人通りが少なくなった頃を見極めて入場し、心療科の診察室へ行く道は先生の安置されている部屋を大きく避けるようにして移動した。

 この甲斐もあって、ここに来るまで誰にも会わずに到着することができた。

 

 

 そして今、時刻は夜の8時頃。

 現在サキは診察を受けている最中で、他の3人は廊下の椅子に座って待っている状態だった。

 しばらくすると診察室の扉が開き看護師から「月雪ミヤコさん、こちらへ。」と声を掛けられる。患者の関係者、ということでミヤコもサキの診察結果を知らせられることになっていた。

 診察室に入ると、椅子に座って項垂れたままのサキと、それに相対する医師が視界に入った。

 そしてサキの隣に用意された椅子に座るように案内される。

 

「本日は診察をしていただきありがとうございました。」

「いえ、サキさんも、皆さんもお疲れ様でした。それで、彼女の状態なのですが…。」

 

 思わず息を呑む。病名を告知される瞬間というのはいつも緊張するものだ。

 

「サバイバー症候群です。」

「…サバイバー症候群?」

 

 聞きなれない単語に思わずオウム返しをしてしまう。

 困惑する様子を見た医師はミヤコに説明を始めた。

 

「サバイバーズ・ギルトとも呼ばれます。事故や災害の生存者が、同じ状況で亡くなってしまった人々に対して強い罪悪感を抱いてしまう、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の一種です。発症する症状は様々ですが、例として、時折フラッシュバックを起こす、モチベーションが低下する、周囲への信頼心が低下し懐疑的になるといったものがあります。」

「そうなんですね…。」

 

 説明を受けてなるほどと納得する。

 正に今の彼女の状態そのままだ。

 医師は更に話を続ける。

 

「彼女の身に起きたことは、先日搬送された際にこちらでも把握していました。我々も退院した後のことを心配していたのですが…。申し訳ありません。」

「いえ、皆様が謝ることなど…」

「いいえ、私達は彼女が危険な状態になる前に適切な処置を行える立場であったにも関わらず対処を行えませんでした。これは我々の責任でもあるんです。」

 

 医師はなるべく感情を排除した口調でそう話すが、その手に作られた握り拳は小刻みに震える程に強い力が込められているのが見えた。相当悔しい気持ちで一杯なのだろう。

 

「彼女の治療には、我々も万全の体制で臨ませていただきます。今後のスケジュールは後日、準備が整い次第ご連絡します。本日の診察は以上となりますが、ご希望があれば入院も可能ですがどうされますか?」

「…サキ?」

 

 医師からの提案に対してサキに確認を取る。

 だが彼女は相変わらず俯いたまま小さく首を横に振った。

 おそらく、病院(先生がいる場所)に長居したくないのだろう。

 

「…すみません、入院は今回は…。」

「わかりました。ではカウンセラー等の手配ができましたらご連絡します。長期間の療養になると思われますが、少しずつ前に進んでいきましょう。」

「ありがとうございます。…あの、一つお尋ねしたいのですが、今日サキは事件当日のことについて皆さんに何かお話したことはありませんでしたか?」

「いえ、私共も今回は症状確認の為にいくつか質問をしただけでして…。今の彼女の状態では当日の記憶を無闇に思い起こさせるのは危険です。皆さんも無理に聞き出そうとはしないようにしてください。」

「…わかりました。ありがとうございます。」

「本日はお疲れ様でした。お大事に。」

 

 そうして、初日の診察は終了した。

 

 

 

 その後、4人は病院の一番大きなロビーまで来ていた。

 時刻は夜の8時30分を過ぎた頃。

 この時間ともなればもうすぐ病院が閉まる時間、つまり先生との面会時間も終了となる頃であり生徒達の姿もまばらだ。

 数日前は怒りと悲しみで狂った生徒達が病院に殺到して一時はヴァルキューレが鎮圧に介入する程の混乱が起きていたそうだが、今はそういった騒動は沈静化しており皆がルールに従って来院しているそうだ。

 

「少しだけここで休憩させてもらえませんか?」

 

 ミヤコの言葉を受けて4人は並んで大型の椅子に座って少しの間休憩に入る。

 今日は昨夜の一件もあって皆疲れが溜まっていた。

 サキが自傷未遂を起こした後、4人とも落ち着いて眠ることなどできず、朝までほぼ徹夜になった上に日中も先述の偵察活動などをしていたことが原因だった。

 

「サキ、すみません。ほんの少し休んだら公園に戻りますので…。」

「いや、もっとゆっくりしてもいいぞ。私に気を遣う必要なんてない。」

「ですが…。」

 

 サキはこう言っているが、本当なら先生がいるこの病院から一刻も早く立ち去りたいと思っていることは明らかだった。

 それでもこう言ってくるのは彼女がPTSDの影響で常に罪悪感を感じていることが原因で間違いなかった。

 つまり、自分のことで周りの人に少しでも気を遣わせているということが悉く許せなくなっているのだ。

 自分は助けられるに値する人間ではないと、サキはそう思い込んでしまっている。

 勿論、ミヤコ達は迷惑を掛けられている等とは微塵も思っておらず、むしろサキのことを何よりも優先したいと思っているくらいなのだが、その気持ちは今の彼女には届かない。悲しいすれ違いが続いていた。

 

 そうして休んでいると、どこからか小さな女の子の泣く声が聞こえてきた。

 思わず声の主を探してみると、通路の先、先生の遺体が安置されている部屋がある通路の方から5人程の集団が歩いてくるのが見えた。

 よく見ると皆黒い制服を着ており、何人かは頭に独特な形の角が付いているのがわかる。おそらくゲヘナ学園の生徒、記憶が確かならあの制服は生徒会である万魔殿のものだった筈だ。

 そして泣き声の主は銀髪に角の生えた生徒に抱き抱えられた小柄な金髪の女の子だったようだ。

 正直、今の状況でこんな状態の人たちに遭遇するのは非常によろしくないとしか言えなかった。

 

 銀髪の生徒は腕の中の女の子をあやすようにやさしい声色で声を掛ける。

 

「イブキ…そうだ、沢山泣いていいんだぞ。私達がついてるからな。」

「うぅ…先生…」

「よしよし…。」

「マコト先輩…先生、どうして死んじゃったの?イブキが、悪いことしたから…?」

「そんなことはない。イブキは何も悪くないぞ。悪いのは、海にいる怪物の方だ。」

「うぅっ…うわあああああああん!!」

「イブキ!…待ってろ、先生の仇は必ず私が、私達が取ってやる。約束する。だから…もう少し待っていてくれ…!」

 

 イブキと呼ばれていた女の子が大きな声で泣き出す。

 それを見てマコトと呼ばれた生徒はイブキを抱き締めながら、先生の仇を取ってやると言い放った。

 本来なら先生の仇を取ると宣言することは別に問題ではない。なにせ今はキヴォトス全体がそれを目的に動いているのだから。

 だがここにいる彼女の前でするには最悪の発言だった。

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」

 

 イブキの悲痛な声とマコトの発言を聞いたサキがPTSDの症状を訴えだした。

 頭を両手で抱えたまま俯いて突然謝罪の言葉を何度も呟き始める。

 彼女の両目は大きく見開かれ、瞳には絶望と恐怖の色だけが浮かんでいる。

 このままでは危険だ。

 

「む、向こうへ移動しましょう。さあ早く。」

 

 ミヤコは即座に移動することを選択した。

 慌てて立ち上がり、そそくさとこの場を離れるべく歩きだす。

 チラリとゲヘナの生徒達の方を見ると、露骨に不審な行動を見せた4人に訝しげな視線が向けられているのが見えた。

 そして、それすらも今のミヤコ達にとっては自分達へ敵意を向ける視線として感じてしまっていた。

 ここから出入口へ向かおうとすると、あのゲヘナ生達が立っている所へと近づかなければならない。故に外へ行くのを諦め、とにかく人目に付かない方へと向かうことにした。

 どんどんと、暗い陰の方へと。

 

 

 

 

 

「あれ、風紀委員会の皆さんじゃないですか。」

 

 イロハが病院に入ってきた4人の知り合いに声を掛ける。

 RABBIT小隊の耳にもその声は聞こえていたが、それを今さら気にする余裕など全く無かった。

 

 

 

 

 

 ロビーを離れ、さっきの場所とはうってかわって僅かな照明しか灯されていない薄暗い廊下へと辿り着く。

 サキは周りの皆に促されるがまま、廊下に沿うように配置された長い椅子に腰かけた。

 

「うん。ここなら人も来ないと思うよ。」

「サキ、大丈夫ですか?」

「サキちゃん。心配しないで。私達みんな、サキちゃんの味方だから。」

 

 座り込んだ彼女に皆で声を掛ける。

 しかし、サキは謝罪の言葉を繰り返すことは止めたものの、落ち込んだまま茫然としてしまっており、とても動ける状態ではなかった。

 彼女の症状が治まるまではここにいるしかなさそうだ。

 サキもそうだが、ミヤコらの心境も次第に悪い方向へ向かい始めていた。

 今さっきゲヘナの生徒達へ向けた感情。

 自分達に対して明確に接触してきた訳でもないのに、彼女らに対して敵対的な感情を抱いてしまった。

 つまり、今の自分達は味方ではない無関係な相手を次第に信用できなくなってきてしまっている。暴走した生徒からの襲撃に遭う日々が続いているとはいえ、非常に良くないことだった。

 無関係な人間は味方ではないが敵でもない、という認識は組織という物の中で活動するうえで非常に大事なものだった筈だ。しかし、今の自分達はそれが次第に実行できなくなってきている。

 このままでは常に警戒心を張り巡らせながら生きる日々を送るようになりかねない。そうなればまともに日常生活を送ることなど不可能だ。

 今もこうして、人気の少ない廊下で周辺確認に神経を張り巡らせている状態なのだ。

 

 そして、恐れていることというのはやたらと立て続けに起こる。

 

「ハナコさん、今日はありがとうございました。」

「いいんですよ。皆さんも先生に会いたかったことでしょうから。本当でしたら昨日許可を取れれば良かったんですけど…。」

「いや、むしろ今日来れたからこそあまり人目につかなくて済んだ。感謝する。」

 

 人の話し声が聞こえる。それも複数だ。

 せっかく人気のないところを目指して来たというのに水の泡である。

 若干の苛立ちを感じながらミヤコ達は声のした方へ視線を向ける。

 その先には桃色の長い髪をしたトリニティ総合学園の制服を着た生徒と、何やら見慣れない白と黒を基調とした服を着た4人組がいた。

 その中の白いフードを被った生徒がトリニティの生徒にペコリと頭を下げてお礼を言っているのが見える。

 

「それにしても、姫ちゃんはいつの間にハナコさんと連絡先の交換をしてたんです?」

「前一緒に戦った時*1に教えてもらったんだ。アズサが、普段学校でどうすごしてるか教えてもらおうと思って…。」

「そういえば、今日皆さんが集まることをアズサちゃんには黙っていてほしいと言われましたが…。」

「ああ。アイツは、もう私達とは関わらない方がいい。今のアズサには、自分だけの居場所があるからな。」

「…アズサちゃん、皆さんのこと凄く心配してましたよ?そんなこと言わないで会ってあげてくださいサオリさん。」

「そうか…。」

 

 聞き耳を立てて話を聞くとそんな会話が聞こえてくる。

 そしてその中で出てきた”サオリ”という名前と、彼女の服装から思い当たる人物が浮かび上がってきた。

 

「サオリも来てたんだ…。」

 

 5人の方を眺めながらモエが呟く。

 視線の先にいる人物は、昨日エンジェル24で会ったあの錠前サオリで間違いない。随分早い再会になったものだ。

 だがそこで静寂を破る者がいた。

 

「サオリ…錠前サオリ!?」

「じゃあ、アリウススクワッド!?」

 

 ミヤコとミユが警戒感を露にしながら声を荒げる。

 昨日会ったモエと違って面識の無い二人からすればテロの実行犯が目の前に現れたという判断になってしまったので仕方ない。

 そしてその声は相手の方にも聞こえてしまったようで5人の目線が一気にこちらを向いた。

 非常に気まずい空気が両者の間に流れる。

 お互い逃げたり襲いかかったりするでもなく、「どうしよう…。」とばかりに黙って見つめ合っていた。

 だがそこでモエが行動に出る。

 

「や、やあサオリ、昨日ぶり~。覚えてる?朝にコンビニで会った…」

 

 そう言いながら必死に作り笑いを浮かべつつ向こうに手を振る。要は敵対心は無いとアピールすることが一番だと判断したのだ。

 するとそれが功を奏したのか、鋭くなっていたサオリの目付きが柔らかいものに変わった。

 

「コンビニ…ああ、SRTの。」

「あれ?サッちゃんの知り合い?」

「昨日のコンビニ弁当を貰った相手だ。」

「へえ、すごい偶然だね。こんなに早く再会できるなんて。」

 

 そう言うとサオリたちはRABBIT小隊のほうへと歩いてくる。

 ミヤコとミユは指名手配犯がこちらに親しげな態度を見せる状況に困惑を隠せない様子だったが、モエが昨日の朝起きたことを説明することでどうにか納得してもらえた。

 

「あ、あなた達が昨日のお弁当をくれたんですね。ありがとうございました。とても美味しかったです。えへへ…。」

「満足してもらえたなら良かった。私達が言うのもなんだけど、あれ廃棄品だからちょっと心配だったんだよね。」

「い、いえいえ!全然大丈夫です!そもそもちゃんとしたご飯を食べれたのも久しぶりでしたし…。」

「ちょっと待って、ちゃんとしたご飯食べたのが久しぶりってどういうこと…。」

 

 モエとスクワッドの緑髪の少女が言葉を交わす。初対面から比較的良好な関係を形成できたあたり、やはり食べ物の恩というのは強い。

 だがそこでサオリがもう一人の『知り合い』の存在に気付いた。

 

「空井サキ…。昨日弁当をくれたのはお前だったな。礼を言う。」

 

 サオリはそう声を掛けるがサキは椅子に座って項垂れたまま反応を示さない。

 

「貴女が、空井サキ?」

 

 白いフードを被った桃色髪の少女がそう言うと、他の者達もサキに注目する。

 

「ふぅん…。」

「え?じゃあこの人があの時先生と一緒にいた…?」

 

 アリウススクワッドの面々もサキのことを知っていたようだ。

 緑髪の少女が示した反応を見てミヤコは再び警戒感を露にする。

 

「すみません、彼女は今精神が不安定なんです。そっとしてあげて貰えませんか?」

「え?あぁ、す、すみません!」

 

 若干怒気を含んだ態度のミヤコからそう言われて緑髪の少女は慌てて謝罪する。

 しかしミヤコの想像に反してアリウススクワッドの面々は表立って敵対的な態度ではなかった。それどころかサオリはこんなことまで言い出した。

 

「すまない、お前が部隊の隊長か?」

「はい。そうです。」

「その、何かサキの力になれることはないか?」

「どうして貴女が?」

「…どうしても放っておけないんだ。今のサキはまるで…」

 

 サオリがミヤコにそう頼み込むが…。

 

「やめろ!!」

 

 サキがそれを拒絶する叫び声を上げた。

 

 

 

 

 

 症状が治まらない。

 サキの頭の中は色々な感情でごちゃごちゃになっていた。

 

(私のせいで皆が悲しんでる…。)

(私が皆を不幸にしてる…。全部私が悪いんだ…。)

 

 イブキの悲鳴が頭から離れない。あの子があんな思いをしたのも自分のせいだ、だから私は許されてないけない存在なんだ、と。

 そして、隣にいたミユの口からこんな言葉が聞こえてくる。

 

「サキちゃん。心配しないで。私達みんな、サキちゃんの味方だよ。」

 

(味方…?それは嘘を付いてる私の、か?なら本当のことを知ったら…?)

 

 皆を不幸にする自分に味方なんかいない。今の皆は私の嘘に騙されているだけだ。

 皆は真実を知らなければならない…。なのに、私はそれを言い出せない。こんなになっても、仲間達から突き放されて本当の一人になることが怖くて堪らない身勝手な自分が大嫌いだった。

 そんなことを考えていると、ミヤコ達が驚きの声を上げる。

 

「サオリ…錠前サオリ!?」

「じゃあ、アリウススクワッド!?」

 

(錠前サオリ…アイツも来ていたのか。)

 

 どうやら昨日会った錠前サオリもここに来ているらしい。

 ミヤコとミユは会うのは初めてだった筈だ。ならこの反応も当然か。

 どうなるかとも思ったが、モエがどうにか場を納めてくれたようだ。アイツが昨日一緒に行ってくれて良かった。

 

「空井サキ…。昨日弁当をくれたのはお前だったな。礼を言う。」

 

 上から声が聞こえる。私にお礼を言っているようだ。そんな資格など私には無いのに。

 

「すみません、彼女は今精神が不安定なんです。そっとしてあげて貰えませんか?」

 

 ミヤコがサオリの仲間達にそう言っている。

 ミヤコにもずっと迷惑を掛けてばかりだ。

 

「すまない、お前が部隊の隊長か?」

「はい。そうです。」

「その、何かサキの力になれることはないか?」

 

(力になりたい?私の?)

 

 サオリから力になりたいと言われた途端、今まで考えていなかった悪い予想が脳内で次々と構築されていく。

 

 今の空井サキという人物への世間のイメージは大きく2つある。

 1つは先生を守れなかった役立たずの生徒。

 もう1つは怪物1号の襲撃に巻き込まれた哀れな被害者。

 そして後者のイメージを持っている相手なら、きっと私の味方になろうとしてくれる筈だ。今のサオリのように。

 だがそんなことがあってはならない。本当の空井サキは、そのように助けてもらう資格のある人間ではない。

 しかしこのままでは、私の味方は更に増えていくだろう。

 

 知らせなければならない。私が、あの日何をしたのか。

 

 これ以上、私の嘘の被害者を増やすわけにはいかない。

 RABBIT小隊の皆も、FOX小隊の先輩達も。アリウススクワッドも。

 誰も私の道連れになどできない。これは、私だけが背負うべき『罪』だ。

 ここからは、一人だ。

 勇気を出すんだ。

 

 

「どうして貴女が?」

「…どうしても放っておけないんだ。今のサキはまるで…」

 

「やめろ!!」

 

 

 

 

 

 

 突然叫び声をあげたサキに皆の注目が集まる。

 大勢の視線を受けながらサキは言葉を続けた。

 

「私は…皆に助けてもらう資格なんて無い…。」

「何故、そう思うんだ?」

「サキ、何度でも言いますよ?私達は貴女を絶対に見捨てません。それに…」

 

 サオリもミヤコも、サキのこと心配して声を掛ける。

 だが、彼女の心はもう決まっていた。

 

「ミヤコ、話すよ。あの日、あの島で本当は何があったのか。私が、何をしたのか。」

「…何?」

「…え?」

 

 困惑する皆を無視して、サキは大戸島で起きた真実を語り始める。

 

 

 

「あの日、呉爾羅(ゴジラ)は自分から私達を襲おうとなんてしていなかった。」

 

*1
最終編第2章15話




次回『真実』
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