BLUE ARCHIVE -1.0   作:あたー

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17話です。
ちょっと時間がかかっちゃいましたワ。
アル様も12月は忙しいって言ってたし仕方ないね。


UAが14000超えました!皆さんありがとうございます!









真実

「あの日…ゴジラは自分から私達を襲おうとなんてしていなかった。」

 

 

「ゴジラ?」

「そうだ。皆はゴジラがいきなり襲いかかってきたと思っているが、そうじゃない。アイツは、ただ自分の身を守ろうとしていただけだ。あの時、私が攻撃を仕掛けなければ、ゴジラが暴れて先生が死ぬことも無かった筈なんだ。」

 

「ちょっと待って。さっきから言ってる『ゴジラ』って何なの?怪物1号の名前?ソイツが本当は襲って来なかったって何を根拠にそう言えるのさ?」

「あの島には、昔から『ゴジラ』という海の怪物が出るっていう言い伝えがあったんだ。深海魚が浮いた日はゴジラが来るから外に出てはいけない、家の中でじっとしていればゴジラは悪さをせずに帰っていくと。そしてその日は、本当に深海魚が沢山海に浮いていたんだ。」

 

「じゃあ、あの日海の異変とか、海底火山の情報について連絡してきたのって…」

「そうだ。その深海魚が浮いた原因を調査するためだった。」

「そんな…。」

 

「ゴジラが最初に現れた時、アイツは確かに漁船を破壊した。だけどそれは、こっちが船のライトを突然浴びせて驚かせてしまったからだ。そしてその後も、アイツは私達を見つけてはいなかった。いや、もしかしたらわかっていたのにわざと無視していたのかもしれない。だから先生は最初、言い伝えの通り隠れてこの場をやり過ごそうって言ったんだ。でも私は…それを突っぱねた。SRTの生徒として、あんな生き物は放置できないと…。ゴジラへの攻撃は、私が自分の考えを押し通してやったことなんだ。その結果、ゴジラは身を守るために反撃して、それに巻き込まれて先生は死んだんだ!…だから全部、私が悪いんだ…。最初から、先生の言う通りにしていれば…。」

「…。」

 

 モエが逐一挟んでくる疑問に応えながら、サキはあの日の真実を語る。

 彼女の語った内容を聞いて、皆言葉を失った。

 これは、全てが不明だと考えられていた怪物1号の数少ない情報源に他ならない。

 だが、その内容はあまりにもやるせないものだった。

 今の話が本当ならば、彼女の言う通りサキ自身が先生が死亡する直接の原因を作ったことになる。

 ミヤコ達は彼女が語った話をどうにか否定したかったが、それをできるだけの根拠が全く無い。

 今この場でゴジラについて最も詳しいのはサキなのだ。何も知らない他人から『貴女のせいじゃない』等と言われたところでまともに聞く耳を持つとは思えない。

 

「…私は、救いようの無い極悪人だ。今までずっと皆を騙して、さも自分は巻き込まれただけのように装ってた。そんなの許される筈が無い。先生だって、私のことを許さないに決まってる。だって、自分が死ぬ原因を作った張本人なんだからな。」

 

 絶望しきった表情でサキはそう続ける。

 これを話した時点で、彼女は今までの人間関係を完全に捨て去る覚悟をしていた。

 

 沈黙が続く。話を終えたサキは顔を伏せたまま周りの反応を待っていた。

 罵声、怨嗟、失望。

 そんな声が次々と飛んでくるだろうと、彼女は身構える。

 苦楽を共にした仲間達からそんな言葉をぶつけられる覚悟はまだ出来ていないが、こうなってしまっては受け入れるしかない。

 

「一つ、確認したいことがある。」

 

 声が聞こえる。この声はサオリだ。

 サオリはサキと目線を合わせるように屈んで膝立ちになる。

 

「お前は何のためにゴジラを撃ったんだ?」

「…何?」

「教えてくれ。お前は何のために撃ったんだ?ゴジラと戦いたかったのか?それとも先生を危険から守りたかったのか?」

 

 そう言うサオリの表情は何とも無機質なものだったが、何と返答すればいいかはサキにしっかり伝わった。

 もう隠す必要はないと、正直に全て答える。

 

「私は…私はあの時、ゴジラが危険な存在だと思ったんだ。だから一緒にいた皆が危険に晒されないように、アイツがどこか他の場所へ行って暴れたりする前にここで倒そうと、そう思ったんだ。それなのに…。」

 

 本心を打ち明ける。

 あの時のサキは、ただ皆を守ろうと、SRTとしての役目を果たそうとしていただけだった。

 それを聞いたサオリは、サキに向けてこう告げる。

 

「それなら、きっと先生はお前を許さないなんてことはない。…私がこんなことを言うのは余りにも図々しいことだとは思うが…。」

「…なに勝手なこと言ってるんだ?」

 

 サキは怒気を含んだ声をサオリにぶつける。

 

「お前が勝手に先生の気持ちを決めるな!!お前は先生じゃないだろう!!」

「そうだ。私は先生じゃない。だが私も、過去に先生の命を奪おうとしたことがある。」

「エデン条約調印式の時のことか!?」

「そうだ。」

 

 サキも彼女らが何をしたのかは知っている。

 エデン条約調印式を突如として襲撃し、ユスティナ聖徒会と呼称された勢力を率いてトリニティとゲヘナ両校へ宣戦布告をしたアリウス分校。その攻勢の中心にいたのが、アリウススクワッドだ。

 結局攻勢自体は鎮圧されたものの、あの事件によってトリニティの市街地は甚大な被害を受け、多くの人が傷付いた。

 そして、その渦中で先生も銃撃を受け、一時は意識不明の重体になった。

 RABBIT小隊の面々も当然事件のこと自体は知っており、先生の一件もあってアリウスへの印象は最悪だった。

 昨日のサキとモエのようにあっさり打ち解けたことがおかしいのであって、先程のミヤコとミユのような反応が普通なのである。

 

「自分の命を奪おうとした私を、先生は許してくれた。だからお前のことも…」

「確かに先生はあの時、お前達アリウスの攻勢に巻き込まれて負傷した!だがあれは只の事故だろう!?私とは…まるで違う…!」

「何だと?」

 

 サキの言葉を聞いたサオリが驚愕の表情を浮かべる。何か想定外の事態になっているようだ。

 

「違う!あれは事故なんかじゃない!」

「何…!?」

 

 怒りの表情を見せるサキに対して、サオリは一呼吸置くと意を決したようにこう言った。

 

 

「あの日、先生を撃ったのはこの私だ。」

 

 

「…え?」

 

 その発言で、今度はRABBIT小隊側が騒然とする。

 

「ちょっと待ってください。先生が負傷したのはユスティナ聖徒会との交戦による流れ弾ではなかったんですか?」

「違う。私がこの手で先生を撃った。あの場で確実に殺そうと、明確な殺意を持ってな。」

 

 ミヤコがサオリに掴みかかりながらそう問いただす。

 対するサオリは臆することなく自分の犯した罪を語った。

 

「ハナコさん、これってどういうこと?何か知らない?」

「…先生がサオリさんに撃たれたことを知っているのは事件の関係者の中でも極一部の者だけです。私達もアズサちゃんから聞いただけで直接見た訳ではないのですが、先生からは負傷したのは只の事故だったということにしてほしいと秘密裏にお願いされました。スクワッドの皆さんが居場所を失わないようにと、先生はずっと気に掛け続けていたんです。」

「そんな…。」

 

 今まで知る由もなかった事実に、アツコ達も同じように驚愕を隠しきれなかった。

 一方で唐突にそんなことを知らせられた者にとって、それは即座には受け入れ難いことだった。

 

「嘘だ…。」

「嘘じゃない。これが真実だ。」

「信じられるか!!お前達は偶然じゃなく、最初から先生を殺そうとして、それでも先生はお前達を許してくれて…。自分の身を削って…」

「そうだ。そのうえ先生は、最悪の大人の支配下で、暗闇の未来しかなかった私達を救い出してくれた。あの人には一生感謝してもしきれない程の恩がある。」

 

 サキは目に見えて混乱し始める。

 この話を信じるなら、先生は自分を殺そうとした相手を許したうえに進んで力を貸したことになる。

 それなら自分も…と、一瞬思ってしまうが、彼女はそれを必死で否定する。

 

「お前達が許されていても…先生は私を許してはいない!だって先生は昨日…!」

 

 そこへ突然新たな声が聞こえてきた。 

 

「その二人の言っていることは本当よ。」 

 

 その声はこの場にいる皆にとって聞き覚えのあるものだった。

 全員の視線が声のした方へ向く。

 

「風紀委員長…。」

 

 ミヤコが小さな声で呟く。

 新たな声の主はゲヘナ学園の風紀委員長、空崎ヒナだった。彼女の隣には同じ学園の風紀委員達3人が同行しているのが見える。

 RABBIT小隊にとっては虚妄のサンクトゥム攻略作戦で共闘した時以来、スクワッドにとってはエデン条約調印式以来の再会だ。

 

「ごめんなさい。盗み聞きをするつもりはなかったの。正面入口が閉鎖されて、こっちの裏口からの退出を案内されたから。」

「聞いてたって…どの部分からだ?」

「貴女が『皆に助けてもらう資格なんてない』と言っていたところからね。」

 

 つまりほぼ最初からだ。

 隠すことをやめたとはいえ、ここで彼女らに聞かれてしまうとは思っていなかっただけに焦りを感じてしまう。

 だが焦りを感じているのはサキ達だけではなかった。

 

「クソ…」

 

 サオリが苦々しげな表情で呟く。

 アリウススクワッドにとっては最も会いたくない相手で、ましてやこんな戦闘の準備もなにもできていない状態で遭遇するのは破滅を意味しているといっていい。

 そのためサオリ達は即座に逃走を計ろうとするが…。

 

「待ちなさい錠前サオリ。今は貴女達をどうこうしようとは思ってないわ。それよりも…」

 

 ヒナはサキの方を向きながら話を続ける。

 

「あの日、錠前サオリが先生を撃ったのは本当よ。私が証明する。」

「なんでお前が…。」

「先生が撃たれた時、一緒にいたのが私だから。私も、先生からあの日の負傷は事故だったということにして欲しいと頼まれたうちの一人よ。」

 

 ヒナは無表情のまま、自分の犯した失敗を語る。

 

「私はあの時、先生を安全な所まで送り届けてほしいと皆に託された。だけど…結局守りきれなかった。目の前で先生を撃たれて…私は、あの時全てを諦めた。毎日大変な思いをして、泣き言を言わずに頑張って、その頑張りの果てに先生が撃たれて命を落とすところだった。私はそのことに耐えられなくて、『自分は何のために頑張っていたんだろう』と思えてしまって、心が折れたわ。そして、全部投げ出して、逃げ出した。」

 

「でも先生は、そんな私の所へ来て、こう言ってくれた。『”いつも頑張ってくれてありがとう、後は私がどうにかするから休んでて。”』、と。それで、自分にのし掛かっていた色々なものがスッと降りた気がして、自分も一緒に頑張らないとっていう気持ちが湧いてきた。」

 

「あの時、私は先生のおかげで立ち直れた。あの人は私のことを見放さずに寄り添ってくれたのよ。自分を守れなかった、こんな生徒のことを。だから、私も先生が貴女のことを許さないとは思わない。だって貴女は、みんなを守りたい一心でゴジラを撃ったんでしょう?」

 

 彼女達から知らせられる事実は、サキにとっては信じられないような話の連続だった。

 先生を殺意を持って傷付けた生徒と、その凶弾から先生を守れなかった生徒。そして、それでも尚その両方を自分の大切な生徒だと認め、力を貸した先生自身のことも。

 

「私は、自分がしたことをずっと後悔している。例え、あの時は他に選択肢が無かった、だから仕方ないと誰かに言われたとしても、自分が犯した罪は決して消えない。私は…紛れもない罪人で、悪人だ。」

 

 サオリがサキの顔を見据えながらそう語る。

 彼女の自己評価を聞いたサキは、まるで鏡写しにした今の自分自身を見ているかのような感覚を覚えた。

 

「『”だからといって、苦しんで当然なわけじゃない。”』先生は私達にそう言った。私は、先生ならきっとお前にも同じ言葉を掛けると信じている。お前は皆を守る為に一番危険な役割を志願した、とても勇敢な生徒だ。そんなお前が苦しむことなど、先生が望んでいる筈がないだろう?」

 

 サオリの言葉はサキにとってはこれ以上ないくらいに暖かくて、全てを委ねてしまいたくなるような心地よさがあった。

 

(私は…許されていいのか…?本当に…?)

 

 だがそんな時に、昨晩先生から言われた言葉が蘇る。

 

『”君のせいで私は死んだんだよ。”』

『”私はもう、オマエを自分の生徒だなんて思わないから。”』

 

 あの言葉の数々がまだ頭から離れない。

 例え皆から許されていると言われても、先生自身の発言に勝るものでは無いのだ。

 

「無理だ…。」

 

 サキはサオリからも、ヒナからも目を逸らし、両手で頭を抱えて顔を伏せる。周りとの接触を全て遮断しようとしているかのように。

 そして嗚咽混じりの声でこう叫んだ。

 

「もう私は、先生の生徒じゃない!だって先生は、昨日夢に出てきてこう言ったんだ!お前のせいで自分は死んだんだって、もう私を自分の生徒だなんて思わないって!」

「それはただの夢だ!お前が作り出した存在しない幻だ!」

 

 そこで発された『夢』という言葉が、再びサキを昨夜と同じ状態に引き戻してしまった。

 

「ゆ、夢?なら、今見ている光景も夢か?そうだ、こんなに都合良く私を助けてくれる人間が現れる訳がない、今のこれも全部都合の良い夢なんだ!!きっとまた、ここにもゴジラが来るんだ!!そうに決まってる!!」

「しっかりしろ!!」

 

 サオリは縮こまったサキの体を抱え、体同士が密着するように強く抱き締める。

 

「これは夢でも、幻でもない!わかるだろう?」

 

 サオリは抱き締めたサキの頭を自分の胸に押し付ける。

 自分が存在している証明、生きている証である、心臓の鼓動を聞かせるために。

 自分の体温を、感じさせるために。

 

「サキ、例えこの世界の全てがお前を許さなかったとしても、私はお前を許す。お前は一人じゃない。私がさせない。絶対に。」

 

 サオリの腕の中で、サキは今まで堆積していた感情を全て吐き出すかのように泣き続けていた。

 

 

 

 

 

 ひとしきり泣いたサキは緊張が解けたのかそのまま眠ってしまった。

 サキを両腕で抱き締めたまま、サオリが口を開く。

 

「…SRTの隊長。」

「はい。」

「私は、お前達とは真逆の存在、最悪の犯罪者だ。トリニティも、ゲヘナも、皆傷付けて、そのうえ先生をこの手で殺そうとした。わかっただろう?」

「…はい。」

「そんな私が、こんなことを望む資格なんてないのかもしれない。それでも…私はサキの力になりたい。どうか、その許しを貰えないか?」

「それは…」

 

 サオリはミヤコへ視線を向けるとそう尋ねる。その瞳には、確かな決意が宿っていた。

 だがミヤコはそれに対してすぐに返答ができなかった。

 この数十分間でもたらされた衝撃的な情報の数々が、彼女の判断力を酷く鈍らせてしまっていた。

 

 これまでの話を総括すれば、今のサキと対等に話せる相手は恐らくサオリだけだ。

 どちらも先生の命を脅かした者同士。そしてサオリに関しては、あれ程の事を起こしながらも先生の生徒として自分達と同じ立場に立つことを許されていた人物だ。

 サオリの存在は、サキにとって大きな心の支えになってくれるに違いない。今の彼女には、本心を隠さずに打ち明けられるような理解者が必要だ。

 残念だが、今の自分達では、その役割を果たすことはできないだろう。

 

 だが同時に、目の前にいるのはテロの実行犯であり、そのうえ先生を殺害しようとした人物でもあるのだ。

 そんな人間の要求を受け入れることを、果たして許していいのか?そもそも、彼女は本当に信用していい相手なのか?

 その二つの考えが、ミヤコの中で反復し合っていた。

 そんな最中、ヒナがサオリに話しかける。

 

「錠前サオリ、貴女は本心から空井サキの力になりたいと思っているのよね?」

「勿論だ。」

「それは何の為?」

「…どういう意味だ?」

「貴女はテロの実行犯。その事実は決して変わらない。だからこそ、何か裏の目的があるのではないかと疑ってしまうのも無理はない。そう思わない?」

「…」

「月雪ミヤコ。貴女がすぐに返事をできないのもそれが理由なんじゃないかしら?」

 

 ヒナがミヤコの方を見て確認をする。ミヤコはそれに対して小さく首を縦に降った。

 サオリはここで見ず知らずの相手からの信頼を得ることを求められてしまった。

 だが、今の彼女にそれをできるほどの実績は無い。

 

「そうだな。今の私の頼みを聞けと言うのも無理な話だったな。」

 

 サオリの表情に影が掛かる。

 だがヒナの話は終わっていなかった。

 

「だけど、先生はずっと貴女達を信じていた。そして貴女達もその信頼に答えた。空が赤く染まったあの日、先生からの呼び掛けに答えた貴女達が戦力の一角としてあの作戦に参加していたことを私は知っている。」

 

 ヒナのその言葉を聞いて、今度はハナコが声を上げる。

 

「ヒナさん、そのことも知っていたんですね。」

「先生から教えてもらったわ。あの人は私がアリウスへ憎しみを抱かないように色々と話をしてくれていたから。アリウス自治区がどのような環境であったのかも。」

 

 ヒナの話を聞いたサオリが再び驚いた表情をした。

 

「だから私は、先生が信じた貴女達を信じたいと思う。同じ先生の生徒として。今の私達なら、そんな選択もきっとできるはずよ。どうかしら?」

 

 ヒナが話した内容は、ミヤコが最後の決心をするための根拠として充分なものだった。

 

「錠前サオリさん。私は、風紀委員長と違って貴女達のことを全く知りません。私の中では、貴女達は今も犯罪者で、逮捕するべき対象です。」

「…」

「ですが、貴女も先生が大切にしていた生徒だということを、今日知ることができました。だから…」

 

 ミヤコはスクワッドを一人ずつ見渡す。

 

「私も先生の生徒である貴女を、貴女達アリウススクワッドを信じます。」

「!!」

「これまでの無礼な態度をこの場で謝罪します。申し訳ございませんでした。」

「そのうえで、改めてお願いがあります。とても身勝手な事とは思っておりますが…。」

 

 そして、サオリに向けて深々と頭を下げた。

 

「私達に、力を貸して貰えませんか?」

 

 その言葉に、サオリは感極まった声で答える。

 

「ああ…!」

 

 そして少し遅れてモエとミユも隊長に続いてスクワッドへ頭を下げた。

 

 

 

 

 

「委員長、いいの?あいつらを捕まえなくても。」

 

 それまで黙ってことの成り行きを見ていたイオリがヒナに声を掛ける。

 風紀委員会にとってアリウススクワッドは問答無用で逮捕するべき相手なのだが、ヒナはあっさりと見逃した。

 例えどんな動機があったとしても、犯罪者であればとりあえず一度捕まえて裁きを与えてから公平に扱うのが風紀委員会のやり方だ。

 ましてやヒナはそれを今まで特に徹底して行っていたのだからこの行動は異常といえた。

 

「そうね。本来ならそうするべきね。だけど、あの子達を見ていたら、今の自分を見ているような気分になって。」

「今の自分…ああ、そっか。」

 

 その返答でイオリは合点がいったようで、それ以上は何も言わなかった。

 

「『呉越同舟』。良い言葉よね?アコ。」

「…そうですね。私もお気に入りの言葉です。」

 

 ヒナは微笑みを浮かべながら自分の副官に向けてそう話す。

 数日前に限界を迎えて壊れてしまった彼女が今こうして普段と同じように生きることができるようになったのは、ヒナを助ける為に風紀委員会としての立場も、正当性も全て捨てて普段敵対している相手(便利屋68)を頼ったアコのおかげだ。

 そして今はその問題児達と協力しながら日々を過ごしている。ならば他の者達にも同じような境遇があっていいはずだ。

 今度は自分が友人達(RABBIT小隊)の為に嘗ての敵(アリウス)と協力する番だ。

 

 そんなことを考えていると、ヒナのスマホが着信を知らせる振動を発した。

 スマホを取り出して画面を見る。その瞬間、ヒナの表情が仕事中にするような鋭いものに変わった。

 

「RABBIT小隊の3人。」

「…何でしょうか?」

「もし、今空井サキを苦しめている犯人に自分達の手で報いを与えられるとしたら、どうする?」

「それは…勿論やります。ゴジラを倒せるのなら…」

「それなら、私と一緒に来なさい。」

「急に何を…まさか…!」

「ええ。」

 

 

 

 

 

「ゴジラが見つかったわ。」

 




呉越同舟(ごえつどうしゅう)…敵対していた者同士が出会ってしまった様子。又は敵同士だった者が力を合わせること。


某第0号「まさに呉越同舟、私の好きな言葉です。」


今年のうちにもう一話くらい投稿したいけどどうなるやら…
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