BLUE ARCHIVE -1.0   作:あたー

19 / 34


19話です。
ブルアカふぇすがあるので20話の投稿は遅くなるかも…








I guess we'(私達)re() monster(モンスター) hunters(ハンター) now.

『こちらゲヘナA班、突入準備完了…おい美食研究会、今回は私の指示に従って動いてもらうぞ。いいな。』

『ええ。わかってますわイオリさん。なんなりとご用命くださいな。』

『まったく調子いいこと言って…こんなことじゃなければ密航者として船倉の牢屋に叩き込んでやるところなのに…。』

 

 手元の無線機から聞こえてきたのはゲヘナ学園風紀委員のイオリと、同じくゲヘナ学園の美食研究会会長、黒舘ハルナの声だった。

 どうもハルナ達は今回の捜索隊に参加しようと風紀委員会の船に密航してついて来たらしい。

 普通なら即捕まりそうなものだが、戦力として加えられているのは今回がそれだけ特別な作戦だからだろうか。

 

「こちらミレニアムB班、同じく準備完了よ。いつでも行けるわ。」

 

 ラゴス島の海岸線に立っていたユウカはジャングルを前に無線機へ向けて話す。

 彼女の周りではC&Cの一ノ瀬アスナとゲーム開発部の4人が各々の武器を構えながら突入のタイミングを待っている。

 ユウカはそんな彼女達を見つめながらこの状況に至った経緯を思い出していた。

 

 

 

 

 

「ラゴス島?」

 

 ミレニアムサイエンススクールの会議室でネルが呟く。

 怪物1号発見の報告を受けて非常対策委員会の緊急会議が開かれた。尤も、夜間の召集になった為形式は通信機器を使ってのオンライン会議の形となった。

 配置されたモニターには連邦生徒会のリンを始め各学園の代表達が映っている。

 

『はい。怪物1号が上陸したのはこのラゴス島という無人島です。島全体が巨大なジャングルで構成されており、捜索が難航しております。どうやら熱探知装置といったものに反応しないようなのです。理由はわかっていませんが…。』

 

 モニターを通じてリンの声が聞こえる。

 ユウカはその熱探知装置に反応しないという言葉に食いついた。

 

「熱探知が駄目なら他の装備はどうなの?動体探知、地震振動の観測機とかでも調べられないものかしら?必要なら機材を提供できるわよ?」

『それなのですが、既にドローンを派遣して島全体を各種センサーでスキャンしたところ何れの探査でも目標を捉えることはできませんでした。』

「えっ?何よそれ本当に怪物1号を見つけたんでしょうね?というかそれって…」

 

 本当に生き物なのか、と言いかけて発言を止める。

 元より恐竜のような謎の生物というだけでも十分荒唐無稽な話だったが、ここまで現代文明をもて遊ぶ能力を持った存在が自然の生物だというのは尚のこと信じられないというのが彼女の考えだった。

 むしろ怪物のカモフラージュを被ったロボット兵器だと言われたほうがよっぽど納得できる。

 もし仮にエンジニア部がそんなものを作ったなら、きっと空を飛びミサイルを撃ち込むような全身が武器の凄いやつを作ったに違いない。

 

 だが今はそんな話題よりもこれからの対応を模索するのが優先だ。

 

『ランカスターが怪物1号と接触し、損傷を受けたことは間違いありません。そしてその後怪物1号がラゴス島へ上陸したことは追跡を行ったアビドス高等学校のアヤネさんが目視で確認しています。』

「それなら、もう島から出てしまったんじゃないの?センサーに一切反応しないだなんて…」

 

 彼女をはじめとしたミレニアムの生徒全体の傾向として、機械に対する信頼が非常に強い。

 故に各種探知機で発見できない時点で相手は既に島を離れてしまったのではないかと即座に考えた。

 合理的に考えれば島の捜索ではなく周辺海域の捜索の方に力を入れるべきだというのが彼女個人の作戦方針である。

 だが、リンの答えはそんなユウカの考えとは対照的なものだった。

 

『その懸念は尤もです。ですが我々はここで怪物1号を逃がすつもりはありません。ラゴス島近海の海上封鎖は勿論のこと、目視による島内の捜索を並行して行います。』

「目視による捜索って…」

 

 つまり島の中に踏み入って人の目で捜せということだ。

 あまりに非効率な行動だとユウカは文句を言いかけるが、それより先にある人物が話に割り込んできた。

 

『ん、私達はそれで構わない。体を動かして探し物をするのは慣れてる。』

 

 別のモニターに映る人物が発言する。アビドス高等学校のシロコだ。

 彼女達にとって肉体労働は得意分野であり、捜索活動も全く苦ではなかったのだ。

 

『私もシロコさんと同意見です。その島にいる可能性があるなら徹底的に調べないと気が済みません。ここまで追い詰めたのに捜索不足で見逃したとなったら、この先絶対後悔すると思います。』

 

 ゲヘナ学園のイロハがシロコに同調する。

 リンがわざわざ非効率な方法であろうとも捜索を行おうとしたのもこれが理由だった。

 如何なる労力を払ってでも全て確認しなければ納得しないという者が今は多く存在している為である。

 ユウカが苦言を呈したのは、機械類を一切頼ることができない状況に対する忌避感からだった。

 

「それなら、ヘリを使って上空から観測できないかしら?いくらジャングル地帯でも全長30メートルの物体が移動していればすぐわかるんじゃないの?」

『ヘリでは遠距離からでも相手に存在が察知されてしまいます。怪物1号は先の遭遇戦で航空機への警戒心が強くなっている可能性が高いうえに、敵は限定的ながらも対空攻撃の手段を持っていることが確認されていますから…』

「…ヘリが島に近づく前に察知されて海に逃げられるか、あるいは奇襲攻撃で撃墜される可能性がある、ってこと?」

『…その通りです。』

 

 リンの答えを聞いたユウカは途中から彼女の言わんとすることを理解した。

 ヘリでは相手に先手を打たれるリスクが高いのだ。

 逃げられるのがマズイのは勿論だが、撃墜されるリスクも無視できない。

 もし島内に墜落すれば、火災が発生するなどして捜索どころではなくなるのは明白だ。只でさえ周囲は軒並み密林であり延焼はすぐに始まってしまうだろう。

 

「ユウカ、こうなったらもう仕方ないだろ。」

「…わかったわ。」

 

 ネルがユウカの肩に手を置きながら話し掛ける。ユウカも仕方なくといった様子だが受け入れたようだ。

 

『それで、実際の捜索と攻撃はどのように行いますか?』

『今回の捜索は島の外周部から捜索を開始し、全隊で中央部へ向けて包囲の輪を狭める形で行います。』

『ということは捜索隊をいくつか編成する必要があるということですね。』

『はい。島をくまなく捜索する為に最低でも分隊20個分は必要と思われます。そして攻撃に関してですが、以前召集した専用の討伐隊を主力に据えて行うものとします。』

 

 ナギサからの質問にリンは淡々と答える。

 今度はツルギが新たに疑問を投げかけた。

 

『討伐隊を主力にと言うが、本当にそれでいいのか?隊員の一人に選んでもらった私が言うのもなんだが、位置さえ分かったらミサイルや艦砲射撃で攻撃をした方が安全で確実だと思うが。』

『ツルギさんの言うこともわかります。ですが、仮にその方法で怪物1号を駆除したとして、果たして皆さんは納得ができますか?この先、元の日常へ戻った後で一切の悔いを感じずにいられる自信がありますか?』

『…なるほど。』

『怪物1号は確かに生半可な攻撃が効く相手ではないでしょう。ですが貴女達、キヴォトス最高戦力の皆さんであればきっと討伐が可能だと信じていますので。』

 

 ツルギはリンの考えを聞いて納得する。

 つまりモニター越しに機械をポチポチして遠隔攻撃、駆除完了。ではなく直接撃つなり殴るなりでトドメを刺して今後に未練が残らないようにする、今がそのチャンスだと言っているのだ。

 それを聞いた各学園の反応は様々だった。

 

『それならうち(アビドス)は全員で出なきゃだね。』

『それでも分隊1班しか編成できないじゃない…。』

 

『ハスミさん、正義実現委員会は何名程出せますか?』

『許可さえあれば捜索部隊全てを賄える人員は投入できます。ですがここはシスターフッドの皆さんにも協力を要請するべきかと思います。』

 

『待て、トリニティだけにやらせる訳がないだろう。イロハ、今すぐ万魔殿の議員達と…風紀委員会にも連絡を取れ。』

『はい?風紀委員会は委員長以外は参加させないんじゃなかったんですか?』

『キキキッ!私に良い考えがある!怪物1号を抹殺する為の完璧な作戦がな!!』

『あー、はいはい。わかりましたよ。』

 

 様々な学園が作戦や編成を練り始める中、ミレニアムの会議室は嫌な沈黙が支配していた。

 

『それでは、作戦開始時刻は2(フタ)3(サン):0(マル)0(マル)とします。各部隊の配置は今お伝えした通りです。只今各学園へPDFデータをお送りしましたので確認にご使用ください。対策委員会本部との無線周波数は195.40とします。それでは皆さん、後ほど。』

 

 リンのその言葉を最後に緊急会議は終了となった。

 

「参ったわね…うちは荒事に慣れてる人が少ないからその分ドローンとかで補おうと思っていたのに…」

 

 ユウカ達は怪物1号への対策として各種機械類の充実に力を入れていた。

 

 ミレニアムサイエンススクールは全体として発明や研究等といった物に傾向する者が多く、生徒個人ごとの戦闘能力では他校に劣る面が多いことは否めない。

 だからこそ自分達の長所を最大限活かした対策をこれまで練ってきたのだが、それも先程の会議で得た情報でほとんど無駄になってしまった。

 敵は機械類に対して未知の耐性を持っている特殊体質だという情報がもたらされてしまったのだ。

 無論それでもカメラ内蔵型の偵察機で観測するといったことも可能ではあるが、相手の特徴がはっきりしない以上安心して頼ることができない時点でやはり使用する気にはなれない。

 もし万が一カメラに映らない特徴を持っていれば、機械に頼ったが為にみすみす見逃してしまうことも考えられるのだ。

 

 更に本作戦は危険度が非常に高いものであることも無視できない問題だった。

 怪物1号は現状その姿形と、頑強で特殊な性質の肉体を持っていること以外の情報が無い。相手が持っている戦闘能力の全容が不明な以上、命の保証ができない。

 特に警戒しているのは、怪物1号に捕食される可能性だ。

 大戸島に出現した際はそのような被害は発生しなかったようだが、肉食恐竜のような姿である以上危険性はゼロとはいえない。

 如何に頑丈なキヴォトス人といえども巨大生物に丸呑みにされれば助かる可能性は限りなく低いだろう。

 故に戦闘慣れした人間でなければ余計に被害を拡大させるだけの結果になりかねないという懸念があったのだ。

 

「なんとか実戦経験のある人を集めないと…」

「実戦経験のある人ね…」

 

 チヒロとそんな会話をしながら会議室を出た途端、ユウカの目に人集りが飛び込んできた。

 

「ユウカ!!」

「わっ!?モ、モモイ?それにコタマ先輩達も…」

 

 ユウカの前にずいっと身を乗り出したのは同じミレニアムサイエンススクールのゲーム開発部、才羽モモイだ。その後ろには彼女と同じゲーム開発部の仲間の他にエンジニア部にヴェリタスの面々もいる。

 

「人手が必要って本当!?」

「えっ、まあ…ってどうして貴女がそれを知ってるのよ!?」

 

 いつの間にかモモイ達が会議室内での会話を知っていた。何なら今さっきボソッと話していたような内容を、である。

 だがこういった盗聴や通信傍受はミレニアムでは日常茶飯事であり、チヒロは即座に犯人に目星を付ける。

 

「…コタマ。」

「今回は私じゃありません。流石に副部長が直接セキュリティ管理してる場所に手を出して無事で済むなんて考えませんよ。」

「え?じゃあ誰が…」

「部長です。」

「ヒマリが?」

 

 思わぬ相手が一枚噛んでいたことに驚く。

 流石のチヒロでもヒマリ相手では分が悪いとしか言えず、諦めて溜息を吐いた。

 

「それじゃあヒマリは何処にいるの?」

「ヒマリ先輩ならどこかに行ったよ。用事があるって言って…」

「用事?」

 

 チヒロはハレの話を聞いて首を傾げる。

 ヒマリの言う用事とは何なのだろうか。

 

「ユウカ!怪物の捜索に人手が必要なら私達も連れてって!!」

「えっ?あ、貴女達を?」

「私達なら戦闘経験もあるし、足手まといにはならないよ!ユウカも知ってるでしょ?」

「そりゃあ…そうだけど…」

 

 モモイ達は自分達を捜索隊の人員として売り込みに来ていたのだった。

 ユウカも彼女らゲーム開発部の戦闘経験がどれ程のものかは知っている。

 セミナーとC&Cというミレニアム最高の戦力群を相手に物品の奪取に成功し、要塞都市の防衛戦力を切り抜けて大切な仲間を救い出し、『守護者』と呼ばれた強大な敵と、更にはキヴォトスの遥か上空に現れた未知の存在とも戦った。

 先生の指揮があったとはいえ、彼女達はそれらの戦い全てで重大な戦力の一角を担ってきたのである。

 ユウカはその活躍を幾度となくその目で見届け続けてきた証人だ。

 合理性を求めるならばゲーム開発部を連れて行った場合の戦力増大は計り知れないだろう。

 

「でも、貴女達をそんな危ない所に連れて行くなんて…」

 

 だが、ユウカは思わずその提案を受け入れることを渋ってしまった。

 普段はガミガミと叱る相手であろうと、彼女にとっては大切な可愛い後輩達なのである。

 そんなモモイ達を危険な任務へ連れて行きたくないと、彼女の内にある人間性が合理性を否定したのだった。

 だが、そんなユウカの心持ちとは裏腹にゲーム開発部は引こうとしない。

 

「今が怪物1号を倒すチャンスなんでしょ!?今ここでやらなきゃ次があるかもわからないんだから!」

「お願い!…お願いします!…私達も、先生の仇を打ちたい…!このままじっとしてるなんて嫌だ!!」

 

 モモイとその妹の才羽ミドリが詰め寄る。

 黙ってはいたものの部長の花岡ユズも二人の後ろでうんうんと頷いていた。

 そして、ゲーム開発部の一人である彼女もユウカに声を掛ける。

 

「ユウカ、アリス達をパーティーに入れてください!」

 

 天童アリスはユウカの目を真っ直ぐ見据えたままそう告げた。

 その表情は普段の天真爛漫な彼女からは想像もつかない真剣なものだった。

 

「アリスは怖いです。ユウカが、みんながここから出ていって、もし…帰ってこなかったら。先生と同じように…いなくなってしまったら…」

「アリスちゃん…」

「だからアリスも、ユウカ達を守る力になりたいです。それに巨大なモンスターを討伐するなら、ソロプレイよりも協力プレイのほうが難易度も下がりますし、キャンプ送りになる危険性も減ります!」

 

 アリスは力強く言い切る。

 色々なことをゲームに例えるのは相変わらずだが、今だけはその例えがとても的確なものに思えた。

 そうだ。どんなことでもみんなで力を合わせれば成功する可能性は格段に上がる。

 要塞都市エリドゥにアリスを助けに行った時も、虚妄のサンクトゥム攻略戦も、アトラ・ハシースの箱舟に行った時も…皆で力を合わせたから乗り越えることができたのだ。

 そして今も学園の垣根を超えてあらゆる戦力が一つに纏まりつつある。

 きっとこれが怪物1号との最初で最後の戦いになるだろう。

 それならば、皆が悔いの残らないようにするべきだ。

 

「わかったわ。行きましょう、みんなで一緒に。」

「本当!?」

「ええ。でも、これだけは絶対に守ってちょうだい。必ず全員でここ(ミレニアム)に帰って来ること。いいわね?」

「勿論!!」

「みんなもよ!!わかった!?」

 

 ユウカのその言葉に、モモイをはじめその場にいた全員が大きな声で返事をする。

 そして今までの沈んでいた空気から一転し、皆で揃って作戦を立て始めたのだった。

 

「おい、お前ら。」

「ネル先輩?」

「その、あたしは今回別働隊になっちまうからよ…怪物を探すのは任せた。頼んだぞ。」

「はい!任せてください!今日のアリス達は…狩人(モンスターハンター)です!!」

 

 

 

 

 

『全部隊、突入準備完了。』

 

 無線機から聞こえる声で現実に引き戻される。

 ユウカも自分の銃の薬室に弾丸が装填されていることをもう一度確認し、頭部に装着した暗視ゴーグルを目に掛けた。暗闇を歩く為の最低限の装備である。

 そして目の前に広がるジャングルを見据えながら号令を待つ。

 

『総員、突入開始!』

 

 怪物狩りが、始まった。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。