BLUE ARCHIVE -1.0   作:あたー

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結局2週間近く空いちゃいましたわ
20話です
初めて1話で10000字超えちゃったよ…


ついにリオセイアが周年キャラで実装されましたね
セイアちゃんとか初登場から何日経ったんやろなあ
いや制服C&Cまで一緒に来るとは想像できるかよアロナァ…
総力戦ゲブラはキャラ育成が足りなくてプラチナ挑戦諦めましたまる







ゴジラに光を当ててはいけません、ますます怒るばかりです

CP(指揮所)、こちらトリニティC班、追跡を行っていた足跡が川へ突入しており足取りが途絶えました。これより周辺の捜索を行い新たな痕跡がないか確認します。』

 

 無線機からハスミの声が聞こえる。

 ラゴス島の端、怪物1号上陸地点にはヒナ、ツルギ、ネル、ホシノからなる討伐隊の面々が待機していた。

 彼女達は目標発見の報告を受け次第、現場へと急行することになっている。

 戦力を分散させずに確実な駆除を行う為の策の一つである。

 

「ヒナちゃん、ずっと気になってたんだけどその二人はどうしたの?急に連れてきたけど…」

 

 そう話すホシノの視線の先には、ヒナとその隣に立つミヤコとミユがいた。

 ミヤコは真剣な表情で前方の森を見つめ、ミユは自分の周りにいる錚々たる面子を前に若干オドオドしている。

 モエは作戦の都合で沿岸に配置された艦にヘリで待機していた。

 

「ミヤコ達にも今回の作戦に参加してもらうことにしたの。彼女達には、ゴジラを倒さなければならない特別な理由があるから。」

「ゴジラ?何それ?」

「私達が怪物1号と呼んでいる生物は、昔から大戸島の伝承でゴジラと呼ばれていたそうよ。私もついさっき知ったことだけれど。」

「ふーん…それでその子達がゴジラを倒さなきゃならない理由って?」

「先生がゴジラに殺害された時、一緒にいたのが彼女達の友人だったの。その子は今精神を酷く病んでしまっていて…」

「…そうなんだ。」

 

 ホシノは一瞬だけ動揺した後、普段と同じ調子で返事をする。

 先生が亡くなった時に一緒にいたのがSRTの生徒だというのは知っていたが、その関係者が目の前にいるとは思ってもいなかった。

 

「彼女は…サキは事件の後、医師からPTSDだと診断されました。先生が亡くなったのは自分のせいだと罪の意識に苛まれ、悪夢に現れるゴジラに今も怯えています。ゴジラは、私達にとっては先生を殺害した相手というだけでなく、大切な友人を苦しめている相手でもあるんです。だから…仇を取りたいんです。自分達の、この手で。」

「そっか…。」

 

 ミヤコはホシノに向き直ると、握り拳を作りながらそう語った。

 それを聞いたホシノの表情に影が差す。

 そのサキという子も、きっと先生のことを強く慕っていた生徒なのだろう。それこそ罪悪感で精神を病んでしまうほどに。

 おそらくその子はあの日、あの場所で何か取り返しのつかない失敗を犯してしまった。だからこそ自分が悪いんだど己を責め続け、前に進むことができずにいる。

 そんな彼女の境遇が、昔の自分とどうしても重なって見えてしまった。

 

『私があの人を死なせてしまった』

 

 かつてのホシノがずっと苦しめられていたあの感情。

 彼女を2年間縛り続けていたそれは完全に消え去った訳ではないが、後輩達と先生、隣にいる友人(ヒナ)、そしてあの人(・・・)に助けられ、ホシノ今ようやく未来へと歩みを進めることができるようになった。

 だからこそ、ホシノはサキが負ってしまった心の傷が痛い程理解できてしまったのである。

 

「ミヤコちゃん。その子って今は何処にいるの?」

「サキは私達の拠点である小ウサギ公園のキャンプにいます。今は彼女の理解者になってくれる方が一緒にいて、その人達に看てもらっていますので…」

「理解者?」

「はい。詳しくは言えないのですが、私達よりもずっと今の彼女に寄り添うことができる方です。だから…大丈夫です。」

 

 ミヤコは表情を崩さずにそう続ける。

 だがホシノは彼女がポーカーフェイスを装いながらも様々な感情を押し殺そうとしているのを見抜いていた。 

 それは恐らく後悔や失望。きっと友人が苦しんでいる時に何もできなかった自分に対してのものだ。

 

「ミヤコちゃん、その――」

 

 

『CP、こちらミレニアムB班。怪物1号を発見したわ。繰り返す、怪物1号を発見。現在地―――』

 

 ミヤコを心配したホシノが声を掛けようとしたその時、無線機からユウカの声が聞こえた。

 目標発見の報告。それを聞いたホシノ達は会話を中断し即座に出撃準備を整える。

 

 しかし、続いて無線機から聞こえてきた声はその場の空気を凍りつかせるのに十分なものだった。

 

『ちょっと!!待って!!撃っちゃ駄目!!』

 

 突如として無線機からピュンピュンという独特な銃声が鳴り響き、続けてユウカの怒声が聞こえる。

 更にゴジラのものと思われる巨大な咆哮が響いた。

 

『CP!CP!こちらミレニアムB班!!目標に見つかった!!交戦に入るわ!!』

 

「あいつら!!…ここからユウカ達の位置までだと5分くらいか?」

 

 ネルが到着までのおよその時間を推測する。

 今回の作戦ではヘリコプター等の移動手段を使用せず、目的地までは自分の足で移動することになっていた。

 相手に発見されないように近づき、攻撃態勢を整えてから先制を仕掛けるのが本作戦における当初の計画だったのだが、その想定が全て崩れ去ってしまった。

 目的地まで5分という試算も、あらゆる戦況に対応できるこの4人が悪路を全力で移動してやっとという数字なのである。

 だが、そんなネル達に声が掛けられた。

 

「皆さん!今ヘリを要請しました!あと30秒でこちらに到着します!」

 

 ミヤコが全員に聞こえるように声を上げる。それと同時に遠方からヘリの飛行音が聞こえてきた。

 沿岸で待機していたモエに緊急出動を要請したのだろう。

 ヘリであればここから1分程度で到着できるはずだ。

 

『RABBIT3現着!みんな早く乗って!!』

 

 モエの声に応じて到着したヘリに全員が次々と乗り込む。最後に搭乗したミヤコが無線機に向けて『搭乗完了!!』と叫ぶとヘリは月明かりが照らす夜空へと飛び立っていった。

 

 

 

 

 

「みんな、離れすぎないようにね。逸れたら大変よ。」

「う、うん。」

 

 ユウカの言葉にユズが返事をする。

 普段はサンダルを履いている彼女だが、本作戦では悪路を進むことが当初から想定されていた為頑丈なブーツを履いて貰っていた。そのせいか歩くのが少々覚束ないようだ。

 

 ジャングルに踏み入ってから15分程。

 捜索隊は文字通り道なき道を用心しながら突き進んでいた。

 

(あんまり遠くが見えないな…)

 

 部隊の最後尾を歩いていたミドリはそんなことを考える。

 今日の島の天気は快晴だそうだが、高い木々に覆われたジャングルの中は正に真っ暗で暗視ゴーグルをつけていなければ転ばずに歩くことすら難しそうだ。

 そんな状態なので周囲を見回してもあまり遠くまで見通すことができず、怪物を見つけ出すのも一筋縄ではいかなそうである。

 歩いていて気付いたら目の前にいた、となっても驚かないような視界の悪さだ。

 

(この森の中に、先生を死なせた犯人がいる…)

 

 才羽ミドリは先生のことが好きだった。

 いつからそうなっていたのかはもう思い出せない。とにかく、あの不思議な大人にずっと惹かれ続けていた。

 彼女だけではない。キヴォトスの生徒で先生と関わりがあった者は皆、大なり小なりあの人に対して好意を抱いていたとミドリは思っている。

 恋のライバルは沢山いた。

 そんな中でバレンタインデーの朝一番に誰よりも早くチョコを渡したりと色々なことをしたのを覚えている。

 だが先生はそんな生徒達のアピールに一切靡くこと無く、先生と生徒という立場を決して崩さなかった。

 自分が大人になればあの人に振り向いてもらえるようになるのでないかと最近は思うようになってきており、少しでも自分を大人らしく魅せられないか研究をし始めた。

 そしていつか、あの人と並び立つに相応しい女性になることができるかもしれないと期待に胸を膨らませたりもしていた。

 

 しかし、先生は突然この世を去ってしまった。

 そのことを最初に聞いた時、誰がそんな酷い嘘をついたのかと怒りに震えたのを覚えている。

 そのうえユウカ達までもがその嘘に踊らされていることに酷く落胆した。

 だがそんな心持ちとは裏腹に、現実では先生の死亡を証明するものが次々と発表されてきた。

 そして先生との最後の『面会』に行った後、ゲーム開発部は完全にその活動を停止してしまった。

 ミドリ自身も自室に引き篭もり、外部との接触を断つようになった。

 何もする気になれなかった。ゲーム開発どころか、生きるということそのものすらも。

 そんな最悪の日々が始まってから数日が経過した今日。

 閉め切っていた部屋の扉を開け放った自分の姉から怪物を倒しに行こうと誘われた時、光を失っていた彼女の瞳は再び輝きを取り戻したのだった。

 

(見つけたら、絶対に…)

 

 凄まじい怒りに満ちた輝きを。 

 

 

 

『CP、こちらトリニティC班、追跡を行っていた足跡が川へ突入しており足取りが途絶えました。これより周辺の捜索を行い新たな痕跡がないか確認します。』

 

 ユウカが持っていた無線機から声が聞こえる。この声は確か正義実現委員会のハスミだっただろうか。

 どうやら追跡していた足跡を見失ってしまったようだ。

 今後は本当に虱潰しの捜索になる。

 

「アスナ先輩、どうですか?」

「…うーん、まだ見えないかな。でもこっちの方にいる気はするんだよね。」

「わかりました。ではこのまま進みましょう。」

 

 ミドリ達がいるミレニアムB班は普段組んでいるチームと比べてかなり珍しい編成をしていた。

 ゲーム開発部とC&Cのアスナ、そして班長にはユウカ。

 ユウカがゲーム開発部の4人を自身に同行させたのは、彼女達が実戦慣れしていたことに加えて、視界が悪く、障害物の多いジャングル内でのサーチ(索敵)&デストロイ(殲滅)であれば、設置式の爆薬による破壊工作を得意とする室笠アカネや、巨大な対戦車ライフルを抱える角楯カリンといったC&Cの面々よりも対応できる状況が多いと判断したこと、そして自分の目の届く範囲に4人を置いておきたいというのが理由だった。

 

 そしてユウカはこの部隊の先導役をアスナに一任していた。

 今回の捜索では機械類をほとんど信用することができない。

 そこで彼女はアスナの持つ驚異的な直感の力を信じることにしたのである。

 彼女の直感は最早特異体質か超能力とも呼べる程の凄まじいもので、過去には電子ロックのパスワードを適当に押しただけで解除したり、とある船内で開催されていたカジノで大勝を繰り返して過去最短記録で最高ランクまで登り詰めたり…と様々な実績を持った、偶然というだけでは片付けられない程の強力なものである。

 ユウカも普段ならばそんな物に頼るようなことはしないのだが、自分達も含めて全員が自身の足を使って手当たり次第に動いている現状では目標発見までの近道として最も効果の高い手段だと判断したのだった。

 

 そして、その判断が正しかったことはすぐに証明されることになる。

 

 先頭のアスナが突然足を止めて右手を後方のミドリ達に見えるようにL字型に立てた。

 

「アスナ先輩?」

「…見つけた。」

 

 アスナは前方の暗闇を真っ直ぐ見据えたまま呟いた。

 その言葉を聞いたユウカ達も足を止めると彼女が見つめる先へと目を凝らす。

 

(あれが…)

 

 見つめる先、距離はおよそ400メートル程だろうか。

 緑と黒しか見えないゴーグル越しの視界でもはっきりとわかるような大きな物体がゆっくり動いているのが見える。

 

「本当に恐竜みたいな見た目してるね。」

 

 ユウカのすぐ隣に来ていたモモイが小声で呟く。

 彼女の言う通り視線の先に見える物体は巨大な恐竜のような姿をしていた。

 どうやら自分達は相手を真横から見ている状態らしく、通り過ぎようとしている巨体の姿形が木々に遮られながらも大雑把に見て取れる。

 大きな体にそれを支える巨大な脚。長い尻尾、そして背鰭。

 情報通りの姿だ。

 

「みんな、今は撃っちゃ駄目よ。ネル先輩達が来るまで待って。」

 

 ユウカは前方にいる呉爾羅を見つめたまま後ろにいる面々に声を掛ける。

 だが彼女の言葉とは裏腹に、ミドリはスナイパーライフル(フレッシュ・インスピレーション)の引き金に指を掛け始めた。 

 

「CP、こちらミレニアムB班。怪物1号を発見したわ。繰り返す、怪物1号を発見。現在地―――」

 

 ユウカはそのまま無線機を取り出して報告を始める。

 皆が呉爾羅に釘付けとなっている最中、瞳に怒りを滾らせながら銃口を向ける復讐者(ミドリ)に気付く者は誰もいなかった。

 

(アイツが…アイツが先生を…!!!)

 

 銃声が鳴り響いた。

 

「えっ?」

 

 自分の後方から銃弾が発射されたことをユウカは一瞬理解できなかった。

 慌てて振り向くとミドリが怪物に向けて銃撃(ドローイングアート)を行っているのが目に入る。

 

「ちょっと!!待って!!撃っちゃ駄目!!」

 

 必死に呼び止めるものの、発射された弾丸はそのまま正確に目標へと命中してしまった。

 突然の攻撃を受けた呉爾羅は咆哮を上げると木々を薙ぎ倒しながらユウカ達へ向けて突進してくる。

 

「みんな逃げて!早く!!」

 

 ユウカは後ろに控える後輩達へ怒鳴りながら後退を始める。

 更に無線機を手に取ると再び報告を始めた。

 

「CP!CP!こちらミレニアムB班!!目標に見つかった!!交戦に入るわ!!」

 

 交戦に入るとは言ったものの、今自分達が装備している武器ではまともに対抗できないのは明らかだ。

 そのため精々牽制しつつ後退する程度しかできそうになく、状況は悪いとしか言えなかった。

 するとユウカの隣で風を切る音が聞こえた。

 

「ユウカちゃん!!みんなのことお願い!!」

「アスナ先輩!?」

 

 ユウカの隣に立っていたアスナが頭に掛けていた暗視ゴーグルを放り投げると猛スピードで前方へと駆け出していく。

 アサルトライフル(サプライズパーティー)を発砲しながら呉爾羅の脇を猛スピードで駆け抜ける。

 呉爾羅は自分にちょっかいを出してきた彼女をターゲットに定めた。

 

(まさか…自分を囮に?)

 

 アスナは呉爾羅の周りを走り回り、時には周囲の樹木を、時には相手の体を足場にしながら兎のように飛び回る。

 その最中にも時折銃撃を行い、弾丸を次々と相手の巨大な頭部へと命中させていた。

 体表に対して銃弾は一切効いていないようだが、如何に大きな生物であろうとやはり目といった急所への攻撃は無視できないらしい。

 

(アスナ先輩が笑ってない…?)

 

 ユウカはアスナの表情を見て思わず驚愕した。

 普段の彼女はいつも笑顔を絶やさない。

 特にアスナは襲撃が趣味という程の大の戦闘好きで、戦いをするだけ元気一杯になるのだ。

 そんな彼女が今は笑っていない。ひたすら無表情で笑い声も無い。まるで感情の無い無人兵器のように淡々と攻撃を行っている。

 今まで気付けなかったが、アスナもこの怪物に対しては色々な鬱憤が溜まっていたらしい。

 

 呉爾羅はアスナの素早い動きを補足しきれていないようで、その噛みつきも、腕を振るう攻撃も全て空を切るばかりだった。

 しかしこれでは埒が明かないと判断したのか、突如として周囲の巨木を自身の巨体や尻尾で次々と破壊し始めたのである。

 

「きゃっ!!みんな離れて!早く!!」

 

 薙ぎ倒された大木達は呉爾羅自身と、ユウカ達の周囲に次々と倒れ込みこちらを押し潰そうとしてくる。まるで空襲だ。

 呉爾羅は自分の周りに張り付くアスナを排除するために直接攻撃ではなく周囲の木々を倒壊させて押し潰す戦法に切り替えたのだ。

 あの巨体にとってはこのサイズの樹木が降ってきても埃を被るようなものでしかないのだから、自分より小さい相手を排除する為の方法としてはとても合理的なものである。

 

 しかしそんな攻撃もアスナにとっては全く問題にならないようだった。

 C&Cナンバー2の実力は伊達ではなく、次々と降ってくる樹木すらも足場にして更に軽快に飛び回っている。

 彼女はきっと直感で動くだけであの動きをすることができるのだろう。

 

 だが足元にいるユウカ達にとっては大きな脅威となっていた。

 必死に距離を離そうとするも、只でさえ視界が悪い夜のジャングル、足元には道など無く迅速に動ける筈がない。

 そして恐れていた事態が起こる。

 

「うわっ!!」

 

 ユズが転倒した。

 元々慣れない靴を履いていたこともあって移動が遅れ、更に地形に足を取られてしまったようだ。

 

「ユズ!!」

 

 モモイがユズの方を向くと、倒れた巨木が今まさに彼女に倒れ込もうとしているところだった。

 彼女も必死で起き上がるが、最早退避は絶望的な状態だ。

 もう逃げられないと悟り、ユズは思わずキュッと目を瞑り、両手で頭を守る。

 そして彼女は倒木に押し潰された…

 

 

 

 と思われたその直前、ユズの危険を察知して駆け付けたアスナが彼女を突き飛ばした。

 ユズの身代わりとなったアスナが倒木に押し潰される。

 

「えっ?え…?」

 

 突き飛ばされたユズは突然の出来事に頭が混乱し、逃げることも忘れて呆然としてしまう。

 

「アスナ先輩…?」

 

 自分を助けてくれた先輩の名を呟く。

 目の前にある倒木の下に彼女が埋まっている事実を理解することを彼女の頭は拒んでいた。

 だが現実はそんなことをしている余裕を与えてはくれない。

 

 ユズが凝視する倒木の、アスナが埋まっているであろう部分に巨大な脚が振り下ろされ、木が粉々に踏み潰される。

 突然逃げ出したアスナを追跡してきた呉爾羅が攻撃を仕掛けてきたのだ。

 

「ひっ…!」

 

 怯えるユズを他所に呉爾羅は踏み潰した部分をもう一度全体重を掛けて踏み抜く。

 外敵を確実に仕留めようとしているのが見て取れた。

 だが、ユウカ達もそれを黙って見ている訳ではなかった。

 

「ターゲット、ロックオン!光よ!!」

 

 アリスが叫ぶと同時に彼女のもつレールガン(光の剣)から眩い光と共にビームが発射され呉爾羅の胴体ど真ん中に直撃する。

 攻撃を受けた呉爾羅は悲鳴を上げながら派手に吹き飛ばされ転倒した。

 

「今よ!!」

 

 ユウカが叫ぶと同時に彼女自身に加えてモモイとミドリもアスナが潰された場所へ駆け寄り、全力で地面を掘り起こす。

 上に乗っていた木が粉々になっていた為アスナはすぐに見つかった。

 

「いた!!」

「アスナ先輩!!しっかりして!!」

 

 皆が必死でアスナに呼びかける。

 最悪の事態が脳裏をよぎる。

 数十トン数百トンはあろうかという物体に潰されてはキヴォトス人であろうとただでは済まない筈だ。

 しかし、幸運はまだ彼女を見捨ててはいなかった。

 

「大丈夫!!息はしてるわ!気を失ってるだけよ!!」

 

 アスナはヘイローが消失こそしているものの体はどこも欠損しておらず、胸はしっかりと上下に動いて呼吸しているのが確認できた。

 ユウカの言葉を聞いて皆が胸を撫でおろす。

 大切な人を喪うのはもう御免だ。

 しかしホッとしたのも束の間、吹き飛ばされた呉爾羅が既に起き上がり始めていた。

 

「貴女達、アスナ先輩を連れて早くここから離れなさい!!」

「えっ?待ってよユウカはどうするの!?」

「私がアイツを引き付けるわ!!だから今のうちに早く!!」

「待ってよ!それじゃユウカが…!」

「いいから行きなさい!!」

 

 ユウカは食い下がるモモイの返事を待たずに囮となるべく走り出す。

 そしてモモイ達から距離を取ると両手に持ったサブマシンガン(ロジック&リーズン)を呉爾羅へ向けて乱射した。

 

「さあこっちに来なさい化け物!!」

 

 自分を奮い立たせるように大きな声で叫ぶ。

 大量の銃弾を浴びせられた呉爾羅は次のターゲットをユウカに定め向きを変えた。

 

「アリス!!さっきの攻撃もう一度お願い!!」

「はい!!」

 

 ミドリ、ユズと一緒にアスナを抱えたモモイの呼び掛けにアリスは大きな声で応じる。

 彼女の持つレールガンならあの巨体にもダメージを与えることができるのを確認した今、ネル達が来るまでの時間稼ぎができると考えたのだ。

 光の剣の電力チャージ状況は現在70パーセントいったところで、アリスはすぐにでも発射できるように変形した砲口を呉爾羅へ向けたままチャージを続行する。

 レールガンから再び光が迸り始めた。

 

 しかし暗闇の中で一際目立つ光を感知した呉爾羅は銃撃してくるユウカから目を逸らし、アリスの方を向くと再び咆哮を上げながら突進を始めた。

 

「嘘っ!?どうして!?こっちに来なさいよ!!」

 

 呉爾羅は度々の交戦の中でこの小さな生き物達が放つ光は自分へ向けて攻撃を行う前兆であると認識していたのだった。

 特に先程眩い光と共に自身を吹き飛ばした謎の攻撃を最優先で警戒すべきものだと考えていたのである。 

 更に皮肉なことに呉爾羅はアスナとの交戦によって今ユウカが浴びせてくるような銃弾は自分にとってさほど危険なものではないと判断するようになっていた。

 その為攻撃を仕掛けているユウカを無視してアリスの排除を優先したのである。

 そんなことを知る由もないユウカは自分から離れていく呉爾羅に向けて必死で銃撃を繰り返す。

 

 結果としてアリスは自分から相手に自身の存在を教える形となってしまった。

 自分の方へ向かってくると想定していなかった彼女はどうしていいかわからず、棒立ちになったまま相手の接近を許してしまう。

 混乱するアリスに肉薄した呉爾羅はその巨大な口で彼女が持つレールガンに噛みつき、140キロ以上はあるその砲身を持ち主ごと上空へ高々と咥え上げた。

 

「わっ!?うわあっ!!」

 

 突然空へと持ち上げられたアリスは反撃することもできずされるがままになってしまう。

 頼みの綱であるレールガンも未だ発射できる状態になっていなかった。

 

 光の剣を持ち上げた呉爾羅はそのまま首を大きく振るうとアリスごとそれを夜空へと投げ飛ばした。

 直後、ジャングルの更に上へ放り投げられたレールガンはようやくチャージを完了させ、明後日の方向へとビームを発射する。暗闇の中に流れ星のような光の線が生まれた。

 

「アリスっ!!!」

 

 夜空へと消えていったアリスに向けてモモイが叫ぶ。だがその声にアリスの返事が帰って来ることはなかった。

 

「ヤバい…ヤバいよこれは…」

 

 モモイが視線を下げると数メートル先でこちらを睨みつける呉爾羅と目が合った。

 次のターゲットは間違いなく自分(モモイ)達だ。

 呉爾羅の後ろでユウカが銃を撃ちまくっているのが見えるが、相手はそれを気にしている様子がまるで無い。

 戦闘に馴れたアスナも、大火力を投射できるアリスも脱落した今、状況は最悪としかいえなかった。

 

 

 

 

 

『目標到達まであと20秒!!』

 

 ヘリのコックピット座るモエが後部の面々に向けて無線越しに報告する。

 キャビンの椅子で待機するミヤコ達は黙ったまま装備を整え、出撃の時を待っていた。

 すると、モエがなにやら訝しげに声を発する。

 

『何か…飛んでる?』

 

 「飛んでる」という表現に引っかかるものを感じたミヤコ達はキャビンから顔を出して前方を確認する。

 すると、何やら光る物体が地上から飛び上がっているのが見えた。

 信号弾の類にも見えず、かといってゴジラが発した攻撃の類とも思えない物体は、直後にレーザーのようなものを夜空へ向けて発射した。

 間違いなくあれは人工の兵器だ。

 

「あ、アリスちゃん!?」

「えっ!?」

 

 ミユが驚愕の声を上げる。

 それを聞いたミヤコは咄嗟に確認しようと双眼鏡に手をかけたが、それよりも早くアリスと推測される物体は森の中へ墜落していった。

 ミユの視力は小隊の中でも随一、いやキヴォトス全体で見てもトップクラスに優れていると思っている。

 そんな彼女が見たうえでアリスだと識別したなら間違いないだろう。

 

「ど、どうしよう…。」

 

 ミユはミヤコに縋るような視線を向けながら尋ねる。

 ゴジラを駆除することも大事だが、かつて共に戦った友人を救出することも同じくらい大事なことだ。

 どちらを優先するべきか、ミヤコは咄嗟に決めることができなかった。

 

『目標地点上空に到達!!降下するよ!!』

 

 状況を知らせるモエの声が聞こえる。

 その時、無線機越しにモエに話しかけるヒナの声が聞こえた。

 

『降下しなくていいわ。この位置を保っていてちょうだい。』

『え?どうして?早くしないと…』

 

 早くユウカ達を助けに行かなければならない状況にも関わらず、降下しなくていいと意味不明なことを言い出したヒナにモエが抗議するが、ヒナはそれに対して、『大丈夫。私達を信じて。』とだけ告げた。

 

『月雪ミヤコ。』

「は、はい。」

 

 今度はミヤコに向けてヒナが声を掛ける。

 ヘリのローター音に掻き消される為この近距離でも無線機越しの会話となった。

 

『申し訳ないのだけど、貴女達はアリスを助けにいってもらえないかしら?』

「え?」

私達(・・)の大切な友人を助けてに行ってあげて欲しいの。それに救助活動なら私達よりも貴女達のほうがきっとスムーズにこなせる筈よ。』

 

 ヒナはミヤコに向けてそう告げた。

 彼女にとってもアリスはミヤコ達と同じ、あの遊園地で共に肩を並べて戦った大切な仲間なのだ。

 それに救助活動ならは、戦闘に特化した自分よりもSRTで専門の知識を得たミヤコ達に任せるほうが確実だとヒナは判断したのである。

 そして彼女の言葉を聞いたミヤコは自分達SRTが望まれている役目を瞬時に理解したのだった。

 

「…わかりました。任せてください。」

『私が呼んだというのに、ここに来て違う役目を頼んでしまってごめんなさい。』

「いえ、人命救助もSRTの大切な使命です。…ユウカさん達を、お願いします。」

『ありがとう。行ってくるわ。』

 

 ミヤコの返事を聞いたヒナは微笑を浮かべながら感謝の言葉を言い残すと、ヘリのキャビンから迷うことなく飛び降りる。

 彼女に合わせてホシノ、ツルギ、ネルの3人もヘリから飛び降りた。

 全員パラシュートも着けずに。

 

「っ!?ヒナさん!!」

「えっ!?ええっ!?」

『飛び降りた…!?』

 

 ミヤコ達は慌てて4人が飛び降りた先を見下ろす。

 いくらキヴォトス人といえども100メートル近くあるこの高さから落下すれば普通は無事では済まない筈なのだ。

 だが、彼女達は全員キヴォトス最高の戦力と称えられる者達。

 言い換えれば、『人知を超えた怪物達』だったのである。

 

 

 

 

 

 モモイ達を睨みつける呉爾羅の顔面が突如として巨大な爆発に呑み込まれれる。

 発生した爆風は木片や残っていた樹木等を次々と吹き飛ばし3人の視界を奪った。

 

「うわあっ!!」

「こ、今度は何なの!?」

 

 モモイ達はアスナを爆風から守りながらも悲鳴を上げる。

 目まぐるしく変化する状況に彼女達の頭はすっかりついていけなくなっていた。

 そんな3人に新たな声が掛けられる。

 

「お前ら、よく頑張ったな。」

 

 それは、ずっと待ちわびていたあの先輩の声だった。

 

「この声…ネル先輩!!」

 

 爆風が収まりモモイが目を開けると、目の前には見知ったスカジャンを着こなしたネルを含めたキヴォトスの頂点達が呉爾羅と対峙している光景が目に入った。

 

「後は、任せろ。」

 

 C&Cのダブルオー(約束された勝利の象徴)はモモイ達に振り向き微笑を浮かべると自信に満ちた声でそう告げるのだった。

 





呉爾羅の攻撃パターンは一応元ネタがあります
今の文章力で伝えられてるだろうか…


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