BLUE ARCHIVE -1.0   作:あたー

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今回は割と早めに更新できました〜
今回少し残酷な表現があります。苦手な方はご注意ください。

呉爾羅のサイズなんですが公式で判明しているのは全高15メートルということだけです。(小説版より)
似たような大きさに何がいるかといえばモンスターハンターシリーズのウカムルバス(全高14メートル全長30メートル)とかです。
なんとなく人間とのサイズ差がイメージしやすくなったでしょうか。

それでは21話です。








最強 対 呉爾羅

 突然の爆発、遮られる視界。

 そして何かが降ってきた音と衝突の振動。

 その一連の現象に呉爾羅は一瞬だけ怯んだものの、即座に体勢を立て直し眼前にいた敵に再び意識を向ける。

 煙が晴れた先には先程までいなかった新らしい小さな生き物が4体出現していた。

 今まで遭遇したものとはまるで違う出現の仕方をした謎の敵を警戒し、呉爾羅はいきなり襲いかかるようなことはせずに相手を観察する。

 

「はーん、こんなヤツだったのか。」

 

 一方でネル達も眼前の呉爾羅の様子をしばらく窺い続けていた。

 先生を殺害した犯人を前に、今一度疾る心を落ち着ける。ここで感情に任せて突っ走しるような真似はできない。

 

「ホシノ、どうだった?攻撃の感触は。」

「うーん…」

 

 ヒナの質問に対してホシノは鋭い目つきのまま唸る。

 そしてこう答えた。

 

「あんまりよくないかも。」

「…そう。」

 

 ホシノは正直な感想を伝える。

 先程の爆発を起こしたのはホシノの集中突破攻撃(EXスキル)によるものであり、呉爾羅への牽制と威力偵察を兼ねて行ったものだった。

 そしてその手応えは、あまり良いものではなかった。

 

「コイツ、あの爆発が直撃したのにたいしてダメージを受けてない。」

 

 ホシノが起こした爆発は呉爾羅の周囲にあった木を根こそぎ吹き飛ばし、その巨体を月光の下に晒していた。

 明かりに照らされた呉爾羅の体にはホシノの爆撃による顔面の傷以外にも無数の傷跡が存在し、海中で受けた魚雷攻撃によるものと思われるケロイド状のものもある。

 そしてそういった古い傷跡にはどれも治癒した形跡があった。

 ホシノが警戒感を露わにしているのは相手のそもそもの頑強さと治癒能力だった。

 

 彼女の発射する榴弾の威力は生半可なものでない。

 それこそ戦車やゴリアテ等の大型兵器を破壊することはおろか、今隣に並んでいる最強クラスの面々であっても直撃すれば昏倒必死といえる程のものである。

 だが呉爾羅はそれを顔面に受けてもたいしてダメージを受けている様子がない。

 さらに、ほんの数時間前に受けた筈の魚雷による傷が既に治癒されているのを見るに、今負っている負傷すらも短時間のうちに治されてしまう可能性が高い。

 もう既に嫌な予感しか感じていなかった。

 

「みんな、ちょっとコイツに何発か攻撃してもらっていい?もう少し様子を見たいんだ。」

「…いいわ。」

「了解。」

「わかった。…おいユウカ!早くこっちに来い!」

 

 ネルが呉爾羅の奥で様子を伺っていたユウカに声を掛ける。

 ユウカは相手に補足されないように大きく迂回しつつモモイ達と合流すると足早にその場を立ち去っていった。

 彼女達の姿が見えなくなったのを確認したところで、ホシノ達が動き出す。

 

「いくよ!!」

 

 4人でそれぞれ別の方向へ飛び出す。

 例え戦闘態勢を取っていても、的を分散させれば相手に必ず一瞬の迷いが生まれ、そこに攻撃の隙ができる。

 その一瞬を狙っていた。

 

「オラオラオラオラァ!!」

「カァハハハハハハ!!」

 

 ネルとツルギは雄叫びを上げながら、ホシノとヒナは黙々と呉爾羅に向けて四方から銃撃を浴びせた。

 呉爾羅の体は銃弾によって流血し始める。

 似たような攻撃でありながら先程までと違い損傷を受けていることに驚愕しつつも、呉爾羅は自分を傷付けた敵に向けて怒りの咆哮を上げた。

 攻撃をほぼ無効化していたアスナ達の時と違い、今度は明確にダメージを受けている。

 キヴォトス最高戦力達の力はそれだけ別格なのである。

 だがヒナ達はこの結果に満足してはいなかった。

 

「みんな、気付いた?」

「ええ。コイツ、弾が貫通してないわね。」

 

 ホシノが感じた良くない手応えの正体を他の面々も段々感じ取り始めていた。

 呉爾羅に直撃した弾丸はたしかにその表皮に傷を付け、出血させることに成功している。

 だがそこまでだった。

 表皮を損傷させたその先、内部への攻撃にまで至っていないのである。

 銃の殺傷力というものは貫通力が無ければそもそも成り立たない。

 銃弾自体はとても小さく、それがどれだけ表皮での出血を引き起こしたとしても、内臓に損傷を与えられなければ殺傷効果は期待できない。

 市販のエアガンで先生(只の人間)をいくら撃っても怪我をさせるだけで殺害できないのと同じである。

 

 そしてその事実は、普段のような戦い方が通用しないということを意味していた。

 ホシノはある推測を立てる。

 

「コイツ、多分デカいペロロとかと同じ(総力戦の準備が必要な)タイプだよ。」

 

 元より20mm機関砲や短魚雷の直撃に耐える時点で並外れた防御力を持っていることは想定されていた。

 だが一方でキヴォトス最強戦力とされるヒナ達の攻撃に耐えられる程の相手ではないだろうという考えも皆の共通認識として存在していた。

 しかし現実はそんな予想を遥かに超えるものだっだ。

 敵の防御力は推測できるだけでも間違いなくペロロジラやビナーといった総力戦を想定して対処しなければならない敵に匹敵するものであった。

 それはつまり簡単には倒せないということである。

 

 例えばビナーはこれまで何度も交戦しているが、いずれも撃退止まりであり完全な撃破に至ったことは一度もない。

 ビナーが早々に退却を始めてしまうのもあるが、逆に言えば現状の戦力では相手に退却という手段を選ばせる余裕を与えられる程度の攻撃方法しか取れず、あの重装甲を一撃で貫いて撃破できる火力にまで達せていないということである。

 またペロロジラに関しては、これまでも撃破には成功してこそいるが、それは相手が吐き出すちびペロロ(ペロロミニオン)を攻撃すると巨大な本体まで損傷するという弱点としか呼べないような特徴を逆手に取った戦法をとっているからでしかない。

 本体への直接攻撃だけであの怪獣を撃破できた事例は、現状虚妄のサンクトゥム攻略戦の最中に出現したカイテンFX Mk.(インフィニティ)による1例のみである。

 

 他にもケセドと呼ばれる強固な外殻を持った敵は、どうやってもその外殻を貫くことができなかった為に、敵の戦力を排除することでコンピューターをオーバーヒートさせて露出した本体を狙い撃つという戦法を取らざるを得なかった。

 このように一部の敵に対しては、彼女らの戦闘能力だけで一方的に大暴れ…とはいかなかったのがこれまでの総力戦の戦歴だった。

 

「集中射撃を仕掛ける。しばらく注意を引いてもらえないかしら?」

 

 唐突に発せられたヒナからの提案に皆が『了解。』と応じる。

 呉爾羅の陽動を任せると、ヒナは少し離れた位置に着地した。

 

「これからが本番。」

 

 その言葉と共に彼女の周囲に一瞬淡い光が灯る。

 集中射撃体勢に移行した合図だ。

 ゲヘナ学園最強と言われる彼女の銃撃は、ただ弾丸をバラ撒くだけでもあらゆる敵を一掃する威力がある。

 集中射撃とは、そんな高火力の射撃を一点に集中して命中させるというもので、その凄まじい威力は正にキヴォトス最高峰といえるものだった。

 1回の射撃で数十発もの弾丸を一斉発射、まるで紫色のレーザーのようにも見えるそれを計3回まで行うことができる。

 着地点で固定砲台と化したヒナは暴れまわる呉爾羅へ銃口を向けると、そのまま間髪入れずに射撃を開始した。

 

「マ・ノン・トロッポ。」

 

 紫色の線が呉爾羅の脚部に命中する。

 直撃を受けた太腿から新たに血飛沫が上がり、呉爾羅が呻き声を上げた。

 しかし総力戦において何度も戦果を上げてきたこの攻撃すらも今回は期待通りの効果を上げられてはいなかった。

 

『ヒナちゃん、今の攻撃も脚を貫通してなかったよ。やっぱり弾かれてるみたい。』

 

 攻撃の効果を確認したホシノがヒナに無線でそう伝える。

 彼女が目撃したのは脚に直撃したレーザー状の銃撃が拡散し火花のように散っていく光景だった。

 本来ならば最初の1発目が直撃すれば、その傷口に2発目が直撃し、さらにその先に3発目4発目…といった流れで対象を粉砕する凶悪な攻撃なのだが、この生物はそれすらもほぼ無効化してみせた。

 直後、呉爾羅はヒナの方へ意識を向けるが、動けない彼女をやらせまいとツルギとネルが横槍を入れた。

 ヒナの集中射撃は続けて2発、いずれも敵の脚部へ命中する。

 だが見た目上の怪我こそすれども、呉爾羅は相変わらず機動力を失う様子を全く見せなかった。

 

「弾丸が全部表面で砕けてるね、これは…。」

「つまり、こいつは私達(キヴォトス人)とほぼ同じくらいの頑強さということか。」

 

 超銃社会であり、撃ち合いや爆発すら日常茶飯事なキヴォトスだが、そんな治安に対して人の死というものは全く身近ではない。

 その理由は単純に住人達が皆並外れて頑丈だからだ。

 ここにいる4人も、全員が凄まじい武力を持っている者達でありながら実際の殺人経験がある者は1人もいないのである。

 

 銃撃、爆撃では多少の怪我をする程度で、本当に命を奪うのは窒息や毒物といった生物として絶対に逃れられない危険状態や、日常的な虐待による衰弱、もしくはヘイロー破壊爆弾といった特殊な手段に限定される。

 直撃した弾丸が表皮で砕けるというのは彼女らが日常的に行っている生徒同士の戦闘における特徴の一つである。

 神秘の保有量次第で個人ごとに戦闘能力の差は存在するものの、弾丸に関しては総じてキヴォトス人の皮膚より脆いため命中すると対象を貫通できずに崩壊してしまうのである。

 

 ヒナの集中射撃が生徒相手に貫通しているように見えるのも、正確には貫通しているのではなく、まとめて発射された5発のうち1発目の弾丸が最初の敵を着弾の衝撃で倒し、続けて発射されていた2発目が同じ射線上にいる敵を倒す…という一連のプロセスが貫通攻撃のように見えているだけである。

 

 この頑強さは実のところ先述した総力戦の備えが必要な敵すらも上回るものであり、そういう意味では生徒達はこのキヴォトスにおいて最強と呼べる存在だった。

 故にただ銃を撃ちまくるだけでは『鎮圧』や『無力化』はできても『殺害』は困難なのである。

 

 そして呉爾羅の頑強さはホシノらをしてキヴォトス人並という評価を下す程のものへと変わった。

 少なくとも一番外側の表皮の下に更に頑丈な肉体が備わっているのはほぼ間違いない。

 それが判明した時点で戦況は一気に呉爾羅有利に傾く。

 初めから殺害を狙っていた側にとっては目的の遂行がほぼ不可能になったといっても過言ではないからだ。

 だが、そんな彼女らにもまだ攻撃の策が残っていた。

 

「ホシノッ!私が左目を潰す!!右目を頼んだッ!!」

「了解!」

 

 ツルギの呼び掛けで二人が呉爾羅の顔を挟むように飛び上がり、それぞれの得物で眼球を狙い撃つ。

 至近距離で散弾が直撃した目玉は大量の血を噴き出しながら破裂する。

 激痛に呉爾羅は大きな悲鳴を上げた。

 

「オマケだよっ!!」

 

 ホシノは通常の射撃で目玉を潰した直後、眼孔に向けて更に集中突破攻撃(EXスキル)を撃ち込む。

 そしてホシノが飛び退いた直後、命中した弾丸が大爆発を起こした。

 爆発を起こした顔の右半分は肉が大きく抉れ、衝撃で呉爾羅が大きくよろめく。

 あと少しで転倒するのではないかという位置まで体勢が崩れた。

 

「ガアアアアアアッッッ!!!」

 

 ツルギは銃を放り投げると、よろめいた呉爾羅の顔に目掛けて、強烈なアッパーを食らわせる。

 この攻撃によって倒れ込み掛けた呉爾羅の体が上方へと持ち直された。

 

 ツルギ達の頑丈さと腕力はキヴォトス人の中でも群を抜いており、銃を使わずとも並の武装集団の制圧なら造作もなく行える程だった。

 そして打撃ならば腕力さえ備わっていれば外から衝撃を浴びせて内部にダメージを与えることが可能である。

 銃では効果が薄いと判断した彼女らは近接戦闘による攻撃に切り替えたのだ。

 

「今だ!!ヤれッ!!」

「オラああああッ!!」

 

 ツルギが叫ぶと、上空へ飛び上がっていたネルが呉爾羅の胴体に目掛けて強烈なキックを浴びせる。

 猛スピードで直撃した蹴りは本人の頑丈さもあって莫大な運動エネルギーを発生させ、その巨体を更に大きくよろめかせた。

 明らかに最初に行った銃撃より大きなダメージを受けているのが見て取れた。

 

 だが呉爾羅は体勢を立て直すと、今度はあらぬ方向へ向けて猛然と走り出す。

 視力を失い、更に敵に包囲されている状況を不利と見たうえでの行動だった。

 

「まずい…!逃げられる!!」

 

 ホシノ達は慌てて追跡を始める。

 島から逃げられれば作戦は失敗である。

 ここまできて取り逃がす気など毛頭無かった。

 だが相手は前が見えないせいか向かう方向も定まらず、ひたすら闇雲に走り回っている。

 

「チッ!速えな!」

「進行方向が読めないせいで待ち伏せもできないな…」

 

 その速力は悪路に手こずる彼女達の走りよりも遥かに速く、見失わないように追跡するだけで精一杯だった。

 ネルとツルギがその事実に毒づく。

 

『私が追いかける。いざとなったらぶつかってでも止めるわ。』

 

 ヒナが無線機越しに報告する。

 地上を掛ける3人と異なり、彼女は翼を使って飛行しながら追跡を行っていた。

 派手にジャングルを破壊しながら逃走する巨体は上空からなら丸わかりだ。

 すると暫く走り回った呉爾羅が遠くでその動きを止めているのが見えた。

 障害物の無い空を駆けるヒナは誰よりも早く相手に追いつく。

 そして停止した目標に狙いを定めると、羽を畳んで滑空体勢に入った。

 

(逃さない。)

 

 ヒナは先程のネルのように強固な体を活かして空から体当たりを仕掛けようとしていた。

 今度はジャングルの高さよりも遥か上空からの急降下である。

 傍から見れば間抜けな光景に見えるかもしれないが、落下による加速に彼女の頑強さを加えればその体当たりの威力は隕石の衝突にも匹敵しかねないもので、巨大なビルでも容易く倒壊させ得る程だ。

 

 すると視線の先でこちらに背中を向けていた標的が首を振り向かせた。

 ヒナは振り向いた呉爾羅の白濁した左目と目が合った気がした。

 思わず寒気を覚える。

 

(まさか、こちらが見えているの?)

 

 敵は間違いなくこちらを捕捉している。

 数多の戦闘経験から得た感がそう告げている。

 確かに目は潰されていた筈なのに。

 更にその口には巨大な木が咥えられているのが見えた。

 その時、ブリーフィングで聞いていたある情報を思い出す。

 

『敵は限定的ながらも対空攻撃の手段を持っている』

 

 直後、呉爾羅は体を大きく捻ると咥えていた木をヒナへ向けて放り投げた。

 大きく回転しながら巨木がこちらへ飛んでくる。

 

『っ!!しまっ…!』

 

 滑空を始めたばかりでほとんど速度が出ておらず、咄嗟の回避運動も取れない状態になっていたヒナは呉爾羅の対空攻撃をもろに食らってしまう。

 彼女の小さな体が巨木に大きく弾き飛ばされ、バランスを崩して森の中へ落下していった。

 

「ヒナちゃん!!ヒナちゃん!!返事して!!」

 

 ホシノは疾走しながら無線機へ向けて叫ぶ。

 だがヒナから返事が帰って来ることはなかった。

 

「クソッ!!」

 

 ネルが憤りを隠そうともせずに吐き捨てる。

 頭に血が上りかけている二人に対して、ツルギは冷静に次の行動を指示した。

 

「落ち着け。今は私達にできることをやるぞ。今度は二人で同時に蹴りを仕掛けろ。私は地上で奴の注意を引く。」

「…了解。」

 

 そう作戦を立てると二手に分かれて呉爾羅に接近する。

 

(もう傷が治り始めている…。走り回っていたのは治癒するまでの時間を稼ぐためか?)

 

 ツルギが見据えた呉爾羅の体は既に傷が治癒し始めており、ホシノに抉られた顔の右半分は既に出血が止まっている。

 更に向かってくるツルギの方に真っ直ぐ視線を向けているのを見るに、視力すらある程度回復し始めているようである。

 もう何度目になるかわからないが、とてもただの生物とは思えない能力ばかり備えているものだと困惑する。

 特に物理的に眼球を破壊された後に視力が自然回復するなどにわかには信じられない。

 

「ヴアアアアアアアアッ!!」

 

 わざと自分を目立たせるようにツルギは一際大きく声を張り上げる。

 呉爾羅もそれに応じるかのように巨大な咆哮を彼女に向けて浴びせた。

 

(狙うは…頭だ!!)

 

 拳を作った右手を振りかぶりながらの突進。

 一方の呉爾羅も頭の位置を低く落とし、真っ向からそれとぶつかる構えをとった。

 直後、ツルギのパンチと呉爾羅の頭突きが激突する。

 

 そしてぶつかり合いの結果…ツルギが派手に弾き飛ばされた。

 周囲の木々を薙ぎ倒しながら100メートル以上に渡って吹き飛ぶ。

 

 元より人間と呉爾羅とでは質量と重量に絶対的な差がある。

 同じだけの頑強さ、筋力があったとしてもこの差だけは決して覆らない。

 例えるなら同じ出力のエンジンを積んだレーシングカーと戦車のようなもので、真正面からのぶつかり合いという勝負をした場合では重量が重い側が勝つのは自明の理だった。

 

 だがツルギの役目は呉爾羅を撃破することではなく、あくまで陽動である。

 その意味では彼女は目的を完遂していた。

 

「じゃあいくよ!!」

「おう!!」

 

 呉爾羅の背後に近づいていた2人は既に上空へと飛び上がっており、並んで飛び蹴りの体勢へと移行する。

 そして直下にいる呉爾羅に目掛けて一気に落下し始めた。

 

「オリャアアアアアアッッ!!」

 

 ツルギに気を取られていた呉爾羅は2人からの攻撃を察知するのが遅れ、気付いた頃にはもう迎撃も回避もできない距離に近づかれてしまっていた。

 呉爾羅の脇腹部分に強烈な蹴りが命中する。

 巨大な体がくの字に曲がり、轟音を立てて地面に倒れ込んだ。

 攻撃を終えたホシノ達が着地する。

 だが転倒した呉爾羅もすぐさま立ち上がり始めていた。

 

(驚いた。まだピンピンしてるよ。)

 

 ホシノは相手のタフさに関心してしまう。

 ここまで戦ってわかったことは、この生物は『キヴォトス人に匹敵する頑強な体表と、人智を超える程の再生能力、その巨体に見合ったタフネスと重量、そして圧倒的な破壊力を兼ね備えた巨獣』ということだった。

 そしてその認識はネルも同じだったようで、ホシノに向けてこう話しかけてくる。

 

「おい、こりゃこの戦い方を続けてもジリ貧だと思うぜ。」

「やっぱりそう思う?」

 

 銃撃はでは致命傷は与えられない。

 打撃攻撃は一定の効果こそあったものの、実際にこのやり方で無力化を行うとなれば途方もない時間に加えて陽動と攻撃を同時に行う為の膨大な戦力が必要になるだろう。

 無論、殺害を目指すとなれば更に難易度は跳ね上がる。というより現状不可能だ。

 ここまでで既に最高戦力の二人が脱落してしまっているのも戦力の低下として無視できないことだった。

 

「CPに連絡してミサイル攻撃を要請するぞ。悔しいがあたしらだけじゃもう手に負えねえ。」

「わかった。それじゃあ…」

 

 二人が会話を交わしていたその時、彼女らの背後で突然眩い光が灯り始めた。

 咄嗟に振り向くと、その光が巨大なビームとなってこちらに向かってくる。

 

「伏せろ!!」

 

 ネルの叫びと同時に地面に倒れ込むと、そのビームは呉爾羅に目掛け真っ直ぐ向かっていった。

 光の存在を感知していた呉爾羅も咄嗟に横へと飛び退き攻撃を回避する。

 

「今のって…」

「あのチビ、随分良いタイミングで来やがったな。」

 

 ホシノは困惑気味に、ネルはどこか嬉しそうにそう呟く。

 そして無線機から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

『こちらRABBIT1、RABBIT4、アリスさんと共に戦闘に参加します!!』

 

 ミヤコの声だ。

 更にホシノの隣にヌッと黒い人影が現れる。

 

「すまない、待たせた。」

 

 吹き飛ばされていたツルギだった。

 あれだけ勢いよく吹き飛ばされたのに彼女はケロッとしていて見た限り傷一つ付いていない。

 

「ハッ、やっぱあの程度でへばる訳ねえよなあ!!」

「ああ、当然だ!!」

 

 ネルとツルギが嬉しそうに話していると、無線機から更に声が聞こえてくる。

 

『ごめんなさい。少し油断してしまったわ。』

「ヒナちゃん!!」

 

 墜落したままだったヒナの声が聞こえる。

 その声を聞いたホシノが嬉しそうに反応した。

 

「ヒナちゃん今何処にいるの?」

『今はアリスと一緒よ。心配しないで。』

『パンパカパーン!レベルカンストのガチ勢がまた仲間になってくれました!これはもう勝ち確定です!!』

 

 ヒナに続いてアリスの嬉しそうな声が聞こえる。

 更に無線機からは別の声が聞こえてきた。

 

『こちらミレニアムB班!!間もなく現場に到着するわ!戦闘に復帰するわよ!』

「ユウカ!アスナはどうした!?」

『RABBIT小隊のヘリで沿岸の船まで運んでもらったわ!今は医療班の治療を受けているから大丈夫よ!』

 

 ネルの言葉にユウカが答える。

 よく聞くと彼女の声にヘリコプターの飛行音が混じっていた。 

 おそらくモエのヘリでこちらに向かっている最中なのだろう。

 アスナが無事だったことを聞いたネルは安心して思わずため息を吐く。

 その直後森の中から次々と新たな人影が飛び出してきた。

 

「お覚悟はできていらっしゃるのかしら!?」

「ゲヘナA班現着!!見つけたぞ化け物め!!」

 

「そこでお亡くなりになりなさい!!」

「ひゃ、百鬼夜行D班目標地点に到着っ…イズナもワカモも走るの早すぎるって〜。」

「部長…大丈夫、ですか?」

 

「ドローン、作動開始。」

「アビドスE班到着よっ!!覚悟しなさい!!」

 

 島に散らばっていた捜索隊が集結し、呉爾羅目掛けて一斉に攻撃を始める。

 相手の体表で次々と爆発が発生し、強力な一撃は表皮に傷を付け血を流させる。

 そして最後に特大の攻撃が放たれた。

 

「これはどうかな?」

 

 その言葉と同時に空から降ってきた巨大な隕石が呉爾羅の胴体に直撃する。

 見たことのない攻撃を受けた呉爾羅は呻き声をあげながら地面に倒れ込む。

 

「トリニティC班現着っ…流石ミカさん、走るのもお速いですね…」

「あはは…ごめんねハスミちゃん、どうしても我慢できなくって…」

 

 隕石を降らせたミカの後ろから息を荒くしたハスミや正義実現委員達が現れる。

 戦う前から疲労している様子の彼女らに対してミカは気まずそうに謝罪した。

 

 倒れ伏していた呉爾羅が再び起き上がる。

 すると次の瞬間、口から大量の血反吐を吐き出した。

 

「みんな、今の見た!?」

「ああ…!」

 

 ホシノ達の声色が変わる。

 隕石の攻撃が効いたのか、これまでのダメージが蓄積されたのか、とにかく今の呉爾羅は相当なダメージを受けていることが推測できた。

 その為今の戦力ならコイツを倒せると判断するのに時間はかからなかった。

 

「ミカさん、今の隕石をもう一度お願いします!!」

「えっ!?ツルギちゃん!?」

「コイツは銃撃では致命傷を与えられません!ですがミカさんの隕石なら…奴の内臓に確実にダメージを与えることができます!なので…!」

「そっか…わかった!!」

 

「みんな!銃撃は頭部か脚部に集中して!アイツの動きを止めるよ!」

 

 ツルギはミカに、ホシノは皆に向けてそれぞれ指示を飛ばす。

 それを聞いた全員が『了解!!』と大きな声で応じた。

 

 呉爾羅は夥しい数に増えた小さな生き物を見回す。

 体はもうボロボロで、目に至っては既に片方潰されて見えなくなってしまっている。

 完全に取り囲まれ、逃げ場は無い。

 それでも呉爾羅は生き残ることを諦めるつもりは無かった。

 となれば、選ぶ選択肢は一つだけだ。

 

 

 試合開始を告げるゴングのように呉爾羅の巨大な咆哮が再びラゴス島へ響き渡った。

 

 

 

 

 




途中にあった総力戦の状況とかキヴォトスの世界観に関するアレコレは完全に個人的な考えです。
というかゲーム中の描写だけだと相対する敵の強さとかストーリー中の描写次第でムラがありすぎて一定にできませぬ…。
貫通攻撃なんかも完全に胴体貫いてるのにこれは死んでません気絶で済んでますとかどうなってんの…。





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