BLUE ARCHIVE -1.0   作:あたー

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5話です。

先週日比谷に初代ゴジラを見に行って来ました。
何回もDVDで見た70年前の白黒映画なのに、劇場で見ると凄く見応えがあって正に歴史に名を残す名作だってことを思い知らされましたね。
皆さんも一度見に行くことをオススメします!

それではどうぞ。


真相?

~D.U 中央病院~

 

「すみません、SRT特殊学園1年、月雪ミヤコと申します。尾刃カンナさんから空井サキさんがこちらに入院されていると伺い参りました。」

 

 RABBIT小隊の3人は病院の窓口へ行くと受付の看護師へそう訪ねる。

 

「少々お待ちください…尾刃カンナさんからのご紹介ですね。ご案内致します。こちらへ。」

 

 そう言われ、入院用の病棟へと案内される。

 

「こちらになります。」

 

 そう言われて通された所は、建物の中で最も端の部屋だった。周辺の病室は全て空であり、サキがとても秘匿性の高い環境に置かれていることが窺える。

 入り口の戸をノックする。

 だが反応が帰ってくることはなかった。

 

「サキ?」

 

 声を掛けるが相変わらず返事が無い。

 

「入りますよ?」

 

 そう言い戸を開ける。部屋は一人部屋のようで、ベッドとテレビが置かれている。そして置かれたベッドには病院の白衣を着たサキが座っていた。

 顔は俯いたまま、どうやら人が入ってきたことにも気づいていないようである。普段の彼女からすれば信じられないことだった。

 

「サキ?」

「サキちゃん?」

 

 続いてモエとミユも声を掛ける。しかし相変わらず反応は無い。

 なるべく驚かせないようにサキへ近づく。

 すると足音に気づいたのか、顔を3人の方へと向けた。

 

「…みんな。」

 

 一瞬驚いたような表情をした後、力の無い声でサキが呟く。彼女がこちらに気付いたのを見て、ミヤコが改めて話し掛けた。

 

「カンナ局長からこちらにサキが搬送されたと報告を受けたんです。怪我は大丈夫ですか?」

「ああ、腹をちょっとやられて…な。」

「本当にちょっとなの?」

 

 サキの大したことないと言わんばかりの態度に対しモエは心配そうに聞く。普段なら軽口を叩いていたところかもしれないが、今がそれどころではないのはわかりきっていた。

 

「大丈夫だ。本当に。」

「サキちゃん…よかった…。」

 

 サキは本当に大した怪我では無いといった様子で、友人が無事だったことを実感したミユは少し涙ぐみながら安堵する。

 サキの無事を確認したところでミヤコはもう一つの本題に切り込んだ。

 

「サキ…大戸島で何があったんですか?」

「…」

「未知の巨大生物?というものに襲われたと伺っています。それに、先生が…」

 

 ミヤコはそこで言葉を区切り、一呼吸置くと絞り出すような声で呟く。

 

「亡くなったと…」

 

 その言葉を聞いた途端、サキの様子が変わった。

 

「あぁ…」

「そう、か…」

 

 突然頭を抱えて蹲り始める。

 

「やっぱり、夢じゃないんだな…」

「サキちゃん?」

 

 どこかサキの様子がおかしい事を感じとり、ミユが声をかける。

 すると、

 

 

 

「私…」

「先生を殺したんだ…」

 

 

 

「は?」

 

 

 友人の突然の言葉に困惑が広がる。

 サキが先生を殺した?巨大生物が犯人ではないのか?

 一体誰の言葉が真実なのか?

 

「サキ、今の言葉はどういう意味ですか?」

 

 ミヤコの纏う雰囲気が変わる。

 新たな驚異の出現、大切な友人の負傷、そして心から敬愛していた先生の死亡。既に様々な出来事の突然の連続で磨り減り続けていた彼女の精神は、サキの発した最後の「殺した」一言でついに限界を迎えた。

 蹲ったサキに思わず掴みかかり顔を無理矢理上げさせる。

 

「先生を殺したってどういう意味です!?貴女だって先生をとても慕っていたではないですか!!どうして!?答えなさいRABBIT2!!」

「ちょ、ちょっとミヤコ!やめなよ!」

 

 モエがミヤコを羽交い締めにしサキから引き剥がす。

 放り出されたサキにミユが駆け寄った。

 

「さ、サキちゃん大丈夫?」

 

 ミユはサキに声を掛ける。

 だがサキは、

 

「ごめんなさい。」

「私のせいです。」

「私が悪いんです。」

「私が間違えたんです。」

「ごめんなさい…ごめんなさい…。」

 

 まるで壊れたレコードのように謝罪の言葉を繰り返し続けるようになってしまっていた。その様子を見てミヤコも自分が彼女にしてしまったことの重大さを認識し冷静さを取り戻す。

 

「ミヤコ。」

「…」

「ちょっと、外に行こう。」

「…はい。」

 

 モエはミヤコにそう声を掛ける。拒否は認めないと言わんばかりの圧をかけながら。

 ミユにサキの様子見を任せ、二人は病室を出た。

 

 

 

 

 

「気持ちは痛いほど分かるけどあれは絶対に駄目だよ。」

「すみませんでした。」

 

 ナースセンター傍の待合所まで移動した二人は椅子に座りながら先程の件について話始めた。

 

「あの様子だと、サキの言う先生を殺したってのはその…言葉そのままの意味じゃなくて何か別のものをそう呼んでるんだと思うよ。」

「そうですよね…。」

 

 冷静さを取り戻したミヤコは先程自分がした事への罪悪感を強く感じていた。

 心に深い傷を負った者に対してあの態度は追い討ちを掛けたに等しい行動だろう。彼女の変わり様を見ればその行いがどんな悪影響を与えたかは明らかだった。

 

「そういや、具体的に島で何があったかは局長の手紙にも書かれて無かったっけ。」

「…」

 

 するとミヤコは徐にスマホを取り出し、電話を掛け始める。

 

「ミヤコ?一体誰に電話を…」

「公安局長です。」

 

 今回の件を連絡してきたのは公安局長だ。サキがあの状態なので具体的に何があったのか確かめるには公安局長に尋ねるしかない。

 数回のコールの後、電話が繋がる。

 

『はい、尾刃です。』

「すみません、SRT特殊学園の月雪ミヤコです。お久しぶりです局長。」

 

 電話を掛けたミヤコは久方ぶりに会話をする公安局長へ向けて丁寧な言葉遣いで挨拶をする。

 

『ああ、お前か。…連絡してきたのは、手紙の件で合っているか?』

「はい。」

『それで、何についての質問だ?』

「手紙の内容に従って、サキの所へ行ったんですが、サキは大戸島の件で『私が先生を殺した』と言っているんです。手紙に書かれていた巨大生物に襲われたという話と食い違っていて…。具体的に島で何が起きたのか話していただけますか?」

『ああ、そうか。そういえば具体的な内容までは書いていなかったな。すまない。』

「いえ、そちらもお忙しい中で手紙を用意されたんだと思いますので。お気になさらないで下さい。」

 

 どうやらカンナ自身、そこまで気が回らなかったらしい。だがこの状況への対応で忙しい公安局の局長ではそれも仕方ないことだろう。

 

『では、現在までに判明している捜査結果の範囲内で伝えるぞ。』

「はい。」

『昨日夜間、大戸島に巨大生物が上陸。漁船を破壊する等の破壊活動を行った。そこで先生とサキは駆除の為にもう一隻の船に装備されていた20mm機関砲で攻撃を行い、負傷させるも殺害には至らず駆除は失敗。巨大生物の反撃で民間人を含む全員が負傷、先生が死亡した。これが現在判明している今回の事件の経緯だ。』

 

 ここで初めて事件の詳細が判明した。それを踏まえてミヤコは質問をする。

 

「じゃあサキと先生が中心になって攻撃を…?」

『こういった武力行使が必要な事態に、生徒が先生の指揮の元戦闘を行い、対処するというのはこれまで何度もあったことだ。お前達もそうだろう。』

「そうですね…。」

『島で最初にサキに会ったときも、彼女は、先生は私のせいで死んだと言っていた。あんなことをしなければ…とな。』

「あんなこと?」

『何を指して言っていたのかは分からない。』

 

 そこで一呼吸置いてから続きを話始める。

 

『これは私の想像なんだが、サキは巨大生物の攻撃から先生を守れなかったことをずっと悔いているんじゃなないだろうか。』

「…。」

『先生はそもそも我々と比べて非常に脆い存在だ。過去にトリニティ自治区内でテロに巻き込まれて負傷したことがあっただろう。』

 

 トリニティ自治区内での先生の負傷。間違いなくエデン条約の調印式中に発生したアリウス分校による奇襲攻撃の件だ。

 あの一件での先生が負傷したというニュースは、先生と親交のあった生徒達に強い衝撃を与えた。

 

『あの一件以来、先生と親かった者達は皆、先生の身の安全を守る事に非常に神経質になっていただろう。そんな中で自分の目の前で先生が殺されたらどうなる?』

 

 カンナから説明されて、改めてサキが陥っている状況を理解することができた。

 

 もし自分が彼女と同じ状況になっていたら。

 自分が巨大生物と交戦した結果、先生が死亡してしまった。そうなれば悔やんでも悔やみ切れないだろう。

 

「じゃあサキが言っている『殺した』と言うのは…」

『恐らく、自分が先生を守りきれずに、結果『殺してしまった』ということなんじゃないか。それに『あんなこと』、と言っている様子からして戦闘中に何か失敗を犯したのかもしれない。』

「…」

『ただ、これはあくまで私の推測だ。『殺した』の本当の意味は本人にしか分からない。』

「そうですね。」

『とにかく、現在分かっている経緯は以上だ。他に聞きたいことはないか?』

「ではもう一つだけ。その巨大生物というのはどうして生物だと断定できたのですか?話に聞く情報だけでは大型機動兵器の可能性もあるのでは…」

『現地の捜査を行ったところ、交戦したと思われる所から血液が採取された。それなりに纏まった量のな。攻撃を受けて負傷したという情報と合致する。まだ検査にかけられている最中だが、少なくとも人のそれとは違う成分で構成されていることが判明している。それが生物だと断定した理由だ。』

「なるほど、そういうことでしたか。」

『他に聞きたいことはあるか?』

「いえ、今のところはもう大丈夫です。」

『わかった。すまないが、こちらはこれから本格的に仕事が忙しくなってくると思う。電話に出られないことも多くなるだろう。先に伝えておくぞ。』

「わかりました。ありがとうございます。」

 

そう言って通話を切った。

 

「ミヤコ、局長は何て言ってた?」

「モエ、この件は皆で話しましょう。事態は…結構深刻だと思われます。」

「そう、か…」

 

 

 

 

 

 

病室に戻ると、サキは落ち着きを取り戻していたようで、ミユと話をしていた。

 

「あっ、二人ともおかえり…」

「…」

 

戻ってきた二人に気づいたミユが声を掛ける。一方サキは先程の件もあってかミヤコの顔を見ると、途端に表情を強ばらせた。

 

「サキ!ごめんなさい!」

「え?」

「カンナ局長に聞いたんです。島で何があったか。」

 

 部屋に戻ってすぐにミヤコはサキに頭を下げて謝った。

 

「私、サキがどんな気持ちだったかも考えないで…」

「いいよミヤコ。みんなも先生が亡くなったって知らされて余裕が無かったんだろう?ミユから聞いたよ。」

 

 どうやらミヤコ達が電話をしている間、ミユはサキにこれまでこちらで何があったかを話していたらしい。

 

「ミヤコちゃん、公安局長から聞いたことって…。」

「それは…」

 

 ミユとモエに説明をしようとして、ミヤコは思わずサキにアイコンタクトを送った。『話しても大丈夫ですか?』と。

 サキもその思惑を受け取ったようで、ミヤコに向けて首を縦に振る。

 

「では、今回の事件の内容をお伝えします。」

 

 ミヤコはカンナから聞いた内容を全て話した。

 大戸島に巨大生物が出現し、迎撃の為にサキと先生が攻撃の先鋒を務めたこと。そして反撃を受けて今に至ること。

 話を終えると、部屋には沈黙が訪れる。

 暫くして、ミヤコはサキに向けて新たに話を切り出した。

 

「サキ、貴女はSRTの隊員として、あの状況下で間違いなくするべきことをやったと思います。この結果に対して、他の人が貴女を非難できる道理なんて全くありません。もしサキの事を悪く言う人がいたら、私が、私達が貴女の潔白を証明します。絶対に。」

 

 ミヤコはサキを安心させるようにそう呼び掛ける。

 そしてその発言にモエとミユも同調した。

 

「そうだよ。それにそいつには20mmで応戦したんでしょ?それでも倒せない生物ってそんなの予想できるわけないじゃん。」

「そうだよサキちゃん。」

 

 皆揃ってサキの事を肯定する。

 サキの行動は悪くない、間違っていなかった、と。

 しかし、サキはそれに対して顔を俯かせる。

 

「そうか…。」

 

「そうか…そうなんだな…。」

 

 サキは心ここに在らずといった様子で独り言を呟き続ける。

 そんな彼女の瞳は、確かな絶望の色に染まりつつあった。

 

 

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