今後段々と更新速度落ちるかもしれませんが頑張ります。
今後の活動計画を共有し、皆が落ち着きを取り戻したところで、ノノミが新たな疑問を投げ掛ける。
「あの、ふと疑問に思ったのですが、その巨大生物は何故今まで全く発見されなかったのでしょうか。全高15メートル程となれば、今までにも何かしらの探知機で観測されていなければおかしいと思うのですが。」
その発言を受けて、リンが答える。
「ええ、我々としてもその点は非常に重要視しているところです。対象が何故今まで一切発見されなかったのか、発見されないならその理由は何か。一般的なソナーでは通常の鯨類や魚群と誤認してしまうのかもしれませんが、はっきりした答えに辿り着けていません。最も恐れているのは、その生物が何かしらそういった探知機に反応しない特徴を備えている可能性があるのではないかということです。」
「探知機に反応しない…野生動物でそんなことあり得るんですか?」
「普通の生物であればまずあり得ません。ですが、相手は未知の生物です。警戒するに越したことはありません。皆さんに海中の捜索協力を要請したのは、その最も恐れている点を少しでも補う目的もあります。」
連邦生徒会としても、巨大生物が今まで全く発見されていなかったことに関して様々な憶測が飛び交っていたが、その中で最も警戒されていたのは、巨大生物が何らかのステルス性能を有している可能性だった。
「勿論、まだ本格的な捜索に移れていませんので巨大生物がどのような特徴を備えているかは現状不明です。当分は現用の装備を用いて捜索を行っていただくことになるかと思います。」
リンはそう言うが、参加者側としては一抹の不安を覚える返答である。
海での捜索にてほぼ必須級の装備が役に立たない可能性があるというのは無視しきれない部分だった。
「ユウカちゃん、ミレニアムサイエンススクールで何か役に立ちそうな道具とかない?」
「役に立ちそうな道具と言われても…。」
ホシノからの突然の質問に、ユウカは頭を抱える。先ほど挙げられた懸念は尤もだが、何もかもが不明な現状で一体何を用意すればいいというのか。
そんな中、ノアからユウカに助け船が出される。
「ユウカちゃん、もしかしたら今エンジニア部が海洋事故防止用に開発中のあの機材が役に立つかもしれませんよ。」
「エンジニア部…あ!あれね!確かにあれなら使えるかもしれないわね。」
「おっ?良いものがあったの?」
ノアのフォローを受けて、ユウカが新型装備の提供を提案する。
「ええ。以前から海洋事故防止用装備の作成依頼がうちに来ていたの。完成まであと少しだと報告を受けているわ。それと、当初はセットで運用する新型ソナーも開発していたのだけど、そっちは必要以上の機能を盛り込んだせいで開発費用が高騰したうえに依頼主からソナーは必要ないって断られてから開発が中断していたの。でもこの状況ならもしかしたら役に立つかもしれないわ。代行!」
「ええ、わかりました。ミレニアムサイエンススクールには、新たに探索用機器の提供を正式にお願い致します。」
捜索活動に必要な装備、活動計画等が次第に煮詰まってきた所で、リンが新たな要請を掛ける。
「目標を発見した場合、洋上であれば、駆逐艦、フリゲート艦等による攻撃を行いますが、上陸した場合に備えて専用の討伐隊を組織したいと考えています。そこで、各学園から最も戦闘能力に秀でた者を部隊員として選抜をお願いしたいのですが…。」
「戦闘能力に、秀でた者…。」
つまり、絶対に仕留める為の体制を整えるということだ。今この場にいる誰もがその巨大生物を徹底的に痛めつけ、あわよくば息の根を止めてやりたいと思っているのは共通している。
それを踏まえたうえでナギサから少々意地悪な質問がされる。
「その部隊員の選抜、何名か選出してもよろしいのでしょうか?戦闘能力に秀でた生徒でしたら、トリニティの者だけで十分事足りるだけの数を選出できますが。」
トリニティだけでこのチャンスをものにしようとしているかのような言い方のナギサに対し、一部の生徒がムッとした視線を向ける。
だがリンを始めとした一部の生徒は彼女が本当に確認したがっている事を察していた。
「組織するのは分隊一つ分とし、各学園から選抜された生徒の中から、計4名を連邦生徒会側で指名させていただきたいと思います。メンバーはなるべく学園別に1名ずつ、極力公平に選ばせていただきたいと思っていますので御了承いただければと。」
「かしこまりました。」
リンのこの回答で、ピリピリし始めていた空気が収まる。
ナギサはこの討伐隊の編成をどのように決定するのか、はっきりとした答えを得たかったのである。
これでチャンスは皆公平に用意されることが確約された。
「そして、キヴォトス全体で今後治安の悪化やメンタルケアを必要とする生徒達が発生する事が懸念されます。各自治区おいては、そういった案件への対処も重ねてお願い致します。」
「…どうやら、落ち着いて先生の弔いができるようになるまではまだ当分掛かりそうじゃのう。」
リンが新たに代表達へ向けた要望を伝え、続けて山海経高級中学校の竜華キサキが今後を憂うようなことをつぶやく。
「…先生無き今、今後は我々だけでキヴォトスを守っていかなければなりません。皆さん、御協力をどうか宜しくお願い致します。」
リンが最後にこの場の生徒全員に向けたお願いを伝え、会議は終了した。
会議が終了し、代表達がそれぞれの帰路につき始める。
皆歩きながらも今後の対応に備えて連絡や話し合いを行い続けていた。
「では、私はハスミさんに本会議の報告を行う場を準備していただくよう連絡を入れます。皆さんはそちらには参加されますか?」
「私も救護騎士団の皆さんにこの件の報告を行わなければならないので、すみませんがそちらは欠席に…」
「私もシスターの皆さんに報告を行う必要があります。そこで提案なのですが、それらの集会を主要な部活全てを合わせた合同のものにしてはいかがでしょうか?」
「合同、ですか。」
「はい。これから戻る時間であれば、大聖堂が空いております。この事件への対応は、トリニティの生徒全てが心を一つにして臨まなければならないことです。今後のことを鑑みても一度皆揃っての集会は必要だと思います。」
「良い案ですねサクラコさん。それでいきましょう。」
「わかりました。場所の手配は私から行います。皆さんは各部活の方々へ集会に参加していただくように連絡を行ってください。」
「わかりました。」
トリニティ総合学園は、自治区の面々への報告を各部活合同の集会で行うことで決定した。
すると、ミネがナギサに気になっていることを尋ねる。
「ナギサ様、今回の件はミカ様への報告はどのように…」
「そうですね…。」
彼女らが心配していたのは、同じトリニティに所属する聖園ミカのことだ。
彼女は元々ティーパーティーの一員、しかもパテル分派という派閥のリーダーという、いわゆる行政トップの一人という立場でありながら、エデン条約締結式で発生したテロの実行犯、アリウススクワッドと共謀していたことで処罰されて以降、立場を失ったうえ学園内でイジメのターゲットにされてしまっていた。
そのような孤立しがちな状況にあった彼女の大きな心の支えになっていたのが先生だった。勿論、ナギサ達もミカにとっては大切な友人であることは間違いないのだが、先生という人物は彼女にとって友人や恩人といった言葉では表現しきれない程に特別な存在だった。
そんな彼女が今回の事を知ったらどうなるだろうか。
エデン条約の一件以降、メンタルが不安定気味で自罰的な考えを持つことが多くなっており、先生が亡くなったと知ればショックで塞ぎ混んでしまうのではないかという心配。
また、彼女は本来自他共に認める武闘派で、しかもその戦闘力はトリニティ最高戦力に並ぶ程と評される実力を持っている。
その為、以前収監されていた牢から脱走してアリウススクワッドの追撃に乗り出した時のように、勝手に怪物狩りに飛び出してしまうのではないかということも同時に心配された。
何れにしろ今の彼女はどう爆発するかわからない巨大な爆弾同然であり、
「…すみません、少し考えさせてください。」
幼なじみのナギサですらも、その質問の答えを直ぐに出すことができなかった。
「ノア、エンジニア部とC&Cに連絡を入れておいて。チヒロ先輩はヴェリタスに。戻り次第緊急会議を行うわ。」
「わかりました、ユウカちゃん。」
「うん、わかった。」
ユウカの指示を受けてノアとチヒロはそれぞれの部活に連絡を送る。
今回ミレニアムサイエンススクールは捜索活動において他学園よりも機材の納入等で担当する役割が多く、より責任重大な立場になっていた。
「ところで、ユウカちゃん自身は大丈夫ですか?普段より目に見えて無理をしているのがまるわかりですよ。」
「…」
ユウカの親友であるノアは今の彼女が見せる普段との僅かな違いも見逃さない。
明らかに無理をしている様子が見てとれた。
「…正直、まだ実感が沸いてないし、もう全部放り出して、今すぐ先生がいる病院に行きたい。先生のことを、自分の目で確かめたい。だけど…」
結局、会議が終わるまでの間ユウカの内心はずっと混乱と恐怖で一杯だった。
本当は今すぐにでも先生に会いに行きたくて堪らない。
「…だけど、今は私達にできることを全てやりましょう。この役目を果たせるのはきっと、私達だけだから。」
「…そうだね、全力で仕事に当たろう。」
「…そうですね。頑張りましょう。」
今、ミレニアムサイエンススクールは嘗てない程に一つの意思に纏まろうとしていた。
「イロハ、万魔殿の議員達に連絡を入れておいてくれ。サツキは船舶を供出できそうな部活に連絡を頼む。」
「わかりました。直ちに。」
「わかったわ。」
普段ならどこか面倒くさがるそぶりを見せるメンバー達がテキパキと行動を始める。
連絡を終えたイロハはずっと気になっていたことをマコトに尋ねた。
「風紀委員会への連絡はどうするんです?」
万魔殿と犬猿の仲である風紀委員会。そこへの連絡はどうするのか。
イロハは正直ここでいつも通りマコトが風紀委員会を陥れるようなことをするつもりであれば、こっそり連絡を入れようと考えていた。
しかし、マコトからの返答は予想を大きく外れるものだった。
「風紀委員会へは私から連絡する。」
「はい?」
イロハは思わず間の抜けた声を出してしまう。今この人は自分から普段の天敵相手に連絡をすると言ったのか?
「あいつらに向かってこんな要件を連絡するのは気が引けるだろう。私がやる。」
「はあ…」
そう言うとマコトはスマホで電話を掛け始める。
(そういえば、本当にヤバい時はしっかりと動く人でしたね。この人。)
そこそこ長いコール時間の後に、電話が繋がる。
『はあ。マコト、一体何の用?』
「キキキッ、電話口で最低限の挨拶すらしないとは礼儀がなってないな風紀委員長?」
『…イタズラ電話なら切るわよ。』
電話相手の風紀委員長、空崎ヒナは面倒くさそうな態度を隠そうともせずに受け答えする。
「…悪かった。重要な連絡がある。今少し話せるか?」
『どうしたの?』
しかし普段とはうって変わって真剣な様子のマコトにヒナは只ならぬ気配を感じたようで、声を真面目なトーンに切り替える。
「…先生が亡くなった。」
『…』
二人の間にしばらく沈黙が流れる。
すると今度はヒナが話を切り出した。
『それ、本当なのよね?』
「今日、連邦生徒会から先生の生命に関する重大な報告として各自治区の生徒会に緊急召集が掛けられた。参加してみれば、先生が亡くなったという内容だ。海に棲む巨大生物に殺された、とな。」
『巨大生物…。』
「連邦生徒会もこの事を本日中にキヴォトス全土へ発表するが、それより先にゲヘナ内部の組織間で情報の共有を行う。お前達も参加しろ。」
『…貴女がそこまで言うということは本当なのね。』
「会議中に先生が普段持っていた【シッテムの箱】を見せられた。徹底的に破壊された残骸を、な。連邦生徒会は、先生の遺体の写真まであると言っていた。現状、嘘の可能性はかなり低い。」
『貴女が連邦生徒会の言うことを素直に聞くとはね。』
「先生に関することだからな。私もイロハもイブキも皆、先生にはだいぶ世話になった。もうあの人は我々にとって無視できるような存在ではない。それは貴様らもそうだろう?」
『そうね…その通りよ。』
「連絡は以上だ。我々が戻るまでに参加する面々を決めておけ。では切るぞ。」
そう言うと、ヒナの返事を待たずにマコトは電話を切る。
電話を切ったマコトはイロハ達に振り替えり、静かに告げた。
「さあ、始めるぞ。」
マコトとヒナのやりとりは現在の最新ストーリーを見て「あれ?この二人マジモードなら普通に協力するんじゃね?」と思ってこのようにしました。
今後の原作の進みによっては「いやこんな関係じゃねーだろ」ってなるかもしれません。悪しからず。
ところでマコトさん?エデン条約の時の内通はどう落とし前付けるんです?(ニッコリ)