BLUE ARCHIVE -1.0   作:あたー

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8話です。
最近昼間暑くて疲れるせいか夜中に文章見直してる最中に寝落ちする…


悪いのは誰だ

 入院していたサキの怪我は搬送されたその日のうちに完治し、病院からも退院許可が出たことから、RABBIT小隊の面々は揃って小ウサギ公園への帰路に着いていた。

 当初の厳重な隔離体勢からはにわかに信じられないようなあっさりした解放だったが、その理由はすぐにわかった。

 

『シャーレの先生が死亡!!殺害したのは未知の巨大生物!?』

 

 連邦生徒会が先生の死亡を公式に発表したため、当初関係者として拘留されていたサキのことを隠す必要が無くなったのである。

 

 発表された先生死亡の知らせはキヴォトス中を瞬く間に駆け巡り、各地に大混乱をもたらし始めていた。

 情報開示と同時に発表された面会の受付窓口は一瞬でパンクし申請の受理を一時停止する事態になった。面会の機会を得た者たちも、数十分単位でギチギチに詰められた面会時間を一秒でも無駄にしないために病院へと殺到し、結果として病院内外に長蛇の列が発生することになった。

 それ以外にも、以前連邦生徒会長が失踪した直後のようにキヴォトス全土で瞬間的に犯罪率が急増した。

 しかも今回は、連邦生徒会が巨大生物の駆除を行うことを正式に発表したことに影響された多数の生徒達が大物狩りを出来るような強力な武器の調達を合法非合法問わずに行い始め、更に武器購入用のお金を強引に用意するべく銀行強盗等も同時発生している始末である。普段なら犯罪に手を染めないような者達までも参加し始めた為、以前にも増して混沌を極めている有り様だ。

 帰宅途中だったRABBIT小隊も道中起きていた強盗事件への対処に飛び入り参加することになり、すっかりクタクタになっていた。

 

「はあ、わかってはいたけどやっぱり凄いことになってるね。」

 

 だいぶ疲れた様子のモエが一人呟く。誰に向けた物でもなかったが、その発言に反応する人物がいた。

 

「すまない。私がまともに動けないせいで皆に迷惑を掛けて…。」

「あっ、いやいや!サキのせいじゃないよ。こんな時に銃が無いんじゃしょうがないって。」

「銃を失ったのも元々は私のミスが原因だ。」

「いいから気にしないでよ。」

 

 サキは今、銃を持っていない。彼女の愛銃は大戸島で紛失して以来それっきりになっていた。今新しい物を調達するには時間もお金も、そして店側の在庫も足りない状態で、諦めざるを得なかったのである。

 だが、彼女に銃を与えなかったのは今の状態を鑑みた上でのミヤコ達の判断でもあった。

 今のサキは普段こそ昔と変わらない態度を見せているが、時折何かに怯えているかのように身構えることがあったりと、退院して以降明らかに様子が変わっていた。その為一種のPTSD(心的外傷後ストレス障害)ではないかと心配されていた。

 

「あの、サキ。やっぱり精神科の診察を受けたほうがいいのでは…。」

「っ…それは…。」

 

 ミヤコがそう言うと、サキが急に怯え始めた。

 今のRABBIT小隊の面々は、D.Uの中央病院でしか診察を受けることができない。何故なら今の彼女達は所属している学園の扱いが複雑なことになっているせいでD.U外では学生として扱われていない自治区があるためだった。先生がいた頃であれば、シャーレ所属の名目で診察を受けたりできたのだが、今はそれもできない。

 そしてサキは、先生が今収容されているD.Uの中央病院に入ることを非常に嫌がっていた。

 ミヤコ達の側からすればすぐにでも診察を受けて欲しいところなのだが、今の彼女に無理強いをすることが憚られたのである。

 

「今は、まだ時々頭が混乱するんだ。だから、この先時間を掛けて気持ちを落ち着かせていけば、きっと大丈夫になる。」

 

 サキがそう答える。

 今のミヤコ達は、彼女の言う言葉を信じることにしていた。

 

 

 

 

 そうしているうちに小ウサギ公園が見えて来る。が、ミユが突然足を止めた。

 

「ミユ?どうしました?」

「…」

 

 ミユは何やら黙ったまま周りを見回し始める。

 

「何かが…私達を見張ってる…。」

「!!」

 

 今自分達がいるのは公園の入口部分、周囲には木々が生い茂っていて隠れるのに非常に適した地形をしている。

 治安が普段以上に悪化している今のキヴォトスでは何が起きてもおかしくはなかった。公園に設置している装備品を強奪しようとする者が潜んでいる可能性がある。

 

「警戒体勢!」

 

 ミヤコが指示を飛ばすと他のメンバーも銃を構えて警戒体勢に入る。

 その態勢のまま小ウサギ公園内へと向かってゆっくり動き出す。戦闘するにしろ自分達の拠点まで到達できればより有利に戦えるのは間違いない。

 しかし、突如として空気を切り裂くような轟音が響き渡った。

 

「っ!!散開!!」

 

 ミヤコが叫び声を上げ、4人がバラバラに飛び退く。その直後先ほどまでいた場所で爆発が起こった。

 

「ロケット弾だ!!」

 

 飛び退いたモエが周囲に向かって叫ぶ。

 爆発があった場所を見ると小型のクレーターが出来ていた。

 この陥没痕の特徴は手榴弾等ではなく成形炸薬弾(対戦車兵器)のソレである。

 

「襲撃者の位置は割り出せますか!?」

「攻撃してきたのは17時の方向、距離は大体…150メートル位だと思う!」

 

 モエが敵のおおよその位置を予測する。

 使用されたロケットランチャーの噴射音が比較的近距離で突然鳴り始めたこと、また自分達がそれを認識してから回避を行えたことから相当弾速が遅い武器を使用したことも推察された。

 

「今は牽制を行いつつ公園内の陣地まで移動しましょう。陣地の周辺は開けているので迎撃もしやすいですから…」

 

 ミヤコが次の指示を出している途中で、新たな攻撃が飛んでくる。

 

「くっ!!」

「サキ!!」

 

 サキと他の3人を分断するかのような攻撃。

 今度は爆発物ではなく大口径の銃によるものだ。

 サキが咄嗟に回避をしたため掠めるだけで済んだものの命中すれば大怪我は免れないだろう。

 

「サキ!遮蔽に隠れて…」

「け、煙が…煙幕?」

 

 分断されたサキの援護に向かおうするミヤコ達の周りに突然猛烈な煙が発生し、視界を遮られてしまう。

 

「ミヤコ!クソっ!!」

 

 サキの方も分断されたミヤコ達の心配をするが、直後に自分の周囲に銃弾が数発撃ち込まれたため横へ転がって回避行動を取る。

 

(狙いは私か!!)

 

 最初の一撃は全滅を狙ったものに見えたが、次の攻撃は明確にサキを狙ったものだった。そして現在の状況。他の3人には煙幕を張り、こちらには銃弾を浴びせてくる。敵の狙いは明らかだ。

 彼女は唯一の武器であるサバイバルナイフを取り出し迎撃を試みる。銃で武装した相手に挑むには余りにも心許ないが、今はこれしかない。

 

(またか!)

 

 再び大口径銃が発射される。一度見た攻撃ともなれば対応するのは造作もない。

 しかし、今度は彼女が回避した方向へ、ゲームで行う『着地狩り』のように続けざまに銃撃が行われた。

 

「がっ!?」

 

 今度の銃弾は綺麗に命中し確実にサキの体の自由を奪う。

 

(この威力…一体誰だ?)

 

 ヘイローを持った生徒達が使用する銃は、各個人が持つ神秘の保有量次第で銃弾の威力が大きく変動する。

 SRT特殊学園でポイントマンをしているサキは銃撃に対してかなりの耐性を持っているのだが、それでも今の銃撃は非常に堪えるものだった。つまり相手はかなりの量の神秘を持った実力者で間違いない。もしゲヘナの風紀委員長に匹敵するような者だったらお終いだ。

 

「うわっ!?」

 

 今度は銃弾ではなく槍のような何かが投げこまれた。サキが必死で回避を取り続けたため投げられたものは彼女の付近に突き刺さる。

 それを見てみると、正体は銃剣が装着された小銃だった。よく見ると銃のボルト部分が開放されており弾を撃ち尽くしたようであるが、何より目に付いたのは銃の外観だった。

 黒い銃身に桜と狐面の紋様。その外観には見覚えがあった。

 

(まさかアイツか!)

 

 襲撃者の正体に辿り着くと同時に、その犯人が姿を現す。

 宙に大きく飛び上がりながら背負っていた巨大な水平二連式散弾銃と空になったRPG-7を投げ捨てると、替わりに小刀を取り出してこちらに飛びかかってくる。

 それは黒い着物を着た、白い狐の面をした人物だった。

 

「ワカモ!!」

 

 襲撃者、狐坂ワカモは飛びかかると同時にそのまま小刀で切りかかってくる。

 サキも負けじと格闘で反撃を行うも、近接戦闘の実戦経験ではワカモが圧倒的に上であり、尚且つサキの方は病み上がりかつメンタル不安定と悪条件が重なった結果たちまち組み伏せられてしまう。

 

「うっ!」

 

 サキに馬乗りになったワカモは無言のまま彼女にトドメを刺そうと小刀を振り下ろす。

 

 

 

 

 しかし次の瞬間、ワカモに向けて無数の銃弾が浴びせられた。

 

「させません!!」

 

 煙幕の晴れたミヤコ達がサキを助けるべくワカモに向けて銃撃を行ったのだった。

 妨害を受けたワカモはサキから飛び退き距離を取る。

 開放されたサキを守るようにミヤコ達3人が立ち塞がった。

 

「狐坂ワカモ…!!」

 

 ミヤコは友人に刃を向けた相手に怒りを顕にする。

 一方のワカモはミヤコ達には興味も持たずに、サキに向けて話始める。

 

「まったく、直ぐに終わらせようと思っていましたのにちょこまかと…」

 

 

「先生が亡くなられた時もそうやって情けなく逃げ回っていたのですか?」

 

 

「っっっ!!!!あ…あぁ…」

 

 ワカモの言葉を聞いたサキは、途端に震えだし、視線が定まらなくなる。

 

「サキ!」

「サキちゃん!」

 

 病院で見たのと同じような症状を起こし始めたサキに、モエとミユが寄り添う。

 一方ミヤコはワカモと対峙したまま、努めて冷静に彼女へ尋ねた。

 

「何故サキが先生が亡くなった時に一緒にいたと分かるんですか?」

「何を白々しいことを。私も先生の生徒の一人、シャーレの一員です。日々のスケジュールも、当日誰が同行していたかもきちんと把握しておりますよ。」

 

 どうやらワカモは先生が亡くなった際の事を既に把握しているようだ。

 故にミヤコは先程のワカモの言葉を真っ向から否定した。

 

「大戸島に巨大生物が現れた時、サキは決して逃げ回ってなどいません。巨大生物に対して、限りある装備を最大限利用して的確に対処をしたんです。それを無視して彼女を侮辱するなど絶対に許せません。」

 

 しかしそれに対しワカモの反応は冷ややかなままだった。

 

「そうですか。ですが、事実として先生は亡くなりました。あんなにお優しい!慈悲深い!素敵な御方が!どうして!!」

「…確かに先生を殺害した張本人はその怪物です。ですが、同行していた者がいたなら、その者は先生を絶対にお守りするという責務があったはずです!!」

「そこの女は結局先生を守れなかった!貴女が弱かったから!あの時私が側にいれば先生が命を落とすこともなかったでしょうに!!」

 

 ミヤコはワカモが一通り話終えるまで黙って聞いていた。

 

「なるほど。先生が亡くなったのはサキが力不足だったからだと。貴女であれば巨大生物を撃退できたと。そう言いたいのですか。」

「ええ。そうですとも。」

 

そして、わざと煽るような物言いで彼女に返答する。

 

「私はそうは思いませんね。」

「…」

「いいですか?サキが巨大生物の攻撃に使用したのは20mm機関砲です。その破壊力は軽装甲車輌程度であれば難なく破壊出来るだけの威力があります。只の生物であれば間違いなく即死するでしょう。ですが、殺害には至らなかった。この時点で普通の生物とはまるで違う存在であると言えるでしょう。そんな相手の襲撃を何の情報もなく予知できるんですか?」

「それに、元々二人はダイビングの為に島へ行ったんです。戦闘用の装備など殆ど持っていなくて当然です。貴女は先生と二人で出かける際に常に重装備を持って行くんですか?」

「貴女の主張は全て後出しじゃんけんの考え方でしかありません。こうすれば良かったのに、ああすれば良かったのに、と。それで他者を責め立てて、更には『私の方が上手くできる』だなんて…。」

 

 

「貴女、先生の生徒として恥ずかしくないんですか?」

 

 

 ミヤコはワカモに向けて持論をぶつける。

 するとワカモはミヤコに対して更に挑発するような言葉を返す。

 

 「そうですね。確かに先生を殺害した犯人はさぞかし人知を超えた生物なのでしょうね。ですが、装備の有り無しを理由に言い訳をするなんて、それこそ弱者のやることです。結局、彼女が弱いのがいけなかったんですよ。私であれば、自分の銃一本あれば怪物など一捻りですから。」

「口先だけならなんとでも言えますよ。」

「ふふふ…それなら、ここで私の実力をしっかりとお見せすればわかっていただけますかね?」

 

 ワカモが再び武器を構える。武器は小刀だが相手はあの【災厄の狐】だ。一筋縄で行く相手ではない。

 

 「まだわかりませんか!?今戦うべき相手は我々ではなく巨大生物です!何故それを認めないんですか!?」

「勿論、その怪物も殺します。そしてそこにいる彼女もです。先生が味わった痛みと苦しみを、皆味わえばいいんですよ…!」

 

(駄目ですね…まだ冷静になっていません…。)

 

 ミヤコは初めからワカモの様子を観察して、彼女が冷静な状態でないことを察知していた。普段のワカモであればあんな特攻紛いの捨て身の攻撃を仕掛けてくる筈がない。

 故に、今暴走状態である彼女の怒りの矛先を巨大生物に向けるように誘導を試みたが、どうやら彼女の心を動かすにはまだ足りなかったようだ。

 

 一色触発。ミヤコとワカモが睨み合いを続ける。

 

 

 

 

 

 その時、突然銃声が鳴り響くと同時にワカモの体が大きく吹き飛ばされた。

 

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