BLUE ARCHIVE -1.0   作:あたー

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9話です。
皆さん感想、コメントありがとうございます。
返信は遅くなると思いますが、頂いたコメントは全て読ませていただいています。
今後ともよろしくお願いします。


※FOX小隊の設定が間違っていたので文章を直しました。





協力者たち

「今のは…M82(対物ライフル)!?」

 

 ミヤコはその重々しい銃声に聞き覚えがあった。

 直後、吹き飛ばされたワカモに向けて閃光弾が投げ込まれ、炸裂。

 すると突然大型の盾を構えた人物が現れ、ワカモへ向けて突進する。

 彼女の長い金髪と頭部の耳に、RABBIT小隊の面々は見覚えがあった。

 

「クルミ先輩?」

 

 ミヤコ達が呆気に取られていると、また別の人物が声を掛けながら駆け寄ってくる。

 

「間に合ってよかった!」

「ニコ先輩?」

 

 現れたのはミヤコらと同じSRT特殊学園の先輩達、FOX小隊に所属していたニコとクルミだった。そして二人がいるということは、先程M82で攻撃を行ったのは同小隊の狙撃手、オトギで間違いない。

 

「どうして先輩達がここに?」

「それについては後で説明するから…。」

 

 そう言うとニコはワカモの方へ向き直る。

 クルミの突撃を受けたワカモは多少応戦した後、状況を不利と見たか撤退を計ろうとするが、彼女の後方からまた新たな人影が現れた。

 

「降伏しろ、災厄の狐。」

 

 逃げ道を塞ぐように展開したFOX小隊リーダーの七度ユキノがワカモに向けて無機質な声で呼び掛ける。

 前方にクルミとニコ、後方にはリーダーのユキノ、そして遠方には狙撃手のオトギ。 

 流石のワカモもほぼ丸腰の状態では完全装備のFOX小隊の包囲の輪から逃れられないと悟ったのか、抵抗を止めた。

 

「はあ。まさか貴女達が出てくるとは想定外でしたね。皆さんは学園の閉鎖以降行方不明になったと聞いていたのですが。」

 

 ワカモは持っていた刀を地面に放り、両手を掲げて降参の意思を表示すると彼女らに向けて尋ねる。

 それに対して、また別の人物が回答した。

 

「FOX小隊には我々が特別任務を与えた。今丁度任務を開始したところだ。」

 

 そう言いながら見覚えのある人物が歩いてくる。

 

「公安局長…?」

 

 歩いてきたのはカンナだった。

 だが今彼女は何と言った?特別任務?

 

「特別任務ですか?確かにSRTの生徒は学園の閉鎖後ヴァルキューレに編入されたと伺っておりますが、この方達はそれに反発して姿をくらましていた筈では?」

「詳しいことは話さん。それよりもここまで早くお前に会えて良かったぞ、ワカモ。」

「私に?」

 

 カンナの発言にワカモは困惑する。

 普通なら凶悪犯を早くに見つけられて良かったといったニュアンスだが、今は違っているようだった。

 

「ワカモ、お前をスカウトしたい。非常対策委員会、つまり巨体生物駆除を行う為の特別委員会、今回の事件における最前線だ。お前には戦闘要員として参加してもらいたい。」

「!!」

 

 カンナから発せられたのはワカモを仲間に引き入れたいという言葉だった。

 まさかの提案に全員が固まる。 

 少し経った後、沈黙を破ったのはユキノだった。

 

「局長、そんな話は聞いていなかったが。」

「当然だ。今初めて話したんだからな。」

 

 ユキノからの抗議を含んだ発言に、カンナはあっけらかんと答える。この人こんなことを言う人だっただろうか?

 すると、ワカモが困惑気味に質問した。

 

「あの、私が尋ねるのもおかしい気がするのですが、それ本当に私が参加してもよろしいのですか?」

「トラブルさえ起こさなければ何も問題は無い。目標の巨大生物は20mm機関砲による頭部への攻撃すら耐える耐久力を持っていることがわかっている。どう考えても普通の生物ではない。私個人としては少しでも実力者を自陣へ率いれておきたいのでな。」

「なるほど…。」

「それに、お前を引き入れられば犯罪を起こす問題児を最低一人は監視下に置いていられるしな。」

「…むしろそっちが本心ではないのですか?」

 

 ワカモに対して事情と私情を交えた説明をするカンナ。

 

「それに、何故私を選ぶんです?実力者が欲しいだけなら他にも沢山いるでしょう。」

「お前なら先生が関わることにほぼ間違いなく首を突っ込むだろうと思ったからだ。ましてや先生を殺害した奴との戦いなんて絶対やりたがるだろう?」

「随分高く買われたものですね。」

「気取ってるつもりかもしれないが、お前が先生をどう思っているかはある程度知っているぞ。この前シャーレのカフェで『この水着姿を先生にお見せしたいのですが♥️』だの、『どこからか視線が…これはまさか先生の?うふふ♥️』だのと呟いていただろ。それに以前お前が起こした破壊活動、先生にバレンタインデーのチョコを渡そうとして起こしたものだったそうだな。まったく面倒なことを…。」

「あら、いつの間にそこまで詳しくなられたんですか?少し恥ずかしくなってしまいますね。」

「以前カフェで居合わせた時に聞こえたんだ。バレンタインデーの件は事情聴取した先生を問い詰めたら白状した。最初に動機を聞いたときは呆れて物も言えなかったがな。」

 

 ワカモは少し恥ずかしいと言ってはいるがどう見てもそんな態度ではない。むしろ『え?先生は勿論大好きですけど何か?』と開き直っているようである。

 

「だから、そんなお前に自分勝手に巨大生物攻撃を始められる前にチームに入れようと思った訳だ。」

「そういうことですか。」

「さあどうする?先生の仇を討つ為に協力するか、邪魔者相手の戦闘を続けながら孤独に復讐を目指すか、どっちだ?」

「こんなに包囲しておいて選択肢なんて有って無いようなものでしょうに…。」

「お前がRABBIT小隊(こいつら)を襲撃したりするからだ。大方、先生と同行していた空井サキを狙って襲ったんだろう?私が心配していた通りだ。」

 

 カンナの言葉でRABBIT小隊の面々はハッとする。

 

「じゃあFOX小隊の皆さんがここにいるのは…」

「そう。サキちゃんを、RABBIT小隊をあんな風に暴走した生徒達から護るため。それが今の私達に与えられた任務。先生が亡くなった時にサキちゃんが一緒にいたのは公表こそされてないけど調べればすぐ分かるから、こんな時だと逆恨みする生徒は絶対に出てくるだろうからね。」

 

 ニコの返答を受けてミヤコは安堵の表情を浮かべる。

 先のワカモの主張から、今後同じような考えの者が襲ってくる可能性は十分考えられる。

 そんな中でFOX小隊の先輩達が味方になってくれるとなればこれ程心強いことはない。

 

「…そうですね。」

 

 ワカモがカンナへ返事をする。

 

「そちらに協力すれば、怪物狩りに正式に参加できるんですね?」

「そうだ。もっとも、参加する以上は、脱退するまでは指定したルールに従って過ごしてもらう。いいな?」

「あまり性に合わないですが…いいでしょう。貴女方に手を貸します。」

「契約成立だな。それと、お前だって本当は周りと歩調を合わせて動けるだろう?先生の指揮下ではそれが顕著だろうが。」

「それは先生がいたからですよ。」

「実戦で咄嗟に最適な行動ができるかどうかは、日々の経験の積み重ねに左右される。先生の指揮下だろうがなんだろうが、お前自身チームプレーができるということは、他の条件でもそれが行えることの証左に他ならない。要はお前のやる気次第だ。」

「私のやる気次第、ですか。であれば、私を都合よくこき使おうだなんて思わないでくださいね?」

「初めからそこまで期待していない。お前が問題を起こさなければそれだけで助けになる。お前は巨大生物を倒すことに専念してもらえばいい。必要な装備があれば融通も利かせられるだろう。」

「わかりました。それで、これからどうすれば?」

「お前をメンバーとして正式登録する必要がある。これから私に同行してもらおう。その後は追って話す。」

 

 そう言うとカンナは公園から立ち去ろうと歩き出す。ワカモも自分の銃を回収すると、それに続こうとする。が、それに待ったが掛けられた。

 

「ちょっと待ってよ。いきなり攻撃仕掛けといて、勝手に一人で決着着けて終わらせようとしてない?」

 

 モエがワカモに文句を言う。

 今回の戦闘におけるRABBIT小隊は完全に被害者であり、サキに至っては今もまだ症状が収まっておらず蹲ったまま震え続けている。

 その為謝罪一つせずに立ち去ろうとするワカモに文句を言いたくて仕方がなかった。

 だがワカモはそれに対して怒気を含んだ声で返事をした。

 

「誰がこれで終わりだと言いました?」

「へ?」

「私はこれから怪物討伐に向かうんです。先程そちらの兎さんは、口先だけならなんとでも言える、と言いましたね?」

「…」

「であれば、実際にその怪物を倒して見せましょう。私の実力が口先だけのものではないことを、確と見せつけてあげます。そして…。」

 

 

「それが終わったら、今度こそそこの兎(空井サキ)の番です。覚悟していてくださいね。」

 

 

 ワカモはサキを睨み付けながら告げる。

 だがそんな彼女に後ろから銃口が突きつけられた。

 

「ワカモ。お前と協力するのは巨大生物を駆除するまで、だ。もし今の言葉が本気ならば、その時我々は全力で貴様を止めるぞ。わかったな。」

 

 カンナが自分の銃を突き付けながらワカモへ宣言する。

 

「かまいませんよ。やりたければおやりなさい。」

 

 ワカモは悪びれる様子もなくカンナへそう言い返すと、そのまま揃って立ち去っていった。

 皆の緊張が解かれる。

 そうなると、次の問題はサキの症状への対処だった。

 

「サキ!大丈夫ですか?」

 

 ミヤコがサキに駆け寄り、屈んで相手と目線を合わせる。

 だがサキはミヤコに反応を示さない。震えながら、まるで身を守るかのように両手で頭を抱えたまま、

 

「分かってる…分かってる…分かってる…。」

 

 と、ひたすら呟き続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 公園から立ち去ったカンナとワカモはしばらく無言のまま歩き続ける。

 すると、ワカモが気になっていたことを尋ねた。

 

「ふと思ったのですが、私はまだ指名手配されたままでしたよね?」

「ああ、お前の罪状は全く変わっていないからな。そこは何も変わっていないぞ。」

「であれば、貴女の行動は本来違法行為になるのではないですか?」

 

 絶賛指名手配中の犯人を治安組織の一局長が私的な理由で仲間に引き入れるなどというのは普通ならばありえない、というより法律で絶対にダメだろう。

 だがカンナはどこか達観した様子だった。

 

「さっきも言っただろう?こんな時だからこそ問題児を見張れるところに置いておきたい、とな。それにお前の実力は間違いなく本物だ。これを逃さない手はないさ。それに…。」

「それに?」

 

 

「世間や周囲の状況を理由に不正をするのはこれが初めてじゃないからな。」

 

 

「…今なんと言いました?」

 

 正義の執行者代表であるはずの【ヴァルキューレの狂犬】の突然のカミングアウトにワカモは困惑を隠しきれなかった。

 

 




9月に入ったら仕事が繁忙期に入って休みが無くなるので大体2ヶ月くらい休載すると思います。
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