死を告げるらしい鳥がいる 作:エリュシオン
烏帽子様が家に挨拶に来ることになった。両親は大喜び、弟は怒り心頭、姉は……最近気になる人がいると言っていたからか、妙に緊張している様子だ。自分も同じ感じになるのを想像しているのかもしれない。
姉とは4つ、弟とは3つ離れた年である。つまり大学生と中学生なのに高校の噂がその日のうちに出回ったとなれば、烏帽子様がどれだけ注目されている存在かわかるだろう。
「ご無沙汰しています。今日はお招きいただきありがとうございます、小夜啼様、奥様、
パーティーなどで何度も顔を合わせているので挨拶もスムーズに終わった。両親は大はしゃぎである一方、どんどん暗くなる弟の表情が気になる。
そして両親が退席してから、やはり昴は大暴走した。
「織姫お姉様を変な男には渡せない! 僕と決闘だ!!」
結論から言おう。弟はこてんぱんに負けた。
当然である。武士系イケメンと言った通り、烏帽子様は運動神経がとても良く武芸に秀でている。うちの弟も何でもこなせる天才肌だが、年齢差もあって相手にならなかった。
勉強はと問われても、毎回10位以内に入る優秀さなので毎回1位のヒーローや昴ほどではないが問題にならない。というか問題にされたら50位付近を彷徨っている私が困る。
「──何をおいても、お姉様を守ると誓う?」
「ああ、当然だ」
そんな小っ恥ずかしいやり取りを経て昴は烏帽子様を認めることにしたらしい。
私のときもこんな風になるのかしら……と言うお姉様が印象的だった。お姉様の気になる方は武芸にあまり秀でていないのだろうか。だとしたら心配だ。
弟の無礼を謝ると、特に気にしていないと返してくれた。ありがたい。すっごい失礼だったもんね、昴。
烏帽子様を自室にお通しし、2人きりになると私は聞いてみたかったことを聞くことにした。
「私、烏帽子様に何かしたでしょうか」
「何かというと?」
「好意を抱いていただくほどのことをした覚えがありませんの。だから、それが不思議で」
「貴方はそれでいい。ただ、俺が小夜啼の全てを好ましく思っているというだけだ」
その理由を聞きたいんだよ〜。むむっと頬を膨らますとプハッと笑われた。
「そこは秘密といこう。他は?」
「では、生徒会には入らないんですか?」
「ああ。風紀委員会に入ろうと思ってな。ということは小夜啼は生徒会に?」
「ええ、お誘いを受けました。烏帽子様の代わりにと」
中学では私は部活も何もやっていなかったのだが(習い事で忙しかったしやる気もなかった)、生徒会長に誘われては仕方ない。
「代わりと直接言われたのか?」
眉をひそめる烏帽子様に私は口を開く。
「いえ、ただこちらから『烏帽子様は』と聞くと『すでに断られた』とおっしゃるのですもの。2番手か〜となりますわ」
クスリと笑みをつけながら話せば、烏帽子様も冗談とわかったらしい。
「わかった。会長達は皆優しい人ばかりだ。安心するといい」
「はい」
漫画通りの展開であれば生徒会に入るのは玲子さんだった。というのもこの時期、私は留学していて不在なのだ。だから実はヒロインが校歌のソロの邪魔をするのも別の子。そこはぶち壊せてほっとする。
漫画では大瑠璃様にまとわりつく女子の話を聞いて帰国する、という設定だった。どれだけ大瑠璃様のことを好きだったんだろうか。
でも、今の私は烏帽子様の彼女なのだ。そして、大切にされている分、報いなければいけないだろう。
「ね、烏帽子様。何かしてほしいことなんてありませんか?」
少しの沈黙の後、彼は言った。
「では、毎朝ともに登校しても構わないだろうか」
私はもちろん了承した。