死を告げるらしい鳥がいる 作:エリュシオン
「失礼します」
入った先、生徒会室は目の肥えた私からしてもまさに豪華絢爛だった。流石、選ばれた子女しか入れない組織なだけある。
「来たか」
そう出迎えたのは
「いらっしゃ~い、織姫ちゃん」
朗らかに微笑むのは同じく3年生の副会長、腹黒チャラ男の
「「らっしゃいらっしゃい」」
同時に言うのは
「ありがとうございます」
一応礼を言い、座る。お、このソファふかふかだ。
生徒会としては新メンバーの私だが、彼らとはすでにパーティーなどで見知っているし、そもそも初等部から一緒なのだからある程度情報は把握している。故に、自己紹介は不要だった。
「しかし聞いたぞ小夜啼。まさか烏帽子と交際を始めるとはな」
「またその話題ですか。もう話すことは皆に全部話しましたよ」
ニヤニヤとチェシャ猫のように笑う会長。
「今まで浮いた噂一つ無かったからな。これから恋を知って、貴様の歌がどう変わっていくかが楽しみだ」
「ああ、『
「ちょっと待ってください。何ですか歌姫って」
愛華お姉様が
「ちなみに昴君は星の『王子様』だってよ。いやー、ロマンチックな姉弟だね」
「ロマンチック過ぎて涙が出てきますよ……」
そんな童話シリーズみたいなことになっていたのか。烏帽子様が氷の貴公子、大瑠璃様が太陽の貴公子と呼ばれているのは知っていたけれどそっちは初耳である。
「孔雀院様方にはないのですか、そんなあだ名は」
「あはは、君達ほど目立つ存在じゃないのさ」
腹黒チャラ男先輩は笑う。むー、ずるい、この恥ずかしさをともに味わってほしいのに。
と、思っていたらあだ名仲間がやって来た。
「失礼します」
太陽の貴公子・大瑠璃真澄の登場に、私達は雑談をやめ事務的な話を始める。
まず私と大瑠璃様のどちらが会計でどちらが書記を務めるか。これはあっさりと私が書記、大瑠璃様が会計ということに決まった。次が、外部生の問題だ。
「入学式のようなことが起こっては困りますよね」
「ああ。外部生と内部生の軋轢には困ったものだ」
金持ち喧嘩せずと言うように、学園の上位層は外部生に干渉しない。問題は下位層で、いじめなどに発展するケースもあるのだ。
「軋轢の解消には相互理解が肝要でしょう。外部生には内部生の注意すべき点を、内部生には外部生とはどういった存在なのかをきちんと話す機会を設けるべきではないでしょうか」
私の提案に腹黒副会長は顔をしかめる。
「それで止まるといいんだけどね〜」
「とりあえずやってみる分には僕も賛成です。中学の時生徒会役員でなければ僕も外部生の成績と奨学金の制度についてよく知らなかったでしょうし」
生徒会の面々は外部生に偏見のない人が集まるようになっているので、むしろ敵視する側の気持ちがわからないといった感じだ。風紀委員とも協力してケースバイケースで対応していくしかない、ということでひとまず私の提案も通った。
あとは体育祭についても軽く話し合い、今日の業務はこれで終了かと胸を撫で下ろしたその時。爆弾が落とされた。
「体育祭では大瑠璃のヴァイオリンに合わせて小夜啼が歌うのはどうだ?」
原作の織姫なら喜んで引き受けただろう。彼女は大瑠璃様(しかもまぁ君と呼んでいた)のヴァイオリンに惚れ込んでいたのだから。しかし今の私としては避けたかった。
というのも、原作では「なぜ私ではダメなの」とつのる織姫に、大瑠璃様は「君の歌は僕とハーモニーを奏でるのではなく、織姫の歌の前では自分の演奏は添え物にしかならない」と言い、「自分以上のバイオリン演者はたくさんいる」と言うのである。そんなコンプレックスがこの世界でもあるかはわからないが避けるのが無難と思うのだ。
しかし、
「いいですよ」
と快諾した大瑠璃様によってそんな私の目論見はパアになった。
「小夜啼さんは?」
「大瑠璃様が構わないのでしたら、はい」
「ありがとう。ただ、相性を見たいので音楽室に行きたいのですが……」
こうして、私達は音楽室に行くことになった。
我が校の音楽室は楽器も充実しており、ヴァイオリンも借りることが出来る。何曲か歌っているうちに確かに理解した。大瑠璃様のヴァイオリンだと歌いやすい、と。でも固執するほどでもないのも事実で。
漫画の織姫は、恋も交じっていたからこそ大瑠璃様のヴァイオリンにこだわったのだと思う。
生徒会役員達は私達の演奏に拍手を送ってくれていた。合格ラインには達しているのだろう。
ここでコンコンと音楽室がノックされる。入って来たのはこの漫画のヒロインだった。