死を告げるらしい鳥がいる 作:エリュシオン
「おはよう、小夜啼さん。今日は珍しく一人なんだね、ということは……?」
「ごきげんよう大瑠璃様。ええ、あの日だと思いますの」
生徒会の面々は口が固いらしく、大瑠璃様の幼少期の秘密は保たれたままだ。ヒロインちゃんも特に吹聴して回るなんてことはしなかったらしい。まあ当然か。
原作だとあの場に第一部の悪役令嬢・
しかし昨日のヒロインちゃんは可愛かったな〜。あんな可愛い子をいじめることなんて出来ないよ、うん。
「ああ、やっぱり風紀委員の荷物検査か」
私達の目前では生徒達が列を成していた。
風紀委員の抜き打ちチェックは不定期に行われる。といっても私の場合、烏帽子様が朝来れないと言うのでバレバレだったが。
お菓子やゲームの持ち込み禁止、スカートは膝丈、ボタンを開けるのは第一ボタンまで、カラーリングやピアスは禁止、日焼け止めはOKだけど化粧は駄目といったわりと当たり前なチェックなので元々心配はしていない。
「小夜啼さんの髪は元々なんだってね」
「ええ。イタリア人の祖父がいるもので、姉弟みんなこうですわ」
学校側も把握しているので私達の茶髪の明るさには何も言ってこない。
「イタリアか。僕も行ったことがあるよ。いい国だよね、料理も美味しくて」
「はい、祖父の家のシェフが焼くピッツァは最高ですのよ。あれ以上のものに会ったことがありませんわ」
祖父の家には当然のようにピザ窯があって当然のように専門の職人さんがいる。トラットリアやリストランテも真似できない味に違いない、あれは本当にほっぺが落ちるほど美味しいのだ。
「へぇ、いいな。野武彦もいずれご相伴にあずかると思うと羨ましい限りだよ」
「そうですわね、祖父も烏帽子様にはお会いしたがっていましたわ」
「『うちの孫はやらん!』とかじゃなくて?」
「うふふ、祖父は自由恋愛至上主義ですのよ。そんなことにはなりませんわ」
弟だけで十分です、そういうイベントは。
「野武彦のご両親にも挨拶したんだってね」
「ええ、とても温かく迎え入れてくださいましたの」
嫁姑問題に発展しなさそうでホッとしたよ、うん。
「そんな小夜啼さんにちょっと相談があるんだけど、いいかな?」
ええ〜? お断りします。
とは、小心者の私は言えなかった。とほほ。「野武彦も呼ぶから」と外堀も埋められ、たどり着いた放課後。
この学校にはサロンというものが存在して、会議室のような殺風景な部屋からちょっとしたパーティーが開ける部屋まで様々な部屋をレンタル出来る。そのうちの一つに私はとぼとぼ出向いた。
「朝はすまなかったな、小夜啼」
「いえ。お仕事お疲れ様です、烏帽子様」
クイクイと手招きされちょこんと横に座る。大瑠璃様はまだらしい。むむ、呼び出し人が一番遅いとは。
「真澄から何を言われるかわからんが、無理だろうと思えば素直に断っていいからな。あの男は自分基準で物事を考えるせいで無茶振りしてくることが多々ある」
スペック高くて何でも出来るからね、大瑠璃様。そして天然鬼畜だからね。
烏帽子様が今までされた無茶振りの話を聞いていると、ガチャリとドアが開いた。どうやらようやくお出ましらしい。
「ごめんね、撒くのに時間かかって遅くなった」
学園の人気2トップであるうちの片方が陥落した以上、もう一方に女子が集まることは必然。どうやらその当たり前が起こったらしい。しかし……
「秘密基地を一日で作れというのはいささか横暴が過ぎるのではありませんか」
「そんな昔の話を聞いていたんだね」
そうさらりと流し、大瑠璃様は本題に入った。
「
「ええ、勿論ですわ」
この学年で知らぬ者はいない存在にして、絶対正義のヒロインちゃんである。知らないはずがない。音楽室で直接謝罪も受け取ったしね。
「あー、えーと、その────」
「真澄はそいつが気になるらしい」
言い淀んでいる大瑠璃様に代わり烏帽子様がさらっと告げる。
あらあらまあまあ。ヒーローとヒロインはやはり結ばれる運命なのね! ぜひぜひ応援させてもらいますとも。
「そのニヤニヤ笑い、やめてくれないかな」
「コホン、失礼。しかし何故大瑠璃様はそれを私に……?」
「誰か女子に相談にのってほしくてね。小夜啼さんは野武彦が選んだ子だし、信用できるから」
「ありがとうございます」
でもいきなり相談されてもなあ、付き合いたてホヤホヤのカップルなんですけど我ら。
「やはりここは当たって砕けろでは?」
「自分に返ってくるとは思わなかったよ、その言葉……」