あつまれ!ふしぎ研究部 告白の答えと変わる?関係   作:パタ百ハイ

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返事のふしぎ

3月14日。南湘高校。

 

そこに在籍する一年生、五領大祐は、昼休み、彼が入っている部活動、ふしぎ研究部の部室で、所属を同じくする四人の女子部員の前で深々と頭を下げていた。

女子部員達は大なり小なり困惑を隠せなかった。事の始まりは朝、大祐が返事は早々にしたいと昼休みに五人が属しているふしぎ研究部の部室に集まってほしいと連絡した事からだ。

先月のバレンタイン、大祐は四人から告白された。そしてホワイトデーの本日に返事をする事になった。この連絡を受け、四人は期待と覚悟を秘めて来た。

 

「ね……ねえ大祐君。私達、大祐君の気持ちを聞きに来たんだけど……」

「すみません。予想もしてなかったので呑み込めなくて……もう一度お願い出来ますか?」

 

3年生の大原ことねと同じ一年の平塚和香が苦笑いで優しく尋ねる。

 

「四人共、良ければ俺と付き合っていただけないでしょうか?」

 

それに大祐は一度頭を上げて再度頭を下げながら言った。これと一言一句違いの無い事を言ったのだ。誰か一人を選ぶだろうと思っていた四人が呆然とするのは無理もない。

二年の神田千晶は、大祐の肩を人差し指でトントンと叩く。大祐が頭を上げると胸ぐらを掴みあげた。

 

「大祐。アタシ等は冗談を聞きに来た訳じゃないんだよ……」

「待って下さい! 冗談なんかじゃなく真剣で……」

「そんな返事を何で真剣で出せるんだ?」

「千晶さん落ち着いて。話を聞いてあげようよ」

 

怒り心頭の千晶を宥めるのは、一年の二宮鈴だ。鈴の言葉で冷静になった千晶は手を離し、大祐は「ありがとう、鈴」とお礼を言った。

 

「みんなから告白を受けた時、とても嬉しかったんです。俺、ふしぎ研究部の事好きで、みんなとずっと一緒にいれたらいいなと思っていて……でも、交際するとなると、これまで解ってなかった部分も見ないといけないし、それを知らないで関係を進めても……」

「何処まで先を見据えた関係を望んでるんだよ」

「望んだ事無いの?」

「うるさい!」

「こんな筈じゃなかったと後悔したくないし……なら、みんなと付き合って、みんなをよく知りたいと……」

「言いたい事は解るけど順序が滅茶苦茶じゃない?」

「俺もそれは思いましたし、これ言って幻滅されて離れていってしまうだろうなとも思ったけど……」

「複数人と交際は出来ても結婚は出来ませんよ?」

「うん、分かってる……」

 

かなり気まずい空気が流れる。提案が斜め上過ぎてどうすればいいのか決断がつけ辛いのだ。

ことね達が戸惑う中、鈴が大祐の前へと立つ。

 

「いいよそれで。付き合おう大祐」

 

「いいのか?」

「言い出しっぺが何言ってるの? 元々私はあの時自分の想いを伝えただけだし。私をここまで想ってくれている事がとても嬉しいから、少し普通じゃなくともこれ以上の贅沢は望まないよ」

「鈴……」

「それに、みんなが降りれば何の問題もなく交際出来るからね」

 

ちらりと三人を見つつこれを言う鈴。和香が大祐の背中に回り、抱き着いた。

 

「ちょ……和香ちゃん……」

「私もそれでいいです。不束者ですがどうぞよろしくお願いします」

 

膨れっ面になった鈴は同じ様に、和香を押し退けるように大祐に抱き着く。対して和香は踏ん張るべく足に力を込める。

 

「別に割り込まなくていいですよね」

「ベタベタくっついていい訳じゃない」

 

二人が顔をくっつけて押し合いをする中で、ことねが大祐の前に出た。

 

「ことね先輩……」

「大祐君……これからよろしくね」

 

ペコリと頭を下げると、首を上下させる。

 

「どうしたんですか?」

「私も抱き着くべきかなって。それで何処に抱き着けばって」

「別に真正面からで結構ですよ。何なら腕に力込めてくれると嬉しいですが」

「そこはこんな時でもぶれないのね……」

 

意図をすぐ理解し呆れることね。鈴と和香は押し合いを止めてそれぞれが思いっきり大祐の足を踏んだ。

 

「それで? 千晶さんはどうするの?」

「うぅ……あーもー! 分かったよそれでいいよ! みんなで付き合う! それがお望みなんだろ! 我儘くらい聞いてやるよ!」

 

頭をかかじりながらやけくそ気味に言う千晶。大祐は目頭に涙を浮かべた。

 

「ありがとうございます……正直駄目だとばかり」

「待て。話はまだ終わってない」

 

鈴から渡されたハンカチで涙を拭く大祐を止め、千晶は携帯を操作した。

 

「放課後ここで改めて話の続きをやる」

「え? 続きならまだ時間あるし……」

「今二人放課後来るよう連絡をした。これと関係あるから。じゃあ今はこれでお開き。飯食おうぜ」

「えっと……誰を呼んだんですか? あまり人に知られたくは……」

「何となく分かったよ。さ、ご飯食べよ大祐。昼休み終わっちゃうよ」

 

何処か釈然としない様子で、妹が作ってくれた弁当を広げる大祐だった。

 

 

放課後。扉を開いてすぐ目に飛び込んだ光景に、大祐は思わず足を止める。女子部員以外に、二人の来訪者がいたからだ。

 

「こんにちは大祐君」

「大ちゃんヤッホー」

 

二年の風紀委員、高浜麗子と自分のクラスメイトのギャル、田中良子が大祐に挨拶する。

 

「高浜さんはともかく、田中さんはどうして?」

「昼休み千晶パイセンから連絡受けたんだよね。ふしぎ研究部の部室に来てって」

「私もおんなじよ。一体何よ知らせたい事って。また何か備品壊したの?」

「そんな事でわざわざ時間空けて呼ぶかよ。実はな、大祐とアタシ達は付き合う事になった」

「あーそう。それは良かったわねおめでとう……て、えぇえええぇー!」

 

 報告に驚きで叫ぶ麗子。良子も目を丸くしている。

 

「大祐君が貴女と付き合……いや、『アタシ達』って言ったわよね? 大祐君二股してるの? 他の相手は誰? まさか……」

「私達四人とよ」

「まさかの四股? 大ちゃんやるねー」

「ちょっと待ってよ! 何でそんな事になったの? どうしてみんなそれを受け入れているの?」

 

 

「経緯は分かったけど……」

「軽蔑しました?」

「開いた口が塞がらないわ」

 

麗子からの回答に肩を落とす大祐。慰めるようにことねと和香が肩に手を乗せた。

 

「でもこれ黙っとかないとヤバいよね。学校広まったら大ちゃん最悪殺されちゃうよ? ……あれ?」

 

そこまで言って良子はある事に気付いた。

 

「それ何で私達に言ったの? 私達口が堅いと思われたから?」

「いい質問だ。アタシがこれを言ったのは、二人をこっちに引き込もうと思ってな」

「何言ってるのよ千晶」

「だって麗子も田中ちゃんも大祐の事好きだろ? 恋愛の意味で」

 

千晶の発言に一瞬フリーズした後、一気に顔を赤くさせた。

 

「ちょっちょっ……いきなり何言い出すのよ!」

「いや分かるから。一年の時からの付き合いだしな」

「私は大ちゃんとはただのクラスメイトで……」

「顔真っ赤だよ田中さん」

「鈴っち……そりゃ色々お世話になってるし、そんな関係になるの満更でも無い、いや、嬉しいけど……もう大ちゃん鈴っち達と付き合ってるし……」

「一人ならまだしも四人だよ。一人や二人増えたって変わらないよ」

「大ちゃんの気持ちもあるでしょ」

「だって。どうなの大祐」

「え? ……まあ、高浜さんと田中さんと付き合えるのは嬉しいけど……」

「じゃあ決定だな」

「決定って、簡単に言わないでよ! 大体多重交際なんて不健全よ! 千晶も本当に納得してるの?」

「もう開き直ってる。お前はどうするんだ?」

「風紀委員として以前に人として……」

「そんな事は聞いてない。諦めるか受け入れるか、二つに一つだ。それに男女交際はこの学校は禁止されてないし、多重交際自体を咎める規則は日本にない。つまり風紀委員が問題視する理由もうるさく言う権限も無いんだよ」

 

そこまで言われて麗子は一考した。そして大祐と向かい合い

 

「大祐君。私を彼女にして下さい」

「……分かりました。よろしくお願いします」

「大ちゃん、私も宜しくね~」

「あ……あの……」

 

入口から声が聞こえて全員そっちに顔を向けると、顧問の春日野旭が顔を青ざめていた。

全員冷や汗をかきつつ、大祐が尋ねる。

 

「旭先生、何処から聞いてたんですか?」

「千晶さんが大祐君がみんなと付き合う事になったって言い出した所から……えっと……また演劇部に頼まれたの? そういうのを題材にした劇?」

「いや、違います。実は……」

 

「話は分かったけど……何でそうなるの?」

「でしょうね」

「それで……旭先生はどうするんですか?」

「こっちが聞きたいわよ! こんなの聞いたのも出くわしたのも初めてだし!」

「じゃ先生も仲間になって大ちゃんと付き合わない?」

 

良子が笑いながら言い出した。

 

「え?」

「ちょっと良子! 相手は先生よ! 立場的にまずいわよ!」

「冗談冗談。ちょっとビックリし……」

「え? 嫌じゃないけど、私は先生で大祐君は生徒だし……バレちゃったら……大祐君もまだ結婚できる歳じゃないし……」

「もしかしてノリノリ?」

「これでいいね。これからはここにいる全員とは恋人として宜しくね」

「え? 旭先生も?」

「先生が大祐の事気になってるのは知ってたし、もう仲間外れは可哀想だし」

「じゃあさ、デートは来週土日にする?」

「場所は何処がいいでしょうかね? 近場だと学校の関係者に見られてしまう可能性がありますし……」

「旭先生車持ってるし遠出も楽勝だね」

「八人も乗せれません!」

 

(もしかして俺……一番ヤバい選択肢を選んでしまったかも知れない……)

 

 

口に出来ない後悔を呑み込むしかない大祐だった。





「でもさ、ねねぽん達誰を選んでもいいって腹積もりだったみたいだけど」
「うん。それとその呼び方止めて」
「もし大ちゃんがふしぎ研究部員以外の誰かを選んでいたらどうするつもりだったの?」
「それ? もしそうなったら……大祐君の想いをリセットしてやり直そうと……」
「怖いから!」
「冗談よ冗談」
(冗談に聞こえなかった……)
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