あつまれ!ふしぎ研究部 告白の答えと変わる?関係 作:パタ百ハイ
「はぁ~~~~~」
五領家。自室にて大祐は深い溜息を吐いた。『全員と付き合う』という思えば馬鹿な選択肢を提示した結果、七人の彼女が出来た。
バレたら面倒な事になるのは間違いないので取り敢えず表向きはこれまで通りの関係を演じる事になった。勿論家族含めて誰にも内緒だ。
「おーいお兄ちゃーん」
無遠慮に扉を開けて、自分に声を掛けてくるのは、大祐の実妹、結だ。大祐は顔をあげて彼女の方へと顔を向ける。
「どうしたんだよ……うわっ!」
結の足元から見知った小型犬が姿を現し、大祐の足に頬ずりしてきた。少しは和らいだとはいえ、犬が苦手な大祐にとって心臓が悪かった。慌てた様子で犬の飼い主の麗子が部屋に入って犬、パピーを抱き抱えた。
「駄目じゃない勝手に家に入っちゃ。ごめんなさい大祐君。結ちゃんが玄関を開けた途端パピーが走り出して……」
「高浜さん……」
「話は聞いてましたけど、この子本当に大祐さんに懐いているんですね」
続いて和香と鈴が入ってきた。
「鈴に和香ちゃんまで?」
何故三人が一同にと大祐は思った。自分は呼んでないし、聞いてない。となると三人と親しい結だが、一人だけ、せいぜい鈴と和香ならともかく、三人をまとめて呼ぶとはどういう事だろう。
そう思ったのを察したのか、鈴が答えた。
「結ちゃんに頼まれたんだよ。大祐の犬嫌いが一向に克服しないから力を貸してくれって」
「力を貸してって……二人とも犬を飼ってたっけ?」
「飼ってないよ」
「私も……大丈夫です! この惚れ薬を応用した犬を好きになる薬を使えばすぐに」
「止めなさい!」
取り出した試験管を麗子が奪い取った。
「こんな薬使っても根本的な解決にならないでしょ!」
「なら気質が穏やかになる薬はどうでしょう? これをパピーちゃんに飲ませるんです」
「……これ、犬に飲ませても大丈夫?」
「犬に食べさせて大丈夫な物で調合しているので大丈夫です」
少し不安に思いながらも、試験管の薬を掌に数滴乗せてパピーに差し出す。パピーはペロペロ舐めると、あくびをして膝を曲げた。
「では大祐さん。パピーちゃんを膝に乗せてあげて下さい。暫くは何をされても大人しいので」
「分かった……」
座り込んでパピーを抱える大祐だが、動きはぎこちなかった。苦手なものに触るのだから無理はない。結は「今日こそ頑張ってね」と言って飲み物を淹れに台所に向かった。
鈴が大祐からパピーを取り、そのまま大祐の膝に座るとパピーを自分の膝に乗せた。
「鈴?」
「何やってるのよ鈴さん!」
「直接が難しいなら人一人間に入れば抵抗感薄れると思って。さ、大祐触ってみて」
必然的に鈴の身体に手を回しパピーに触る大祐。付き合っている女の子が自分の膝に乗っている事実が犬への抵抗感を上回ったのか、結の頭を撫でるように自然にパピーを撫でられた。
感触が気持ち良かったのか、パピーは上を向いて大祐の顔を見ると、鈴の身体をよじ登って大祐に近づこうとする。しかし肩に足をのせようとした所でバランスを崩してしまい、落下してしまった。それに大祐、鈴、麗子、和香が助けようと同時に飛び出す。
「待たせてごめんね。持ってきたよー」
紅茶とクッキーを持ってきた結が見たのは、パピーを両手でキャッチしたうつ伏せの鈴の上に乗っかり、鈴の横で仰向けで倒れている麗子と和香の胸を鷲掴みにしている大祐の姿だった。
「お兄ちゃん、目的忘れちゃったの?」
「違う!」
「不健全よ大祐君!」
「手をどけて下さい……」
「重い……」
「随分慣れたね」
「さっきみたいなのがあったらね」
ドッグフードを食べているパピーの頭を撫でる大祐。そこには先程のぎこちなさは全く無かった。
餌を食べ終わったパピーは大祐の指を舐める。瞬間、大祐は顔を青くして飛び上がった。
「これじゃまだまだウチで犬を飼えないかぁ……」
「気長にいこう結ちゃん」
「そうだね鈴ちゃん」
「そういえばパピーいきなり活発になったけど、薬切れちゃったのかな?」
「量が少なかったのか、人間が服用する事を前提で作ったから犬だと効き目が薄かったのか……改良が必要ですかね」
「その度にパピーに薬を飲ませる気?」
考察する和香にツッコミを入れる麗子。彼女はすぐ結へ顔を向ける。
「結ちゃん。パピーと一緒に別室に行って遊んできてほしいの。私ちょっと大祐君に話があるから」
「は……はい。パピーちゃん一緒に遊ぼうねー」
結がパピーを連れて部屋から出ていくと、麗子は大祐に目をつり上げた表情を向けた。
「どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたもないわよ。大祐君、さっき私の事名字で呼んだわよね?」
「あ」
彼女が部屋に入った際に確かに呼んだ。
あの後麗子と良子とも名前呼びする事になったのだった。慣れてないのでこれまでと同じ名字呼びしてしまったが。
「すみません。これまでの呼び方がまだ抜けなくて……」
「気を付けてよね」
「私達はすぐ互いに呼び捨てだったよね」
「それは鈴がそう呼べって言ったからだろ」
この関係も慣れるまで苦労するだろうなと口に出来ない事を思った大祐だった。
いつか慣れるさ。犬にも恋人関係にも。次回、遊園地。