鬼道と不動の競り合いにより、ボールが高々と上がったと同時に、前半終了の笛が吹かれる。
「…今んとこは真・帝国ペースか」
お互いのベンチに戻ったそれぞれの面々を見て、俺はそうつぶやく。
そんな中、俺のスマホに着信を告げるアラーム音が入った。発信元は非通知設定。
「…はい、トライです」
「…影山だ。皇帝陛下から君の番号を教えていただいた」
…影山か。まさか俺に電話してくるとはねえ。
「君から見てどうだ、私の作品たちは?」
「…正直、勝つためには何でもするってことってとこには尊敬をするレベルですよ。
皇帝ペンギン1号やビーストファング、あんな技エイリア学園の面々には使わせられません。
エイリア石のおかげで洗脳、ブーストされているとはいえ、よく使うなってのが俺の感想ですね」
「…勝つためにはなんでもする、それを真・帝国の選手たちは実践しているだけだ。
後半もその場所から見ていてくれたまえ」
そう言って通話は切れてしまった。
さて…だ。
雷門としては1点リードされてる状況、佐久間にボールを渡したら1号の危険性、源田にシュートを打てばビーストファングの危険性。
かといってこの試合、勝利しなければ佐久間・源田の2人は今のやり方が正しいと完全に影山に支配されてしまう。
…正直言ってこっから勝てるビジョンが見いだせない。
「さて、この八方ふさがりな状況からどうやって点を取る、雷門イレブン?」
俺は雷門ベンチを見てそうつぶやいた。
◇ ◇ ◇
後半、雷門ボールでキックオフ。
吹雪と染岡の2トップが真・帝国陣内へ攻め込んでいく。
そして、染岡がボールを持ち2人のDFと対峙するが、不動が言い放つ。
「打たせろ!
シュートは源田が止める」
DFは不動のその言葉に従い、染岡の前にシュートコースを開ける。
若干戸惑いがあったが、染岡が何かを決心したように見えた。
そして、染岡は必殺技の態勢に入る。
「ワイバーンクラッシュ!」
染岡が打ったボールに、雷門の面子は驚いた様子である。
ボールはそのまま源田の正面へと飛んで行った。
…だが、途中で源田を避けるように、コースが変わった。
そこに走りこんでいたのはもう1人のストライカー、吹雪だった。
「吹き荒れろ、エターナルブリザード!」
シュートチェイン、シュートされたボールをシュートし、威力を増幅させる方法。
源田は、そのボールに反応することができずにボールは真・帝国のゴールに突き刺さった。
…これで、同点。
「…シュートを打たれたらあの必殺技を使われるなら、反応される前に叩き込む…か。
吹雪もさすがだし、染岡もよく見てたな」
流れが変わったこの試合、どうなっていくのか。
この後に起こることに対して若干の不安を残したこの試合は、真・帝国のボールで再開された。
◇ ◇ ◇
そして染岡にボールが渡り、再びワイバーンブリザードの態勢に入ろうとしたところ。
「ぐあっ!!!」
不動が染岡の足めがけてのスライディングをしてイエローカードとなった。
吹雪がそれに対して激高するが、染岡はそれをなだめる。
いくら相手がどんな行動をとろうが、殴る蹴るの暴力行為は一発退場だ。
不動もそれをわかってあの態度なのだろう。
あの痛がり方から見て、染岡はこれ以上は試合続行不可能、この状況で吹雪が退場となれば雷門としては攻撃手段が一機にかぎられる。
だが、染岡は円堂に懇願し、試合続行となる。
「…確か、ここで離脱なんだよな染岡って」
俺はそうつぶやいて、父さんへ電話をかける。
「お疲れ様です、父さん。トライです」
『トライ、どうしたんですか?
まだ試合中のはずですが…』
「ええ、試合中ですよ。
現在1対1の同点、まだどっちが勝つかわからないです」
俺がそう話した後、父さんは「それでどうしたんです?」と聞いてくる。
『あなたがそんなことで電話をかけてくることはありません。
何か緊急で伝えたいことがあったのでしょうか?」
俺は「その通りです」と続ける。
「今回の真・帝国の一件、俺に任せていただけないでしょうか?」
『…と、いうと?』
父さんはそう聞いてくるが俺は「言葉通りの意味です」と返す。
「この試合、エイリア石を提供しているということ以外は俺たちに関係のない試合です。
真・帝国の面々も父さんが期待するほどの選手はいないはず。
…父さんが出てくる必要はありません、俺が父さんの代理としてやらせていただきたいんです」
父さんは俺の言葉を聞いて、少し黙った後に俺に告げる。
『…分かりました。
真・帝国学園、あなたに任せましょう』
「ありがとうございます」
そう言って通話を切る。
…父さんの許可はもらった、あとは俺が決めるってことだ。
俺がそう思いながら再びフィールドに視線を戻すと、佐久間が2発目の皇帝ペンギン1号を発動する体制に入っていた。