この放送があなたの元に届いていると信じて、今日も世界の中心から放送しています。   作:パンダ2世

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第85回放送〜第92回放送

 ──2030年7月29日17時00分

 

『どうもみなさんこんにちは。『終末ラジオ』の時間です。今日もAちゃんがお送りします。この放送があなたの元に届いていると信じて、今日も世界の中心から放送しています』

 

『昨日は散々な一日でした。放送のあとエアコンの修理をしてたんですけど、足を滑らせちゃって脚立から落っこちたんですよ。幸い大怪我とはいかなかったんですけど、軽く足を捻っちゃいました。まだちょっと痛いです』

 

『体感だと3日くらいで良くなりそうな気がするのでしばらくは大人しくすることにします。一昨日に食料調達行っといて本当よかったです。実は結構ストックピンチだったんですよ』

 

『完璧な私でも物事を後回しにするサボり癖が少しだけあるので、一昨日それを発揮してたら割と詰んでましたね。危ない危ない。もしかして私、未来予知ができるのかもしれないです』

 

『私のいる拠点、まぁ今の世界の中心から近くにスーパーがあるんですけど、いつもそこに調達に行ってます。近いっていっても、バリケードを越えないといけないし、感染者がうじゃうじゃパラダイスなので地味に危険なんですよね』

 

『だから流石に手負の状態で行くのは気が引けます。だから一昨日の私、マジでナイス! タイムマシンがあったら、戻って感謝を伝えに行きたいくらいです。……いやタイムマシンがあったら感染拡大前に戻るわ!』

 

『どうです? セルフツッコミにもだいぶ慣れてきたでしょう? 日々成長が私のポリシーなんですよ。嘘です』

 

『さて、今日は何の話をしましょうか。これだけ続けてると話すことも全然思いつかなくなってきましたね。いくら私がしゃべくりの天才だからといって、その場その場で思いついたことを喋るのにも限界を感じつつあります』

 

『あ、ちょうど昨日食べたポテチの袋が目に入ったのでポテチの話をしましょうか。ポテチって重要なエネルギー源なんですよね。全然腐らないし。無能な生鮮食品たちも見習ってほしいですね』

 

『さっきスーパーの話をしたと思うんですけど、あそこの生鮮食品コーナーは今やばいですよ。臭いもそうだし、なにより見た目がグロすぎます。近寄らないようにはしてるんですけど、別コーナーにいてもなんかこう、ずっと気配を感じるんですよ。あー嫌だ嫌だ』

 

『もちろんスーパー内にも感染者はいるんですけど、あいつらと同じくらいあそこには近寄りたくないですね。幸いなのは向こうから近寄ってこないことです。感染者も見習えよ』

 

『まーでも、感染者は足が遅いのが救いですね。元運動部の私の前では止まっているようにしか見えません。……ちょっとだけ盛りました』

 

『そろそろ人が恋しいですね。誰か私の元に来てほしいです。…………でも住所を公開したら、私のファンが大量に押し寄せちゃうからなー。それは違うなー』

 

『リスナーよ、自力で辿り着くのです。私は世界の中心でずっと待ってます。電気も生きてるし、わりと快適ですよ。あ、それにそれに────』

 

『──────────────』

 

『────────ー』

 

『そろそろいい時間なので今日はこの辺で終わりにします。それではみなさんさようなら。ではまた会いましょう』

 

 ──終末ラジオ 第85回放送 聴取人数1人

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──2030年7月30日17時00分

 

『どうもみなさんこんにちは。『終末ラジオ』の時間です。そして私はAちゃんです。この放送があなたの元に届いていると信じて、今日も世界の中心から放送しています』

 

『今日は一日何もしませんでした。一昨日足を怪我したので療養期間です。この期間に無理に動いたら悪化して、治るまで余計な時間がかかります。安静第一です。つまり合法的にぐだぐだする権利を手にしたわけです。まぁ別に誰にも取締られないですけど。自己責任自己責任。でも実際、こんな時は無理しないのが一番なんですよ。私知ってるんですから』

 

『学生時代、足を捻った時に、ちょっと痛いけど我慢すればなんとかなるからって、調子乗って部活の練習を続けた時があったんですよ。当時は私の中で、部活青春ファイアー時代だったので練習したかったんです。まぁ結局はそのせいで悪化して、大したことない怪我が全治一ヶ月の怪我にアップグレードしました』

 

『だから私は今日は全然動いてません! ニートじゃないですよ。……いや、職はないからニートか。ニートでした』

 

『あ、でもちょっと待ってください。私今どえらいことに気づいちゃいました。そもそも私だけじゃなくて、この世界で仕事を続けてる人はいないと思うんですよ。つまりは、全人類がニートなわけです。全人類ニート時代……この世の終わりかな? 元々終わってました。最悪』

 

『はい、この話おしまい! 別の話しましょ。うーん、そうですね……あっ、そうだ、じゃあ今日は──』

 

『──────────────』

 

『じゃあ今日はここまで! それではみなさんさようなら。では、また会いましょう』

 

 ──終末ラジオ 第86回放送 聴取人数1人

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──2030年7月31日17時00分

 

『どうもみなさんこんにちは。『終末ラジオ』の時間です。この放送は謎多きAちゃんがお送りいたします。この放送があなたの元に届いていると信じて、今日も世界の中心から放送しています』

 

『さて、始まりました。終末ラジオ! 今日はテンション高めでいきますよ。ここ数日大人しくしているせいで元気が有り余ってるんです。というのも、捻挫についてなんですけど、3日くらいで治ると思ってたら実は全然まだ痛いです。だから今日も自堕落に過ごしていました。だいぶマシにはなったんですけど、走るのはちょっと躊躇っちゃいますね。歩くのもちょっと引きずり気味です』

 

『まぁでもたぶんあと3日で治るはずです。勘ですけど。今日までしぶとく生き延びてきた私の勘は馬鹿にできませんよ。的中率は50パーセントに迫ります』

 

『怪我してるとは言っても、流石にずっと何もしないのはあれなので、明日からバリケードの見回りを再開します。定期的に補強しないと心配なんですよね。すでに3日放置してるのがちょっと怖いですけど』

 

『階段が何ヶ所かあるので上り下りがだるそうですけど頑張ります。ですので皆さんの心配は無用です。私ってばほら、運動神経抜群の天才ですし。大丈夫ですよ、きっと』

 

『あ、今のちょっとフラグっぽくなかった? なしなし! やっぱり今のなしです!』

 

『ふー、危なかった……取り消ししたのでセーフです。私の勘がセーフだといってるのでセーフです』

 

『じゃあ気を取り直して、今日はそうですね……────』

 

『────────────』

 

『──────────────』

 

『それではみなさんさようなら。ではまた会いましょう』

 

 ──終末ラジオ 第87回放送 聴取人数1人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──2030年8月1日17時28分

 

『どうもみなさんこんにちは。『終末ラジオ』の時間です。遅れてすみません! Aちゃんです! この放送があなたの元に届いていると信じて、今日も世界の中心から放送しています』

 

『この放送を楽しみにしてる老若男女1億人の日本人のみなさん、お待たせして大変申し訳ありません。いつからだったか、終末ラジオは17時から放送するのが定着してたので、心配をかけてしまいました』

 

『一応言っておきますと、終末ラジオは時間帯ランダムでやってます。ここ最近はずっと17時でしたけど、決めているわけではないです。ただ私も17時からに慣れてしまったので今後も17時でいくと思います。別の時間帯に突発的に始めることはありえるので覚えといてください』

 

『なんでこんな遅れてしまったかというと、久しぶりのバリケード補強に手間取ったからです。非常事態とかそんなんじゃないので安心してください。さて、そんな話は置いておきましょう。説明責任は十分に果たしました。偉いぞ私』

 

『今日は話したいことがあったんですよ。いや、本当は前から漠然と思ってたんですけど、放送を始めると忘れちゃうんですよね。その場で思ったことしか喋らないので』

 

『今日の話題はずばり、視力についてです! みなさんは視力はいいですか。私は裸眼で1.0以上あります。すごくないですか。まぁこのご時世にいるのは、裸眼でも激見え君ちゃんか、眼鏡ちゃん君しかいないんでしょうけど』

 

『元々コンタクトしてた人って今どうしてるんでしょうか。やっぱり眼鏡? うーんわかんない。マジで大変そうです。で、私が思ったのは感染者の中にはコンタクトしてた人もいるわけじゃないですか。あれ目はどうなってるんですかね。絶対痛いでしょ。まぁ、痛みはないかもしれないけど、とても見れたもんじゃないですよね。コンタクトしたことないからあんまりわかんないですけど』

 

『でも感染者って全部一定の距離に近づいて視界に入ったら興奮モード入るじゃないですか。あれ視力どうなってるんでしょうね。たぶんわかったらノーベル賞取れますよ』

 

『そもそも視力って────』

 

『────────────────』

 

『それではみなさんさようなら。では、また会いましょう』

 

 ──終末ラジオ 第88回放送 聴取人数1人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──2030年8月2日17時00分

 

『どうもみなさんこんにちは。『終末ラジオ』の時間です。あなたの君の、そしてみんなのAちゃんです。この放送があなたの元に届いていると信じて、今日も世界の中心から放送しています』

 

『今日気づいたんですけど、いつの間にかもう8月らしいですよ。これを聞いている学生たちは夏休みの宿題をちゃんと早めに終わらせましょうね。って、もう学校ないやないかーい、なんつって。忘れてください』

 

『でも、ちょっと羨ましいぞ少年少女たち。私が学生の頃はひぃひぃ言いながら課題と向き合ってたものです。それが無しなんて天国みたいなものですよ。現世は地獄みたいなものですが。……あーやっぱり今のもなしで』

 

『このラジオのコンセプトは明るい話題を提供することなので、しょーもない世の中の話はなしでいきます。スーパーポジティブザウルスの私ですが、どうも最近、陽の力が薄れている気がするので喝を入れます。ちょっとたるんでいるぞ私! だがそんな私も美しい! 喝っ!』

 

『やっぱりコミュニケーションって大事ですよ。1人だとどんどん悪い方に考えちゃうものなので。みなさん早く世界の中心に来てくださいよ。そして私とお話しましょう。そうですね……10分の会話で500円でいいですよ。え、高い? またまたー、それはAちゃんを安くみすぎですって。私を安くみてええんか? Aちゃんだけに。……はい、黙ります』

 

『まぁ住所は言いませんけどね。大人気な私の住所なんて公開したら、大変なことになっちゃいます』

 

『いや待てよ……自力で特定して来られる方がヤバいんじゃないか……? まぁいいや。面倒くさいので考えるのを放棄しました』

 

『じゃあ今日は何の話をしようかな。あっ、そうだ。ビラ配りのバイト全部自分で持って帰れば最強説の話ってしたことなかったですよね。これは私と妹で提唱したノーベル最強賞レベルの────』

 

『──────────────』

 

『それではみなさんさようなら。では、また会いましょう……はぁ……

 

 ──終末ラジオ 第89回放送 聴取人数1人

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──2030年8月3日17時06分

 

『どうもみなさんこんにちは。『終末ラジオ』の時間です。この放送があなたの元に届いていると信じて、今日も世界の中心から放送しています』

 

『みなさん聞いてください! このラジオも今日で90回目ですよ! あとちょっとで100回を迎えるわけです。3桁ってすごくないですか。100回ですよ100回。いやまだ90回ですけど』

 

『天才な私の学生時代のテストの成績がたしか平均で80点くらいだったので、90回を迎えた私はかつての私を超えています。高偏差値です。はい、自分でも何言ってるかわかりません』

 

『あ、ちなみに100回を超えたところでこのラジオは終わりませんので、そんなに泣かなくても大丈夫ですよ。心配で咽び泣いていたみなさんへの配慮もしちゃいます。安心してください、一生続けるつもりです。放送がなかった日は…………まぁそんな日は来ないので次の話題に行きましょうか!』

 

『高偏差値で思い出したんですけど、私って頭良いじゃないですか。お勉強的な意味じゃなくて頭の回転みたいな意味で。友達に言うといつも否定されてたんですけど、たぶん天才です』

 

『それで昔、簡易版のIQテストみたいのがあって挑戦してみたんですよ。結果どうだったと思いますか。……なんと、私IQ105でした! ……はい。全然普通です。ありえません』

 

『簡易版なので正確じゃないってのはわかるんですけど、どうも納得いかないんですよね。未だに。だってこんなに天才ですし美少女ですし』

 

『IQテストくらいでは私の底を測れなかったようです。とまぁ、冗談はさておき、そうですね────』

 

『──────────────ー』

 

『それではみなさんさようなら。では、また会いましょう』

 

 ──終末ラジオ 第90回放送 聴取人数1人

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──2030年8月4日17時00分

 

ハァハァ……セーフ……あー、あー、よし……どうもみなさんこんにちは。『終末ラジオ』の時間です。この放送があなたの元に届いていると信じて、今日も世界の中心から放送しています』

 

『みなさん今って何を使って爪を切ってますか? 感染が広がったとき家にいなかった人って、つまりは爪切りがないってことじゃないですか。地味に大変ですよね。私もそっち側だったので大変でしたよ。でも流石に一ヶ月もすれば手入れしたくなるじゃないですか。その時手元に爪切りがない絶望はえぐかったです』

 

『最初はなんとか刃物でどうこうしようとしたんですけど、うまくいかなくて結局は歯ですよね。己が一番便利ってわけです。初めは結構抵抗あったんですけど、もう何も思いませんね。ガブガブですよガブガブ』

 

『感染拡大前って爪切りのありがたみとか考えたことなかったです。やっぱ人間窮地に陥らないと気づかないことってたくさんある気がします。爪切りはそのことを私に気づかせてくれました。ありがとう爪切り。今日、世界中で私ほど爪切りのありがたみを考えている人はいないでしょう』

 

『あとは綿棒とか耳かきもそうですよね。みなさんはどっち派でしたか。私は耳かきの反対についてるふわふわが好きでした。伝わる人いるかな──』

 

『────────────────ー』

 

『それではみなさんさようなら。では、また会いましょう』

 

 ──終末ラジオ 第91回放送 聴取人数1人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──2030年8月5日17時19分

 

『どうもみなさんこんにちは。『終末ラジオ』の時間です。この放送があなたの元に届いていると信じて、今日も世界の中心から放送しています』

 

『今日はすごい雨でしたね。雷がずっと鳴ってて一日中ビビってました。ワンチャン台風だったのかもしれませんね。そろそろ台風シーズンですし。去年は全然大雨とかなかったから大丈夫だと思ってたのになー。電気が心配なので今日は早めに切り上げます。え、じゃあ放送しなければいいんじゃないかって? ノンノンノン。私はラジオパーソナリティの鑑。どんな時でも放送します』

 

『にしても昼間の雨が嘘みたいに晴れ渡ってますね。さっきまで雨音と雷がすごかったから、急に静かになったらそれはそれでびっくりします。ま、晴れに越したことはないのでオッケーです』

 

『あ、そういえば最近話してなかったと思うんですけど、捻挫した足が完治しました! やっぱり私の勘は当たってたみたいですね。ご心配おかけしました。無敵のAちゃんの再臨です』

 

『さてみなさん、今日の放送が第何回かわかりますか。92回ですよ92回! 100回までもう少しです。そして明日は第1回放送からちょうど3ヶ月です! 私は記念日を重んじる意識高い系美少女なので、明日の放送はスペシャル回にします! 詳しくは明日のお楽しみってことで。あ、あともちろん100回記念もスペシャル回にします! これでみなさんの楽しみが増えましたね。聞こえる、聞こえるぞ。みんなの感謝の言葉が』

 

『やっぱり人生は定期的に楽しみがないとやってられないですもんね。よくわかります』

 

『はい、それじゃ今日は炭酸ジュースランキングでも考えましょうか。え? そんな唐突にって、だって急に思いついたんだから仕方ないです。まずコーラは不動の1位で────』

 

『────────────ー』

 

『それではみなさんさようなら。では、また会いましょう』

 

 ──終末ラジオ 第92回放送 聴取人数1人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──2030年8月5日22時47分

 

 ぽつぽつ……ぱらぱら……

 

 ポツポツ……パラパラ……

 

 

 

 

 

 

 ザー……ザー……ザーザー……

 

 

 

 

 ゴロゴロ……ザーザー……ゴロゴロ……

 

 

 

「くそっ…………痛いな……」

 

 

 

 ザーザーザーザー……ゴロゴロ……

 

 ──雨が降り出した。

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