「魔法少女なんてクソだよな」
「分かる〜碌な人いないよね〜。過保護で面倒臭いし。いちいち煩いし。憧れる人もいるみたいだけど僕は分からないや」
「その癖、何かあれば拙者のせい。世の中理不尽でござるなぁ」
いつもの通学路の登校中、俺達は深いため息をついていた。
202X年、この世界は狂ってしまった。子供の頃に無理矢理見せられたニチアサの物語が現実になった。恐ろしい見た目をした見上げる様な
それから、ヘンテコな生物が現れ。それに共鳴する様に魔法少女が現れた。その怪物に既存の武器ではダメージを与えられず、最も有効だったのは魔法少女の身体から生み出される。
新しいエネルギー"マジカルパワー"だった。そのパワーで魔法少女達はモンスターを相手に交戦を繰り広げ。
度重なる活躍で魔法少女達は世間を騒がせるお茶の間のイロモノから、英雄と成り上がった。それは大変喜ばしい事なのだが、どうやら世界は救えても身近な男達は救えないらしい。簡単に言えば、俺達は魔法少女の被害者だった。
特別な力を得て、全てが出来る様になったからこそ何もさせず全部をやろうとするブラコンの姉。
四十オーバーのアラフォーなのに、魔法少女に選ばれて近所に言いふらしたせいで、魔法少女の息子として噂された魔法少女の母。
プライドが高くなり、兄をゴミの様な目で見下しパシリ扱いする妹。
"じゃない方"は色々と大変だ。何かと周りに比べられて、生きにくい。だから、無意識に恨んでしまう。自然と魔法少女を嫌いになるのも別に間違って無いと思う。
「え、ちょ。何?え、冗談は辞めてよ」
そんな事を思っていると、ブラコンが電話で誰かと話している。
「この時間は珍しいですなぁ」
「だな、いつも決まった時間に掛けてくるもんなアイツの姉は」
オタクの声に俺は同意する。いつも決まった時間に……。
【【プルルルル……】】
着信音が鳴り、周りを見渡せば俺達のスマホから鳴っていた。嫌な予感と、きっと碌な事を言われないんだろうなと察して俺達は深くため息をついた。
「もしもし、翔ちゃん?」
「翔ちゃんは辞めろ」
出た瞬間、その事を後悔した。電話相手は勿論、魔法少女の母だった。一体、何の様だろうか、早く用件を言え。
「……ごめんね、私。死ぬみたい」
「はぁ?」
そんな事を言われて、思わず声が裏返った。何を言ってるんだ。
「え、な。はぁ?」
訳が分からなくて、疑問の声しか出ない。そんな声とは真逆に母の声は落ち着いていた。
「落ち着いて、翔ちゃん。あんまり時間は無いから急いで言うから。これから、貴方の元に妖精がやって来るから絶対に指示に従う事。それから……ありが」
「母さん?」
電話が切れた。慌てて、周りを見渡すと2人とも呆然とした様子だった。どうやら状況は同じらしい。
「マザコン氏もひょっとして?」
「ああ、オタクもか?」
「僕も……。一体これからどうすれば」
これから先、どうなるのか。魔法少女がいなくなって人類はどうなるのか……そんな事を考えていると。
《見つけた!》
そう脳内に声が響いた。驚いて周りを見渡してみたけど、何もいない。気のせいか。
《気のせいじゃないよ。君達が、魔法少女の関係者でしょ?》
その声は、再び脳に流れて来た。何なんだ?この声は。
「どちら様ですかな」
《ワタシは魔法の妖精。
あ、確かに妖精が来るって言ってたな。こんな早くとは思わなかったけど。
「でも、姿が見えないよ?」
確かに。声は脳に直接響いて来てるのに、姿形が見えない。
《それは、まだ貴方達を信頼してないからよ。貴方達が魔法少女に相応しいかどうか》
「は?」
「今何をおぉ!?」
《UGAAAAAAAAAAAAA》
聞き返そうと思ったら、タイミング悪く怪物の叫び声が街中に響いた。
「モンスターの声じゃ……」
《まさか、後を追われてた?そんな……あの子達が時間を稼いでくれていた筈なのに》
目の前には巨大な黒い鎧を纏い、剣と盾を持ったオークが立っていた。
《ダークネスオークナイト!異界からやって来た侵略者よ。お願い、私に力を貸して!私と契約して、魔法少女になって!》
「おお!正に王道展開ですな、これは……」
オタクがテンションを上げるが。
「いや、無理だな」
まず、根本的な問題がある。それは……。
「だね、だって僕達男だよ?少女じゃ無いし、それに魔法少女はマジカルパワーとか言う不思議な力があるんでしょ?僕達には無いよ」
《些細な問題よ、そんなのどちらもクリア出来るわ。それじゃあ皆、性癖を叫んで魔法少女に変身して頂戴》
「せ、性癖?」
出会い頭突然セクハラ妖精は自分の失言に気づかず、解説を続けた。だが、俺はそこで引っかかり付いていく事が出来なかった。
《そう。理想の姿、好みな物。それが1番反映されるのが性癖なのよ!さぁ、分かれば性癖を叫びなさい!そうすれば、夢が現実となり叶うから》
「つ、つまりTS魔法少女って事でござるか!妖精殿!?」
《まぁ、そう言う事になるわね》
「ふむ、これはやむ得ないな。妖精殿のさっきの発言では、拙者達はその資格がある。なら、資格がある物がやらなければいけない!これは仕方ない、ブラコン殿、マザコン殿。済まない、拙者は先に一個上のステージで待ってるでござる!」
そう言ってオタクは声をを大にして言った。
「ロリ体型で普段は幼い感じなのに、ショタを前にするとお姉さんぶりだすロリババア大好きでござるぅゥゥ!!!」
瞬間、オタクの体が光り出した。そしてその輝きは強くなったと思ったら一瞬で治った。
『せ、拙者。ロリババアになってる?』
目の前のロリババアは、そう事実確認をして来た。だから俺は目を逸らし、ただ親指を立ててやった。
『やったーでござるぅ!!!』
目の前のフリフリドレスのロリババアは喜びを爆発させた。そして、俺は思った。魔法少女が一人生まれたんだから俺らは良いんじゃ無いか?申し訳無いが、オタク一人でこの世界を護って貰えば。そう思ったが。
《早く性癖バラして、変身しなさい!じゃなきゃ心の中覗いて町中の掲示板に顔と性癖を開示するわよ。二人とも》
「……ぼ、僕は年上の巨乳でおっとりして優しい感じの人妻!」
「ッ……。始まる前は滅茶苦茶生意気なのに、ベッドの上では泣いて鳴くだけのメスガキ」
……あぁ。何かが溢れ出す様な感覚を感じる。
「もう良いか?」
《待たせたわね……流石腐っても騎士と言った所かしら》
『それは悪かったな。まぁ、今すぐチャーシューにしてやるから待ってな!』
『マザコン殿。ちゃんとキャラクターを守るでござる!いや、でも口の悪さもメスガキっぽくってアリでござるな!』
『え、姿に合わせて方が良いの?わ、私?頑張る』
目の前の豚騎士に目を合わせて俺達は構える。脳内には、妖精の声が響いた。
《良い?貴方達はマジカルパワーが使える。マジカルパワーは個々で使い方が異なるの。例えれば弾を込めるだけでも、大砲にマシンガン。ハンドガン。と多種多様でしょ?頭の中でパッと浮かんだものを直感的に使いなさい》
『チャーシューにしてやらぁ!
『芸がないでござるなぁ。まぁ、咄嗟だしこんなもんですかな。腐敗の鎖』
『え、えぇと……』
「な、何だと。まさかこの俺が……こんな所で?いや、そんな筈が。無い、クソッ何だこれは……」
鎖で身動きが出来ないまま、豚はそのまま炎の拳に焼かれて消えた。
『ちなみに、腐敗の鎖って何みて思いついたんだ。カッケーけど』
『BLを見て萌える腐女子(妹)ですぞ。外見は陽キャなのに。マザコン殿は焼豚でござろう?』
『せーいかい。……なんか腹減って来たな。ラーメン食わね?』
『お、それは名案ですな。ブラコン殿も行きましょうぞ!』
『う、うん!ってこの格好で!?』
《……この子達、強い。まさかダークネスオークナイトを倒してしまうなんて。とんでもない力を持ってるわね》
『おーい、妖精!戻る時はどうすれば良いんだ?まさか戻れないのか?』
『いやいや、そんな訳無いであろうwww流石にそしたら拙者は少し絶望するでござる』
そんな感じで俺達は魔法少女になり、初めての戦いはあっさりと幕を閉じた。だが、これは終わりでは無く色々な敵と戦う事になるのをまだ俺たちは知らなかった。なんて、俺は何も知らない。さぁ、これからどうなるのだろうか?